変態になることを強いられているんだ!   作:ぜろぜろん

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これって、演技だよな?

「おお、神よ! 私は夢を見ているのでしょうか!?」

空を仰ぐようにいう神坂澄乃、その姿はとても美しく新入生はそれに魅了されていた。

そして僕は腹痛に苦しんでいた。知ってるか? 局部を打つと後で何故か腹にも痛みが来るんだぜ?

んな訳で今は絶賛劇中である。僕の周りにはいまだに少し顔が赤い坂野、劇に使うのかなんかやばそうな三角フラスコを持っている今坂、そして勇者の格好をしているが背中に携えているのがデッキブラシな仙野だ。

「まさか魔王に村が焼き尽くされるなんて……」

そして悲しそうに神坂は演技を続ける。

次は男子が神坂に襲いかかるはずだが本人は神坂に見ぼれて動かないでいる。

仕方ない……

「天野、次」

 

「あ、横須賀か。すまんな」

天野はそう言いながら舞台に駆けて行った。そして次に神坂を助ける勇者である仙野がスタンばる。

「横須賀君」

 

「んあ?」

いきなり仙野が話しかけてきたので変な返事をしてしまった。

「神坂さんすごいねー」

 

「だな」

 

「ねえねえ横須賀君」

 

「んあ?」

仙野が尋ねるように言ってくる。やはり本番なだけに緊張しているのか?

めちゃくちゃな奴だったがそこは普通の女の子……なのか?

「天野くんをどう倒せばいいのかな? 軽く叩けばいいのかな?」

 

「いや、叩かんでもいいだろ。」

仙野は神坂に襲いかかる男を撃退して助けるいわゆる勇者である。

背中には剣ではなくデッキブラシがあるが……

「でも、リアリティを求めるには……」

 

「お、おい仙野、出番だぞ」

 

「ど、どうすればいいんですかぁ!!」

 

「とりあえず落ち着け! はい、吸って〜、吐いて〜」

 

「ふぅー、ふぅー……」

とりあえず気分を落ち着かせるようにする。意外とこだわるやつなんだな……

しかし天野も神坂も今はアドリブで頑張っている。

「いいか、仙野。ここはだな……」

僕は仙野に叩かないよう言い聞かせようとする。そこでメール。

なんかやるせない気持ちになりケータイを取り出す。

『仙野の好きなようにさせる 今でしょ』

今回はすこぶる腹が立つメールだった。しかし俺はそれに従う。

「オマエノスキナヨウニシナサイ……」

 

「横須賀君……わかった! がんばるよ!」

噫無情……嫌な予感がする……

 

「やめたまえ! 女の子を離すんだ!」

そこまでは台本通りだ。しかし違ったのはその行動。

彼女は天野をデッキブラシでフルボッコにする。

「ぐ、ぐわぁぁぁぁ!!」

天野ォォォ!!

僕は心の中で叫ぶ。しかしフルボッコにされた後天野はふらりと立ち上がった。あれ? そこって小物風に逃げるシーンだったよね?

「この痛み……」

なんだか嫌な予感がする。

おや、天野の様子が……?

「この痛み……だぁ!!」

どこのコ○ラ部隊の隊員だ! 最後には『ペイーーン!!』って叫んでそうな。

なあ、これって演技だよな? アドリブだよな? 目覚めてないよな?

しかしこのアドリブ? の嵐をきっかけにクラスの連中がなだれ込む。

「仙野さん、もっと、もっと俺に痛みをくれぇ!」

天野ォォォ!! 別の意味で天野ォォォ!!

「う、うん! ……あれ? なんだか……うふふ、あはは!」

 

「これだ! このパンチ!」

仙野がサドスティックハイになった!!

おい、これ収集つくのか? 神坂めちゃくちゃ戸惑ってんぞ。

「直利君、どする? いっちょやる?」

 

「なんでお前も乗る気マンマンなんだよ!!」

さすがはマッドサイエンティスト(役)考えがきつい!

ん、メールだ。何々?

『「いっちょやってやりますか!」と言う。そこからは台本の指示に従い演技をする。今だよ。』

「いっちょやってやりますか!」

 

「さすが直利君! 俺達に出来ない事を平然とやってのける! そこにシビれる憧れるゥゥ!!」

お前もしようとしてたろ!

シビレもしねぇし憧れもしねぇしその顔文字は流行らないし流行らせない!

そういや台本の指示に従うのだったな。

「お、おいこれはどういう……」

 

「あ、坂野」

軍服で待機していた坂野が見かねて僕に聞いてきた。

すると手に痛みが走る。これは静電気か? 手を確認するとその手に掴まれていたノートに目がいった。

『さ、俺と愛の逃避行だ!』

これって、台本だよな? しかし俺が頑張って覚えた内容とは全然違うものだった。

しかしさっきのメールの内容は『台本の指示に従う』だった。やらねば、部屋から何がなくなるか……

「さ、俺と愛の逃避行だ!!」

 

「は? え? えぇぇ!?」

坂野の顔が一気に赤くなる。すまんな、けど恥ずかしいのは君だけじゃないのだよ。

そして俺はそのまま台本を確認する。

『手を取って舞台に躍り出る』

 

「許せ、坂野!」

 

「んなぁぁぁ!!」

また坂野の顔が赤くなる。だから僕だって恥ずかしいのですよ!

「さ、次はなんだ! どんとこい!!」

 

『ベロチュー』

俺は人生で二回目の指示を無視を実行したのであった。

 

 

あの後、僕はベロチューの代わりに坂野をお姫様抱っこして新郎風にくるくると回った。

客席からは歓声が聞こえるが先生に止められ劇は中止。

僕は仙野を緊張させてはならないこと、天野に刺激を与えてはならないことを学んだ。

坂野は口を聞いてくれなくなった。

「直利君、お疲れ」

 

「本当にお疲れだから困る……」

今坂からお声がかかる。マジで疲れた……

まあ、下ネタに走らなかっただけマシとするか……

「ん、これあげる」

 

「お、コーラか。ありがたい」

今坂が気を利かしてくれたのかコーラをくれた。おかしな奴でもあるのだが、いい奴でもある。

『今日はお疲れ様でしたー、さよならー』

先生が終わりの言葉を言い周りが各々行動を始める。家に帰る者、部活に行く者、デートに行く者……死ね!

さて、今日も帰ろ、おうちに帰ろう。

「じゃあな、今坂」

 

「また明日」

 

 

「そ、そんな……」

これは僕が寮に帰った時の出来事。

そう言えば忘れていた。指示を無視すると自分と関係者の所持物がなくなるのだ。

「40型の液晶テレビが……」

メールにはこう書かれていた。

『貴方が無くしたのはこの40型液晶テレビですか?』

僕は誓った。どんな指示にも応えようと。

 

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