世界を敵に回しても   作:ぷに丸4620

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すみません。少し執筆していく上で気になった事がございまして。
最後にアンケートを載せさせていただきました。

回答していただけると幸いです。


ウッドワス②

「ハア――」

 

青年が。大きいため息を一つ。

 

「ハア、ハハハ、息が切れているぞ貴様、そろそろ根を上げる時ではないか?」

 

黄昏の空広がる大地の上、今、1人と1翅の男が雌雄を結しようと、向かい合っていた。

 

そう、嘲笑うかのように言葉を発するのは、狼男のような風貌をした妖精。

 

対峙しているのはため息を吐いた黒髪の青年。

 

「息切れじゃない。全然、疲れてもないし」

 

余裕そうな表情で答える青年に、狼男はその表情を憤怒に染める。

 

「あいも変わらず飄々とした奴め! 今日こそ決着をつけてやるわ!」

 

「決着って、いつも俺が勝ち越してるじゃないか。決着はとうについてる」

 

呆れたようにため息を吐く青年に、狼男は牙を剥く。

 

「なんだと! この間は俺の勝ちだっただろう! 貴様は、この俺の本気を前に逃げ出したではないか!!」

 

「ああ、そうだったそうだった。でもあれは、トネリコと別の場所に行く約束があったからで。別に負けを認めたからじゃない」

 

「言い訳がましいぞロット!!」

 

「ライネックこそ、そろそろ根をあげて本格的にトネリコに強力して欲しいんだけどな。後、その体をモフモフさせてやって欲しい」

 

互いの名を呼びながら、過去の出来事を罵り合う。

その様子は、宿敵というよりは、どこか悪友のようにも見える。

 

「そのような事、天地がひっくり返ってもあり得んわ! この俺が、貴様を殺すまではな!!」

 

「え、そんな、それなら絶対に無理じゃないか。天地がひっくり返る方がまだ可能性がある」

 

「ぬかせ、小童がァ!!」

 

飛び掛かり、爪を振り下ろそうとするライネックに、ロットは拳で応えようと構える。

 

長い対話の末、何度繰り返したか分からないほどのぶつかり合いが、また再び始まった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

『なんだピカピカ坊や(フラッシュ)。僕のようにおしゃべりが上手になりたいって? 2000歳越えの彼女をもっとメロメロにしたい?』

 

『まいったな。僕のトークセンスは生来のものだ。つまり才能。』

 

『君は……まあ今はまだ生まれたての赤ん坊って所だが……僕の見立てでは……まあそう、落ち込まないでくれ』

 

『そうだな、それならまずは僕のボディガードにでもなってもらおうか? ハッピーは今ペッパーのお付きだからな、君なら笑われる事もないだろうし。ジョークの一つでも教えてやろう』

 

『何だバナー、僕の趣味は坊やの愛しの彼女に合わないって? 彼には早すぎる?』

 

『言ったことが無かったか?』

 

時には歩くより、まず走れだ(Sometimes you gotta run before you can walk.)

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

「モルガン女王陛下にカンパーイ!!」

 

『ウオオオオォォォォォォ!!』

 

「勇者ウッドワスにカンパーイ!」

 

『ウオオオォォォォォォォォォ!!』

 

「フゥハハハハハハ!!!」

 

 

トールが先導しながらレストランにいる妖精や人間達を煽るに煽る。

 

それを肴にウッドワスが大声でひたすらに笑いながら酒を煽る。

 

今現在、反女王派も出没しているこの妖精國。並びに、老衰だのなんだのと裏で馬鹿にされているウッドワスにとって、ここまで大きく、賛同と尊敬の声を浴びるのは久々の事である。

 

ここ数百年単位ではなかったこの光景に気を良くしないはずが無かった。

 

「偉大なる女王陛下に経緯を込めて! 今夜は『QUEEN』のヘビロテだぁ!!」

 

魔術でジュークボックスを出現させ、音楽を鳴らす。

 

それに合わせ、リスムを刻むトール。それにならうようにオックスフォードの住人達もステップを刻み始める。

 

その間も、誰もが酒を飲むたびに、グラスを叩き割る。しかし、叩き割られたそれは魔術によって、手元に戻っていく。

 

無限の酒に無限の食事。酒不足でパーティが終了する事はありえない。

 

そんな、酔った勢いの中、様々な会話がトールとウッドワスの間で交わされていく。

 

 

「ハッハッハ! 凄いんだなモルガン女王様ってのは、強い女性はいい! きっと美人なんだろうなぁ!! 写真ある? 結婚を前提に挨拶とかできるの?」

 

「ハハハハ!! 陛下の魅力に気づくとは見上げた奴だ! だが、流石のアホ王子でも我が女王陛下には役不足よ! それなのに、それなのに……何故、陛下はあのような男に……!」

 

「結婚してんの!? 残念だなぁ!!」

 

トールの本気なのかどうかもわからないジョークに気前よく返した後、突然、唸り始めるウッドワス。その眼にはわずかばかり涙が浮かんでいる。もはや情緒が不安定だった。

 

その落ち込みように、何かを察するトールは酒を煽りながら。ウッドワスの肩を抱く。

 

「な~んだぁ、ウッドワスゥ。そんな問題がある男なのかァ?」

 

「大ありだ! 奴、ベリル・ガットは何の力も持たぬ人間でありながら陛下の夫という立場を利用し好き勝手している! 『国立殺戮劇場』という、荒んだ施設まで作り始めた! この妖精國にとって、害にしかならん存在だ!!」

 

「さつりくげきじょぉ!? あの胸糞悪い施設か! なに。そのベリルとかいう奴が作ったのか!! なんてひどいやつなんら!!!!」

 

ドン!と勢いよく、飲み干したジョッキを机に叩きつける。しばらくすると空になったジョッキにみるみる内にビールが()()()()()()()()()

 

「よぉし、ウッドワス! 為政者のお前は動きにくいだろうからな。こんど俺がそいつにに出くわしたらぶん殴ってやる! ベリルの壁崩壊だ!!」

 

「あれ?ベルリンだっけ?」っと後付けしながらジョッキを掲げ、宣言するトールにウッドワスは笑い飛ばす。

 

「グハハハ! それはありがたいが! 貴様の犯行だと知れたらお前は反逆者となる。そうなったら私はおまえを殺さねばならん! 死にたくなければやめておけ!」

 

「らに言ってんダ!! お前に俺が殺せるわけないらろう!! それにそう言うのは得意だから! あんさちゅだってできるし、罪でもなんでもでっち上げてぇ。そして離婚させて、俺が女王と結婚すりゅ!!」

 

「冗談の面白いやつだ!!」

 

そんな国家転覆の企みのような会話もあれば、

 

 

「ほう、夢で出会う女性……特徴に、どこか心当たりがある気がするのだが、しかし何とも切ない話だ。かくいう私も愛するヒトがいてだな……」

 

「お、お、何々? どんなヒトどんなヒト? 言ってみ言ってみ?」

 

「〜〜〜いや、やはりいかん! このような事どことも知れぬ男に話すなど……!!」

 

「俺は白状したのに!!!」

 

修学旅行の夜のような会話も繰り広げられる事もあるし。

 

 

 

「なんか俺、ウッドワスと会った事がある気がするんらよなぁ……」

 

「貴様もか、私もそう思っていたのだ……」

 

「やっぱり? ふっしぎだなぁ」

 

「……」

 

「……」

 

「「気色悪(いわ)っ!」」

 

男同士で見つめ合い、気味の悪さに吐きかけた事もあった。

 

 

 

 

トールから料理が野菜中心である事に疑問を投げかけた時は、酒の力もあって心底落ち込んだ様子を見せた。

 

「我等は過去に罪を犯した。故に、本能を抑える為、菜食主義へと趣向を変えたのだ。より紳士たらんと、過去の過ちを犯さん為にな……」

 

酒の力は偉大とでも言うべきか。こんな、誰にでも話せるような話ではないと言うのに、つい、ウッドワスは口に出してしまっていた。

 

初対面のはずのこの男に、どこか気を許してしまっている。酒の力もあるだろう。女王や、自分を崇拝する言葉をここまで気持ちよく、貰ったのが初めてと言うのもあるかも知れない。

それになによりも、この男には初対面とは思えないナニかを感じている。それが、不快では無いというのも事実である。

 

「なんて……なんて……」

 

「うおっ」

 

「なんて、いいヤツなんだぁ……!!」

 

「貴様っ近づきすぎだ! 離せ!! ぐっ、貴様本当に人間か!?」

 

感極まって抱きつくトールを引き剥がそうとするが、思ったよりもトールの力が強いのか。酔って力が入らないのか引き剥がせない。

 

「うぅ、國を護る勇者がそんな悩みを……こんなにモフモフなのに……よしっ」

 

「なんだ、どうした」

 

「子守唄ら!」

 

一度ジョッキをテーブルに置き、名案だとばかりに人差し指を立てる。彼の頭にはきっと電球が浮かんでいるはずだ。コテコテのジェスチャーである。

 

「俺の仲間にな。本人はホーキンス博士の様に天才的で、戦いが嫌いで大人しいヤツがいるんだが。怒ると緑色の巨人に変身しちまうヤツがいるんだ。なった瞬間、もう大暴れ!」

 

ウガー!と両手を上げて手を広げ、怪物のポーズを取るトール。

 

「姿形も怪物に変わると言うのか……なんと不憫な」

 

「でな、やっぱり戦いとなるとその緑の男が必要な時もあって、頼み込んで怒ってもらうんだけど、そうなった後の為に、皆が子守唄ってのを考えたんらよ」

 

「子守唄?」

 

「そう! 子守唄を歌うとあら不思議! 大暴れの怪物も大人しくなって、元の人間に元通り!」

 

ウガァと怪物のポーズから一転、体を縮こまらせ、メガネをクイと上げる様な動作をするトール。

 

「その子守唄とやら。どんなものだ」

 

「よぅしっ! 実践らぁ!!」

 

そう言ってウッドワスの正面に立ち、手のひらをウッドワスに向ける。待て、と相手を静止する為のポーズ。

途端、ベロンベロンに酔っているとは思えない、不思議な気迫がトールから溢れ出す。

 

大男(オオモノ)さん、大男(オオモノ)さん」

 

言いながら、ゆっくりとウッドワスに近づいて行く。

 

そんなトールに、不思議とウッドワスも、同じ様に手を差し出す。

 

「もう、日が暮れるぞ――」

 

手のひらを徐々に下に向ける。何かの心理に訴えているのか、その手を受け入れる為、ウッドワスは手のひらを上に向け、トールは、そのウッドワスの掌にその手を乗せて、優しく撫でた。

 

――瞬間、ウッドワスは、そのまま後ろに倒れた。

 

「アレ?」

 

何事かと見れば、仰向けに大の字に倒れたウッドワスは、大きなイビキを掻き始めていた。

 

無言のままトールはウッドワスを暫く見た後、周りを見渡す。既に妖精、人間問わず全員倒れ伏しており、

今起きているのはトールのみになっていた。

 

トールはそれを確認した後、気が抜けたのか、ウッドワスの胸に飛び込む様に倒れこんだ。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

トールがまず起き上がり、次いでウッドワスも呻きながら目を覚ます。

 

2人揃って、惨状を見つめていた。

 

ひっくり返った椅子、ぐちゃぐちゃなテーブルクロス。そこかしこに転がるグラス。

そして、倒れ伏す妖精及び人間達……

痛む頭。

 

トールとウッドワス。お互いに目を合わせる。

 

「……片付ける?」

 

「ああ……」

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

そこかしこで倒れている妖精や人間を起こし、片付けに入らせる。

 

と言っても手作業はほぼ無い。

 

トールの魔術や妖精の能力によって、みるみるうちに片されて行く。

 

とは言え会場の片付けは余裕なものの、全員が頭痛などの変調に苛まれていた。妖精、人間問わず、外でオロオロと跪いている者もいた。

 

ウッドワスの計らいで、片付けもそこそこに、彼とトール。

 

2人はオックスフォードの入り口に立っていた。

 

 

 

「悪かったな。俺のせいで、あんなんなっちまって」

 

「……構わん、貴様の挑発に乗り、そして酒に負けた私の落ち度でもある」

 

頭を抑えながら会話を交わす2人。当然ではあるが、2人とも調子は良くはなさそうだった。

 

「そうか、そう言ってくれると助かるよ……うん、そうだな。ありがとう。あんな楽しい宴会は、久々だった。詫びってわけじゃないけど。あの酒、置いてくから」

 

「ふむ、礼のつもりでもてなしただけだが、受け取っておこう。私こそ、あのような祭り事は初めての経験であった。紳士としては失格だろうが、どこか晴れやかな気持ちではあったと言っておこう。おまえの故郷の作法。参考にさせてもらう」

 

 

トールに気を使ってか、自らの業に向き合い、理性を抑えていたウッドワスからしたら、昨日の大惨事に、文句の一つでも言う権利はあるはずなのだが、彼から出た言葉は恨み言などでは無かった。

 

「そう言ってもらえると嬉しいよ。まあ、色々貯め過ぎも良くないからな。偶には発散も必要という事で」

 

「調子のいいヤツだ……」

 

ニヤリと笑うウッドワス。見つめ合う2人は、側から見る分には、昨日が初対面とは思えない雰囲気だった。

 

「今度はウチに遊びに来てくれ。まあ、ウチって言っても借家みたいなもんだけど……」

 

「ティンタジェルか……正直。私にとっては忌々しい地ではあるがな」

 

「……その話も聞いたが、それはウッドワスのせいじゃない」

 

「……気遣い感謝する」

 

ウッドワスの苦々しい態度もトールの言葉によって四散する。

 

「私の下につけという話、アレは決して酒に酔った勢いで言ったわけではない。今の妖精國には貴様のような武人が必要だ」

 

酔った中でのとある会話。その内容は、妖精國の誰かが聞けば卒倒するような提案であり、それをトールに投げかける。それを受けたトールは寂しそうな笑顔を向けて、答える。

 

「ああ、そう言ってくれるのは嬉しいよ。でも、どういう訳か、誰かの為に戦うとか、そういう事のやる気が軒並みなくてな……きっと俺みたいなのがいたら、他の奴らのやる気を削いじまう。俺がいるとむしろマイナスになるかもしれないからさ――」

 

ウッドワスからしたら、その気遣いこそがお門違いではあった。戦いとは数ではなく真に力のある妖精一翅で行うもの。それがウッドワスの考えである。

目の前の男は妖精ではないが、間違いなく力のある1人ではある。

 

だが、どこか、この男の怠惰な表情に、言いようのない悲しみを感じるのも事実。無理やり誘っても真の力は発揮できまいとも考えていた。

 

「……そうか」

 

「ま、ブリテンの勇者ウッドワスのお誘いだ。色々考えておくよ。良く考えてから――答えを出させて欲しい」

 

「ふむ、では貴様のやる気が出るような手でも考えておこう」

 

そんなウッドワスの言葉に。

 

「期待してる」

 

そうトールは笑顔で答えた。

 

 

 

 

一旦会話も尽きたところで別れの握手として手を差し出すウッドワス。

 

その手を一度見た後、トールは、両手を広げた。より強い親愛の証、ハグのジェスチャーである。

 

ウッドワスは暫し考えた後、同じ様に手を広げ、互いにハグを組み交わす。

 

互いに、記憶のどこかで同じように接近した覚えもあって。それが何なのかはわからない。

ウッドワスは、全てを受け取ったわけではない先代の記憶の中に人間とハグをしたのかもしれないという事で解釈し、トールは、失われた記憶の中にどこかの星の狼男と熱い抱擁を交わしたのかもしれないと解釈した。

 

きっと良い思い出なのだろうと、互いに自然と考えて――

 

「本当にありがとう。楽しかったよ。勇者ウッドワス」

 

「ふむ……また会おう。アフォガードの王子トールよ」

 

「……まあ、それで良いか」

 

 

挨拶を交わす。わざわざ訂正して空気を崩すのも忍びない。トールは苦笑いしながら訂正するのをやめた。体を離し。名残惜しそうに踵を返す。

 

 

「じゃあ、また」

 

 

 

 

手を振りながら、去って行くトールを、見えなくなるまで見送った後、ウッドワスはオックスフォードに戻って行った。

 

 

 

 

 

 

中では、具合の悪そうな住人達が片付けを済ませたところだった。

 

「貴様ら! 酒なぞに溺れおって! 反省として、暫く酒は禁止だ! 食前酒等も含めてな!」

 

その言葉に、畏まる妖精達。

 

「当然、私もだ!!」

 

そう宣言しながら自身の大声に、頭痛が再発し、頭を押さえるウッドワス。

 

体調は最悪だが、久々の充実感があった。

 

そんな中、ウッドワスは一つの事を思い浮かべた。

 




ハグの記憶:腹を腕で貫くオマケ付き。

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