キョウエイボーガン ~命運は矢となりて駆ける~   作:エガヲ

14 / 25
これは本編完結後に、後から追加したおまけエピソードとなります。
※ここから読んでも多分支障はないです

本編の最初の話はこちら

時系列的には本編の3話と4話の間の、サイドストーリーの3.5話の続き。

キョウエイボーガンの怪我明けの復帰戦のあたり(クラシック級の5月末頃)のエピソードです。


歩くような速さで プロローグ

 トゥインクル・シリーズ――。

 

 今やその名を聞いたことがないというのが珍しいほど、国民的なスポーツ・エンターテイメントとして認知され、ファンから熱狂的な支持を受けている、ウマ娘が贈る祭典。

 毎週土曜日と日曜日に行われ、華やかな晴れ舞台を彩っている。

 ウマ娘たちが栄光のセンターを目指して、互いに全力で競い合い、レース後の一流アイドル顔負けのライプパフォーマンス――。

 その臨場感たるや、観るものすべてを熱狂の渦へと引き込むこと間違いないであろう。

 

 まるで夢のような空間……それがトゥインクル・シリーズ。

 

 その楽しみ方は千差万別に様々があるが、やはり一番の醍醐味はレースであろう。

 観客(ファン)たちの応援を一身に背負い、たった一つの一着を目指してそれぞれのウマ娘が駆け巡る。

 

 そこには真剣勝負の世界が広がっている。

 

 皐月賞、ダービー、菊花賞のクラシック三冠レース……。

 宝塚記念や有馬記念のグランプリレース……。

 そんな最も格付け高い”GⅠ”を、何度も勝利し、栄光を掴み取る――トゥインクル・シリーズを目指すものなら誰しも一度は夢見るだろう。

 

 ほんの数年間の事であったが、わたしもレース(そこ)で走っていた。

 

 と言っても、残念ながらわたしは、夢を叶えたトップスターたちとはほど遠い存在のままで、舞台を降りた。

 

 まあトゥインクル・シリーズに出場できたってだけでも、選りすぐりのエリートの内なのだと周りから言われるけど……。

 でもやっぱり、レースに出るなら誰だって自分が勝ちたいし、憧れて目指した場所で、活躍したいと思うのは当然のことだと思う。

 

 でもそれを成し遂げられるのは、ほんの一握り……。

 運や実力……そのすべてを兼ね備えたものだけが、その頂へと登れる。

 

 そんな儚くとも厳しい理を持つ世界――。

 一度のレースで勝者はたった一人だけという、果てしなく狭き門。

 そして勝って勝って勝ち続けなければ、栄光には辿り着かない。

 

 その競争の中で、生き抜いていけない、勝てない者はやがて淘汰されてしまう。

 

 わたしもその内の一人だったということ……。

 

 思えば辛いこと、悲しいこと、色々あった。

 けれどけして無駄だったとは思わないし、誰に揶揄されようとも、”くだらない”ものではなかった。

 まあ……今だからこそ、そう思えるのかもしれないけど。

 

 それでもたった一つの”この事実”までは揺るがない。

 

 そう、確かにわたしは、あの時あの場所で――幾多の強豪たちと共に駆け抜けていた。

 中央(トゥインクル・シリーズ)に、わたし……あたしも、()()()()()()()()()として、厳然と存在していたのだ。

 

 ――その事実だけは変わらない。

 

 それがあたしの残っている、僅かな『栄光の光』である。

 

 そんな過去の記憶を探ったせいか、どんどん色んなことを思い出す。

 何だかトレセン学園に通っていた時期がずいぶんの昔のことにも思えるし、昨日のことのようにも思える。

 それぐらい毎日が充実していて、濃縮された日々だった……。

 

 競争ウマ娘を引退し、トレセン学園とは離れた後も、トゥインクル・シリーズのことは、テレビや時にレース場に赴いて観戦し、ただの一ファンとして追いかけていた。

 

 毎年のクラシックの三冠レースは欠かさず観たし、応援している出走者にはファン投票もしたこともある。

 

 そうそう――。

 トレセン学園在学中に知り合った子が、大きなレースに勝利した時は、すごく嬉しかったなぁ。

 まるで自分のことのようにはしゃいだよ。

 それを成し遂げられるのが難しいのを知っている分、余計に感動しちゃった……。

 

 一度、身を置いたからこそ分かり得る。

 いつだってレースに出走するウマ娘たちの表情は、真剣そのものというのを。

 

 たった一つの勝利めがけて、死力を尽くす。

 譲れない勝利(もの)をかけて、互いに火花を散らす。

 

 きっとその一進一退の白熱の攻防が、観る者の心つかんで離さないのだろう。

 

 特に、オグリキャップにタマモクロス、テイエムオペラオーにナリタトップロード、ウオッカにダイワスカーレット……そういったライバルとの激闘は世間を大いに賑わせた。

 いつの時代もライバルとの熱い激戦が、勝負(レース)を盛り上げてくれる。

 

 今度はどんな名勝負が見れるのだろうか……そう期待に胸を膨らませる。

 

 ふと、そこで思う。

 

 あたしが中央で走り抜けた十三度のレース。

 自分にもそんな、共に競い合う『ライバル』と呼べた者が居ただろうか――。

 

 例えば……。

 

 そう、強敵としてすぐに思い浮かぶのは、やっぱりあの”ミホノブルボン”であろう。

 GⅠ三勝の無敗の二冠ウマ娘……あたしたち同期の中では飛び抜けた存在だった。

 そしてそのミホノブルボンの三冠を阻止した、漆黒のステイヤー、ライスシャワー。

 彼女もGⅠや重賞レースを何度も優勝している面目躍如の逸材。

 

 もはやこの二人のことをあえて語る必要もないほど、人気・知名度・実力を兼ね備えた強大な相手と言えよう。

 

 けど……どうもしっくりこない。

 

 彼女たちのことを、自分と同じ系列に、肩を並べられるような”ライバル”だったとは思えなかったのだ。

 

 まあなんせ実力が違いすぎたし……あたしなんかはGⅠに一度も勝てたこともない、数多あるトゥインクル・シリーズの歴史の中で埋没してしまいそうな、そんな小さな存在だったから。

 

 偶然にも同じ年のクラシック世代で、何回か一緒のレースに出走しただけ。

 あくま彼女たちの話題性に付属していただけの、たまたま脚光を浴びている彼女たちの前に、ほんの一瞬、影としてよぎったようなものだろう。

 だから恐れ多くも、彼女たちのことはライバルとは呼べない、かな……。

 

 じゃあ他に誰がいるのか……と思い当たる節があるなら、チームメイトの先輩と後輩の()()()()のことだろうか――。

 

 確かに、並走トレーニングや、練習などで何度も競ったこともある。

 時にはお互い全力の本気の勝負もした。

 けど……残念ながら、実際のレースでは一度も勝負したことはなかった。

 

 ライバルというよりも、どちらかというと同じチームの『仲間』という意識のほうが強いかなぁ。

 

 と、ここまで振り返ってみても、なかなか答えにたどり着かない。

 でも……かすかに覚えがあるんだよね。

 

 あたしにも、同じレースを競い合った好敵手と呼べるのが、確かに居たはず――。

 

 じゃあ他にライバルとして考えつくのは……。

 

 ――ああ、そうだった!

 

 なんで出てこなかったんだろう。

 すぐ近くに居たじゃないか。

 

 クラスメイトの、あの二人のライバルが――。




だいぶ遅ればせながら、キョウエイボーガンの話を投稿しました。
※お待ちいただいた方には大変申し訳無いです

今回のエピソードは、自分なりのこれまでの集大成のような話で、前編・後編の2本仕立てとなります。
※劇場版的のようなものだと思っていただければ・・・

構成変更のためサブタイトル修正(2023/5/28)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。