世界を敵に回しても   作:ぷに丸4620

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今一度伝えておきますが。
この作品を読まれる前にあらすじの注意事項をご一読お願い致します。



幼き勇者

これは、自分の記憶ではない。

 

 

「もう、ロット君はもう少し戦い方を考えてください!」

 

「フン、あの程度の攻撃など俺には傷ひとつつかん。俺の方が身体は頑丈だと言うのに馬鹿なヤツめ。そもそも身を挺して庇うならもっと上手くやれ。結局俺にもいくつか当たってるではないか。中途半端なら最初からやるな」

 

「ライネックは黙ってて」

 

「!?」

 

「トネリコこそ。何も考えずに皆を振り回す癖は直した方が良い」

 

「本当にな。さすがの俺もそろそろ辛い。トネリコの思い付きはほとほとくたびれる」

 

「エクター、静かに」

 

「!?」

 

「私がいつ振り回したって言うの!? 適当な事言わないで!」

 

「一カ月前のモース虫退治とか。3日前のデカいトカゲみたいなやつとか。入るなと言われてないから大丈夫だろうって。トカゲが入ってくるななんて言うわけないのに」

 

「う、何も考えてないわけじゃないから! ロット君こそ何にも考えずに一人でズカズカ進んでいくじゃない!」

 

「ああ、悪かったよ。これで良い?」

 

「な……! 適当な言い方!」

 

「適当じゃない。心はこめてる」

 

「心がこもってれば良いってわけじゃないから!!」

 

 

それはきっと先代の記憶だ。

 

 

――本当にその癖は治らないのだな……

 

 

自分の身体の下。

下敷きにしてしまってる人間の男を思う。

 

モース毒の塗られた矢が幾重も放たれた。

 

変わらない性分なのか、それともあの時の記憶があるからなのか。

その殆どを男が受けてしまった。

 

そして、先代の注意を思い出させるかのように、その矢を自分も受けた。

 

お互いに庇いあったが故の愚行だった。

 

スプリガンの下卑た笑いが鼻につく。

 

心は落ち着いた。

だが元より死に体。

モース毒が回ればなおさら動けるわけもない。

 

――すまないトール。

 

下敷きにしたままどいてやることすら出来ない男を思う。

 

――お許しを陛下。

 

不義を働いてしまった。

傷つけてしまった。

そのせいで彼女は今、立つことすら苦労するであろう深傷を負ってしまった。

 

自分ももう間もなく死ぬだろう。

 

彼女の愛に報いることができなかったことを悔やみながらも、先代からの友人を殺してしまった事を悔やみながらも、もうどうにも出来ない。

 

流す涙すら枯れ果てた。

 

唯一の救いなのは、あの程度の雑兵では陛下に傷ひとつすらつけられないという事だ。

そして玉座にたどり着いてしまえば膨大な魔力で彼女は傷を治すこともできるという事だ。

 

予言の子ごときに彼女が負けることはありえない。

しばらくは安泰だと。そう思いながら。

 

この國を今の自分が守り続けられない事を悔やみながらも、次代への思いをはせながら眠りにつこうとしたところで。

 

状況は一変した。

 

スプリガンが指を鳴らす。

そこに現れたのは新たな雑兵。

 

何の意味があると思えば、彼奴らは妖精騎士トリスタンを抱えていた。

 

何の意味があるのかと、事態を視界に収めれば、陛下の動きが止まっていた。

冷酷な仮面の下に。ウッドワスだからこそわかる表情の変化を見て取った。見た事のない驚愕の表情だった。

 

何故と、疑問を挟むまでもない。

気づく事の出来なかった自分への陛下の愛。

 

 

そして、妖精騎士トリスタンもまた――

 

 

 

動きが止まった陛下を凶刃が襲う。

叫ぶ力すら残っていない。

この世の全てを呪いながら。

自身の罪をまざまざと見せつけられながら。

その光景を最後に、ウッドワスはその瞳を閉じざるを得なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「落ち着け!」

 

声をかけるが効果は無い。

 

周りにはおびえた様子の妖精達。

 

数メートル離れた脇には、見えていないらしい。光を失った目でこちらを不思議そうな眼で見つめる女王。

起き上がれないのだろう。仰向けになったままこちらに向かってトールと、止めてと、声にならない声で訴えかけていた。

 

それはどちらの意味なのか。

 

目の前の妖精、ウッドワスを殺すなという意味なのか。

 

お前では勝てないから去れという意味なのか。

 

どちらにしても、その二つは回避する腹積もりだ。

 

ウッドワスは、乱心状態。

 

息は乱れ、瞳孔は開き切り、牙は剥き出し。

 

日々礼節を心掛けていたあの時とは雲泥の差だ。

 

それほどに今彼が傷ついている事がうかがえる。

 

「邪魔をするなァァァァ!!」

 

「邪魔をするに決まってるだろう! お前何やってるんだ!?」

 

「黙れェェ!!」

 

真正面から戦術もなく、馬鹿正直に突っ込んでくるウッドワス。

先ほどのベリルに比べればお粗末な突進。

 

それを受け止めようと構えるトールからは先ほどベリルへの反撃で充電を失ったために、疲労が見て取れる。

 

振るわれる腕を片腕で受け止めようとしたがベリルとは段違いのスピードと威力に驚愕する。

片腕では足りず。

両腕で受け止める。

 

その隙に左で襲われていたら終わりだったが、頭が回っていないのか。

止められた右腕を尚押し付けようとのしかかるだけ。

 

「俺がわからないのか……!?」

 

「知るかァァァァ!!」

 

あまりの力に膝をつく。

そのまま城の床に体ごとめり込んでいく。

 

頑丈なキャメロットの床が砕けていく。

 

「俺はわからなくても良い……!でもモルガンは違うだろ……!」

 

「ウルサイ! ウルサイ! ウルサイ!」

 

「少しは話をっ! 聞け!」

 

上からの力を横に受け流す。

そのままその力を利用し、全身のバネを利用し、側頭部に回し蹴りを叩きこむ。

 

それは奇しくも、ベリルに最初に叩き込んだのと同じ位置。

 

それは、その経験を活かしたトールの戦術に他ならない。

 

 

力場は霧散し、トールはそのまま後ろに吹き飛ばされながら三点着地。

ウッドワスはもんどりうちながら倒れるものの、四つ足で立ち上がる。

それはまさしく四足歩行の獣の構え。

 

 

「貴様っトールかァ! 邪魔をするなァ!」

 

 

蹴りの衝撃が気付けとなったのか。

ようやくトールの事を認識したらしい。

だがその怒りは収まらず。

トールに対しても殺気は収まらない。

 

「させるわけないだろ! お前何やってんだ!」

 

「貴様に説明した筈だ! 我らの先代からの忠誠を!そこの魔女は我ら2000年の忠誠を、オレの1000年の忠誠を! 笑いものにしたのだ!!」

 

「笑いものになんて……!」

 

「あの魔女はワタシを裏切った! ロンディニウムへの援軍を送るとワタシをだまして! 2000年も仕えてきた我々を裏切ったのだ!!」

 

「――そんなわけ、ないだろうが! そんな話信じてるのか!?」

 

「知った風な口をォ!!」

 

再びの突進。

四つ足を活かした突進は、しかし腰を落としたトールに真正面から受け止められる。

先ほどとは違う。力の入れ方、態勢、全てを考慮し受け止める。

 

「ウッドワス。勘違いだ。勘違いなんだよ! 援軍は確かに送ってる。道中で予言の子に味方した連中が援軍を潰したんだよ!」

 

「信じられるかァァァァ!」

 

話し合うための抑え込み。四つに組む二体の会話は続く。

 

「ならば誰が企んだ! 誰が援軍を潰した!!」

 

そう問うてくることに安心を覚える。

その程度の理性は残っているという事だ。

 

「企んだのは予言の子の仲間のオベロンとか言うヤツで、潰したのは異世界の住人だ! コヤンスカヤって言うピンク髪の狐だよ!」

 

「外様の貴様の言葉を誰が信じる!!」

 

「お前がどっかに行ってる間俺も色々あったんだよ! お前が死んだと思ってからずっとお前の仇を打とうと調べてたんだ!」

 

「ならば、誰がその企みに同意した!?そいつらだけでは援軍の情報は掴めぬ筈だ!どの氏族が私をハメたのだ!?」

 

「オーロラとムリアンだよ!!」

 

――正直、ムリアンの名を出すのは憚られた。

だが、ここで誤魔化して仕舞えば、きっと彼は信じない。

 

「なん、だと……!」

 

ウッドワスの力が弱まる。

 

「いや、いや、ありえん……! オーロラにかぎって! そんな事は……!」

 

ウッドワスにとって、オーロラはやはり重要な妖精。

 

「いや、確実だ。直接的では無いけど完全に関わっている。配役としては騙し役。誰を相手にかは分かるよな?」

 

瞳孔は開き切り、トールとの四つ組合いから離れ、たたらを踏むように数歩程後退する。

 

「ありえん、ありえん……! 何故お前がそれを知る!? 誰に聞いたのだ!?」

 

「ムリアンだよ」

 

「ムリ……アン?」

 

頭痛に耐えるように右手で頭を押さえる。

 

「オックスフォードの生き残りにお前が援軍を期待していた事を知ったんだ。よくよく調べれば援軍が外からの怪物に飲み込まれた痕跡があった」

 

その正体がコヤンスカヤであった事。

ムリアンの友人であった事。

そして仇を討とうとムリアンを襲った事を説明した。

 

「ああ、そん、な……ああ……で、ではオマエは、ム、ムリアンを殺したのか……?」

 

ウッドワスはどこかその事実に恐れを抱いているように、伺うように問い質す。

 

「……出来なかった。出来なかったんだよウッドワス。殺す直前まではいったけどな。ムリアンが君を嵌めた理由を知ってしまった……」

 

どんな理由だとは聞けなかった。

何故ならそれは、ウッドワス自身が抱えていた問題でもあるからだ。

 

「……そん、な……ああ、あぁ、だがオーロラは、オーロラは何故……」

 

「分からない。分からないが、オーロラも反女王派だ。それだけでも理由にはなる。今この瞬間の状況が理由 みたいなものだろ」

 

「いや、いや、だがそれならば……!」

 

「落ち着いて考えてくれ……今は気が動転してるだけなんだ。落ち着けばわかる筈だ」

 

心当たりが、ないわけでは無かった。

言われてみればあるいはと、思うこともある。

 

 

 

 

 

 

だが、だが、 だが、もう遅いのだ。

 

 

 

 

 

今更覆されたところでもう遅い。

既にトールが正しかったとしてももう遅いのだ。

 

既にモルガンに手を掛けた事実は消えはしない。

 

 

頭が混乱していく。

 

モルガンへの忠誠とオーロラ(愛する者)へ信頼。

氏族の罪。そしてモルガンを傷つけたという罪の意識が無い混ぜになって、頭を犯す。

 

「チガ、ウ! ワタシは、オレは――」

 

「ウッドワス?」

 

「ウウウゥゥゥゥ――aaaaaa――」

 

蹲り、呻き声を上げたと思えば、ウッドワスの体から――黒い霧が上がる。

 

それを見て騒ぎ始めたのは誰だったのか。

 

「モース化だ! 妖精亡主になるぞ!!」

 

慌て始める上級妖精。

 

逃げろと、いっそ殺せと、騒ぎが起こる。

 

そのような中でトールは酷く冷静だった。

 

臆すこともなく、逃げようともしない。

 

無知故からの行動では無いと言うのは明白だ。

 

「トール……いけません。そこから離れないと」

 

モルガンがかろうじて立ち上がるのを目の端で捉える。

本当ならそばにいて支えてやりたいが、そういうわけにもいかない。

 

今はウッドワスに全力を捧げなければならない。

 

 

頭を抱え、苦しげに呻くウッドワスに手を差し出す。

 

それは以前、どこかで起きた光景だった。

 

 

大男(オオモノ)さん、大男(オオモノ)さん」

 

 

表情は穏やかに、慈しむような声色で。

 

 

大男(オオモノ)さん、大男(オオモノ)さん」

 

自分は敵ではないと、味方だと、全身全霊で伝える為に。

 

全神経を集中させる。

 

 

「日が暮れるぞ……」

 

徐々に、徐々に、ゆっくりと、その手を近づける。

 

ウッドワスが、その手を覗く。

 

「さあ、日が暮れる……」

 

警戒心は示さなかった。

 

それは子守唄。

 

過去オックスフォードの宴会で、本能に負けて暴走してしまう事を悔いたウッドワスに、トールが教えた対抗策。

 

本来であれば、本能どころか人格すら変わり暴走してしまう怪物を戻すための子守唄。

 

トールのその掌にウッドワスは応えるようにその手を置いた。

 

「いいぞ、そう、もうお前を傷つけたく無いんだ――」

 

載せられたウッドワスの手に、さらに手を重ね、両手で手を優しく掴む。

 

パチリと、

 

ほんの少しだけ。

 

本人達すら気付かないような静電気が起きた。

 

 

――いつの間にか、モースの気配は消えていた。

 

「あ、あ、ああ――アア――」

 

血走り、瞳孔が開ききっていた目は戻る。

その目からは涙が溢れていた。

 

「私は、何という……」

 

「ああ、やっちまったよな……」

 

「私は……! やはり醜いケダモノなのだ……」

 

「でも、子守唄が効いたじゃないか」

 

手を掴まれたまま、崩れ落ち、膝立ちになるウッドワスに目線を合わせる。

 

「子守唄。あれからかかさずやってたんだな」

 

何故、ただ声をかけるだけの子守唄が効いたのか。

その理由がそれだった。

 

少しでも本能に抗おうと努力を重ね続けた。ありとあらゆる方法を試した。この子守唄もその一つ。その結果が今だ。

 

「まだだ。まだやり直せる。まだコレからなんだよウッドワス……!」

 

「だが、だが……!」

 

 

 

「――まったく」

 

 

 

未だ涙を流すウッドワスにどう声をかけたものかとトールが悩んだ時。

 

横合いから声がかかった。

 

2人の体に影が差す。

 

「そんなに涙を流して。2代に渡りブリテンを護り続けた守護者が情けない。礼節もあれ程苦労して身に付けたと言うのに……影も形もないでは無いか……」

 

 

その影の主は、心底呆れたような口調だった。

 

トールの隣に腰を下ろし、ウッドワスの頬に優しく触れる。

 

「だが毛並みだけは変わらんな。幼き勇者。勇敢なウッドワス」

 

あるいは子守唄の時のトールよりも優しく触れる。

 

「オマエの毛並みは、このブリテンで最も温かく、心地良い」

 

ベール越しにも分かるモルガンの愛おしげな表情に。

ウッドワスの涙はさらに勢いを増していく。

 

「……お許しを……」

 

 

「なんという、オレは、なんという――」

 

 

それは贖罪の涙。

 

「言葉にしなければ、言葉にされなければ、わからないなど――」

 

「別にそれ自体はウッドワスの落ち度じゃ無い。だろ?」

 

隣の女性、女王モルガンに気さくに尋ねるトールの表情はどこか意地が悪く。対するモルガンは、ほんの少しだけ罰が悪そうに目を逸らす。

 

 

トールは我先にと立ち上がる。

そして、両手をウッドワスと女王モルガン2人に差し出す。

 

「さ、手を貸して」

 

何をと2人は思いながらも手をトールに委ね、引っ張られるように立ち上がった。

 

そして――

 

突然2人まとめて、抱きしめる。

 

「きゃっ――」

 

「なっ」

 

「稲妻ハグだ!」

 

 

3人。抱き合うような形になる。

 

「ト、トール! 貴様! なんと無礼な!!」

 

「良いじゃ無いか、無礼講だよ。なあ?」

 

「……まあ、良いでしょう」

 

先程の最悪の状況から一転。

和やかな雰囲気の3人。

 

希望に満ちた大団円。

 

 

しかし、忘れてはならない。

 

今、このブリテンは戦時中。

 

そして、ブリテンの全てがこの女王の敵である。

 

 

音もなく迫る悪意に気付いたのは三者同時。

 

しかし最も速く動いたのはトールである。

 

その悪意は弓矢だった。

 

その数は2桁を越えて迫り来る。

 

まずはモルガンを範囲外に突き飛ばす。

 

そしてウッドワスを庇うように、放たれた矢をその身に受ける。

 

ただの矢であればまだ良かったかもしれない。

だがその矢は、円卓軍が妖精と闘えるように仕込んだモース毒が塗られているもの。

 

さらに最悪だったのは、ウッドワスもトールを庇おうと動いてしまった事だった。

 

全ての矢をその身に受けようとしたが、その半数はウッドワスも受けてしまう。

 

さしものウッドワスも弱りきった身体では、耐える事は容易では無い。

 

結果。その悪意の犠牲者は2名となった。

 

これから起こる惨劇は、どちらか片方が動けさえすれば防げたと言うのに。

 

2人が、倒れ伏してしまったのだ。

 

 

「いやはや、氷の女王の心を溶かすとは、ロット。でしたかな。惜しい男を失くしましたな」

 

手を合わせる拍手の音が玉座に響く。

 

「貴様――」

 

「あるいは、もう少し速くその男が現れてくれれば、陛下の統治もまた違った形になったのでしょうが」

 

「――スプリガン」

 

「全ては遅かったのですよモルガン陛下」

 

惨劇の幕間が上がる。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

聞こえる。

 

風に乗って声が聞こえる。

 

愛しき人の声が聞こえる。

 

だが、その声から放たれる言葉は、あまりにも醜悪で。

 

愛したヒトの醜悪な一面を見せつけられ、絶望する心は尚も砕け散りそうだ。

 

 

パチリと、何かの衝撃が体を伝わった気がする。

 

瞼が開く。

 

意識が覚醒する。

 

体は動かないが目は見える。耳は聞こえる。

 

目に見えたのは最悪の光景。

 

使えるべき女王に妖精達が群がっている。

 

魔女め魔女めと罵倒を浴びせている。

 

物を投げつけられている。

 

愛を与えてくれた彼女は今、自分のせいでソレに反撃する事もままならない。

 

何故と、考えるまでも無い。

 

理由など先程の風が答えであろう。

 

妖精達が武器を持ち、彼女に襲い掛かる。

 

止めろと叫ぶ事も叶わない。体は既に限界を迎えている。

 

『――なあ』

 

声が響く。

 

『あんなの絶対ダメだよな?』

 

――そんなもの当然だ。

 

頭に直接響いている。

 

『頼む』

 

――ああ

 

毛が逆立ち、空気との摩擦でパチパチと音が鳴る。

 

()()()()を頼む』

 

 

体に紫電が走る。

それは、決して体内から出ている物ではない。

 

毛の躍動が摩擦により紫電を起こしている。

 

「ウゥ……」

 

体は限界を超えている。

立ち上がることすらままならない。

呼吸すら苦しい。

だがそんな物はわかっている。

そんな事は承知なのだ。

 

それを超えてきたからこそこのブリテンを護り続けてこれたのだ。

 

それが出来るから勇者なのだ――

 

 

 

「ウオォォォォォォォォォォ!!」

 

 

 

 

それは衝撃だった。

 

それは破壊だった。

 

並の者ならば心砕ける程の力強い咆哮。

 

予想外の事態に逃げようとしたスプリガンですら本能で恐れ、動けなくなる程の。

 

 

恩を仇で返しおって。

陛下がいなければ生きる事すら出来なかった分際で。

 

思う事はあれど、ウッドワスにそれを言葉にする権利は無い。

 

既に一度不義を働いた身としてそれは出来ない。

 

だから――

 

 

「Oooooooo――ッ」

 

吠える。

吠えて注意をこちらに向けながら、駆ける。

 

奴等の蛮行を止める為に。

彼女を守る為に。

 

手前の上級妖精を薙ぎ倒す。

だがそれでは終わらない。

 

本来であれば蜘蛛の子を散らすように逃げるはずの上級妖精達も風によって流れて来たその情報にパニックになって凶暴化している。

 

立ち位置は変わる。

あまりの仕打ちに、事態すら把握できなくなってしまった女王を背に。

彼女を守る為に立ちはだかる。

 

ブリテンの勇者ここにあり。

 

再び、戦いの火蓋が切って落とされた。

 

 

 

 

 

 

 

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