エヴリンと油断してない轟のガチバトル。楽しんでいただけたら幸いです。
二週間。それが相澤先生から通達されてから雄英体育祭が始まるまでの猶予期間だ。脳無を半ば完封し、シガラキトムラたちとも渡り合った私は警戒されているだろう。あの爆豪が戦いを求めてきたことからも明らかだ。でも同時に私の戦い方は完全に知られてしまったことだろう。情報を得られたのは不利だ、凄い不利だ。私が前世でイーサンと戦えたのはひとえに情報不足からの初見殺し故だ。なんか特攻の薬用意されていてあっさり攻略されたけど。
「というわけで焦凍。特訓に付き合って」
【急すぎて草】
「どういうわけだよ。ライバルだからいいけどよ」
だから私は、友達を頼ることにした。休日に焦凍に電話して、焦凍が普段訓練に使っている場所を貸してもらい戦闘訓練することになった。轟の実家らしく尋ねるとお姉さんらしき人が出てきて「もしかして友達かしら?」と喜んでいた。
「炎は扱えているの?」
運動服を着込んで準備運動しながらそう尋ねると、ストレッチしていた焦凍は申し訳なさそうに答える。
「…いや。
「やっぱり父親への反骨心?」
「お前のおかげで恵まれてる、俺の唯一無二の個性ってのはわかったが…炎を使うとアレは喜ぶ。俺はそれが嫌だ」
【嫌だだって】
「あー……でも言ったよね?少なくとも、氷だけを使ううちは私、意地でも負けるつもりないからねって。それは体育祭でも同じだよ」
気持ちはなんとなくわかったが、結局はそう言う話だ。本気を出してもらわないと困る。
「行くよ、焦凍!いけ、モールデッド!」
「加減はしねえぞ、エヴリン…!」
手を床に触れてカビを1メートルだけ展開、モールデッドを二体生み出す。雄英体育祭はサポートアイテムがヒーロー科はよほど必要でもない限り禁止らしい。青山のベルトとか。私の場合、水分があればカビは生み出せるので水筒もブーツも使用禁止になった。だからやることは「一回分の水分補給でどこまで戦えるか」「
「氷漬けにしても…止まらない、か」
「生憎と普通の生物じゃないんでね!」
【元の材料は人間だけどね】
飛びかかるも焦凍に下半身を氷漬けにされるモールデッド二体だったが、上半身を無理やりちぎって床を這って接近。蹴り飛ばされ、氷で頭部を串刺しにされて活動を休止する中私は突進し、マッスルフォームにした右腕で殴りかかるが氷の壁で阻まれる。
「意地でも氷だけのつもりだな!」
「ああ。氷だけでお前に勝ってやる」
氷が殴り砕くも、右腕を掴まれてぶん投げられる。ならばと宙を舞いながら合掌。掌を離して右手の平から粘菌の蜘蛛の糸を伸ばして天井にくっ付け、ルーカスが好きだったNYのヒーローの如くスイングして飛び蹴りを叩き込む。ここぞで思いついた新技だ。
「
【即席ウェブシューター!】
「ぐっ…!?」
蹴り飛ばされる焦凍からスイングで距離を取り、着地して切り離す。…スパイダー●ンというよりは3のヴェ●ムだなこれ。まあいいやっと。
「
「ちいっ!」
不意打ちで放たれた氷結を、カビの壁で受け止める。凍結で砕け散るけど、一回防げるなら問題ない。危ないなあ。お返しじゃい。
「
「無駄だ!」
床に手を付けてカビのカーペットを広げて焦凍の足を拘束するが、氷結でぱりぱりと崩れ落ちる。駄目か。やっぱり相性が悪いな。でも私だけに気を取られるのは視野が狭いね。
「やっちゃえ、クイック・モールデッド!」
「上だと…!?」
カビの壁で目くらましすると同時に一緒に出して壁→天井と移動させておいたクイック・モールデッドに羽交い絞めさせる。顔を掴み、一本背負いで床に叩きつける焦凍。しかし私はその間にカビのカーペットに潜り込んで背後を取り、肩に左手をやって振り向かせる。
「お前も家族…じゃないわ、えっと、ベイカーパンチ!」
【お前も家族だ!なんてね。くぷぷっ】
「っ、ぐあっ!?」
そのまま無防備な顔に黒カビで覆ってモールデッドの様にした右腕(ノットマッスルフォーム)の拳で殴り飛ばした。ありゃ、伸びちゃった。
「焦凍、大丈夫?焦凍ー」
つんつんと元に戻した指で頬を突くと「うっ」と呻いたので生きてるらしい、よかった。いやー、ヴィランだったら容赦なくマッスルフォームで殴ってたけど威力高いなこれ。ジャックがイーサンに使ってただけはあるわ。焦凍もかなり鍛えてるはずなのに簡単に気絶させちゃった。
「これは切札だな。焦凍が覚えてませんように」
【記憶消去(物理)したから大丈夫でしょ】
手を合わせて祈る。完全な不意打ちだったから記憶から飛んでくれることを全力で祈る。その間にモールデッドを形成して戻すのを繰り返して思考する。
「うーん、通常モールデッドは同時に二体が限界。クイック、ブレード、ファットは一体ずつが限界かあ」
鍛えたら増やせるんだろうけどどうすればいいのやら。戦いながら同時に指令を送らないといけないから細かい指令を送らないといけない特殊なモールデッドたちが一体ずつしか作れないのは納得だ。………これ、モールデッドにする必要ないかもな。四肢に黒カビを纏わせて……これならカビの消費も少なくて済むな。閃いたかもしれない。
「――――なんたる様だ、焦凍」
「っ、誰!?」
いきなり聞こえてきた第三者の男の声にブレード・モールデッドの物にしていた右腕を咄嗟に突き付ける。するとそこには、夏場がクッソ暑そうな全身ぴっちりスーツで色々燃えている人がいた。焦凍が展開した氷が見る見るうちに溶けて行く。見覚えのある人だ。
「…フレイムヒーロー・エンデヴァー。」
「焦凍の友が来たと聞いていたが、人にいきなり凶器を向けるような者がヒーロー志望とはな」
「っ…」
【いきなり声かけてきた方が悪いよー】
正論をぶつけられて腕を元に戻すと、近づいて来て私を見下ろすエンデヴァ―。子供サイズな私からしたら威圧感が凄まじい。
「変身系の個性か。焦凍の氷を破壊し、昏倒させるとは小さいのにいい個性だ。素晴らしい。ご両親も鼻が高いだろう。君もご両親には感謝しなければな」
「…両親は死んでますけど、どうも」
「…それはすまなかった。…だが」
なんか勘違いしてるから訂正しないでおくと、なにやら不敵に笑みながら言い出した。
「しかし君の個性は評価に値する。君ならば雄英体育祭恒例のガチバトルトーナメントで焦凍とぶつかる可能性が一番高い。あれは必ず決勝まで上がるからそれまでの間か決勝か。氷だけでは勝てないであろう君が相手ならば、今はくだらない拘りで使っていない左の炎を確実に使うだろう。とても有益な戦いを期待している。あれの為にも、君の為にも」
【なんだこいつ】
「あなたの為になる、の間違いじゃないの?」
私の目を見といて私のことを見ていないこの火達磨男に頭が来て思わず言ってしまうと、こめかみがピクリと動いた。短気は損気だぞナンバー2ヒーロー。
「つまり私に焦凍の引き立て役になってほしいんでしょ」
「そうは言っていない。貴重な体験にもなるし君相手ならば焦凍も本気を出すと…」
「生憎だけどね。私は元々、氷しか使わない焦凍に負けるつもりはないって宣言してるんだ。炎を引き出すのは約束するよ。でも貴方の為じゃない、焦凍のためにだ」
「それは助かるな、あれの幼稚な拘りが無くなれば俺にとっては喜ばしい事だ。氷と炎を同時に使えば俺を越えるヒーローになれる。そうなればあれはオールマイトを越えられる」
「エンデヴァーをこえることはあってもパパを越えるのは無理でしょ」
「…パパ、だと?」
思わぬ言葉に完全に顔が引きつるエンデヴァー。面白いな。私は水筒と荷物を手に取りながら出口に向かいつつ淡々と言ってやる。
「氷と炎を同時に操れるようになったからってパパの天候さえ変えちゃうパワーに勝てるとは思えないし、それに」
そして振り返ると私自身を親指で指差して宣言する。
「オールマイトの娘のこの私が、パパすら越えるナンバーワンヒーローになるからね!焦凍が炎を使ったぐらいで負ける気はしないよ」
【強がり乙】
いやまあ相性は最悪も最悪なんだけど。すると呆然とするエンデヴァーの背後で焦凍が目を覚ましていたのを見て、小さく手を振りながら私はその場を立ち去るのだった。……宣戦布告しちゃった。焦凍との訓練は別の所に移さないとかなあ。
前回に引き続きエヴリンキレる。前世もあって自分のことを見ていない奴は大の苦手です。エンデヴァーは個性的にも性格的にも相性が悪い。
轟との対決でウェブスイングやベイカーパンチ(仮)を習得したエヴリン。モールデッドを武装させることも思いついてパワーアップです。
さすがにオールマイトの娘の存在を知らなかったエンデヴァー硬直。このあと自分の息子とオールマイトの娘の対決だと知って変に燃えた模様。
次回も楽しみにしていただければ幸いです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。ここすき機能などで気に入った部分を教えていただけたら参考にします。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。