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――サーヴァントとマスターは一心同体。騙されることも、裏切られることも無い。
――ねえ! ねえねえ〇〇〇! 私、アナタのサーヴァントになれるかしら!
――妖精の私でも、嫌われ者の私でも、運命の相手に出会えるかしら!
***
充てがわれた仕事は会場の警護だった。
ムリアンは、これから行われるイベントは、今後の妖精國の運命が決まると言っていた。
会場の様子を見るに、十中八九、戦闘の類だろう。
では、誰が?
「って、わかりきった事じゃないか……」
トールは一人呟く。
今日の妖精舞踏会、最後に出会った女王の身内2人の会話がその答えだろう。
成る程、女王の娘と予言の子の戦い。
女王との戦いの前哨戦としてはこれ以上とないマッチングだ。
その予想通り、入場口から出てきたのは、女王の夫、ベリル・ガットと、妖精騎士トリスタン。
ベリル・ガットは相変わらず飄々とした態度だ。
トリスタンもその顔は自信に満ち溢れている。
戦いを見世物にする事自体、正直反対だが、トリスタン自身むしろ楽しんでいる節がある。
ならば、何も言うことはない。
暫く様子を見ていると、予言の子一同がやって来た。
彼等は大層戸惑った様子だ。ドアを開けた瞬間はまるで盗みを働こうとしているコソ泥のようだった。
この展開は予想外だったようだ。
司会の煽りに煽った進行に会場は熱狂状態。
やれ、どちらの陣営に着くべきかだとか、今後の身の振り方についての話が多いが、
あの露出の高い、恰好のトリスタンを見て、戦闘妖精と讃える者もいる。
「なんだ。意外と嫌われてるだけってわけでも無いじゃないか……」
ほんの少し、救われた気になっていると、予言の子一同が現れた。
何というか、戦士の入場というよりは、空き巣に入ったコソ泥の様相を呈しているが。
舞踏上の会話は会場の熱気によって聞き取りづらいが、音波を拾えば、聞き取る事は可能だ。
やれサーヴァントだやれマスターだのなんだのと言う会話が漏れ聞こえる。
直訳するならそう言う意味だが、どうやら、一緒に出て来たベリルと異世界の男性は、後に控えるサポート要因らしい。
「男2人が奴隷の女2人を戦わせるってか。酷いもんだ」
マスターとサーヴァントの常識を知るよしも無いトールは、奴隷扱いされているトリスタンに憤りを覚えるが、
あの場にいる全員が納得してるのならそれで良いのだろうと自身を抑える。
様子を見ているウチに、予言の子がいなくなったかと思えば、お色直しをして出てきたりなど、ちょっとしたイベントを挟んだ所で、戦いは始まった。
実力は、互角に見える。
この世界の魔術とやらだけで言えば、予言の子の方が上手に感じるが、トリスタンの魔術と妖精としての能力が戦闘を互角のラインに引き上げる。
だが、ここに来ての問題は――
「あのヤロウ……」
後ろで、のうのうと控える男2人だ。
救世主ヅラのあの男。
ヤツは、どうにかして、金髪奴隷の少女をサポートしようという努力が見える。
奴隷とは言うが、愛はあるという事だろうか。
問題は、ベリル・ガット。
あの男、全くやる気が見られない。
一応サポートはしているようだが、チャチャを入れるタイミングも、行使する術も、形だけのもの。
実力で言えば、あの青年に比べれば、圧倒的だろうに。サポートが苦手だとか、相性の問題だとか言うレベルではない。
むしろ、邪魔すらしているようにも感じるくらいだ。
奴隷2人の実力は拮抗している。だからこそ、後ろ2人のサポートが、圧倒的な差となって現れる。
戸惑うトリスタンの表情が見える。信じられないと言う顔だ。
彼女は、ベリルを信頼し切っている。だがそのベリルが、役立たないどころか下手をすると邪魔にしかなっていない。
だが、そんな事どこ吹く風で、ベリルの余裕そうな表情に苛立ちを募らせる。
会場席の最後尾。席に他の客が転落しないように備えられた手すりがメキメキと音を立てる。
今すぐにでも飛び込みたい。
だが、あくまでこれは優劣を競うだけの戦い。
命を奪い合うものではない。
ムリアンの顔を立てる必要もある。
せめて、せめて終わった直後にトリスタンを慰めるぐらいの事はしてやらねばと、思っていたところで。
――決着はついた。
気付けば、トリスタンは跪いていた。
怒りのあまり戦闘時の会話が聞こえていなかったが、どうやら妖精騎士の着名と言う名の力を剥がされたらしい。
「ぬけ……ぬけて、ぃく……待って……止めて……お母様に、また叱られる……!」
ニュー・ダーリントンのあの時以上の絶望的な表情。
見ていられない。
――ダメだ、我慢だ。我慢するんだ。
自身を押さえつける。彼女は勝負に負けただけ。
ベリルという足手纏いはあったが、彼女は立派に戦った。
傍らにいるベリルを見ていれば、参った参ったと余裕そうな表情。
さらに、怒りが増した。
だが抑えなければならない。
こんな所で乱入しては、ムリアンもそうだが、トリスタンの名誉もある意味傷つけかねない。
そう決意した、その時……
「ああ! 知っている、知っているぞ! 間違いない! アイツだ!」
妖精の声が児玉する。
「100年前にグレイマルキンの館で見たコトがある!」
その声は、ガヤガヤとした会場の中で――
「本当の名はバーヴァン・シー! ダーリントンの端女、吸血鬼バーヴァン・シーだ!!」
トールの耳に、やけに響いていた――
「バーヴァン・シー?」
1人呟く。
その間にも、会場中に彼女を蔑む声が響く。
やれドブ川の匂いだの。
人間に体を売ってきただの、ダーリントンが滅びたのは、モルガンとバーヴァンシーの仕業だの、気に入らない声がいくつも響く。
予言の子と、カルデアの青年が、この気分の悪い光景は心外だと、あれだけ戦う前に煽っておきながら、救世主と偽る侵略者でありながら、自分たちは正義を貫く善人だとばかりに、素直に喜べないという顔をしている。
既に、怒りの限界は突破していた。
今すぐにでも、この場にいる全員を八つ裂きにしてやりたいと思った。
だが、それよりもずっと、重要な事があった。
バーヴァン・シー
何処かで聞いたその名前。
『改めてありがとうトール様。○○○○様、わたしたちを助けてくれてありがとう。どうか、おふたりに幸せが訪れるよう――』
その名前を頭の中で反芻してみれば、朧げながらも、思い浮かぶ情景があった――
――ああ、何故こんな大事な事を、思い出せなかったのだろうか。
手を握る。鍛えた力は揮えないというムリアンの結界。
妖精領域だとか言う、特殊な能力。
漠然とそういう能力なのかと、しぶしぶ納得していたその力。
だが、今のトールは怒りと記憶の混濁によって、そんな力、原理も根拠も曖昧すぎて、
理解できないものは、トールにとっては、存在しないものと同じ。
「悪い、ムリアン」
一人呟くのは謝罪の言葉。
ムリアンに届かないその言葉は、今までよりも、余程親愛に満ちていた。
気付けば、2階観客席の、席同士の間の階段を降り、武道場に飛び降りないよう設置された手すりと、それに繋がるように展開されている結界を、
視覚的には何も変わらない。
だが、確かにガラスの割れるような音がした。
その異常。理解したのは一部の観客にいる予言の子一同のみ。
そんな現象もどこ吹く風で、トールはそのまま舞踏上へ、飛び降りた。
トールはあえて、衝撃を吸収しない三点着地で、1階に降りる。合理性のない無駄な所作。
異世界の仲間達が偶にやる謎の所作。
どこかのゴシップ記事だったろうか。ヒーローとは言えやってる事は戦いだ。巻き込み被害もあれば、悪党、犯罪者の類とは言え、場合によっては殺人になってしまう事もある。当然ながら世界中の誰もが認めるわけじゃない。
そんな輩が、見られている事を意識しているとは何事だと、揶揄する記事があったのを覚えている。
何の意味があるのかと、様々なお遊び感覚の考察が広まっていた。
トールも気になり、その理由を聞いたことがある。
それは、一つの決意表明だと、とある者が言った。
そして、決意の内容も様々だと。
それから、トールも同様に真似をするようになった。
これは、トールの決意表明。
正義でもない、悪でもない。
コレと決めた誰かの為に戦う事を自身の中で決定づけた。その為の行為。
正義だろうが悪だろうが、その対象の為に、戦うと決めた時の、誓いのポーズ。
ガヤガヤと客席が騒がしい。
「やめて、やめろ……! お母様を悪く言うな、お母様は正しいんだ!」
「ああ、救世主なんかよりもよっぽど正しいよ」
騒ぎに気付かず、目を見開いたまま叫ぶ彼女に、上着をかける。
「え――?」
予想外の声だったのか、絶望の表情のままトールを見る。その表情に心苦しさを覚えながら、決して態度には出さないように心がける。
「やっぱり、その服、似合うけど、ちょっと刺激的すぎるな」
「ア――おまえ、トール?」
「ああ、何気に名前を呼んでくれたの、初めてじゃないか?」
言いながら、トールは、バーヴァン・シーの頭を撫でる。
「おい、なんだ! 人間が出てきたぞ!」
突然の乱入者に、バーヴァン・シーを卑しめる声は殆ど無くなった。
何事かとガヤガヤと騒ぎ立てる声。
ある意味で、トールの目的は達成出来た。
そんな騒ぎも無視して、トールはバーヴァン・シーの頭を撫で続ける。
「こんな大事な子を忘れてたなんて……」
「え――?」
「本当の名前、バーヴァン・シーだったんだな。どうりで、ずっと懐かしい感じがしてたんだと思ってたんだ」
そう言った瞬間、バーヴァン・シーが頭を抑える。
「あ、ああ、待って、何か――頭が――」
頭を抑え、何事かとバーヴァン・シーがつぶやいたかと思えば――
「オイオイ、誰かと思えばアンタかい、トールの旦那!」
事態を見守っていたベリルがヘラヘラと近寄ってきた。
「こんな珍客を乱入させるのを許すなんて、ムリアンはよほどアンタにご執心みたいだな!」
バーヴァン・シーの頭を撫でるトールに、ベリルは、ニヤリと笑う。
(へぇ、ここ最近お嬢様の機嫌が良かったのはそう言う事かい? 全く、可愛いもんだ)
「今の戦い、全くやる気が無かったな。今後の妖精國を決める戦い。なんだろ? 女王の夫がその態度はどう言う事だ?」
何事かを尋ねようとしたベリルだったが、トールの形相に、今後の展開を予想する。
成る程、突然降りてきたのはそう言う理由かと、1人納得する。
バレバレだ。拳を握りすぎて血が出ている。
俺を殴ってやりたいと言う感情が透けている。
後先考えず、感情のまま動くなど、そのあたりこの男の程度が知れている。
(とはいえ、普通の人間ってわけでもなさそうだ。
ほくそ笑みながら、トールに見えない様に、体の一部を変化させながらまずは言葉で返してやる。
終わりと同時に隠した爪で引き裂いてやろう。
何せ今の自分は、妖精國最強の牙の氏族の体なのだ。
相手はこちらを殴り飛ば好き満々で、自分が反撃されることなど一切考えていないように見える。
言うなれば無防備だ。自分がやられる側というのを理解していない愚か者。
会話が終わると同時に、切り裂いてやろうかと、体を変化させる準備に入る。
「誤解すんなって、俺はマスター戦は初めてなんだぜ? 相手は百戦錬磨の救世主様だ。元から叶うはずな――」
途端、何かが砕ける音がした。
「グーーっギィ?」
(殴られた――?)
理解したのは、吹き飛ばされてから、壁に激突するまでの数瞬の間。
顔面が砕けている。
その脳内には、確かにトールが殴る動作の映像が流れてきた。完全なる不意打ちだ。
油断していたのは認めよう。
トールの、殴る気満々のその態度に、ナメていたのは確かだ。
トールの動作の速さに、幻覚でも見ていたのか、それとも脳の理解が追いつかなかったのか、様々な理由が走馬灯の様に、ゆっくりと脳内を駆け巡っている内に――
(変化しておいて良かったぜ。人間のままだったら死んでたかもなぁ?)
元より、この程度のトラブルで、心折れる男でも無い。
今のは油断が招いた失態だ。借りは返すと、内心で思いながら、背中への衝撃を感じた瞬間、ベリル・ガットはその意識を閉じた。
「やばい、殺気が露骨すぎて、思わず強めに殴っちまった……生きてるか?」
焦りながらも、至極冷静に、トールはトントンと耳をにつけている特殊な端末を叩き、人知れずスキャンを開始。息はしている。想像以上に頑丈らしい。
「貴方は……?」
その間に横合いから声がかかる。
救世主と称される侵略者。
トールにとって最も憎き敵。
こちらを警戒の眼差しで見る青年。
隣の金髪の少女奴隷。予言の子は何故かは分からないが、顔も青ざめ、気絶寸前と言ったところ。
隣の青年は気持ちだけでも負けないと、精一杯の睨みを効かせる表情を作っている。
勇気だとかそういう言葉で表せる。善人が良くやる自分は正しい事をしていると信じ切っているその表情。
悪だと、間違いだと、そう揶揄されて滅ぼされる側からしたらこれ以上ない程にイラつく顔だ。
トールが相手してきた数々のヴィラン達もこう言う感情を抱いていたのだろうか。1人思いながらも、その青年の問いに、トールは応える気は一切無かった。
代わりに、これ以上のない悪意で返す。
少しでも奴らの旅路に、引っかかるよう、その隙が汎人類史の破滅につながるよう願いながら。
「自分たちは、善人ですってそのツラ。腹が立つな。何もかも優遇された救世主の正義の旅はさぞ気持ち良いんだろうなァ」
「……!俺たちはそんな……!」
「別にどうでも良いんだ。お前らが自分たちをどう思っていようが、どんなご高説を垂れようが、俺にとってはこの妖精國で一番醜い存在で、一番の悪党で、救世主ヅラする最低最悪なノア気取りの侵略者だって事には変わりない」
***
「……!?」
ノアという単語に青年は反応せざるを得ない。
自分たちを指してノアと呼ぶ理由など、考えられるのは一つのみだ。
横のアルトリアを見れば、震えている。
目の前の彼に対してなのは明白だ。
青年も、気持ちはわからなくは無かった。
彼の目は、彼の言葉は、彼の態度は、言葉以上の軽蔑が込められている。
この旅を振り返ってみれば、本気で自分たちを殺そうとしたのはウッドワスのみ。
そのウッドワスでさえ自分たちを、悪ではなく、あくまでモルガンの敵であるという認識で見ていた。
だが彼は違う。間違いなく。こちらを怨敵として認識している。
それも、生存競争による不足の事態故の敵ではなく、そんなものなど言い訳にもならないと。
こちらを、完全なる悪としての認識。
それは、オリュンポスの時の様に、世界を滅ぼす悪魔だと揶揄された。あの世界の住人以上のモノ。
この旅において、妖精國のほぼ全ての住民が、モルガンを悪だと据えた上で、救世主だと讃えてくれていた。
この世界の全員がモルガンを倒すと言う目的のために協力してくれている。
正直なところ、オリュンポスに比べて、気が楽だったと言うのは否定できない。
この世界の妖精を滅ぼす女王を救世主として打ち倒す。そして、数に限りはあるものの、この世界の住民も助けることができる。
それが、自身の世界の平和にも繋がる。
これまでで一番、異聞帯を救う事のできる手段を自分達は持ち合わせている。
だが、彼のノアという単語を聞いて、あの凄まじい悪意の籠った眼に充てられて、どこか、引っかかりを覚えてしまう。
だって、世界を滅ぼす自分達が、500人だけ剪定して生かすなど、それはまるで――あの時の――
ハッと、埋没していた思考から浮き上がる。
隣のアルトリアは相変わらず青ざめたまま、彼を見つめている。
思考の内容に比べれば、ほんの一瞬だったらしい。
彼からの、身の竦む視線は無くなっていた。
彼は踵を返し、妖精騎士トリスタン、もとい、上級妖精達が揶揄する吸血鬼バーヴァン・シーの元へ近づいていく。
跪く彼女を介抱する彼の姿は、背中からも感じるほどに優しさと気づかいに溢れており、まるで、彼女を撃退した自分達が、本当の悪のように思えてくる程で――
どうすべきか、一瞬悩んだところで、邪念が伝わったのだろうか。
彼が一度またこちらへ向いた。
言葉は無い。しかし、こちらを警戒するように向けた視線はやはり、気を抜けば、膝が崩れてしまいそうなほどの悪意と殺意が込められていた。
――動いた瞬間、惨たらしく殺す。
そういう視線が込められている。
そして、間違いなく彼ならばそれが出来ると言う確信がある。
動けない、動くわけにもいかない。
『危険をかぎ分ける
そう口に出したベリルガットは、バラバラになっていないのが不思議な程の威力で殴り飛ばされ、今はステージの壁の破片に潰されている状態だった。
隣で震えるアルトリアには言葉で慰めるぐらいのことしか、青年、藤丸立香にはできなかった。
***
「大丈夫か?」
バーヴァン・シーに未だ落ち着いた様子は無く。
近づいたトールにもたれ掛かる。
「ダメ、だめよ、ダメ…!私、お母様に怒られちゃう」
「大丈夫だ……とりあえず落ち着け……俺も一緒に怒られてやるから」
着名とやらが剥がれたせいか、彼女はまったく落ち着かない。
精一杯の慰めをかける。まずは落ち着かせなければならない。
一言程度では効果は薄く。情緒が不安定のまま、彼女はトールに縋り付く。
「違うのそれだけじゃ無いの! だって、だって……!」
バーヴァン・シーの眼から突然涙が溢れ出す。
「私なの、私が、貴方に謝らないといけないの!」
もはや文章が成り立っていない。
言葉を紡げば、彼女は自分に謝ろうとしているらしい。
心当たりが全くないが、コレほどまでにさせているのは自分のせいかと、心苦しくなっていく。
「いいから、落ち着いてくれ……俺になんか謝らなくて良いから……気にしなくて良い」
「ダメよ、ダメ! 言わなくちゃ!」
「大丈夫だから。おちつ――」
「ウッドワスを殺したのは私なの!!」
――一瞬、思考が止まってしまった。
「私が、ロンディニウムから逃げたアイツを殺したの、アイツの、内臓を奪って!私が、わたし、が……」
とめどなく、バーヴァン・シーの懺悔が流れ出す。
「大っ嫌い!私をずっとずっとバカにしていたウッドワスなんて! 私をいじめていた妖精なんて、みんなみんな大っ嫌い!!」
大粒の涙を流しながら、堰を切ったように、言葉が溢れ出す。
「でも、貴方がウッドワスを好きだっていうのは知ってたの。知ってたのに……!だから、だから、謝らないといけないの!!」
ああ、本当に……
「ごめんなさい! ごめんなさい!!」
――ままならないもんだな。
ウッドワスは大切だ。大切だった。
ムリアンを殺そうとしたとき。
その動機がウッドワスへの復讐だと知って、一度心が折れた。
それでも、諦めきれない自分がいた。その後、ランスロットとの会話の後に、また一度、復讐を諦めようと心に決めた。
だが、それも、結局は、どこかで、諦めきれていなかった。
あくまでムリアンとコヤンスカヤを対象外にするだけ、この妖精國を乱した存在として、大儀と共に、ウッドワスを殺した奴らを殺す。
そういう機会をうかがっていたのも正直な所だ。
だって、大切な友人だったのだ。
故郷を滅ぼし、新たな居場所も捨て、この妖精國に来た。
その理由もわからないまま、ここに来た。
全てを捨てて妖精國に来たのに、何が大切だったかすら覚えていないのは苦しかった。
だが、そんな中、やっと出来た。大切なモノ。大切な友人だったのだ。
復讐を諦める等、ウッドワスへの裏切りだと、裏切るわけにはいかないと、そう思っていた。
だが、もう……今度こそ本当に――
――すまない、ウッドワス。
それは、本当の意味での決意の謝罪だった。
トールは、大粒の涙を流すバーヴァン・シーを優しく抱きしめた。
「良いんだ、良いから。大丈夫だから」
許さないわけがない。
だって彼女はずっと、虐げられてきたのだ。
何度も何度も傷つけられて、何度も何度も、誰かの為に自分の身体を差し出して。
何故今、彼女が女王の娘なのかはわからない。
何故彼女が、こんなにも残虐になったのかはわからない。
だが、彼女を間違っているなどと、口が裂けても言えやしない。
幾度も幾度も殺されてきた仕返しを、復讐を、間違っているなどと、
そんな事を言うヤツがいたら殺してやろう。それ程の思い。
だから、本当に自分の復讐はこれで終わり。
少しでも、自分の気持ちが伝わるように。
怒りなど無いと伝わるように。
優しく抱きしめ、背中を撫でる。
ウッドワスと同じくらい大切な、妖精騎士トリスタン。
本当の名前はバーヴァン・シー。
「落ち着ついてくれ、バーヴァン・シー。さっきの話、覚えてるか?」
「あ、ぅ――さっきの?」
多少は落ち着いたのを見計らい、会話を投げかける。
「ほら、キャメロットの部屋に匿う代わりに俺を奴隷にするって話」
「……」
「あれ、今で良いか?」
「いま……?」
彼女は今、女王以外に味方はいない。
「あぁ、そうだよ」
だから彼女には安心させるための、つながりが必要だ。
「今から俺は、君の
「さーゔぁんと……?」
彼女の為ならば、奴隷になっても構わない。
まったくもって問題はない。トリスタンがバーヴァン・シーと知る前からそう思っていたのだから。
「ああ、そうだよ。約束する。今から、君は、俺のマスターだ」
これからはまた彼女と新しい関係を築いていく。何が起ころうとも、彼女を守る。
だって自分は、
MARVEL作品をどれくらい触れていますか
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MCU含め、他媒体の作品も嗜んでいる
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MCUの映画は全て視聴済み
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MCUの映画を1本以上観た事がある
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一度も触れた事がない