そんなわけで今回はエヴリン不在でお送りします。ちょっと納得できないできなのだけどこれ以上修正しようがないので投稿。楽しんでいただけたら幸いです。
黒霧がエヴリンを水難ゾーンまで飛ばし、沈んで行く様を目にする死柄木弔。脳無が氷を砕くのを横目に黒霧を睨む。
「おい黒霧。なにあいつを水に沈めてんだよ。アジトに連れてけばよかっただろ」
「いえ、何の個性だかは知りませんが瞬間移動までするのですよ?あんな元気のまま本拠地にワープさせても暴れられて逃げ出されヒーロー共にバレる恐れがありますので……逆に聞きますが今の我らの戦力であれを傷つけずに止められますか?」
「そりゃ無理だな。先生も精神か肉体どっちかを弱らせてから連れて来いって言ってたしなあ…なんであの餓鬼をあんなに恐れてるんだ?先生は。まあいいや、さっさと回収して帰るぞ……脳無!」
襲いかかる氷結を、黒い靄を広げていずこかにワープさせて防ぐ黒霧。背後から死柄木弔に襲いかかる拳を胴体で受け止める脳無。轟と緑谷だった。
「ぐ、GRAPE RUSH!」
「ちっ、今度はなんだ!?」
さらに勇気を振り絞った峰田の「もぎもぎ」の雨が降り注ぎ、怯んでくっ付いてしまい対処にかられる死柄木弔と黒霧。脳無もまた地面にくっついたもぎもぎに動きを制限される。
「蛙吹さんが八木さんを助けるまで耐えるんだ!」
「先生は葉隠が救出している!救援が来るまでこいつらを逃がすな!」
「ああ、此畜生!やってやるぜ!」
「やれ、脳無!」
黒霧の靄を炎で散らし、脳無を氷で押し止める轟。血を流しながらももぎもぎを投げ続ける峰田を厄介と思ったのか触れようとする死柄木弔に殴りかかって牽制する緑谷。絶対に逃がさない、エヴリンの稼いだ時間を無駄にはさせないとばかりの猛攻にたじたじになるヴィラン連合。
「ぬう、熱風でワープゲートを開けない…!?」
「炎と氷を同時に扱う餓鬼に、オールマイト並みのパワーの餓鬼に脳無でも拘束するうざったい玉を投げるチビ……おいおい、今年はバケモンの巣窟かよヒーロー!帰るっつってんだから黙って帰らせろよ、なあ!?」
「逃がしたら一緒にエヴリンを連れて行くつもりだろ…絶対させねえ!」
「八木さんの頑張りを無駄にはさせない!」
「オイラだって、オイラだってなあ!」
「ああもう、めんどくさいなあ!」
追い縋る轟と緑谷と峰田に、首を掻き毟って激昂し、両手の五指を地面に叩きつける死柄木弔。瞬間、触れた部分から崩壊が広がり、三人の足場を崩して隙を無理やり作り出して跳躍、緑谷の顔に五指を振れようとする。
「ゲームオーバーだ」
「っ…!?」
「「緑谷!?」」
足を取られて回避もできず、緑谷がたまらず目を瞑ったその時。一陣の風と共に、死柄木弔と黒霧と脳無がほぼ同時に大きく弾かれる。緑谷が目を開けるとそこには平和の象徴、オールマイトが立っていた。
「もう大丈夫。何故って?私が来た!」
「「「オールマイト!」」」
「遅れてすまない!…ところで、飯田少年から私の子が狙われてると聞いたが本当かい?」
笑顔を納めて真剣に問いかけてくるオールマイトに、あらかじめ事情を知らされていた緑谷が答える。
「オールマイトのお子さん……八木さんは奮闘したんですが水難ゾーンに落とされて……今、蛙吹さんが救出に向かってます!それと気を付けてください!あの脳ミソヴィラン…分かっているだけでもショック吸収と超再生の個性を持っています!対平和の象徴だって言ってました」
「なるほど。そいつは厄介…「やれ、脳無ゥ!」…だなあ!」
いち早く再起した死柄木弔の絶叫と共にもぎもぎと氷の拘束を無理やり外して襲いかかってきた脳無の拳を躱してカウンターの一撃を叩き込むオールマイト。それでもショック吸収で耐えきってしまった光景に冷や汗を流す。
「ちょっとした本気で殴ったんだけど…ねえ!」
「アンタの100%にも耐えられるように改造されているんだ平和の象徴……アンタの餓鬼には苦戦したがお前相手なら問題ない。お前を殺せばゲームクリアだ」
「それはうちのエヴリンがお世話になった。だがね、それなら100%以上の力で殴ればいい話さ!」
そして激突するオールマイトと脳無。猛連打による殴り合いに息を呑むその場の面々。そのよそで。
「エヴリンちゃん、今助けるわ」
水底近くまで沈んでいたエヴリンをやっと見つけて駆け寄る蛙吹。しかし異変に気付く。エヴリンに水流が集まってきていた。嫌な予感がしてその場で留まる蛙吹の前で、それは爆ぜた。
爆豪と切島が飛ばされた倒壊ゾーン。雑魚ヴィランをあらかた倒し終えた二人に姿を隠して襲いかかろうとしていたヴィランを、それに気付いていた爆豪が迎撃せんと振り返った瞬間。黒い濁流がヴィランを飲み込む光景を目にした。
八百万、耳郎、上鳴が飛ばされた山岳ゾーン。なんとか連携で雑魚ヴィランを撃退したものの潜んでいたヴィランに上鳴を人質に取られて動けなかったところに、器用にヴィランだけを黒い濁流が飲み込んで危機を逃れた三人は呆然と、気絶したヴィランたちが飲み込まれていくのを見ていた。
火災ゾーンを除く他全てのエリアにも侵食し、A組を避けてヴィランだけを飲み込んでいく黒い濁流。それは中央の広場にも広がり、殴り合い拮抗していたオールマイトと脳無の対決にも侵食した。
「なかなかにしぶとい…む!?」
「あ?」
それに気付き、脳無を一発殴りつけてから緑谷と轟と峰田を回収して大きく後退するオールマイト。気付くのが一歩遅れた脳無は指示を待つ暇もなくもろに飲み込まれ、それを目の当たりにした死柄木弔と黒霧は咄嗟に個性をフル活用して黒い濁流を崩壊させ、転送させていくが勢いはとどまるところを知らなかった。階段の上の入り口手前までオールマイトに連れられて戻り、それを目の当たりにする緑谷たち。USJは水難ゾーンから四方八方にタコの触手の様に伸びた黒い濁流に覆い尽くされんとしていた。
「これは…八木さんの、個性?そういえば水分を使って「カビ」を増殖させていた……まさか、水に落ちたことで…!?」
「溺れないために水を全部水分としてカビに変えてるってのか…」
「おいあれ!あそこにいるの、蛙吹じゃないか!?」
「君達はここにいるんだ。私が救助する!」
峰田が見つけた船の残骸に掴まって流されていた蛙吹をオールマイトが救助しに行くのを余所に、未だ耐え続ける死柄木弔と黒霧。崩壊と転送が追い付かなくなるほどの勢いに、エヴリンの「逃がさない」という意思を感じ取る。
「なんだ、これ!?脳無、脳無!くそっ、聞こえねえか!」
「オールマイトの子供の個性でしょうか…!?弱らせるどころかこれとは末恐ろしいですね…!」
「ああくそ、脳無はオールマイトにやられてねえってのに、ゲームオーバーになる前にバグみたいなもんに邪魔されるってのか…黒霧ィ!」
「くっ…脳無もオールマイトの子供も回収できていませんがやむを得ませんね…」
「先生になんて言えばいいんだよ…」
そう言って死柄木弔と黒霧は命からがらワープゲートに飛び込んで離脱した。目的を何も果たせず、手駒の脳無も失うことになった死柄木弔の憤りはとどまることを知らないがそれはまた別の話。
「無事か、エヴリン!」
「ごめんなさい、抑えられなかった…」
死柄木たちが逃げてすぐに、蛙吹からエヴリンの居場所を聞いたオールマイトが黒い濁流をかき分けて衰弱したエヴリンを救出、船の残骸に飛び乗ったことで本体から切り離された黒カビの津波の動きが止まった。
「止まったんですの…?」
「うぇーい」
「これって…エヴリン、だよな?なにがあったんだ…?」
身を寄せ合って八百万の創造したバリケードに籠っていた八百万、上鳴、耳郎がおそるおそると顔を出す。その視界には、黒カビに埋もれて身動きが取れず、情けなく降参して助けを求めているヴィラン達がいて、思わず顔を見合わせる。
「…えーと、たしかカビ、なのでしたよね?」
「うぇい」
「聞いた限りだとそうだね」
「一応救助訓練ですし、これで救助しませんこと…?」
そう言って八百万が創造したカ●キラーに苦笑いを浮かべながら受け取り、救助活動を始める耳郎たちを始めとして、各地で黒カビに飲み込まれたヴィランを爆破だったり酸だったり氷結だったり炎だったりで救助するA組。救援に駆け付けた先生たちも加わり、ヴィラン襲撃はヴィラン救助活動になることとなった。
「またやっちゃった…」
【死にたくないからやりました。反省はしてます】
放課後、保健室ではベッドで頭を抱えて震えるエヴリンの姿があったという。
さながら暴走するシシ神様みたいな。ヒーローたるもの基本は人助け。救助訓練だからヴィランを救助してもいいよね。死にかけてもクラスメイトを助けるためにヴィランだけを襲うヒーローの鑑()
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