世界を敵に回しても   作:ぷに丸4620

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妖精舞踏会②

 

 

 

 

 

妖精騎士ランスロット。

ブリテンで最も美しい妖精と謳われ。

 

最強の妖精騎士とも言われている存在。

 

それが今、トールの目の前にいた。

 

 

「どうかな? 舞踏会は、楽しめてる?」

 

「ん? まあ……そうだな」

 

何故声を掛けたのだろうかと、疑問に思いつつ。

態度は崩さない。

ムリアンに、失礼の無いようにとは言われたが、無駄に遜るのもそれはそれで、やめろと言う指示もある。

あくまで自然体で良いだろう。

 

ランスロットに聞かれ、改めて辺りを見回す。こういった高級志向のパーティは経験があるが、こう、社交ダンスを嗜むような、社交会に関してはからっきし。

どことなく息苦しいのは、ウッドワス関連だけでは無いだろう。

 

「やっぱり、緊張の方が大きいかな。ほら、ここで万が一迂闊なことをすれば仕事を失うかもしれないし」

 

「それは、違いない。この妖精國では君のような人間が成り上がっていくのは難しいからね」

 

悪気も何もない"事実"にトール自身、何も思わない。

当然だと思っているし、別に、仕事なんてのは嘘であるのだから、どうでも良かった。

 

言いながら耳に仕込んだ盗聴器で、声を集める。やはりロンディニウムでの話題が多い。そして、ウッドワスが倒された事を喜ぶ声も。相変わらずだ。

一度耳から意識を離して、ランスロットへと集中する。

 

「そういえば、ランスロット。妖精騎士って事は、女王の……?」

 

「そう、僕は女王陛下直属の騎士」

 

「凄いんだなランスロットは。確かに、この建物の中でも1番強そうだ」

 

「ありがとう。性能という点においては、この妖精國で僕の右に出る者はいないと自負しているよ」

 

性能。という言い方に不思議な奴だと思いつつ、

誇らしげなランスロットはそのヴェールを外し、朗らかな笑みをトールに向ける。

 

その笑顔に見惚れつつ、トールは言葉を続けていく。

 

「それに、皆君に夢中みたいだな……隣にいる俺が邪魔だって顔をしてるよ。君、すごい可愛らしいから」

 

「可愛らしい?。初めて言われたな。そんな事」

 

ランスロットは辺りを見回す。

その布を取ってから、更に熱くなる目線。

だがランスロットは意にも介さない。

 

「でもその言葉は嬉しいよ。ありがとう。けれど、見るべきは僕じゃない。もっと美しい妖精は別にいる」

 

ランスロットから放たれるのは感謝の言葉。しかし、つづく言葉は自身の美しさを否定するものだった。

 

「見るべきは、か……」

 

呟きながら、ランスロットの目線を追えば、目についたのはオーロラだった。

 

「なるほどな……確かにオーロラって凄く綺麗だよな。キラキラしてる」

 

トールの言葉に、満足そうな顔をするランスロット。

だが、ひとつ。気になる事はある。

 

「でも――」

 

こんな初対面で言うべき事では無いかもしれないが、それでも、今のトールにとっては伝えておきたい事ではあった。

 

「君の事を綺麗だって言ってる妖精たちの想いは否定しないでやって欲しいけどな……」

 

そうだ。自身を好いてくれている要素を、本人が否定してしまうのは、思う側からしたら悲しい話だ。

 

好かれる事が迷惑となる事もあるだろうが。

 

自分が愛した相手がその思いすら否定するのは、あまりにも悲しい。

 

ウッドワスが思っていたオーロラが、彼の死を全く気にしていないかのように振る舞っていると、強く思う。

 

やはりオーロラもウッドワスの事を、老害だとか、獣臭いだとか、思っていたのだろうか。話を聞く限りでは脈が無いわけでは無さそうだったんだが……

あるいは、今はああいった態度でも、計法が出た時は悲しんでくれたのだろうか。

 

そんな事を思っていながら、ランスロットの返答を待っていたが一向に、返答が来なかった。

 

「? どうかした?」

 

「いや、君の言う事も違いないとは思ってね。少しだけ考えてしまった」

 

「まあ、あくまで一個人の意見だから、何となく流してくれれば――」

 

と、そんな会話の中。

気になるやり取りが目に入った。

 

ランスロットもどうやらそちらに興味が向いたらしい。

 

そこにいるのは、まとまりのない服装をした集団。そう、ウッドワスを死に追いやった予言の子一同。

 

友人を殺した、憎むべき相手。

 

桃色の妖精が、そんな予言の子達に声をかけていた。

 

 

『ごきげんよう。『予言の子』ロンディニウムでの勝利、おめでとうございます』

 

「おめでとうございます……か……」

 

「どうしたの?」

 

「……いや、牙の士族の長が侵略者に殺されたってのに、あの妖精も呑気なものだなって」

 

言いながら桃色の妖精の声を盗み聞く。

 

「牙の士族長を殺した事をおめでとう。だってさ……」

 

 

 

 

 

 

ランスロットはおや、と思う。

視線の先にはコーラルと予言の子一同。

彼、トールは、その内容を口に出すが、ランスロットには聞こえてこない。

 

「……声が聞こえるのかい?」

 

「読唇術ってヤツ。唇の動きで会話を読めるから……簡単な言葉ならだけど」

 

嘘ではあるが嘘ではない。

トールは、間違いなく盗聴しているが。読唇術はスパイの基本みたいなものだ。シールド時代に習得はしている為、今の内容も読唇術でも読み取れている。

 

「そう……面白い技術だね……」

 

「本当に……誰もあいつが死んだ事を悔やんでないんだな……」

 

「君……」

 

ランスロットの関心した態度にも気にせず。一人ごちる彼にランスロットは、目の前の人間に色々と心当たりがあった。この知識、妖精に対しても余裕の態度。

力を十全に振るえないムリアンの妖精領域にいて尚感じ取れる力強さ。そして妖精騎士である自分を前にしても、臆さないこの胆力。

 

牧場出身の人間としてはあり得ない。

 

何より、ウッドワスの死を憂うその態度。

 

あのウッドワスが自身の軍に特別待遇で入れて欲しいとモルガンに懇願していたとオーロラが話していた――

そう、確か――

 

 

「君、ひょっとして異世界の国の王子様だとかいう人間かい?」

 

「……ああ」

 

トールは否定もせず、素直に答える。

 

「そう、君は、ウッドワスと仲が良かったんだね……」

 

「そうだな……」

 

 

そこで会話は止まる。ランスロットは困っていた。

正直なところ、トールに話しかけたのは、どこか惹かれるところがあったからだ。ムリアンによる認識阻害の魔法の中で、何故顔を知っているのかも気になっていたし、遠目から見ても強者の風格を備えていた。彼を見ていると、遠い記憶の彼方にある何かに触れる気もしていた。

もちろん、こんな所に人間が1人という興味も大きかった。

 

だが蓋を開けてみれば、ランスロットにとっては正直なところ気まずい相手だった。

 

何せ、ウッドワスの援軍を邪魔した陣営の一部は、オーロラであり。ウッドワスを倒したのは、弟であるパーシヴァル。

 

下手をすれば、彼の怒りや悲しみの矛先は、恨みとなって、パーシヴァルはもちろんのこと、オーロラに向いてしまうだろう。

 

あるいは既に向いているかもしれない。

 

その時、彼と敵対するのは、嫌だった。

 

敗北するつもりなど毛頭ない。出会ったばかりで、彼との交流があったわけでもない。

 

だが――

 

出会ったばかりだというのに、負けるはずがないというのに。

 

そもそも戦うのが嫌だった。

 

そして、どこか心の奥で、彼に、敗北してしまうかもしれないという、不安も抱えていた。

 

 

どう声を掛けたものか困ってしまう。

 

トールを見れば会話が止まった事を気にした様子もない。

コーラルと予言の子のやり取りを見ながら、目に涙を溜めている。

ウッドワスを思っているのは明白だ。

 

他者の死を憂うその姿に、その優しさに惹かれながらも、尚更、居た堪れなくなった。

 

そも、ランスロットは、そこまで妖精とのかかわりが得意な方ではない。

人間であるならば尚更だ。

普段であれば何の気無しに、ランスロットが好き勝手に喋って去る。というのが定番だが、この時ばかりは会話の流れも相待って、ランスロットも気を揉んでいた。

 

どう声を掛けたものかと、焦りが動作に現れる。ランスロットは慌てた様子で手をわしゃわしゃと動かしていると。

 

「どうした? 実は、ウッドワスの援軍を邪魔した奴等の仲間だったり、反乱軍の誰かと繋がったりしてたとか?」

 

そんな事を急に言われたものだから。

 

「―――――――なんて?」

 

ギクリと、わかりやすい反応を返してしまった。

 

「…………いやまさかとは思ってたんだけど。わかりやすすぎる……」

 

「……」

 

やってしまったとランスロットは、慌ててしまう。

援軍の妨害の件など、彼が知っているという事があまりにも予想外だったのと、急な問いだったため、

つい反応してしまったし。その後の対応も良くない。反論が思いつかず、口を紡ぐしかなかった。

 

恐る恐る、彼を見れば、トールは、口に手を当てて、何かをこらえているようだった。

 

「…………く、くく、くくく」

 

こらえていたのは笑いだった。

 

「な、何故笑う!?」

 

「いや、ここまで正直にそういう反応されると逆にさ……」

 

失礼、と言いながら笑いを抑えるトール。

その態度に、ランスロットはホッと一息ついていると

 

「って事は、この事を女王に報告すれば妖精騎士の座も剥奪だろうな……先にムリアンに言うのも手だ。あいつなら上手い事政治に利用するだろうし」

 

そんな恐ろしい事を言い出した。

慌てて顔を見れば、悪戯っ子のような笑みを浮かべていた。本気では無さそうだが……どことなく読みづらい。

 

「い、意地悪だね君も」

 

「ああ、こういう脅しの類も……商売する上では大事な要素だからさ」

 

「ムリアンが君を雇ったのもわかる気がするよ……」

 

 

このグロスターにおいて暴力は許されない。

鍛えた力は振るえない。むしろそれは、この領域内では根本から存在とした格上であるランスロットが最強たり得る要素でもあるのだが。

ムリアンという絶対者がいる以上どう転ぶかはわからない。

目の前の彼はムリアン直属の部下のようなものだ。

下手に手を出すのも難しいし。あっさりと殺されてくれそうに無い。故に今は大人しくするしか選択肢は無い。

 

「一応聞くけど……何が望み?」

 

「そうだな、じゃあまずは――」

 

「え、まずはって一つじゃないのかい?」

 

「それはそうだろう? この国の英雄の死に関わったんだ。一つや二つの頼みごとで、済ませるわけないだろう?」

 

「う……まあ構わない。僕に出来ることならなんでもしよう。それでも納得出来ないようなら、君を殺すしかなくなるけど」

 

「おおこわ……怖すぎて、ここである事ない事叫んじまうかもな……」

 

「きみ、やっぱり意地悪だね」

 

ジト目で睨むランスロットにトールは意にも介さない。

 

「じゃあ、知り合いが反乱軍か。援軍妨害に関わっていたか。どっち? 別に言えない事があるなら隠しても良いけど……」

 

――隠せるものなら隠してみろ

 

言外にそう言っている気がする。

 

「ちなみに、援軍を全滅させた犯人も君じゃない事は分かってるから、関わってる程度なら別に君をどうこうしようとは思わないさ、色々あって、やり辛くなったからな……」

 

言ってる事の後半はよくわからないが、誤魔化しは効かないだろう。最低一つは情報を提供せざるを得ない。

むしろこれはチャンスだともランスロットは考えた。

 

「君の言う通りなら円卓軍のメンバーは把握してるという事だね」

 

「ああ、リーダーのパーシヴァルの事はな。後は正直、雑兵って感じだけど……」

 

自分と彼の関係を明かせば、彼は、きっとパーシヴァルへの復讐なりなんなりを躊躇してくれる。

そう、自分の為ならばきっとそうしてくれる。

そういう確信を、ランスロットは何故か持っていた。

 

それに知られたところで困ることでも無い。だから明かす事にした。

 

「彼は、僕の弟だ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ランスロットのその告白に、トールも一瞬だけ息を呑む。

 

「それはまた……複雑な関係だな」

 

「……こんな小さな頃から見守ってきたんだ」

 

言いながら小ささを手で表現するランスロット。

実際にそんな大きさでは無いだろうが、彼女の小柄な体躯も相まって、その姿は愛らしい。

 

「10年間、彼が成長していくごとに、喜びと戸惑い、感謝と寂しさで、胸が温かくなった……」

 

当時の弟の姿を思い起こしているのだろうか。

 

「僕は良い師匠でも、姉でも、友人でもなかっただろうけど……」

 

複雑な雰囲気を醸し出していた。

 

「パーシヴァルが汎人類史の人間のように、暮らしていける未来を、何度も夢に見たくらいだ……」

 

また汎人類史……この世界の事情を知る者皆が言う、異世界。

正直な所、聞いた話を統合する限り、自身の知るセカイのバックアップ前と似て非なるセカイだと認識できるが。

であるならば、夢を見過ぎじゃ無いかというのがトールにとっての意見である。

隣の芝は青いと言うが、良いところだけ見て憧れるのも良いが。妖精國そのものを蔑む程優しい世界でもない。

 

「そんな愛しの弟がいるのに、円卓軍には入らないんだな……」

 

「うん……それはできない」

 

「……どうして?」

 

「僕がモルガン陛下に従っているのは、妖精騎士でなくてはならないからだ。『予言の子』が正しかろうと、僕には関係の無い話だ。僕は僕の信念から、陛下と取引したのだから」

 

その言葉に嘘はないだろう。表情を見ればわかるものだし、何故かわからないが確信がある。

ランスロットは尚も続ける。

 

「なのに、モルガン陛下の誘いを断ったばかりか、円卓軍なんてつまらないものを組織して……パーシヴァルは……不良になってしまった……母竜として、そんなふうに育てた覚えはないのに……」

 

母竜。という単語が気になったが、トール自身、竜というものに馴染みがないわけではない。人間に変化する竜にも会った事はある。彼女もそう言った類のものなのだろう。気にしない事にした。

 

ランスロットはウッドワスを殺したパーシヴァルの身内だ。正直なところ、最初は身内ごと殺してやる。なんて程に憎悪を持っていたが、悲しみに暮れる彼女を見て、そんな気にはなれなかった。

 

だから、そう、そんな遺恨は、胸にしまえば良い。

そもムリアンとのいざこざで、憎悪は殆ど燃え尽きている。本人にあった時、自分の心がどうなるかはわからないが、身内である彼女を害す気分にはならない。

今は彼女の為に何を伝えるべきか感がえ――

 

「なら、無理矢理にでも聞き出せば良いんじゃ無いか?」

 

「え?」

 

「いや、君や、あの女王の誘いを断って、國をメチャクチャにするクーデターを起こした理由をさ、本人に聞けば良いんじゃ無いかなって」

 

何故かはわからない。だが、彼女の悲しむ顔を見たくは無い。

 

話を聞く限り。彼女に必要なのは、納得だ。

ランスロットは未だ弟が反抗した理由を分かっていないようだ。

そして、この姉弟は立場上、殺し合う仲。どうなるにせよ何にでも、()()は必要だ。

 

ランスロットに最低限必要なのはそこだ。

彼女は謀反した理由を知るべきだ。そして弟も理由を伝えるべきだ。それが家族としての義理だとトールは考える。

 

自身も。義理の両親を裏切る時、何も言わずに去るべきか迷うに迷った。殺される覚悟で父親に宣言し、結果的には話して良かったと、そう思う自分がいる。

 

仮に何も言わずに去ったならば、残された父上や母上がどう思うか、あの反応を知れば、想像に固くは無い。

 

「気を使う必要なんて無い。弟が何を思って今みたいな馬鹿な事をしているのか、弟は理由を言うのが道理だし、君には聞き出す権利がある。だって家族なんだから」

 

「聞き出して、それでどうすれば良い?」

 

「そこから先はランスロット次第だ。尊重してやるか、無理矢理引き戻すか。家族で、育ての親で、姉なんだったら、遠慮はするべきじゃ無い。不義理なのはあっち側だ」

 

そう、ランスロットの思いを知った以上、トールの思考はランスロット贔屓だ。ランスロット視点に立てば、パーシヴァルをトールは許す事ができない。

 

「……でも」

 

だが、ランスロットには迷いがある。彼女は、パーシヴァルの家族でいる事に対する自信が無いのだろう。

姉として、家族として、彼の意思を無理矢理聞き出すなど。そんな権利など無いと思っているのだろう。

 

「今、こうして、お互い生きている内に決着をつけるべきだ」

 

だから、これは、彼女のための、自分なりのちょっとした発破だ。

 

「でないと、彼が殺された時、君の中でいつまでも後悔が残る事になる」

 

「――っ」

 

ランスロットは息を呑む。

言葉の意味を理解できたはずだ。

 

「それは、つまり――」

 

「俺は女王のイデオロギーに賛同しているし、妖精達が何を言おうが、ウッドワスがこの國に最も必要な存在であったという意見を変えるつもりは無い」

 

ランスロットの言葉を遮る。

これは本心だ。反乱軍が愚かな連中であると言う意見に変わりはない。

妖精國の全てが女王を敵視し、ウッドワスを軽んじているとしても、彼が信じた女王を信じているし、その実績は信頼に足るものだ。

妖精達の言う、國のおもちゃ扱いという愚行とやらを考慮にいれたとしてもおつりがくる。

 

「君の弟は反乱軍を組織した、妖精と人間の共存とかのたまっているが、やってる事は、予言の子に乗っかって、女王を殺すの一点張り……」

 

妖精と人間の共存。聞こえは良いが、その道は険しい。この國においては人間は牛や豚。虫や花ようなものだ。

人間の立場で考えた時、牛や豚に知能がついたとして、その家畜関係をいきなり解消が出来るのか?道端のアリに気をつけながら歩くようになるのか?景観のために花を摘んで、好き勝手に弄るのを止めるようになるのか?難しい問題になるだろう。

 

それを目指しているのが反乱軍。そして、その方法は予言に従い女王を殺すのみ。話にならない。

 

 

「その予言の子達も、各地の鐘を鳴らし回ってるだけ。予言なんていうくだらないものに乗っかってるだけ。今後の妖精國をどうしていくか示しているわけでも無い」

 

予言の内容も結局のところ曖昧だ。真の王が現れるというが、真の王とは何だ?

聞こえは良いが、実際どういう統治をおこなうのかすらわからない。

2000年、妖精國を守り続けているモルガンの方がよほどマシだ。実績からして比べるまでもない。

現状の暴挙やトリスタンを差し引いても、その意見に違いは無い。

 

「俺は、予言の子を正しいとはカケラも思ってない。君の弟や予言の子を殺す事に戸惑いは無い」

 

 

「……」

 

 

「宣言しておくよランスロット。君の弟が、反乱を止めるって言うなら、俺も手出しはしない。我慢するよ。相当な努力が必要だけど……」

 

自分の言葉は全て本心。

反乱軍は敵でしかない。

この國を想えば、さっさと消えてもらうのが吉だ。

 

「でも、もし、このまま、君の言うつまらない反乱軍を彼が続けていくと言うのなら、俺は遠慮しない。俺の個人的な復讐だが、復讐は何も生まないだとか言う説得は通じない。何せ、相手は反乱を企て、國を滅ぼそうとする俗物だ。國を守ると言う大義と、友人を殺された復讐心。俺はどちらも兼ね備えている」

 

だが、正直なところ――

 

「妖精騎士と反乱軍という立場のままで、君の弟をいつまでも俺から守れると思うか?」

 

本当はもう、復讐をする気は失せていた。

 

 

だから、これはランスロットに発破をかけるための言葉に過ぎない。

パーシヴァルが何を思っているかなどはどうでも良い。どんな理由があって裏切ったかなどどうでも良い。

何故、ランスロットに何も告げずに、彼女の元を去ったのか等もどうでも良い。

 

今この瞬間、悩みを抱えている彼女を、解放してやりたい。

 

そう思っていた

 

 

その会話を最後に、ランスロットとの妖精舞踏会での会話は終わった。

最期、ランスロットの。

 

「——それでも、君とは戦いたくない」

 

その言葉に、嬉しさと戸惑いを感じながら、予言の子の集団へと近づいていくランスロットを見送っていく。

 

そう、復讐はもう良い。

復讐に暴走した結果。無関係では無いが、決して自分が傷つけてはいけなかった妖精の命を奪うところだった。

何も考えない衝動にまかせ、一歩目を間違えた。その時点で自分は負けたのだ。

だからもう、復讐は止めだ。

 

今は、ウッドワスが守って来たこの國を、女王を彼の代わりに守っていこう。

ウッドワスが償いたかった、その罪に、少しでも報いるために、ムリアンも守ろう。

妖精國の嫌われ者であるトリスタン。残虐だが、素直で、本当は良い子な彼女を守っていこう。

 

 

そう、誓おうと、思っていた。それは新たな決意だった。

負の感情で戦うのはもう止めよう。そう思っていた。

 

 

 

『このブリテンは攻略対象ではないけれど、最終的には『切除』しなければならない異聞帯だ』

 

 

『異聞帯と汎人類史じゃどちらかしか生き残れない生存競争の対象ではあるけれど――』

 

 

『移住はできるよ、バーゲスト』

 

 

そう思っていたのにーー

 

 

再び、嫌悪感と、憎悪の炎が、燃え上がる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あああああ、ごめんなさいごめんなさい」

 

 

少女は苦悩する。

 

 

「わたしはしたくなかったの……」

 

 

「大嫌いだったけど、あなたは好きだったみたいだから、本当はしたくなかったの……」

 

 

自身の犯した罪によって、1人の人間があれ程憎悪を撒き散らしていた事に苦悩する。

 

 

「あなたの靴も作ったの。喜んでもらいたくて、褒めてもらいたくて」

 

 

少女は、記憶の中のその相手に、脈絡なしに話かける。

 

「謝らなきゃ、ちゃんと会って謝らなきゃ……!」

 

彼女が、その記憶に蓋をするまで、その苦悩は続いていた。

 

 

 

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