『1着は――――! 見事レオ杯の栄光を勝ち取りましたー!』
スタンドの熱狂に迎えられ、勝者となったウマ娘がスタンドに向かって手を振る。その後ろで、ナイスネイチャは妙に醒めた気持ちで電光掲示板を振り返っていた。3着のところ、そこには自分のバ番が表示されている。
(今回「も」……三着か)
仕方ない、やれるだけやった。そんな風に思う。そして三着だ。実に自分に似つかわしいではないか。
でも、それなら。
この胸にあるわだかまりは一体何だろう?
控え室の方へ戻る通路で、自身のトレーナーが待っていた。いつものように、ネイチャはおどけて声をかける。
「いやー、残念ながら今回も勝てませんでしたよっと。まー、三着がネイチャさんにはお似合……い……?」
だが、その言葉は途中で止まってしまう。何しろ、目の前では。大の男が大泣きに泣いているのだがら。
「ちょちょ、ちょっとちょっと。どーしちゃったのさ、トレーナーさん?」
「ネイチャ……済まないっ……!」
嗚咽交じりに「済まない」「悔しい」を繰り返すトレーナーをなだめながら、途切れ途切れに語る彼の言葉を聞いて、ネイチャはなぜ彼がここまで泣いているか理解した。彼は、ネイチャを勝たせられなかったのがこんなにも悔しいのだ。
「トレーナーさん、気持ちは嬉しいけどさ。でも、そんなに泣くことないよ。決勝で三着。ほら、あたしには十分じゃない」
「……本当か?」
「え?」
真摯なトレーナーの瞳がネイチャを見据える。その奥底に燻ってるものを見通すかのように。
「本当に。ネイチャは、今の結果で十分なのか?」
「そ、れはっ……!」
ダメだ。「それ」に気づくな。気づけばもう、平静ではいられない。
でも、無理だった。目の前の男がここまで激情を露わにしているのに。どうして自分だけが取り繕っていられるだろう?
「……そんな、ワケ。ない……じゃんっ……! あたしだって……悔しい……っ! 勝ちたかったっ……!」
一度堰が切れてしまえば、もう駄目だ。どうにもならない感情が涙と嗚咽となって溢れてくる。
人の通らない通路で、暫く二人の泣き声がこだましていた。
※ ※ ※ ※ ※
暫くして、ようやく落ち着いた二人は何かを誤魔化すかのように互いに顔を背けた。今更何もごまかせないが、それでも気恥ずかしいものは気恥ずかしい。
「あー、その。スマン、ネイチャ。みっともないところを見せた」
「……今更そーゆーの、ナシだと思いますけど? 大体、トレーナーさんのみっともないところならもう散々見てますしねー?」
「うっ、まあ、それはその」
「だからまあ」
ネイチャはそっと、トレーナーの手を取る。
「改めて頑張りましょ、トレーナーさん。今度は、勝って笑えるように」
葉月のターフに、男と少女は誓いを新たにする。誰もが目指す栄冠を、今度こそその手に掴むと。