この素晴らしい天使に祝福を!   作:meigetu

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十一話 紅魔の里

「スキがないやつなんだぞ。」

 

と、カズマは一心不乱にシルビアから逃げる。

後ろを見ると、大悪魔のバニルとウィズがシルビアに常人では決してできないような攻撃を仕掛けているが一向にダメージを食らうようなそぶりはなかった。

 

と、同時に暗雲立ち込める、空からまがまがしい二つのボーリングのような大きさの黒い玉のようなものシルビアの近くに落ちてきた。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

バニルさんは、天より落ちてきた黒い塊を見て、私に駆け寄った。

 

「これは...まさかな...貧乏店主引き上げるぞ。このままでは巻き込まれかねん。」

「バニルさん? まだ、里の人が...」

 

紅魔族の人々は逃げ纏っており、撤退するのにはあまりにも早すぎる。

そんなことは、どうでもいいようにバニルさんは続ける、

 

「緊急だ。済まぬが私は先に退散させてもらう。」

「バニルさん!!紅魔の村の人たちが...」

「最悪ここにいると、天界と地獄の全面戦争になりかねん。テレポート。」

 

と、バニルはいつもの余裕綽々の態度から一変、見たことのないように慌てた様子で、私を連れて、すごい勢いでテレポートしていった。

 

「ぬけぬけと逃げていったわねあの悪魔は。フフフ...」

 

と、シルビアはいまだに気が付いていないのか俺たちの方を見た。

すると、落ちてきていた黒い塊が地面につくと同時に爆発を起こした。

それぞれが爆裂魔法に近しい爆発を起こしており大きな爆炎を起こす。

 

「な、なんですかあれは...あんな爆裂魔法、私も打ってみたいです。」

「あの、爆裂魔法に当てられて...あ…ぁあ、私はどうなってしまうのだろうか。」

 

という、いういつも通りのパーティーメンバーにあきれを感じつつシルビアの方を見る。

そちらには、爆裂魔法に負けず劣らずのクレーターができており、同様にシルビアも想像以上の爆風にスライムのような装甲が一部剥げているように見える。

 

「何だったの? 今のは?」

 

と、爆弾が飛んできた方向に目を向けるとそこには、きれいに輝く満月を背景に見覚えのある一体の天使がいた。

それは、一度冬将軍に殺された際にエリス様の近くにいた天使そのものだった。

 

 

 

 

 

「バニルさん。何で、急にテレポートなんか。」

「貧乏店主、あっちを見ろ。」

 

と、少し離れた丘の上にバニルとウィズはテレポートした。

ウィズがバニルが指をさした方向を見るとそこには...

 

「ジブリールさん?」

「そうだ。それも、相当気がたっているように見える。」

 

と、背後に遠くからでもわかるほど禍々しい雰囲気を纏った等身大サイズのデスサイズを持ったジブリールがいた。

図書館にいた時のバニルさんのような軽い雰囲気はなく、笑顔で見下されているような...

 

「バニルさん、なぜあんなに怒っているかわかりますか?」

「いや、わからん。高位の天使ともなると本体の吾輩でないと見通すことはできぬ。」

 

 

 

 

 

「こんにちは。魔王軍幹部のシルビアさん。」

「お前は...」

「自己紹介がまだでしたね。私はジブリールと申します。以後お見知りおきを。」

 

と、丁寧に頭を下げる。

眼からは何か光のようなものが横から洩れている。

 

「なぜここに...」

「あら、そのようなこともわからないのですか?それともとぼけているのでしょうか?」

「何のことよ。」

「あいも変わらずとぼけていらっしゃるようで。そこまで理解のできないつぎはぎだらけの脳みそをお持ちなのであればぜひお教えしましょう。あなた、新種の爆裂魔法で私の天空図書館の一部を吹き飛ばしましたよね。」

「は?」

 

と、シルビアは、訳が分からなそうに答える。

ジブリールにはそのことが非常に癪に障ったのか、

 

「いい加減、そのごみのような猿芝居もやめてくれませんか、本当に腹が立ちます。魔王軍という存在自体を天界規定で見逃してやっていれば、この仕打ち。地を這うキメラ風情が、私の本を数十冊単位で燃やした挙句、エリス様の休暇の邪魔をする。」

「な、何よそれ。」

 

と、本当にわからないという顔をシルビアはするがそのことがさらにジブリールの怒りを買う。

 

「いい加減に...いや、気が変わりました。せっかく、いい機会ですのであなたの首もいただいてしまいましょうか。」

「はぁ。こっちのセリフよ。」

『そうだそうだ』

 

何やら半身となったベルディアと、ハンスもそちらに顔を向ける。

 

「魔王軍幹部のベルディアさんと、ハンスさんでしたか。討伐されたようでしたが、天界のほうに魂が届いてないという話はお伺いしておりましたが、そんなところでウジ虫のように寄生されて生きながらえているなんて思いもよりませんでした。せっかくなのでまとめて天界に送って差し上げましょう。」

 

と、蔑んだ目線を向け、背後に構えていたデスサイズを大きく振りかぶった。

 

 

 

 

 

向こうでは、激しい戦闘が始まっていた。

シルビアさんは、ジブリールさんの攻撃を受けるので必死なようですが、ジブリールさんは周りの紅魔族の人のことなど全く気にせずにシルビアさんに攻撃している。

 

「相当、お冠のようだなジブリール殿は。」

「バニルさん。ジブリールさんを止めないと。このままでは紅魔族の皆さんを巻き込んでしまいます。」

「貧乏店主よ。こと今回に関しては吾輩は一切手出しができぬ。たとえお前が絶大な対価を払って私と契約してもだ。」

 

仮面をおさえいつものおちゃらけた雰囲気なしにこたえられた。

 

「なぜですか?紅魔族の皆さんが巻き添えを食らいそうになっているんですよ。」

「少しが考えればわかると思うが、まあ良い。おぬしも長く生きているであろう、少なからず一度はエリス教の経典を読んだことがあるだろう。」

 

と、唐突に言われる。

 

「経典ですか...あ、」

「そうだ。あの歴史を再び繰り返すわけにはいかぬ。故に、貧乏店主。助けに行くのであれば一人で行きたまえ。」

「......わかりました。」

「......一つ、忠告を入れておく。ジブリール殿の攻撃は、特にリッチーと、非常に相性が悪い。貧乏店主、最悪、紅魔族を救うことはしても決して攻撃は加えるな、さもなくば目的を達する前に逝くことになるぞ。」

 

私はそのバニルさんには珍しい警告の言葉を聞き終える前に走り出した。

 

 

 

「はぁ。ジブリール殿があの様子であれば、シルビアは、即討伐されるだろう。はぁ。私は帰るとしよう。テレポート」

 

 

 

 

 

「おいアクア。」

「何よ。」

 

俺たちは、多くの紅魔族が逃げ惑う中を逃げていた。

これだけ、爆裂魔法が飛び交う危険な状態だというのに珍しくアクアが怖がっていないことに違和感を感じつつも、

 

「あれって、ジブリールだろ。」

「そうよ。相当というよりは、本気で怒っているみたいだけど。」

「あそこまで、バーサーカーになるのか。」

 

と、近くに黒い玉の爆裂魔法のようなものが落ち、爆風で軽く吹き飛ばされる。

 

「いってててて。」

「大丈夫? カズマ。」

 

と、アクアに何事もなかったかのように手を差し出される。

 

「ダメージがはいらないのか?」

「当たり前じゃない。神は天使の魔法攻撃に関しては基本的に全く効かないわよ。」

 

と、手をつかみ起き上がる。

あいも変わらず、戦闘を繰り広げておりジブリールの姿は先ほどのヴィズやバニル以上に早すぎて目で追えない。

 

「天界にいる天使って全員あんな感じなのか?」

「そうでもないわよ。あの子が特別なだけよ。ほら、早く逃げるわよ。」

 

と、アクアは、俺を連れて逃げていった。

 

 

 

 

 

「結構しぶといですね。どうです、今なら抵抗しなければ軽く首を落としてあげますよ。」

「は、そんなの認められるわけないじゃない。」

『そうだそうだ。』

 

あいも変わらず、下から生えてきているベルディアとハンスが頷く。

シルビアは、かなり消費しており、先ほど紅魔族相手に猛威を振るっていた魔術師殺しは見る影もなくボロボロになっている。

 

「あらあら、それは残念ですわ。それでは、」

 

と、デスサイズを振りかぶりシルビアの首へ切りかかる。しかし

 

ガン

 

と、言う音とともに、シルビアの直前で構えた大剣で受け止められる。

 

「うっとうしいですね。」

 

大剣によってはじかれ、ジブリールは宙へと吹き飛ばされる。

宙で体勢を立て直した後、ジブリールは、シルビアの頭上を飛ぶ。

その後、先ほどの黒い塊を槍のように変え上から打ち放つ。

槍は、デスサイズ以上に黒い靄を纏っており、見るからに凶悪そうだ。

 

「死ね。」

 

と、言う言葉と共に、その槍が投げられる。

 

「こんなところで死ねるもんですか。」

 

シルビアは、持っていたボロボロになった大剣を掲げ、受け止める。

しかし、

 

ギャン

 

という、音と主に、その摩耗していた大剣は砕け散る。

さらに、槍の勢いは止まらず魔術師殺しへと突き刺さり同時にベルディアの半身に突き刺さり、ベルディアの首が落ちる。

 

「まずは一匹目。」

 

と、言うなりジブリールは、楽しそうな笑顔を浮かべて攻勢を仕掛けた。

 

 

 

 

 

 

 

「ああ、こんなところでジブリール様に会えるなんて光栄だ。」

 

と、紅魔族が多くいる避難場所へ行くとそこには祈りをささげているダクネスがいた。

 

「おい、アクア。」

「アクア様でしょ。で、何?」

「ジブリールって、エリス教では有名なのか?」

 

と、言うとアクアは驚いた顔をする。

 

「え、そうだけど知らなかった?」

「そりゃそうだろ。まだこの世界に来てから一年しかたっていないんだから。」

「いや、一年もたっているのによ。」

 

と、言われる。正直この反応はむかつくが知らないのも相当なのかもしれない。

 

「カズマカズマ。ジブリールは、エリス教の経典では戦いと知識の天使のようです。」

「戦いと知識?」

「そうです。普段はエルキア大図書館というこの大陸の上を飛んでいる図書館に住んでいるみたいです。」

「そうなのか。どうしてそれを?」

 

と、カズマはめぐみんに問う。

あいも変わらず戦闘は繰り広げられている。

 

「紅魔族には一つの伝説があるんです。それは、我ら紅魔族、三大の力を束ね最強とならん。一つ、力を求むなら海を渡れ。そこに求むものはあらん。二つ、魔力を求むなら山へ向かえ。神殿の奥に求むものはあらん。三つ知識を求むのならば空へ行け。そこに、全知の天使は降臨せん。三大の力により我ら紅魔族は最強とならん。というものです。」

「なんだそれは?」

「言葉のとおりです。数百年以上前からある伝説で、力が欲しければ海に出て、魔力が欲しければ山の神殿を探し、知識が欲しければ空に行けというものですね。」

 

と、めぐみんは解説をする。

向こうではあいも変わらず、激しい戦闘が繰り広げられている。

 

「そうなのか?」

「そうです。それで50年ほど前でしたっけ、一人の紅魔族、知識の賢者でんきゅーが、空にて空中図書館を見つけたようで、大きく紅魔族の魔法を数十年分、推し進めてくれたんですよ!!」

「なるほど...」

 

と、話していると、唐突に、

 

「あそこに子供が...」

 

と、言う声が聞こえる。そちらを振り向くとそこには岩陰に隠れ震えている紅魔族の幼い少女がいた。

あいも変わらずシルビアと、ジブリールの戦いは続いており時折黒い爆裂魔法が飛び交っている。

少女は逃げ出そうにも逃げ出せない状況でちらちらこちらをうかがっている。

 

「どうしましょうか、カズマ。」

 

と、めぐみんは心配そうにこちらに聞いてくる。

紅魔族は、魔術師殺しのせいで魔法が使えなくなっている。

そのせいかこちらに皆一様に期待の目を向けられる。

 

「しょ...」

 

と、言う前に一人の女性が走り出した。

ウィズだ。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

ジブリールさんの魔法のせいでぼこぼこになった道を走り私は少女のもとへ急ぐ。

紅魔族の戦闘の余波による犠牲者は、いないことをホッとしつつ私は取り残された少女のもとへ急いだ。

 

「お姉ちゃん。」

「よかった。」

 

と、少女を私は抱き上げる。

後ろからは、紅魔族の皆さんが安心して声を上げている。

このまま、テレポートして...

 

しかし、私の運も続かないようで

 

「お姉ちゃん危ない。」

 

と、少女に言われる。

そちらを見るとそこには黒い魔法が近くに迫っていた。

テレポートは間に合わないと思い私は

 

「『カースド・プロテクション』」

 

と、唱え、守りの魔法を張る。

無事に爆風から身を守ることはできたが、

 

「え? どうして?」

 

と、自分の体を見ると爆風は避けられそのうえ守りの魔法を張ったというのに体が消えかかっていた。

と、今までリッチーになってから感じたことがない同時に強い脱力感に襲われ倒れてしまう。全身から魔力が抜けたようにも感じる。

もしかして、バニルさんが言っていたのって...こういう...

 

「お姉ちゃん...」

「ごめんね。大丈夫だからね。」

 

と、力を振り絞り立ち上がる。魔力不足からかテレポートはもうできない。

目の前は、魔力不足からかもうろうとするが前へと進む。

しかし、運がないことに再度、目の前に黒い塊が落ちてくる。

私は、せめてこの小さな紅魔族の少女が助かるように

 

「『カースド・プ』」

「『セイクリッド・ブレイク・スペル』」

 

と、アクア様の声が聞こえる。

と、同時に目の前の黒い塊は一瞬にして消えた。

 

「大丈夫か? ウィズ。」

「カズマさん...」

 

と、言うのがいっぱいで私は気を失った。

 

 

 

「大丈夫か? ウィズ?」

 

アクアは少女を背負いつつ

 

「多分、魔力不足よ。」

「魔力不足? ウィズは魔法をよけていなかったか?」

「天界にいる天使や神の本体は基本的に今の私と比べ物にならないほどの浄化の力を持つの。だからよけたり守っても無駄よ。特に魔力で体を構成しているリッチーはね。そのせいで魔力をほぼ持っていかれたんじゃないかしら。ほら行くわよ。」

 

と、いつも以上に頼りになるアクアを片目に、二人を抱え俺たちは避難場所へと向かった。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

「久しぶりですねこんなに暴れられるなんて。」

 

ジブリールは、手についた返り血をなめつつ言う。

 

「化け物...」

「あら、それは意外ですね、バケモノように他人の部位をくっつけるキメラ風情が。」

 

と、下を見る。

そこには、無残にもベルディアと、ハンスの生首が転がっており満身創痍となった隻腕のシルビアがいた。

 

「最近は、天界規定が厳しくてですね。なかなかレア物の首を手に入れることができませんでしたがこれで終わりですね。これでコレクションが三つ増えます。」

「こんなやつが、エリス神の天使をしているのか...天界も落ちたものね...」

 

と、恨めしそうにこちらをにらみつける。

 

「あら、気が付きませんでしたか?」

 

と、にこやかに抵抗することをあきらめたシルビアに近づく。

そしてあおるように、返り血が付いた手でシルビアの頬を撫でる。

 

「私たち、いや私はあくまで、私とエリス様そして本が無事であればほかのことなんて、正直どうでもいいんですよね。正直、人間種(イマニティ)神霊種(オールドデウス)も。」

 

そして、ジブリールからにこやかな雰囲気ががらりと変わり、険のある雰囲気に変わる。

 

「だから、数百冊の本とエリス様の邪魔をしたあなたを私は許さない。ではさようなら。」

 

と、にこやかな笑顔を浮かべた後、デスサイズを軽く一回転させシルビアの首を飛ばした。

 

 




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