世界を敵に回しても   作:ぷに丸4620

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感無量でございます。本当にありがとうございます。




暗躍

 

言うなれば庭造りと言えば良いだろうか。

 

彼女の、1000年かけた目的を果たす為のその仕事。

 

コヤンスカヤは、日々仕事に勤しむ彼女を見ながら、その技術に感嘆の息をもらしながらも、内心では心苦しい思いを抱いていた。

 

彼女は、賢く、正しい生き物で、さらにこちらに多大な恩恵を与えてくれている。

 

だが、人間のような愚行を犯されては、商売相手にはなり得ない。

 

友人として迎えるのも正直なところ憚られる。

 

だからこそ、聡明な彼女が、思いとどまり、愚行を止めてくれる事を日々、期待していた。

 

そんな日々の中、コヤンスカヤは、自身の目的の為、一度彼女の元を離れたのだが。

 

戻ってみれば、とあるイベントが起こり。そのおかげか今、期待通りの流れになっていた。

 

ただし、あまりにも予想外の形である。

 

ライフワークの庭造りは中断し、今、彼女は、グロスターの領主、ムリアンは。

 

 

 

 

「むむ。むむむむむむ」

 

 

 

 

一日中、虚空に向けて円を描いていた。

 

正直な所困惑しかなかった。

 

原因は明らかにあの男だ。

 

 

 

妖精歴時代のムリアンにとっての恩人。

 

そして異世界からの来訪者。

 

その異世界とは、恐らくコヤンスカヤの知る汎人類史ではなく、かと言って異聞帯でも無い。

もっと別の世界か、あるいは異星の神のように、別の星から来た存在。

 

コヤンスカヤはそう予測している。

 

彼が、ウッドワスの霊基を手に入れたベリルに襲われていた時。一方的な救助活動(有料)を施した。

 

その礼に受け取った、サイズを変えられるジェット機。

 

あれは、汎人類史の科学力では決して作れない。

 

地球には存在しないであろう材質のパーツも見受けられる。

 

あの大小サイズを変えられる理屈も全く未知なるもの。

 

かと言って神秘の類でも無い。

 

異聞帯における、イフによって生まれた宇宙文明かとも思ったが、それを以てしても、ありえない技術だ。あまりにも違いすぎる。

 

兎も角、良い拾い物をしたと喜んではいたのだが。

 

『登録リストに存在しません。起動できません』

 

「はあ!?」

 

『防犯シークエンスに移行。緊急処理を実行致します』

 

「ちょっと!お待ちなさいな!私、あのお方から正式に頂いた筈ですわよ!」

 

『確認できません。自爆シークエンスを実行。3、2、1――』

 

「あの男――!」

 

 

してやられたと、憤慨した。

 

そもそも期待すらしていなかったので、懐的には痛くは無いが、上げて落とされた感じだった。若干の悔しさが残る分、マイナスだ。

 

あわや自爆か? などと焦らされたが結局元のサイズに縮んだだけ。

からかわれたらしい。

 

今は、なんて事のないキーホルダーでしかない。

うんともすんとも言わなくなったキーホルダー。

 

コヤンスカヤのツテには、このキーホルダーが実は凄まじい技術の塊だとわかるような者はいない。

 

そんなわけで、コヤンスカヤからしたら、強かで、腹の立つ謎の男。と言ったところだが、そんな彼も、ムリアンにとっては、ある種大切な存在であるらしい。

 

彼を助ける気まぐれを起こした理由。

 

それは、友人であるムリアンが彼と抱き合っていたことに起因する。

 

それを目撃して以来、ムリアンから毒気が抜けた。

聡明でありながら、復讐の炎を消す事ができない彼女の情念は今は隠れている。

 

だが、代わりと言っては何だが、奇行が目立つようになっていた。

 

それが、アレである。

 

執務の傍ら行う奇行。

二つの輪が繋がったリングを左手人差し指と中指に通し、右手で虚空に円を描く。

 

それを暇さえあればずっとぐるぐる。

 

彼女曰く、魔術の練習だとか。

 

魔術。思い描くだけで神秘を起こす妖精には必要のない技術。この妖精國では女王モルガンと予言の子しか持ち合わせていない。

 

それを彼女は行おうと言うのだが、コヤンスカヤとて魔術の仕組みは知っている。

 

アレをいくらやったところで、全くもって無駄なことは、自明の理。

 

ムリアンには魔術回路がない。魔術炉心のようなものも存在しない。そもそも必要がない。

 

回路を通し、世界と繋がらなければ、魔術は発動しない。

 

妖精として持ち合わせている魔力すら使用している様子はない。

 

ただ、魔力も何もない指輪を左手にはめて、右手で虚空に円を描くだけ。

 

教えたのは例の男らしいが。

 

おそらく魔術という名の別の何かなのだろうか。

 

彼のおかげで、ある種、ムリアンが愚かな行動に出る確率は減ったわけだが、

暇さえあれば、こんな事をする彼女が、騙されているように見えて不憫でならない。

 

何せ、あの男は詐欺師だ。

 

いい加減止めるべきかと思い、声を掛けようとしたその瞬間――

 

 

 

ムリアンの目の前、何もない空間から、火の粉のようなものが噴き出てきた。

 

 

「――」

 

コヤンスカヤとて、道の技術に畏怖を抱く事もある。

 

その火の粉は、線となり、円を描いていく。

その線が完全な円形になったと思った瞬間。

 

その円の中に、自分がいた。

 

振り返れば、そこには同じような光の輪。

 

 

「出来ました! 流石は私です! 異世界とは言え、所詮人間の行使する魔術! この私に出来ないはずはありません!」

 

 

フンスと、自慢げに大層な喜びようを見せるムリアンに、動揺を隠しながらコヤンスカヤも声をかける。

 

「おめでとうございます。ムリアン様。これは――空間を繋げる魔術。と言う事でよろしいので?」

 

「ええ、その通りですよレディ・フォックス! あのお方の学ぶ魔術の中では基礎の基礎なのだとか」

 

「コレが、基礎――?」

 

一体どういう魔術集団なのか。

 

こんな、神代ですらあったかどうか疑わしい、この謎の技術を、異世界の魔術師とやらは基礎として学ぶのか……

 

そもそもそれをムリアンが使えるようになるのはどう言う理屈なのか。

 

神秘と科学は相反する。あれだけの技術が発展したジェット機を持ち合わせながら、神代クラスの魔術を基礎とする集団。異世界においては本当に世界のルールすら違うらしい。

 

(これはこれは、カルデアの皆様も、敗北は必至かもしれませんわねぇ……)

 

ムリアンを味方につけ、どうやら彼は女王派。

 

これだけ自由に転移が使えるのならば、恐らく持ち合わせているであろう爆弾の一つでも、次元の穴からポンと落とせばそれでお終いだ。

 

彼に、それこそ抑止力のように、なんらかの理由で、カルデアを害せないような理由がなければの話ではあるが。

 

「ロットさんに報告をしなくては。ふふ、聡明な私なら絶対に出来るとは仰ってくれしたが、まさかこんなに早いとは思ってもいなかったでしょう……!」

 

羽がパタパタ。可愛らしく小刻みに風を起こす。

 

その姿は見た目にも愛らしい。

 

まるで褒めてもらうのを期待している少女のよう。

 

ムリアンは再び、自慢げな態度を見せた後。

先程よりもよりスムーズに、次元の扉を開いた。

 

その先は恐らく、彼の居るどこか。

コヤンスカヤもキーホルダーについて、文句の一つでも言ってやろうと、ご相反に預かろうとムリアンに続く。

 

 

(この輪っか。仮に通ってる途中で閉じた時、どうなるのでしょう……)

 

 

次元の裂け目に切り裂かれたりするのだろうか……

嫌な想像をしながらおっかなびっくり輪を通る。

 

輪っかを注視しながら通った為か、先を行くムリアンの様子に気づくのに、ワンテンポ遅れてしまう。

 

背中からも分かるほどに、様子がおかしかった。

 

「ムリアン様?」

 

ムリアンの表情は驚愕に染まっていた。

 

「なんで、どうして――?」

 

 

コヤンスカヤの呼びかけにも答えず、ムリアンは1人呟く。

 

ムリアンの視線の先、そちらに向ければ。

 

 

 

 

そこは、更地が広がっているだけだった。

 

 

コヤンスカヤの五感が悲鳴を上げる。

 

 

あるいは隕石が墜落した理不尽にあったかのような。

 

あるいは人類の愚かさによって、成し遂げられたかのような。

 

凄まじい破壊によって、生み出された惨劇の後だった。

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ロット。

 

汎人類史でのモルガンの夫だとか言う人。

 

今の妖精國の女王モルガンの夫であるベリル・ガットを殴り飛ばし、あの妖精騎士トリスタンを守るために私達と対峙した。

 

私達はこの妖精國で一番醜悪だと、そう、言葉を投げ捨てた。

 

 

そんな彼は、妖精騎士ランスロットと友人。

トールという人と同一人物であるらしい。

 

モルガンこそ正しいブリテンの王だと豪語し、私達を、あんなに人の良いパーシヴァル君でさえ、この妖精國で1番の悪党だと本気で思っている。

この妖精國を滅ぼす悪魔だと。

そして、あの妖精騎士ランスロットをして、戦う気は起きないと思わせるほどの、影響力を持っている。

 

「いやあ、僕はあくまで話をしようと会いに行っただけだったんだけどね。問答無用で襲い掛かられてしまったよ」

 

――嘘

 

オベロンのその嘘を、誰一人として信用していなかった。

 

ロットの登場はあまりにも予想外だったのだろうか、心なしか、彼の嘘の質が落ちている。

 

その空気を感じたのか、オベロンはため息をついた。

 

「ああ、そうだよ、今のは大嘘さ。僕は彼の暗殺を企んだ。色々な伝手で彼の居場所を掴んだからね。彼の力は厄介だし、君達にもいつ害が及ぶかわからない。未知の存在にいつ襲われるかもわからないまま、旅をする君達の負担を軽くしたかった」

 

オベロンのその言葉に嘘は無い。

 

「卑怯という言葉は甘んじて受け止めるよ。でもやっておいて正解だったとあえて言わせてもらう。彼、大量破壊兵器を所持していたからね」

 

その言葉に再び、驚愕の声が上がる。

 

「恐らくだけど、モルガンが特別に許可を出して制約を解いていたんだろう。危なかったよ。彼の持つ兵器が一つでもあれば、ロンディニウムは吹き飛んで。更地になっていただろうさ」

 

彼の言葉に嘘は無い。その場にいる皆が青ざめる。もし、万が一、彼が行動を起こしていたら、と思うと怖気が走る。

 

「不意打ちは成功。しかし危なかった。最後に彼、自分ごと僕を消し飛ばそうとミサイルを起動してね。霊体化できる体で助かったよ」

 

ミサイル!! そう問うたのは誰だったか。

 

「拠点に色々置いてあったみたいだ。全部吹き飛んでしまったけど。まあ、あれで生き残るって事は出来ないだろうさ」

 

その事実に誰もオベロンを責めようと言う者はいなかった。

事実彼がいなければ、下手をすれば死んでいたのは自分達だ。

 

「まあ、卑怯な手段ではあったけど、僕が勝手にやった事だから君たちの名誉に傷はつかない。何せ海岸沿いの廃村だったし、誰も気にしないだろう。これで、この妖精國の悪が一つ滅びた。妖精の大量殺戮を目論んだ悪しき人間を、妖精國を救う救世主一同はまた一つ悪を打倒したってね」

 

そうなんだ。死んだんだ。あの人……

 

正直な所、ホッとしていた。

 

海岸沿いの廃村という単語も気にかかったが、それ以上に、その事実が心の負担を軽くした。

 

彼の態度や言葉は本当に気分が悪かった。

 

やりたくもない使命。それでもやめる勇気もなくて。

そんな中でも、救世主という肩書きや、モルガンを悪として自分達を正義と信じて疑わない彼らと一緒にいる事で。勇気が保たれていた。

どうにかしてここまで来た。

 

そんな中、自分達を悪だ悪だと、叫ぶ人間。

 

あの時、トリスタンを救おうとした彼の行動は、悪人とはとても思えないどころか、ここにいる誰よりも、慈愛に溢れているように見えて。

 

あんな、妖精嫌いで、国中から嫌われて、誰からも悪と言われている妖精なのに。

 

あの時は、悪役にいじめられていた物語のヒロインのようで。そして、そんないじめに加担した自分達はまさに、醜い悪役で。

 

彼を、ロンディニウムで見かけて以降ずっと気分が悪かった。

 

あの眼に睨まれるたびに、恐ろしくて。

 

正しい事をしていると信じている彼カルデアでさえ妖精と同じくらいの醜い存在に見えてきて。

 

そんな自分をそれ以上に醜い何かだと認識していまう。

 

でも、オベロンの言葉は間違いなく本当だ。

 

 

今後、出会う事もない。

 

不安は取り除かれた。

 

そのはずなのに、この不安はなんだろうか。

 

結局の所、稲妻を伴った悪意の嵐は吹き荒れたまま。

 

この巡礼の旅が苦しいものには変わりない。

 

苦しみはどんどんと蓄積されていく。

 

この旅の結末を想う。

 

 

未だ巡礼の全てを思い出したわけでは無いが。

 

救いのない。どうしようもない結末になるというのは理解できる。

 

それを、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、それはただの気のせいで。

 

本来味わうはずの無かった恐怖がアルトリアを蝕み、記憶の端にある。アルトリアを大切にしようとしてくれた誰かは、感じているのに記憶は無くて。

 

それらの要素が、アルトリアの精神にさらなる負担を与えていく。

 

だが、誰も、彼女を止める事は出来ない。

 

止めようとも思わない。

 

カルデアという救世主を伴った巡礼の旅が、モルガンを殺害する事につながる限り、止まることは無い。

 

世界を滅ぼす侵略者でありながら、都合よく妖精國を救う救世主としての待遇を許されている彼ら。

 

それは、滅びこそが妖精國にとっての救いであるという物語故に他ならない。

 

汎人類史にとっても、この世界を作り出した存在にとっても。この世界が続く事を許容する者はこの妖精國に存在しない。

 

モルガンと、彼を除いては。

 

だがもう、モルガンしか存在しない。

 

少女の結末はすでに決まっている。

 

だがこの場にいる誰もが止める事はない。

 

 

妖精を苦しめるモルガンを殺し、妖精國を救ったという結果によって、カルデアが正義を語ったまま、ほんの少しの悲しみだけを、残しながら、結果的に気持ちよくこの滅びゆく異聞帯を去る為には不可欠な存在なのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




何故ムリアンがカマータージ魔術を使えるのか。


そこまで、細かく設定はしておりませんし、本編にそこまで関わっては来ません。
実際、別の方法でティンタジェルに行くか、エンシェント・ワンがストレンジにしたように、世界の本質を見せる魔術をトールがムリアンにかける予定でした。

ただ無駄に尺が長くなりそうだったので省いたのと、とある理由によって、そこまで気にしなくて良いんじゃないかと思ったからです。


何故そうしたかと言うと。

今から記す内容を実行していただければ理解していただけるかなあと思います。


まずは、アマゾンプライム等の、動画サブスクサイトを登録します。

そして、俗にサム・ライミ版と呼ばれる。

『スパイダーマン』3部作を視聴。

そして、『アメイジングスパイダーマン』2部作を視聴します。

次に当然ながらMCU版スパイダーマンである所の『スパイダーマン Home Coming』を視聴します。

ここまでは、動画サブスクサイトの登録料のみで視聴できるはずです。

出来ればアベンジャーズシリーズも視聴していただきたいのですが、まあ見なくても大丈夫でしょう。

そして、レンタル料はかかりますが、『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム 』を視聴すれば準備は完了。

箱イベ周回の傍ら見ていただいても良いと思います。




後は、3月23日から、あの

『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム 』

がデジタル配信されるので。それをご覧いただければと思います。


以上、ダイマでした。






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