世界を敵に回しても   作:ぷに丸4620

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お読みいただきありがとうございます。

先日アップさせていただいたのですが、この展開は無いな。と思いまして、一旦削除させていただきました。トリスタンとの絆をもっと深める内容だったのですが、納得がいかず、一旦お蔵入りにさせて戴きました。

申し訳ございません。


妖精騎士トリスタン②

どのくらいの時間が経ったのか。

 

 

パニックを起こしていたトリスタンはある程度落ち着きを取り戻し、その場を立ち上がった。

 

 

あと男は逃げて行ったのだろうか。モース人間はどうなったのだろうか。色々なことがグルグルと頭が回るが、考えたところでもう遅い。

 

地下聖堂に閉じ込めていたモース人間達。アレが溢れてしまった。

 

正確に言えば、飛び出てきたのは1体だけで、殺戮劇場にいた人間達に感染していった。というのが正解ではあるが、トリスタンには知る由もない。

 

トリスタンにとってはどうでも良い人間達。

それを面白おかしく改造したベリル・ガットによる芸術品なのだが母親である女王には内密の物なのである。

 

あの手この手で言いくるめられ、快く従ったトリスタンだが、ベリル・ガットのいない今、こういった事態の対策は全くしていない。

 

そもそもとして、脱走する事そのものが想定外なのだ。

 

あるいはその場にベリルがいれば上手いこと事態の収拾が出来たかもしれないが、その場にいない以上もしもの話でしか無い。

 

お母さまに怒られる。今までのように許してもらえないかもしれない。今度こそ捨てられてしまうかも。

 

どうしようかと迷っているウチに、足は進み、殺戮劇場まで辿り着く。喧騒は止んでいる。モース特有の嫌な気配は消えている。

 

周りを見渡す。不思議なことに、今入ってきた扉を除いて、全ての扉が机や椅子などの家具の類で無理やり閉鎖されている。開け放たれていない以上、モースが外に飛び出た可能性は低い。

 

ふと一体のモース人間が一部を残しつつ、もう間も無く消えて行く様を発見した。

 

一体何が起こったのか。この状況から想像が付かないほど、トリスタンも馬鹿ではない。

 

だが今は、彼の事よりも一先ずは大惨事にならなかった安心感の方が勝っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

以外と手こずってしまった。

 

 

本来であれば、あの武器があれば、触れずにあの程度の敵を倒す等余裕なのだが、その頼みの綱だった手段が使えなかった。

 

 

その場にあった、武器等でどうにかするしか無い。

 

 

とある戦闘記録を閲覧していたのが幸いだった。

ウイルスに侵されたゾンビのような怪物達。そんな奴らを指一本触れずに、相手取った男の戦闘記録だ。

 

 

その男曰く戦闘はチェスと同じ、どれだけ先読みをできるかで勝負は決まる。

モース人間のような、本能だけで動くような先読みすらもしない相手であれば、その戦いも苦ではなかった。

 

動きを誘い、同士討ちを誘う。目論見は上手くいっていた。とは言え、以外に耐久力のあるモース人間。同士討ちだけで倒す事もできず、ボロボロの武具を使い、それなりに手こずってしまった。

 

()()()()()()()()()()()()()、意外と平気でなんとも無かった。とはいえ、戦闘の余波で建物もそれなりに傷つけてしまった。

 

 

 

事情が事情とは言え、ここにいた人間達を逃がしてしまった上、見張りも死んでしまった。建物もボロボロになってしまった以上、全てを無かったことには出来ない。

 

 

どうにかして、言い訳でも考えてやろうとも思ったのだが正直なところ上手い理由が思いつかない。

 

情けないが、これ以上自分にできることはない。

 

ニュー・ダーリントンを出て家路を行きながら色々と考える。

 

 

妖精騎士トリスタン。

噂だけなら聞いたことがある。

女王の娘、気まぐれに妖精を殺し回る狂者。

 

女王の評判は芳しくはない。

 

厄災を払いきれていない無能だなんで自分勝手な意見もあれば、圧政が辛いという真っ当な意見もある。

女王自ら妖精は救わない。などと宣言しているというのもあるだろう。

 

それは恐怖による支配。

 

妖精の特製を僅かながらでも感じ始めた自分としては、その圧政の理由も分からなくはないが、その理由故なのかもわからない。

 

まあ、そんな考察は後回しにして。

 

女王の評判を下げる最大の理由が彼女である。

 

突如、娘として現れ、妖精を次々と惨殺している彼女。力があるわけでもない下級妖精。それを許す女王。

 

それが彼女達の評判である。

 

直接対峙した感想としては本当に、純然たる悪ガキ。という感じだ。妖精が嫌い。毒舌。ショッピングが好き。靴が好き。ただ根は良い娘なのだと、思う。

 

とはいえ、噂に聞く妖精への残虐性は悪ガキでは済まされないレベルだ。

 

妖精の大半は人間を下等だと認識しており、人間の子供が気まぐれに花を摘んだり、虫や動物を気まぐれに殺すのと同じレベルでの行いを人間にも行うわけだが、トリスタンの場合は同族であり、その数も常軌を逸している。

 

歴史を辿れば妖精同士の戦争は後を絶たず。そういう面が出てきていると考えれなくもないが、それにしても異常である。

 

過去、幾人もの殺人鬼や大量殺戮者と会ってきたが、トリスタンのそれはそういった思想とはすこし違う気もする。

 

あの残虐性はどこから来ている?

 

生来のもの?

 

そうしろという教育?

 

女王が妖精を嫌っていて、苦しめる為の治世というわけでもあるまい。であれば街を興すほどの発展を許すとは思えない。

 

卵が先か、鶏が先か。このような残酷な振る舞いは、自己防衛の為。という可能性もあるが……あまりにも度が過ぎている。このままいけば彼女の運命は少しの綻びでどうにかなってしまう。

 

()()()が何を思って、彼女を娘にして、ああいった自由を許しているのかは、今の自分にはわからない。メリットが見えてこない。

 

家庭の事情というのは複雑だ。

 

家庭に限らずではあるが、何が正しいか、真実とは何か。そういう事は当事者にしかわからない。

 

そして、そんな家庭の事情は、自分達のように、あるいは彼等のように、宇宙を揺るがす程の混乱に発展する場合もある。

 

外様の自分が、そういった事情を不躾に探って良い物か。

頼まれてもいないのに、他人の家族の事情に関わって良いものか。

迂闊に踏み込んだせいで、妖精國が滅ぶような事態になったら?

 

そんな言い訳が頭の中をぐるぐると周り、行動に踏み出せない。その結果。モース人間だけ退治して、出て行くなんていう中途半端な手助けに終わってしまった。

 

我ながら情けない話だが、それが今の自分に出来る事だった。

 

本当に情けない。アイツが来てくれないのも道理という事だろう。こんな男が相応しい筈はない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな事を考えていると、前方に戦いの気配があった。

 

 

 

見れば人間や牙の氏族が大量のモースと戦っている。

 

どこかの軍隊だろうか。統率も取れているし、危うさも無い。

 

 

 

とは言え、誰一人犠牲も無しの勝利とはいくまい。数人の犠牲を承知した上での戦いのように見える。

 

 

 

まあ見捨てない理由も無い。どうせ煙たがられるだろうが、そう考えつつ、戦場へと参加する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遠征からの帰り道、モースの大群と遭遇した。

 

 

 

その数に舌打ちが思わず出てしまう。その所作に紳士的ではないと反省しながらも、冷静に戦場を分析、陣形を整え、闘いに入る。

 

 

 

全滅などはあり得ないが、幾許かの犠牲は免れないだろう。

 

 

 

年々増え続けるモースに円卓軍という不届き者達。

 

 

 

弱音を吐くつもりもないが、戦力の不足を感じているのもまた事実。

 

 

 

次の会合の際、軍備の増強を女王陛下に打診しようと考えていただけに、この遭遇に怒りを隠す事は出来なかった。

 

 

 

そんな戦場に一つ。転機が訪れた。

 

 

 

陣形の最前列。一人目の犠牲者になるであろうと思われた人間の兵士の目の前に、それは現れた。

 

モースに襲われる直前のその兵士から、槍を奪ったと思えば、それを振り回し、1体のモースを討伐。

 

そのまま槍を投降。その1度の投降で、モースを纏めて4体貫通させる。

 

 

 

その後の大立ち回りはまさしく、嵐のようであった。

 

モース達を蹴散らしながら、武具が破損するたび、戸惑う兵士から武器を奪い、また振るう。

 

 

 

その動きの華麗さは、その力強さは、それなりの武器などを与えれば人間の兵士はもちろん事、牙の氏族や女王騎士を超え、妖精騎士すらも凌駕するのではないか。そう錯覚する程に苛烈な戦いぶりだった。

 

 

 

その場にいる誰もが、手を出すことすらできないと、呆然としていた。

 

 

 

モースは消え、嵐は消え去る。

 

 

 

それは間違いなく妖精ではなかった。どう見ても人間。

 

一人の男だった。

 

 

 

がやがやと、配下の者達から騒がしい声がする。

 

その男は、そんな喧噪をどこ吹く風とばかりに、無言で去ろうと踵を返す。

 

 

 

「待て」

 

 

 

配下を黙らせながら、その男の前へ出る。

 

 

 

自分の事を知ってか知らずか、振り向き、こちらを見上げるその所作も、その眼も、雰囲気がある。力強さを感じる。

 

 

 

「貴様、人間だな? 何処の出だ?何故手を出した?」

 

 

 

その問いに男は一度肩を竦める。

 

 

 

「別に、やられそうな奴がいたからつい参加したってだけだ。悪かったよ。人間が妖精様の戦場に手を出して」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局同じ反応か。

 

 

人間が何故手を出した?その質問に答えたが、少し皮肉が出てしまった。

 

 

 

狼男のようなその妖精は、皮肉が効いたのか効いてないのか。

 

 

 

すぐに返答が返って来た。

 

 

 

「いや、救援感謝しよう。自分を卑下するな。人間にしてはいい面構えだ。それに貴様のその強さ。この妖精國においてここまでの者はそうおるまい」

 

 

 

全く予想していなかったその答えに、正直なところ度肝を抜かれてしまった。

 

 

 

「え? あ、ああ、どうも……」

 

 

 

つい言葉が出てこない。

 

 

 

「貴様どこの出だ? 誰に仕えている?」

 

 

 

「いやあ、旅行者というか、俺はソトから来たから、別に仕えているとかそういうのは……正直この妖精國の知り合いも殆どいないし……」

 

 

 

「チェンジリングか……」と呟く狼男を見ながら、どうしたものかと考える。

 

 

 

正直な所、いたたまれなかった。どうせ嫌な奴なんだろうなーとか決めて掛かったのもあって。罰が悪い。

 

 

 

予想外の反応にあたふたしている内に。

 

 

 

狼男は、しばしの間何かを考える仕草をした後。

 

 

 

「良かろう、旅行者であれば猶更だ。貴重な兵士を失わずに済んだ礼だ。領土に案内してやる。我がオックスフォードの持て成しを味わっていくが良い」

 

 

 

そんな事を言い出した。

 

 

 




ここまでお読みいただき誠にありがとうございます。


感想やコメ付き高評価などなど本当に嬉しいです。

コメ付き低評価も読ませていただいております。至らぬ作品で申し訳ございません。

なるべく皆様に楽しんでもらえるよう。地雷を踏みぬかのよう、邁進していきたいと思います。

ここまで、割と色々顧みずに突っ走って来たのですが、予想以上にたくさんの方に読んでいただき、様々なご意見をいただき、色々と考える事も増えました。

一度立ち止まり、改めて自作品を色々と修正したいなという思いも正直ございまして、そこまで大きくは変わりませんが、それこそタイトルも変えようかな。とか思っております。

そちらをするか、とりあえず置いといて先へ進めるか。色々と迷っている次第でございます。

まだ決めかねている所ですので、今後どうなるかはわかりませんが、更新速度は少しばかり落ちるかもしれません。

もちろん完結するまで、止まることはございません。今後も拙作ですが、この物語を楽しんでいただければ幸いです。

今後も感想、評価、アドバイス等々よろしくお願い致します。

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