財前夢 シリアス・切
主人公の名前は『小羽』です。
入院中のヒロインと、そのヒロインを本気で好きな財前の話です。
ある歌をテーマに執筆させていただきました。
ねぇ。 アナタの隣に居ることが、私にとっての1番の幸せ だったんだよ?
ありがとう
そして『 』
コンコンッ
ボーっと外を眺めていると、ドアをノックしる音が 聞こえた。
「どうぞ」
「小羽~。今日も来たでー」
「アハハ。いらっしゃい」
ドアを開けて入って来たのは、私の大切な人たち だった。
"四天宝寺中学校男子テニス部レギュラー"
だけど、1人足りない…
「光は?」
「委員会があるんやと、それより調子はどうや?」
「そうなんだ。今日は調子いいよ。昼だって中庭まで 行って来たし♪」
「ホンマ!?良かったな~。その調子ではよぉよく なってな。」
「ありがとう。小春ちゃん。」
ここは病院。
私は2ヶ月前からずっと入院しているのだ。
「せやで小羽。小羽がおらんと財前のツッコミにきれがないね 」
「うるさいっすわ。浪速のヘタレスターは黙っとい て下さい。」
「おわっ!!財前きとったんか。……ってか、『ヘタ レ』やなくて『スピード』スターや!」
「ホンマ黙っといて下さい。委員会終わってすぐ来たんすよ。
………調子…良さそうやな…。」
「うん。」
私が笑顔で答えると、光は安堵の表情を浮かべ、ベッドの端に座った。そして、そのまま私の頭を撫でる。
光の優しい表情と仕草にときめく反面、胸が痛んだ。
(また、少し痩せた…)
前回見舞いに来てくれた時より頬が痩けていて、顔色も悪い。
「なんか飲むもん買ってきますわ。小羽先輩はなんか欲しいもんありますか?」
「じゃあ、紅茶が飲みたい!」
「ストレートでええっすよね?」
「うん。」
「わかりました。」
光はそう言って、もう一度私の頭を撫でてから病室を出て行った。
「蔵」
「……なんや?」
「光…さ、またご飯食べてないの?」
「っ。そうみたいやな」
「…そっか。ありがと。」
光は私の入院が決まった時もご飯を食べなかった。
その時は、蔵や謙也と一緒に説得したけど
「今回は私に任せてもらえないかな?光と2人で話しもしたいし。」
「…おん、わかったわ。
財前も小羽と2人になりたいやろうしな。」
「ありがとう。」
私と光、2人の問題なのだ。
蔵たちに頼りっぱなしなんてよくない。
「ほな、また来るわ。」
「うん、ありがと。」
蔵たちを見送ってから光が帰ってくるのを待った。
「小羽先輩。って部長らは?」
「用事があるって帰ったよ?」
「そーですか…」
(少し目赤い……)
「光。話しがあるんだけど…」
「何っすか?」
「ご飯…ちゃんと食べて?」
「………」
「ねぇ?」
「…………嫌っすわ。」
俯いた光は、声が、肩が震えてた。
「光、」
「嫌や。なんでなん?別にええやんかっ…」
「ダメだよ。」
「嫌や。」
「光!」
大きな声で呼ぶと、やっと光が顔を上げた。
その顔を見た瞬間に罪悪感に襲われる。
クールだといつも言われている光の顔に涙が伝っている。
「嫌やっ。…あんたがいなくなるくらいならっ…」
「そんなこと言わないでよ。」
『中学校を卒業するまでもつかわかりません。』
入院してすぐそう言われた。このことを知っているのは、家族とオサムちゃんと光……
本当は光に1番知られたくなかったよ?
光に心配かけたくなかった、 迷惑かけたくなかった。
「あんたが好きや。いなくならんといて…」
光が泣きながら抱きしめてきた。力が入りすぎて苦しいくらいだ。
「…私も好きだよ。それにね、私幸せだよ?光は辛いだけだったかもしれないけど、光を好きになれて、光が私を好きになってくれて。
ホントにそれだけで凄い幸せ。」
皆は光に私にもっと優しくしろって言ってたけど、光は誰よりも私に優しくしてくれた。
私の事を1番に考えてくれた。
光の腕の力が弱まった隙に光の腕から抜け出す。
少し痩せた光の頬には、まだ涙が流れている。
「だからね。もう泣かないで。」
「泣いとらんっすわ。」
「嘘つき…」
光の涙を見たくない。震える声をもう聞きたくないよ。だからね…
「ね、光。別れよ?」
「な、に言ってるん?」
「そのまんまの意味だよ。」
「ふざけんなや!嫌や!絶対に別れん!」
光の大きな声に驚いた。こんなに声を荒げる光なんて初めてだ。
「じゃあ、約束して?
もう泣かないって、ご飯もしっかり食べるって。」
「約束します。せやから、もう別れるなんて言わんといて…」
「…うん。言わないよ。」
そう言って光を抱きしめた。肩が少し震えている。
ごめんね。光。
「大声出してすんません。」
「ううん。私の方こそごめんね。」
「…もう言わへんのやったらいいっすわ。
それと…あんたは俺が辛いだけかもしれん言うとったけど、俺も幸せやで?」
「っ。ありがとう」
「何泣いとるん?」
光の手が涙を拭ってくれた。少し触れた指さえも愛おしい。
「幸せすぎてさ。光、好きだよ。」
「俺は小羽のこと愛しとる。」
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いつの間にか眠ってしまっていたようだ。
手に温もりを感じて目を開けると、光が私の手を握ったままベッドに寄り掛かるように眠っていた。
「一緒に居てくれたんだ…」
握られていない手で、光の頭を撫でていると涙が溢れてきた。
「…ごめっ、ごめんね光。」
ずっと一緒に…ずっと光と一緒にいたい。光がテニスをしている姿を1番近くで見ていたい
だけど、ごめんね?
もう無理なんだ。自分でもわかるくらいに体が弱ってきてる。
嫌だよ。怖い。死にたくないよ。
何回も神様を恨んだ。ううん。今だって恨んでる。
なんで私は光から離れなきゃならないのって……
でも、そんなの意味ないんだよね。
「光っ」
好きだよ。好き。大好き。だから、光に幸せになってほしいよ…
「お願いだからっ……」
痩せた頬に涙を流さないで?震えた声でもう語りかけないで?
私も頑張るから。私の命がなくなるまで、私を愛してくれるアナタを笑顔で向かえるから。私がいなくなっても、次の場所で幸せになってよ。
アナタの隣にいることが私の1番の幸せだよ。
私に幸せを、愛をありがとう。
入院してから私は光に色んなことを伝えた。
いつ、何で光を好きになったか。とか、初めて手を繋いだ時や、初めてキスした時の気持ちとか…
私の想いいっぱい伝えたよ。
だけどね、1回も私が光に言ったことがない言葉を光は気付いてた?
「ごめんね。」
これは聞き飽きたかな?
「ありがとう」
これもたくさん言ったね。
私が一度も言ったことがない言葉。
それは……
「さようなら。光、愛してるよ。」
そう言って私は光にキスをした。
End
読んでくださり、ありがとうございます。
ちなみにこの小説のタイトルは友達と一緒に考えました。
『最期の笑顔なんてない』
ヒロインは自分の余命の短さを感じ、死ぬ覚悟はしている。だから、せめて死ぬまでは辛そうな姿は見せずに、笑顔で財前と一緒にいたい。
でも、本当は死なずにずっと財前と生きていたい。
というヒロインの抱える矛盾から、終わりなんて(死ぬときなんて)こなければいい。
だから『最期の笑顔なんてない』なんです。
『最期』なんてない。ずっと財前の隣で笑顔でい続けたい。
そんなヒロインの心情からこのタイトルにしました。
大変分かりにくい説明で申し訳ありませんm(__)m
まだまだ未熟な物書きですが、感想をいただけたら嬉しいです。