世界を敵に回しても   作:ぷに丸4620

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評価、感想ありがとうごさいます。
誤字報告本当に助かります。


決戦③

(番狂わせにも程がある!)

 

 

参戦するランスロットを見る。

 

こんなはずではなかった。

 

この妖精國は自分の家の周りしか見えない愚か者ばかり。

 

だからこそ確実だと見越して実行に移したと言うのに。

 

 

あのままウッドワスに殺させるはずだった女王。

 

万が一殺せなかったとしても、娘を人質に取った上での殺害も企てた。

 

それが失敗に終わったとしてもオーロラの風が全てを終わらせるはずだった。

 

それさえも前座だ。

最後の最後に予言の子さえ来ればどうにかなるとも思っていた。

 

それが、ウッドワスによる殺害はあの男に邪魔をされ。

 

娘を利用した策とオーロラの風はそのウッドワスに邪魔をされ、予言の子がきたと思えばムリアンが牙の氏族を引き連れてやって来た。

 

(話が違うでは無いか……!)

 

とある男に聞いたムリアンの復讐心。

成る程と聞いてみてみれば、あれほどわかりやすい憎悪も無かったというのに。

 

どう言った心変わりか。

 

挙句の果てには妖精騎士ランスロットの登場。

あの妖精はオーロラに与している筈ではなかったのか。

 

全くもって度し難い。

 

苦虫を噛み潰す表情を作りながら彼、スプリガンは戦況を分析する。

 

あの哀れな女王は未だ這いつくばり無様な姿を見せている。その執着はあまりにも醜く。しかしその執念があるからこそこの2000年という途方もない支配が続いたのだろう。

 

とはいえ、まだまだ玉座には辿り着くまい。

牛歩よりも遅いその進みはそれこそ戦いが終わったとしても続くのではないかと思う程だ。

 

妖精騎士ランスロットも一気にこちらが蹂躙されるかと思いきや異邦の侍と奇術師2人が中々対等以上の戦いを演じている。

 

そして予言の子や異邦の魔術師達は全くの無傷。

謎の影や盾を持った少女は後方に襲い掛かる牙の氏族を追い返しているがまだまだ持ち堪える事はできでいる。

 

ニヤリと笑う。

まだだと。まだ戦力としてはわずかながらもこちらが上だ。

どこかしらの隙をついて女王を殺す事は可能。

 

焦る事はない。

 

 

 

 

 

そう、考えていたのだが――

 

 

 

 

 

 

爆音が響いた。

 

それは大広間の壁が破壊される音だと気付いたのは、横合いからの土煙から巨体が現れたのを見た時だった。

 

巨大な体躯。

金髪の髪。

肉食獣のような獰猛な瞳。

それに似合わない精錬された甲冑。

 

そこにいるのは、もう1翅の妖精騎士。

 

妖精騎士ガウェイン。

 

予言の子に与した女王にとっての裏切り者。

 

反乱軍側についた。最大戦力の1翅。

 

ここに来て戦力がと、スプリガンが期待したところで。

 

 

 

 

彼女が剣を向けたのはこちらだった。

 

 

 

 

普段ならば西洋の騎士らしく、名乗り上げでもするのだろうが、彼女は黙して語らず。

 

ただ無言で女王の首を取ろうと隙をつき、移動していた王の氏族の妖精を吹き飛ばしたのだ。

 

もはや言葉もなかった。

 

まさかまさかの妖精騎士ガウェイン。

それもあちらに与するとは、予言の子を見れば信じられない様子。

 

一体どういう交渉をしたのか。

 

どのような報酬を寄越したのか。

このように二重に裏切られるなどなんたる間抜けな事だと視線を送るが気づかれず。

 

(最早、予言の子の勝利に期待など……!)

 

できないと。

 

踵を返し、逃げようとしたところで。

 

(馬鹿め、逃げてどうするというのだ……!)

 

このまま予言の子が敗北すれば、どの道自分は謀叛者の1人として処刑されるだろう。

 

所持している宝の全ても奪われる。

そもそも死んでしまえば宝も何も無い。

もはや自分の未来は予言の子に掛かっている。

 

(このまま無様に宝物庫に籠るくらいであれば――)

 

スプリガンの脳がこれまでにない程に熱を上げる。

この二転三転してきた状況に対応しようと、策を巡らす。

 

ここまで来れば奇策は通用せず。

 

 

――単純な手でいくしかあるまい。

 

 

「何をうかうかと!!」

 

自分でも驚くほどの声が出た。

 

「あなた方は救世主として、この妖精國を救う為に巡礼の旅を巡って来たのでしょう!?」

 

まず考えついたのは士気の向上だ。

 

現状戦力としてはランスロットには侍と賢者で同等。

 

ガウェインには盾の少女と不可思議な影達で同等。

 

他は有象無象。

 

ウッドワスなど雑兵と変わらない。

 

予言の子はどういう訳か傍目で見てもわかるような戸惑いを見せている。

他の妖精達を守る為の魔術を用いているだけで戦いには積極的では無い。

彼女こそモルガンと同等と言われる程に力をつけたはずの予言の子なのだ。

彼女がやる気を出せば決着は着くはず。

 

そう見越しての似合わない行動。

だが自分の言葉で士気が上がるとは思ってはいない。

 

本命はこの後だ。

 

「あの愚かな女王が再び玉座に着く事を許しても良いのですか? 見なされ!! あの女王の姿を!」

 

 

味方を鼓舞できないのであれば敵の格を貶めれば良い。

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

――稲妻を見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

妖精騎士ガウェイン。

 

本来であれば女王モルガンを守護する役割を持つ妖精國最強の騎士の一人。

 

しかし、彼女はアドニスとマンチェスターの住人(愛する者達)の為に彼女を裏切る事を決めた。

 

上っ面だけの予言の子との戦闘を終了させ、正門を通し、今は反乱軍に協力しながら女王軍の前に立ちふさがり彼らの戦意を削ぐ役割。

 

これ以上ない程の裏切り行為。

 

 

滅びる前提の世界でありながら、それでも救世主としてこの妖精國を救おうとする正義を尊いと感じ、利害の一致と正義は彼らにあるという考えの元決意した。

 

その決断に迷いはない。

 

その時だった。

 

城の中枢。

 

不思議な、何故か覚えのある感覚に振り替えれば視界に入ったのは青白く光る稲妻。

 

「アレは――?」

 

疑問が口から出た瞬間、妖精騎士ガウェインはその意識を閉じる。

 

それは奇しくも妖精騎士ランスロットと同じ現象。

 

 

 

『愛する人を食べしまう事とバーゲストが卑しい獣で、死んだ方が良いって言うのはまた別の話だよ』

 

 

妖精騎士ガウェイン。

真名はバーゲスト。

 

彼女は城から迸る稲妻を見た瞬間に意識を失い、夢を見た。

 

 

 

 

映し出されるのはさまざまな記憶。

 

マンチェスターでの、1人の青年との交流だ。

 

今のバーゲストの記憶にはないやり取り。

不思議とそれが単純な夢であるとは思わない。

それが別の時間軸。並行世界のような所から流れる情報であると言うのを察するのに、時間は掛からなかった。

 

 

 

 

幾度も繰り返す彼とのやり取りは、無限だと思える程に多岐に渡るが、大筋はさほど変わらないものだ。

 

基本的には出会いは最悪。

 

彼とはマンチェスター周辺をうろついているところで出会う事が多かった。

 

人間が1人出歩いている事は基本的には異常である。

故に怪しい者だと疑ってかかるのが殆ど。

 

だから、彼を人間牧場の脱走者と断定し、ある程度の問答の末――

 

 

 

 

 

 

 

 

彼の首を落とすという結末が殆どだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何度も何度も。

 

何度落としたか分からないほどの回想を経て。

 

 

 

 

次の情景へ進む。

 

 

 

首を落とさずに済んだ先の未来。

彼が異世界から帰郷した元妖精國の人間だと判明し、マンチェスターに案内していく。

 

彼は良い人間だ。

他者を敬い、弱き者を守ろうとする善人だ。

騎士道というものを心底軽蔑している辺りはウマが合うとは言い難いが。

それさえも一つの考えとして正しい騎士道を貫く上での参考になりえる。

そして人間にしては強い。

それこそ何度も首を落とせた事が信じられない程の強さだった。

 

だが、彼はその記憶のほとんどを失っており、自身の記憶を思い出せない時はその力を発揮できずに死んでしまうことも多い。

 

マンチェスターに住む条件として提示したモース退治の過程で死んでしまうこともあった。

 

遠征から帰ったらいつの間にかいなくなっていた事もあったのは、マンチェスターの妖精に殺されたか、自分自身が食べてしまったか、その二つ。

 

それを客観的に記憶に叩き込まれた時の罪悪感は、それは凄まじいものだ。

 

 

 

 

 

 

情景はまた移り変わって行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

予言の子。

 

と言うよりは異邦の魔術師達、カルデア。

 

女王を裏切り、彼らにつこうとしている自分。

 

この世界を滅ぼす立場のはずの彼ら。この世界は勝手に滅ぶと。故に自分達は侵略者ではないと彼らは言う。

むしろ自分達は妖精を救おうとする側だと、そう屈託なく宣言する彼らを尊いと思ってしまった。

 

 

ある日。

 

 

とある時間軸。

女王を裏切るべきか彼に問うた事があった。

 

確かにに彼らは善人だ。

だが彼らは、万が一世界が存続されるようで在れば、ブリテンを滅ぼす側の存在。

あくまで世界の問題であって、自分達は侵略者でないと言うのはただの屁理屈。

 

彼らの事をそう称した。

 

彼らは救世主を名乗りながら結末の不明な予言に従って行動しているだけで、その先を見ていない。

 

わかりやすい悪である女王を殺せば解決すれば國が成り立つというのは詭弁であると。

その後の国政を担おうともしない時点で愉快犯と変わらないと。紛れも無い悪だと。

 

世界を滅ぼす罪を中途半端な善行で誤魔化そうとする偽善者でしか無いと彼は言った。

 

彼らの偽善がもたらすのは救いではなく、その国の混乱。

本当の意味で妖精國を救う気はないにもかかわらず救世主を名乗りただ國を掻き乱したあげく、満足して去っていくであろう彼らを心底嫌悪していた。

 

彼はこちらも戸惑うほどの女王派。

 

大厄災から妖精を守ろうとしない女王を愚痴る自分に、あまりにも勝手だと憤慨していたのは数々の記憶の中でも印象的だった。

 

全てを女王に頼りきりだった癖に今更その程度の悪政で手のひらを返すなと、彼は怒りを示した。

 

それもわからずに上辺だけので善意を語り、この國に戦争を巻き起こしたカルデアを絶対に許さないと恐ろしい程に怒りを示す彼を見て、

 

バーゲストは、それを正しいとも間違いだとも言う事はできなかった。

 

 

 

 

その答えは未だ導けないまま。

 

愚かな自分は女王を裏切る事を決めた。

 

それが殆どの選択。

 

女王を裏切り、世界を裏切り、侵略者である彼らに就く事で得られる対価。

 

アドニスとマンチェスターの住人(愛する者達)を汎人類史に住まわせる事。

 

その対価にもはや価値は無いとも気づかずに。

 

 

 

 

また情景は変わっていく。

 

 

 

バーゲストが見せつけられているのは厄災と化した自分だ。

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()という事実。

 

そしてマンチェスターの住人のおぞましい残虐性。

 

常々汎人類史の騎士を参考に、マンチェスターの住民を教育して来た。

 

バーゲストのように騎士道を重んじるようにと。弱きものを守るようにと。弱肉強食を常に教え込んできた。

 

だが、そんな彼女が、騎士としての矜持を誇っていた彼女自身が人間を世話しながらも裏では喰らうという罪を犯していたのだ。

 

汎人類史の騎士を目指す彼女のように在れと教育した結果。

 

バーゲストを参考に妖精達はその遊びを覚えてしまった。高潔な騎士の行いだと教育してしまった。

 

妖精騎士バーゲストのような立派な妖精がやってることなのだから、その遊びは正しい物に違いない。

 

結果的にそう教育してしまっていたのだ。

 

 

卑しい獣である性分のせいで、マンチェスターの住人に、愚かな虐殺を正しい事だと、これが自身の提唱する騎士の在り方だと思わせてしまった。

 

そう()()してしまった事に対する罪は、もはや償いきれるものではない。

 

 

そんな道化以下の自分を俯瞰で見せつけられている現状。

 

その絶望は生きようとする気力を更に削ぎ落とす。

 

この情景が夢であれ、並行世界の出来事であれ、今の時間軸の自分はその罪を犯した大罪者だ。

 

既に後悔したところで、目が覚めれば女王を裏切り、予言の子を導いた事実は変わらない。

 

目が覚めたら早々に自害してしまおうと。

そう決心したところで。

 

 

夢の中の自分は、あまりの絶望に厄災へと変質していく。

 

そう、厄災だ。自分は予言にあるような獣の厄災。

この妖精國を滅ぼす為に生み出された呪いそのものだったのだ。

 

 

 

絶望は加速する。

 

 

 

 

それでも気を保てたのは、あるいは記憶の中の彼の行動だろうか。

 

毎度巻き起こるマンチェスターの暴動。

 

マンチェスターの住人が彼によって全滅させられていた。

 

彼はいつも、マンチェスターでの虐殺を彼自身の責任にしようとしていた。

襲われたのではなく、自分から癇癪を起こして暴れたのだと。

そして最後まで。私がその記憶を思い起こすまで、アドニスの事を隠そうと尽力していた。

 

彼がアドニスを隠し通せなかった時、あまりの絶望に殺してくれと、頼んだ時もあった。

 

 

『無理だよ』

 

 

だがいつも断られてしまう。

 

 

()は君を殺すなんて出来ない。悪でも何でもない君を殺す勇気は僕にはないんだ』

 

 

彼は、いつも厄災と化した私を殺すのではなく救おうと尽力する。

殺す事こそが救いだと説得を試みても聞いてくれる事は一度もない。

殺す事も救いだという甘えなど認めないと、そんなものは殺した側が罪軽くするための詭弁だと、そんな屁理屈で自分を誤魔化せる程薄情にはなれないと、彼は決して諦めない。

 

『本当に、妖精っていうのはどいつもこいつも……何でそう滅びたがるんだ!』

 

()()()()()()調()()()()

人格さえも違うのでは無いかと思うほどに性格は毎度異なっている。

 

 

 

 

だが、どんな性格であろうと厄災と化した私が彼に殺されたことは、ただの一度も無かった。

 

 

 

厄災と化してなお、私を救おうと彼は足掻き。

そして不思議な稲妻を身体から発現し、毎度のごとく飛び込み、彼は厄災となった私の口腔から侵入を試みる。

 

雷喰いのバーゲストと揶揄されるがまさにそのままと言った所か。

 

そして暗闇の中対話が始まる。

 

 

『確かに妖精達の残虐性は、君からすれば醜いかもしれない』

 

 

今の夢のような彼の稲妻による精神観象による対話。

 

 

『だからって滅びるべきだなんて。そんな理屈で自殺なんて絶対許せない』

 

 

暗闇の中の対話は多岐に渡るが結論は同じだ

 

 

『妖精が醜いからこの世界は滅びるべきなんて言うなら。それこそ汎人類史の人間連中も醜さは変わらない』

 

 

彼は、私以上、あるいは女王以上にブリテンを愛している。

 

誰しもがうらやむ汎人類史の情報を、そんなものは表向きのものでしかないと、確信する。

 

 

『見苦しいからだの、存在が間違ってるからだの。そんな偉そうに勝手な理屈で妖精國は滅ぶべきなんて言う奴がいたら、()はそいつを絶対に許さない』

 

ブリテンの事になると、どんな柔らかな人格でも少し過激になるのは毎度の事だ。

 

『比べる相手を無駄に美化して自分を貶めて死ぬべきだなんて。そんなの悲しすぎるよ』

 

私は醜い獣だ。

決して生きるべきではない。

その考えをそう簡単に切り替えることは出来ない。

 

何せもう今の私は彼との交流は存在しない。

浅い考えで予言の子につき、つい先ほど正門を通してしまった。

これ以上のない罪を犯してしまっているのだ。

 

女王を裏切った。

 

裏切る理由である愛する者達はもういないようなものだ。

 

自分は死ぬべきだ。

 

醜い自分は死んで詫びるべきなのだ。

 

そもそもとして生きる理由もない。

 

 

 

 

 

『お願いだから生きてくれ。バーゲスト』

 

 

 

 

 

 

 

 

だが――

 

 

 

 

 

 

あらゆる時間軸で、あらゆる世界で。

 

 

 

 

 

 

何度も私を救おうと尽力してくれた彼を裏切る事だけはしたく無かった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

戦いの喝采が響く中。

2翅の妖精騎士が並び立つ。

 

「やあガウェイン。陛下を裏切って予言の子に就いたと思ってたんだけど……」

 

グリムと村正の攻撃を軽くいなし吹き飛ばした後、ランスロットはガウェインに声をかける。

 

そう問われ、ガウェインは悲しげな表情を作る予言の子一同を一瞥した後、目を伏せる。

 

 

「ランスロット……すまない。私は――」

 

 

その謝罪の意味を理解できないランスロットでは無い。

 

 

「……僕も君と一緒さ。責めれる立場じゃない」

 

 

どこか殊勝な態度のランスロットに何かを察っしたガウェインは彼女に問い質す。

 

 

「……それならば何故?」

 

「――彼がいるからさ」

 

 

当然の疑問を挟めば、返ってきたのはシンプルな解答だった。

 

 

「彼――? まさか……」

 

 

他のものであれば意味のわからないその解答も、今のガウェインならば察する事が出来る。

 

つまりはそういう事だろう。

 

 

「…… お前もか。ランスロット」

 

 

そしてそのガウェインの態度にランスロットも思い浮かぶものがあったのだろう。

合点がいったような態度を見せる。

 

 

「だが何故だ?……あくまで記憶でしか無い。今の我々とは無関係だと言うのに」

 

 

その答えは、ガウェイン自身は既に持ち合わせている。

 

 

だがそれはそれとしてランスロットの答えを聞いてみたいという興味が勝った。

 

 

「それでも、感触も、この思いも、確かに僕の中に残ってる」

 

 

それはおおむね予想通りであり。そして同じ理由でもあった。

 

 

「そうだな。だから私は恥を忍んでここにいる」

 

 

短いやり取り。

だがそれで充分とばかりに彼女らは改めて敵へと向く。

 

 

「そう……それなら話は早い。僕はあの神霊二人を相手どるから、君は妖精騎士ギャラハッドと英霊の影を頼むよ」

 

 

「……」

 

 

「どうしたの?」

 

 

そんな中でも尚不思議な態度のガウェインにランスロットは問いかける。

 

 

「いや、成る程。変わるものだと思ってな」

 

 

ガウェインの記憶の中には、ランスロットと恋人になった()()()時間軸の記憶がある。

この時間軸。自身の知るランスロットよりも柔らかい態度の彼女に、ガウェインは苦笑を浮かべる。

 

その態度にランスロットは何を誤解したのか、何かを思い出したのか。

仮面を外し、その下のしかめ面を見せる。

 

 

「言っておくけど……妻枠は陛下だけど。恋人枠は僕だから。忘れないように」

 

 

「は……?」

 

 

何かを察したランスロットは、警告をガウェインに飛ばす。

こいつは何を言っているのかと、そもそも恋人と妻に枠も何もないだろうと。さまざまな疑問を挟んだところで。まずは誤解を解こうと口を開く。

 

 

「――いや、彼はあくまで大切な友人だ。恋人関係だったことは一度もない」

 

 

その言葉に合点がいったガウェインは粛々と受け流す。

 

「本当に……?」

 

 

念のいった問いに、頷く事でガウェインは答える。

彼に対して確かに思う所はある。いずれはどうなるかはわからないという考えもある。

だが、アドニスを忘れるには彼との交流は短すぎる。

 

 

「それなら良いけど――」

 

「全くこんな時に……その恋人が今どういう状況かわかっているのか?」

 

ガウェインの叱咤にランスロットは涼しい態度だ。

 

「あの程度で死んでしまうのなら。僕も君もこうはなってない」

 

ピクリともうごかない件の男性を見ながらそう宣言する。

その通りだ。どう見ても危険にしか見えないが不思議と平気だと言う確信があった。

その意見にガウェインは完全に同意して、改めて剣を構える。

 

「とは言え、あのまま放置すれば危険なのは確かだ」

 

「ああ、だから早急にカタをつける」

 

敵、ノクナレアや予言の子一同を見据えながら闘気を増す2翅。

 

対峙する同格の相手を改めて吹き飛ばしながら、決着をつけようと魔力を込める。

 

精神は充足している。

 

隙も無い。

 

戦力はこの2翅で十分以上。

 

本来ならば敗北はありえない。

 

だが、それを言うのであれば元々そのはずだったのだ。

 

人理が漂白されている以上、この世界に抑止力は存在しない。

だが、間違いなくこの世界には汎人類史に勝利をもたらす為に都合よく妖精國を滅ぼそうとする()()が存在している。

 

この國の住人の思考回路すら操っていると言っても過言ではない。

 

あるいはそれはモルガンですら例外では無いと思われるほどの巨大な力。

 

それは、抑止力すら超えた上位存在が用意したシナリオによるものか。

 

カルデアに罪を被らせること無く都合良く女王を虐殺し、ブリテンを滅ぼすためのシナリオだ。

 

今はゆがめられたそれを修正するためなのかはわからないが。ほとんど勝利は確定的と言っても過言ではない今の状況に。

 

またひとつ動きがあった。

 

 

 

 

 

 

「何をうかうかと!!」

 

 

 

 

それは、反乱軍を殆ど勝利直前まで導いた男の声だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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