世界を敵に回しても   作:ぷに丸4620

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混戦

圧倒的な敗北だと思っていた。

その筈だった。

 

全力だった。

全力で戦い、悪の女王を打ち倒したかと思えばそれは偽物だったのだ。

 

女王は分身し、その圧倒的な力には成す術もない。

 

最初に女王が狙ったのは予言の子アルトリアでもなく、異邦の魔術師藤丸立香でもなく。オベロンだった。

あからさまに彼を狙っていた。

だがそれも所詮順番の違いだ。

 

そのままその圧倒的な力の前に蹂躙されるかと思えば、分身が消えた。

 

何が起きたのかすら分からない。

 

その後流れたのは風によって流れて来たオーロラの言葉。

 

救世主トネリコによる悪行の数々。

 

予言の子達の一人。

マシュが苦しそうな表情を作る。

 

その全てが真実というわけでは無い。

 

ウーサー達を殺したのはトネリコでは無い。

だが、表向きはその罪をもって、()()()()()()()()()()()()

 

そして女王打倒を目指す以上、このオーロラの言葉も勝利の為に必要な要素。

 

理由はどうあれ、過去はどうあれ、事実モルガン女王は全妖精を苦しめる巨悪なのだ。

 

味方を鼓舞し、あるいは敵に寝返らせるためには必要な奇策である事は理解できる。

 

事実、今この瞬間全滅する予定だったのだ。

 

だが何故このタイミングでオーロラの言葉が風にのって流れて来たのか。

そもオーロラの言葉で妖精達を鼓舞させる前に何故モルガンは消えたのか。

 

その事実が判明したのは、その数分後だった。

 

 

「伝令ーっ!」

 

1人の兵士がやって来た。酷く焦った様子で、こちらに駆け込んできたのだ。

 

「スプリガン氏により、キャメロット城の妖精達も叛逆を開始! モルガンに致命傷を与えたのですが! あの牙の氏族長ウッドワスが現れ! 次々と妖精達を蹂躙しております! 後からついたオーロラ軍も手をこまねいている状態!」

 

「――なんだって!?」

 

「打ち倒せるのはあのウッドワスを撃退した功績をもつ貴方がたしかおりません! お急ぎを!」

 

一同はその言葉に顔を見合わせ。頷き合う。

 

「行こう!」

 

声を出したのは藤丸立香だ。

 

うなずく一同。

 

「ウッドワスを打倒し、ブリテンの真の救済を!」

 

声を上げたのはパーシヴァル。

 

最終局面。()()()()()()()()()()()()()()に一同は向かっていく。

 

 

 

 

***

 

 

 

「ノクナレア!」

 

「アルトリア!!」

 

アルトリア達と妖精達を従えたノクナレアが玉座の広間に辿り着いたのはほぼ同時。

 

皆が一番最初に目に付いたのは、出入り口で狼狽えるように広間を見つめているスプリガンだった。

 

「スプリガン!!」

 

名前を呼ばれ、ようやくアルトリア達に気づいたのか、信じられないような眼で彼らを一瞥した後。

 

「――お、おお! ようやく来られましたか!! 」

 

大広間の出入り口、殿として立つノクナレアはアルトリアを一瞥した後、苦虫を嚙み潰した表情で視線を促す。

 

「ウオオオオオオオオオ――!」

 

衝撃すら伴う裂帛の気合。

 

その正体は牙の氏族長ウッドワス。

 

玉座を背に、立ちはだかるようにウッドワスは布陣していた。

 

周りには、立香達も見覚えのある謁見の時にいた上級妖精達。

 

それぞれが皆、剣を持っており、あの時の陰気な雰囲気はどこに行ったのか。

おぞましい程の殺気を伴って、ウッドワスを取り囲んでいる。

 

「本当に寝返っているじゃないか。先ほどのオーロラの声との合わせ技という事かい?スプリガン」

 

どこか嫌悪感を携えた態度のダ・ヴィンチにスプリガンは気にした様子も無く、むしろその程度些末事とばかりに言葉を返す。

 

「ええ、私も遊戯ではありますが戦を嗜んだ経験がありましたのでね。あなた方につく事を決め、奪った駒を利用したのですが……」

 

襲い掛かる上級妖精達を一振りで吹き飛ばすウッドワス見る。

 

「よもや土壇場で駒が勝手に動くとは思いもよりませんでした」

 

どこか焦っているようにも見えるスプリガン。

その言葉に幾ばくかの戸惑いを見せたものの。

何かを察した一同。

 

「モルガンは――?」

 

スプリガンを無視して、言葉を発したのはアルトリアだ。

その態度にスプリガンは再び特に気にした様子も無く。

視線をそこに向け、皆を促す。

 

喧噪真っ只中。

大立ち回りを演じるウッドワスの背後に件の人物はいた。

 

 

女王モルガン。

その銀髪は夥しい血に染まり、冠は脇に転がっている。

避けた黒い服の隙間は赤い血にまみれ、あるいはそれがなければ煽情的な様相を見せていたであろう切り裂かれたその服も今となっては見苦しいものとなっている。

 

地べたに這いつくばったまま、身体を引きずり喧噪など気にしていないかのように少しずつ、少しずつ、玉座の方へと身体を引きずっていく。

 

あまりにも惨め、あまりにも無様。

 

身体を引きずるその姿はあまりにも弱弱しく、この國を支配してきた圧倒的な女王とは思えない姿であり。

惨めな姿のまま玉座へ執着するその姿はまさに、欲望のまま悪政を敷き、最期までその権力に執着する悪の女王の末路そのものだった。

 

「なんという……」

 

おぞましいものを見るような眼のパーシヴァル。

その姿に嫌悪感を持ったのか。手を口で覆っていた。

 

その他、スプリガン以外の全てがその姿に言葉を無くしていた。

 

「何を呆けているのです? 既に女王は瀕死の状態。あれならば例え人間の貴方でも首を切ることはできる。厄介なのはあの死にぞこないだけ。ロンディニウムにて万全の彼奴を撃退したあなた方ならば問題ないでしょう?」

 

スプリガンの指摘に、間違いはない。

 

 「まさかあの哀れな姿を見てやる気が削がれたなどと? これはあなた方が始めた戦ですぞ? 元々殺す予定だった相手が惨殺されそうになったからと、そんな事は望んでないなかったと言うつもりではありますまい?」

 

至言だった。

 

そうだ。これは、自分達が始めた戦争だ。

妖精國を悪の女王モルガンから救う為。

宣戦布告として鐘を鳴らしたアルトリアについていくと決めたのだ。

過去に何があろうと、今の彼女は妖精を苦しみ続ける悪の女王。

宣戦布告をした段階で殺害宣言をしたようなものだ。さらにそのために多大な犠牲を払い続けて来た。

今更止める権利などもなければ、彼女を不憫に思う資格もない。

 

「ええ、ええ、その通りです」

 

その言葉に頷いたのはノクナレア。

 

「そもそも私は予言など関係ない、最初から彼女と戦うつもりだったんだもの。今さら遠慮などしないわ」

 

その凛とした振る舞いはまさしく、王の氏族の名にふさわしいソレだった。

 

「さあ、行くわよ。せめて少しでも早くあの見苦しい姿を終わらせてあげるのが情けというものよ!」

 

合図と共に、王の氏族達がそれぞれの武器を構える。

 

その間に、ウッドワスは上級氏族のその殆どを返り討ちにしている。

 

「私も行きます。彼は私があの時に打ち倒せなかったが故ここにいる。今度こそ私の手で彼に引導を」

 

それぞれの決意に。

藤丸立香の表情も、覚悟を伴ったものになっていく。

マシュを見る。アルトリアを見る。

2人とも、何かの気持ちを飲み込んだ表情を見せている。

 

 

「俺達も、戦おう」

 

 

それが開戦の合図。

 

 

多勢に無勢。

先程とは形成も逆転し、予言の子とカルデアに圧倒的優位にてその戦いが始まった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「覚悟!」

 

いの一番に向かったのはパーシヴァルだ。

 

ウッドワスに最も致命傷を与え撃退したその槍を向ける。

そのウッドワスは迫力こそ大きいものの、感じられる力はもはや、消滅直前。

 

真名は解放せずとも、放たれる必殺の一撃は、今のウッドワスを打倒すにはありあまる威力。

 

「ウオオオオオ!!」

 

それを裂帛の気合と共に右腕ではじいたのはウッドワス。

 

「――なっ」

 

パーシヴァルの驚愕の声が上がる。

槍がはじかれ、胴体が無防備になる。

 

あいた脇腹にウッドワスの左腕が一撃。

 

「パーシヴァル!!」

 

叫んだのは誰だったのか。

 

吹き飛ばされ、後ろに続いていた王の氏族や背後にいた立香達をまとめてなぎ倒しかける。

 

数度転がるパーシヴァル。

 

「大丈夫!?」

 

心配そうに駆け寄る立香。

鮮やかな一撃をもらったパーシヴァルはしかし、問題ないかのように立ち上がった。

 

「申し訳ありません、どこかで覚悟を決め切れていなかったかもしれません。しかし――」

 

ウッドワスの左腕が直撃した腹部は、鎧にほんの少しの傷が入っているのみ。

その事実に悲痛な表情を作るパーシヴァル。

 

「こんなにも弱っているというのに……」

 

悲痛な眼をウッドワスに向ける。

槍を弾いた時の力は本物だった。

だが彼はもう、殆どの力が残っていない。

反撃に使う力は残っていない。

 

その事実に、一同は改めてウッドワス打倒に希望を見出す。

 

 

「牙の氏族長ウッドワスは殆どの力を失っているわ! 臆することなく突撃しなさい!」

 

ノクナレアの合図に呼応する王の氏族の兵士達。

 

「こちらは数も勝っています! ウッドワスの相手をする必要もない!回り込んであの哀れな女王を直接狙うのよ!!」

 

宣言通り、全力で事に当たろうと奇策すら弄するノクナレア。

 

そう、ウッドワスの相手をする必要も無い。

モルガンさえ殺してしまえばウッドワスも戦う意味を持たなくなるのだ。

 

言う通りに、回り込んでいく兵士達。

 

正面と脇から攻めて来る敵にどうにもならない状況。

正面から攻めに転じているのはノクナレアの兵士達だけでなくパーシヴァルや藤丸立香の英霊の影もいる。

 

ウッドワスは守りの全てに力を注ぎ、反撃の力は残っていない。

正面からの攻めですら止められる保証もない、脇からも回り込んでいるのだ。

 

もはや成す術はない。

 

 

 

だが――

 

 

 

その動線には一つの障害物があった。

人間だ。仰向けに倒れている男性。

息をしているかも定かではない。

 

兵士達は玉座とモルガンの間、少し脇に位置するその人間を歯牙にもかけず、踏み潰しかねない勢いで突き進んでるのだ。

 

それを、ウッドワスが許すはずもない。

 

「その男に触れるなァァァァァァァ!!!」

 

ここに来て、初めて狼の遠吠え以外の咆哮が響き渡った。

 

腕を交差し、それを開くように腕を振るう。

それは特定個人を狙ったものでは無く、守るための攻撃。

全力の防御手段。

それは凄まじい衝撃破を生み出した。

 

「な――!?」

 

驚愕の声はダ・ヴィンチのものだ。

 

なぎ倒される王の氏族達。中には跡形も無く消滅する者もいる。

その余波は後ろにいた立香達を巻き込んでいく。

それを防御したのは、マシュの盾だ。

彼女がいなければ、あわや全滅する程の威力。

 

「ここに来てまだあんな力が!?」

 

「あの男って――」

 

仰向きに倒れる遺体のようなものを見つけ、そのうちの数人が反応した。

 

「――ロットさん!?」

 

悲痛な声を上げたのはマシュだ。

過去の妖精歴に飛び、トネリコとの旅を経験したマシュにとって既知の間柄であることは当然だ。

 

なぜ妖精歴の彼がここにいるのか。そんな疑問がそれぞれに浮かぶ。

 

「ロット!? それってロンディニウムの!? やっぱり、あの時の彼と同一人物だったって事かい!?」

 

「オベロンが殺したって……」

 

慌てふためく一同。

 

「戸惑っている場合!?」

 

そこに活を入れたのはノクナレアだ。

兵士をただ向かわせているだけのようにも見えるが、彼女には幾ばくかの疲労があるように見て取れる。

 

「アレがあのロンディニウムのロット王だからなんだと言うの!? 過去の話なんて最早どうでも良い!! 今妖精國を苦しめているのがあの女! それを守るのがあの狼よ!」

 

そんな事も感じさせない程の覇気だった。

 

「この戦いに妖精國の未来がかかっている! アイツを誰だと思っているの!? 手負いだからなんだと言うの!? アレは数万の妖精に匹敵する力の持ち主よ!

そうやってぐだぐだ状況分析するだけの足手纏いになるならとっととこの城から出ていきなさい!!」

 

 

 

手負いの獣は、時には万全な状態よりも恐ろしい。

その事を念頭に入れながら一同はノクナレアの激励に背筋を伸ばす。

 

あの男の事は、今は頭に入れまいと思考を変える。

 

いざ皆で立ち向かおうと、構えた時。

 

声が響く。

 

――良い、激励だ。

 

それは藤丸立香達にとっては聞きなじみのある声。

 

どこからともなく青い影が現れた。

 

「グリム!」

 

「生きていたのか!!」

 

喜ぶ一同に、賢人グリムは笑顔で目配せしながら、戦陣へ立つ。

 

「ああ、奴さんもな」

 

同時に現れた赤い影。

 

「村正も!」

 

村正は視線だけで立香に答える。

 

「良い演説だったぜノクナレア!」

 

グリムの言葉に気恥ずかしそうなノクナレア。

 

「何よ偉そうに!」

 

「まあ、気合入れたところ悪いが――」

 

 

 

――戦いはこれで終いだ。

 

 

 

その言葉と同時。

ルーンの魔術がウッドワスを襲う。

 

「グ、ウッ ウウウウゥゥゥゥlオオオオオオオオオ! 放せエエエエエエエエ!!」

 

「それは無理な相談だっ!」

 

ルーン魔術がウッドワスを縛り上げる。

それは動けば動くほど拘束を強めていくもの。

 

 

ウッドワスの脇を村正が素通りしていく。

 

その先には這いつくばるモルガンの姿。

 

「まあ、あいつらも覚悟の上とはいえ、寝覚めも悪いだろうしな」

 

モルガンの傍に寄り、刀を一度下ろす村正。

 

「汚れ仕事は俺に任せろってな。そもそも俺の目的は最初からこれなんでな」

 

モルガンを一瞥する。

彼女は村正に気づく事も無く、身体を引きずり、玉座の方へと進んでいく。

醜い悪の女王の姿。

 

「哀れなもんだ」

 

その言葉の裏にはどういった思惑があったのかはわからない。

無表情で彼女を見下ろし、刀を上げる。

 

「おい、とっととしろ! こっちはこっちで楽じゃねえんだ!!」

 

「離せええええェェェェェェ!! 陛下を、陛下に、ブリテンを守って来た偉大な女王にその薄汚れた刃を向けるなアアアァァァァァア」

 

慌てた様子のグリムの声。

妖精騎士でさえ解くのも困難であるはずのそれを、ウッドワスは今にも引きちぎろうとしていた。

 

時間は無い。

 

「じゃあ、さよならだ女王サマ――!」

 

せめて苦しまぬようにと、一息で首を切ろうと刀を振り下ろす。

 

 

それは、とても鍛冶師とは思えぬ一流の剣閃。

 

切断面さえも見えないのではないかと思う程の、鮮やかな慈悲の一撃。

 

断罪の剣。それが、女王モルガンの首筋へと迫り――

 

 

 

――何?

 

 

異常が発生する。

 

 

 

その異常は結果的に、村正の首を切断した。

 

(何、が起きやがった)

 

刀を振り下ろした先、そこに女王モルガンはいない。

あるのは光の輪とその中に見えた自分の首。

首の皮一枚でつながったのは、一瞬で力を緩めたが故。

 

全力で振るわれた剣は、もはや止まることは出来ず、モルガンへと迫るその刃は、光の輪の中の村正の首を通過した。

 

その光の輪が次元と次元を繫ぐ神の御業だと気づいた時には、

自信の身体が崩れ落ちそうになるのを感じ取っていた。

 

通常の人間ならば、あるいはサーヴァントであっても、そのまま霊基ごと消滅していたであろう程に鮮やかな一撃。

 

だが幸いだったのは村正の身体は特別制だった事だ。

異星の神により調整されたその身体。

 

首は一息で元に戻る。その頃には光の輪はすでに消滅していた。

再び見えるのは這いつくばる女王の姿。

 

今の現象が何かはわからないが、逃す手は無いと考えたところで、横合いから殺気を感じ取る。

 

「Gaaaaaaa――ッ!!」

 

「――チッ!」

 

迫りくる攻撃を刀で防御する。

その曲者の正体を看破する。

 

ウッドワス程では無いが、巨大な体躯。

獰猛な肉食獣の牙。

振るわれたのは鋭利な爪。

 

「何が――っ」

 

起きたのかと、周りを見れば。

 

 

この大広間のそこかしこに、光の輪が出現していた。

 

 

その光の輪は先ほどと同じように、他の景色を映し出す。

 

その風景から次々と現れるのは二足歩行の狼達。

 

それは

 

彼女が預かっているはずの。

 

余程の事が無い限り中立でいると宣言したはずの。

 

グロスターの領主ムリアンが預かっているはずの。

 

 

牙の氏族の妖精達。

 

 

「あの光の輪……次元を繫いでいるのか!?」

 

そう呟いたのは誰だったのか。

 

異常な事態に、誰もが動きを止め、その幻想的な光景を見やる。

 

光の輪から現れたのは牙の氏族の妖精達だけではない。

 

中には人間の兵士も混ざっている。

 

皆オックスフォードの住人達だ。

 

彼らを運び終わった光の輪が次々と閉じていく。

 

牙の氏族の妖精達は、いつの間にかグリムの拘束を解いていたウッドワスの周りに、集まっていく。

 

最早立ち続けるのも困難なウッドワス。

 

「お、お前達……!」

 

片膝を付きながら、信じられないという表情を作るウッドワスの脇に、一人の人間が近寄った。

そのウッドワスの腕を支え、肩を貸すように動いたのは、オックスフォードの兵士であり、料理長となったマノイ。

 

人間でありながら努力を重ね、オックスフォードの兵士まで成りあがった稀有な人間。

その原動力は、ウッドワスの役に立ちたいという純粋な献身の気持ちだった。

 

そして、トールとの交流以降、子守歌を任されていた人間の一人でもある。

 

「生きていて下さったのですねウッドワス様!」

 

「マノイ……」

 

「良かったです。本当に良かった……」

 

ロンディニウムの闘いの焼き直しの如く、妖精人間問わず、全員とはいかないものの、オックスフォードの住民が集合していた。

 

そんな中、一つ遅れて、光の輪が現れる。

 

このタイミングで出現する光の輪。

 

その正体は、この状況を作り出した功労者に他ならない。

 

「はあ、流石にこんなにゲートを開くのは疲れましたね。もう限界です」

 

その中から出てきたのは、翅を生やした少女だった。

 

この状況を作り出したのが誰なのか、はっきりとわかるように呟く彼女の表情には、疲労の影が見えている。

 

グロスターの領主ムリアン。

 

新たな参戦者に、再び戦況は一変する。

 

 

 

 

 

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