バランス良く書いていくのはやっぱり難しいですね。
モルガンを救いたいとか言っておいて。
全く出て来なくてすみません。
でも、本当の意味で救うには、モルガンだけじゃきっと足りないのじゃ(´;ω;`)
展開等々大分遅いと反省しております。
お付き合いいただければ幸いです。
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励みになります。
バーゲストは、マンチェスターへの帰路を急ぐ。
ウェールズの森での一連の騒動。予言の子との交渉。揺らいでしまった女王への忠心。
色々な事が重なって、色々な事を考えねばならなかった。
マンチェスターの住人の為、アドニスの為、そして彼の為、自分のするべき行動を模索する。
女王は大厄災など対処しないと、妖精達が死んだところで問題はないと、豪語した。
預言の子一同はマンチェスターの住人であれば救う事ができるとも言っていた。
本来であれば、予言の子一同に肩入れするべきなのだろう。自身の守りたいものを守るためには、それが最善だ。
だが、以前に話した彼の、‘視点‘の話を思い出す。どう見繕っても悪としか思えない女王の発言。
彼女はいつも言っていた。妖精を救わないと。だが、その発言の割に、その政策に一抹の慈悲を感じるのもまた事実。妖精を毛嫌いしながらも、発展を許すこの矛盾。
(早くトオルに会いたい。早くトオルの話を聞きたい)
彼女が何を考えているのか、自分では及びもつかないが、彼ならば、女王と同じ名前の悪役である彼女を、かわいそうだと、ただの悪ではないと、理解を示そうとした彼ならば、何か、最善の道を選ぶことが出来るようなヒントをもらえるかもしれないと思っていた。
マンチェスターが見えてくる。自身の領地。馴染みの街。いつもの帰り道から見える。いつもの光景。
しかし、遠目に見ても、ハッキリと感じるほどの異常が、起こっている事を察知した。
「なんだ、これは……」
そこは地獄だった。
妖精も、人間も、ところ構わず殺されていた。
人間の死体には至る所に刺し傷があり、内臓が飛び出ており、弄ばれた後がある。
妖精の死体もあった。鮮やかに急所を決められ、一撃で沈んでいる物もあれば、そのまま放り投げられ壁に叩きつけられたのだろうか、壁に張り付いたまま、体が弾けている物もあった。
妖精達の手には武器があり、その武器には夥しい血液が付着している。
その全てが、マンチェスターの住人だった。
(何者かがマンチェスターに攻めてきたのか)
バーゲストとて、妖精騎士ガウェインの名を着名し、幾度も妖精國を守り通してきた軍人だ。それも今は戦争中。どこかの妖精が攻めてきた可能性もあれば、預言の子一同という可能性もゼロでは無い。こんな事態が起こるという可能性をどこかで予想していたからだろうか、この惨劇を見ても尚、冷静さは失ってはいない。
(一先ず、生存者を探さねば。そう、まずは、トオルとアドニスだ――!)
彼ならば、彼程の強さならば、他の妖精や預言の子一同等にも遅れは取らないと信頼している。そのトオルにアドニスを任せてきた。
だからこそこの事態でも2人は生きていると言う確信があった。
予想通り、自身の屋敷に近付けば近づく程死体の量は減っていっており、ここまで戦果が広がってはいない様子だった。
バーゲストの屋敷の前、そこに人影があった。それが探していた男、間違いなく探している彼だ。
一瞬、安堵の溜息を吐きながら、彼に近づいて行く。そして、様子が分かるほどに近付いて、気付いた。
彼の体は血塗れだ。こんな事があったのだ。そう言う事もあるだろう。彼自身に怪我はないかと全身に意識を向ける。そして見てしまった。見つけてしまった。なるべく気付かないようにしていた。
そして、彼の手にある物体が、ひとつの可能性を導き出す。
彼の手には、引きちぎられた妖精の首があった。
軍人としての冷静な思考が様々な可能性を浮かび上がらせて行く。
そう、今は戦争中。だから街が襲われるという事態もあるだろう。だが、気付いてみれば、死体の全てはマンチェスターの住人だけだった。
外から何かが来た形跡は一切なかった……
つまり――
「とお、る? お前は、何を……」
「あぁ、もう来たのか……」
ポイと、なんて事のないように手に持った妖精の首を放り投げ、見た事もない冷たい眼でこちらを睨み付けていた。
「これ、は……」
信じられない。
「トオル、貴方が、街の皆を――アドニスは――?」
その問いを絞り出す。
――嫌だ、お願い。
違うと言って――
この惨劇は街の外から来た何者かの仕業だと言って欲しい。
体が震える、息が荒くなる。何かの間違いであって欲しいというバーゲストの願いは。
「ここに、こうして俺がいる事がその答えだろう?」
終ぞ叶う事は無かった。
ふつふつと、悲しみと怒りがその体にこもって行く。
「バーゲストさん!!」
後ろから人の気配。この声は、きっと預言の子の仲間、彼らだろう。
この惨劇を見て、慌てて来たことが伺える。
女王を裏切るよう交渉に来たのだろうか。
そういえば、その件について、目の前の彼に相談を持ちかけようと思っていたが……
最早、どうでも良かった。
「ああ、ああああああああああーっ!!」
剣を構える。足に力を入れる。体全体に魔力をこめる
本来のバーゲストであれば、崩れ去っていただろう。立ち上がれなかったかもしれない。あるいはその衝動に従って彼を食い殺しに行ったのかもしれない。
だが、この街の領主としての責任が、妖精騎士としての矜持が、彼女に剣を取らせ、前に進ませる。
領主として、騎士として、目の前の下手人を斬らねばならないと思考する。
領主として、騎士として、この街を害した悪へと斬りかかる。
目の前の男は構えすらせず。自然体のままにこちらを見ていた。
――――――――――――――――――――――――
「なんで、一体こんな事に…」
もはや、街としての体裁を保てていないマンチェスターに彼らとは別の集団が降り立った。
彼らはカルデア。正しき時代、正しき世界。汎人類史から来た侵略者。
自身の世界を巻き込んだ滅亡が、この妖精國にて巻き起こると察知し、訪れた。
今までの異聞帯とは違う。終わりの決まったこの世界。どうせ自爆するのだから、滅ぼす必要の無い世界。その救いのない世界に、その滅びに、自身の世界が巻き込まれない為、そして、その世界にせめて一抹の救いをと、圧政を敷く女王モルガンの打倒を目指し。今は予言の子と言われる少女と、救世主として、妖精國を巡っていた。
女王打倒のその過程で、妖精騎士ガウェインと戦い。そして人となりを知った。
自分たちの知るカルデアの英雄達に勝るとも劣らない、誠実な気概。騎士然とした彼女は、女王の圧政を良しとはしていない様子で、こちらの味方に引き入れることが出来るのではないかと思える程度には、心を許していた。
だから来た。改めて、彼女の助力を得る為に、彼女の力を借りる為に。彼女が収めるこの街にやって来たのだ。
だが、今はまさしく不測の事態だった。
街の妖精や人間は惨たらしく殺されており、生きている生物は皆無だった。
周辺を探索すれば、納屋の中には弄ばれて殺された人間達の死体が積み重なっている。
妖精達の死体は、鮮やかに鋭い一撃で殺されている物もあれば、強い力で叩き潰され、その衝撃のあまり乱暴に体そのものが吹き飛んでいるような物もあった。
「こりゃあ、1人の仕業じゃねえな」
周辺を観察し、一息ついてから男、村正が呟く。
「人間を殺した奴と、妖精を殺した奴は別もんだ」
「じゃあ、軍隊か何かが攻めて来たのかな、まさか、バーゲストの事に気付いた女王軍が……」
村正と会話を始めた20代程の青年――藤丸立香。
彼も同様に惨劇を目に焼き付けながら村正へと問いかけ、一つの可能性を口に出す。
村正は妖精の持つ槍を観察し、納屋を交互に見ていた。
「村正?」
「下手すりゃ人間の方をやったのは――」
村正がその推理を言い切る前に、凄まじい程の魔力が奔流するのを感じ取る。これには覚えがあった。
「多分バーゲストだ!」
一際小さい少女、レオナルドダヴィンチが声を上げた。
「下手人を見つけたのかもな……」
「行ってみよう!」
藤丸立花の合図を気に。その現場へと走り出す。
そんな中、カルデアの者達と共にいた1人の少女が、その場で立ち尽くしていた。
「そんな……何で……こんな事……無かったのに…」
呟いた少女の言葉に応えるものはいない。
その呟きが空へと消えた後、一拍遅れて、彼女も彼らに続いていった。
・トオル:マジでこんなに早く来るとは思ってなかったのでめちゃめちゃ焦ってる。
・バゲ子:正義の騎士として、悪を斬らねばならないと自身を奮い立たせる。しかし、ショックすぎてしんどい。最愛のアドニスを託せる程に信頼したのに。
・カルデア一同:通り掛けにちょっとお話しようと思っただけなのに…バトルはあるかもとか思ってたのに惨劇が起こってるとは思ってなかったよ。
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