今回は個性把握テスト。楽しんでいただけたら幸いです。
最初の種目は50m走。エンジンの個性を持つメガネ君こと飯田が3秒04という好成績を残していた。青山はへそからビームを撃ってその反動で、しょうゆ顔の瀬呂は腕からテープを伸ばして、紅白髪の轟は氷を出して、爆豪は「爆速!」って叫びながら爆発の反動で宙を飛んで、みんな次々と好成績を作って行く。
【みんないい個性だねえ。それに比べてカビだもんね】
体力テストでは出席番号の近い者同士がペアとなり、同時に記録を測るようにしているわけだが。私の出席番号は一番最後の20番。ペアは八百万だ。なんか横で原付バイクを作り出したんだけど。え、それあり?まあ私もずるいことするけどさ。水筒を開けて中身を飲み干す。…これぐらい飲めば足りるかな。
「あら。私は脂質を使って創造する個性なのですけど、エヴリンさんもですの?」
「私は水分を使うんだ。先に謝っとくけど…ごめんね?」
相澤先生に、個性を先に使っていいか許可を取り意識を集中。黒カビをブーツから形成し走る道筋を直線に覆う。このブーツは水分を使って足裏でカビを形成、広げるための機能が付いているのだ。
「指向性制御。
「エヴリンさん、これは…?」
「お前、まさか……まあいい」
≪ヨーイ!≫
私の入試を見ていたのだろう相澤先生が察したようだが関係ない。計測ロボットの≪ドン≫の声と共にモールドカーペットの中に飛び込む。そしてゴールに一瞬で飛び出した。まだスタートを切って初速だった八百万はびっくりした顔をしていた。してやったり。
「1.23秒だ」
「よし!」
私は自分で作った菌の中を自在に移動できるのだ。距離でちょっと遅くなるけど。クラスメイトから「すげえ!」「瞬間移動!?」「僕の速さを超えるとは…」と称賛の声が聞こえて気持ちいい。爆豪の方を見てみれば凄い顔をしていたので獰猛に笑ってみせるともっとすごい顔をした。いい気分だ。
第二種目は握力。右腕をマッスルフォーム(今名付けた)に形成して握力計を思いっきり握ると560㎏を記録した。偽筋とはいえ腕3本で540kg出してた異形系の障子を超えて二位になったから文句なしだろう。一位は万力を使った八百万だったけどみんな度肝を抜いた顔をしていた他、また爆豪が面白い顔をしてた。
第三種目は立ち幅跳び。これはさすがに一位を取れなかった。クイック・モールデッドを形成してそれの背に乗り跳躍。123mを記録したけど爆豪は普通に飛び続けてそれを優に超えた。勝ち誇った顔をされたのであかんべーしておく。前の二つじゃ私が圧勝なんだからなあ!
第四種目は反復横跳び。またクイック・モールデッドを作ってその上に乗り、78回を記録した。ブドウ頭こと峰田がめちゃくちゃ跳ねまくって簡単に超えられてまた一位になれずじまいだった。悔しい。爆豪には勝ったからいいけどさ。
第五種目のソフトボール投げで、事件は起きた。これまで何も個性を使わず普通の結果を出し続けているモサモサ君こと緑谷がついに個性を使おうとしたのだが、不発に終わる。
「な…今確かに使おうって…」
絶望した表情で呟くを緑谷を髪を掻き上げて赤く輝く目で視ている相澤先生。先生の個性かなにかかな?
「個性を消した。つくづくあの入試は合理性に欠くよ。お前のような奴も入学できてしまう」
「消した…!?…あのゴーグル…そうか!視ただけで人の個性を抹消する個性!抹消ヒーロー・イレイザーヘッド!!」
先生が知らない名前のヒーローだった件について。どうやら緑谷は個性を使うと身体を壊してしまうらしく、そうさせないために消去したらしい。なんか爆豪が「デク」と呼ぶ緑谷は無個性だと言っていたが麗日と飯田は超パワーの個性だと言ってるしどういうことだろう?
【あれじゃないかな?ムカつく幼馴染を見返すためにずっと隠してたんじゃ?】
それなら納得だけど自分の身体を壊すほどの超パワーか。なにやら指導を受けている緑谷が除籍かなあと思ってたら、ならばと緑谷は二回目に指一本を犠牲にして「SMASH!」の掛け声と共にパパの様な超パワーを引き出して705.3mという大記録を叩き出す。その光景がパパと被って見えた。…すごいと、素直にそう思ったのだ。
「先生……まだ、動けます…!」
「どういうことだ、こら!ワケを言えクソデクてめぇ!!」
痛みに耐えながら宣言した緑谷に納得いかなかったらしい爆豪が飛びかかろうとするが、さすがにトラブルが起きて欲しくないため粘菌の壁を作って爆破を受け止めると凄い形相で睨まれた。うわ、穴ぼこ開いたんだけどどんな火力だ。イーサンに比べたら怖くないけどね!(震え)。
「ああ!?邪魔すんな、チビガキ!」
【うわ。なにこいつ。殺す?事故に見せかけて殺しちゃう?】
「チビガキって言うな!邪魔もするよ。退学したいの?このままだと除籍するの、お前だよ爆発頭」
「…ちっ。覚えておけよクソデクぅ…」
諭してやると納得したのかキレながら離れて行く爆豪。先生が動こうとしてたけど、おとがめなしってことはこれでよかったのだろう。体力測定はまだまだ続く。普通に投げた峰田、大砲でボールを撃ち出した八百万に続いて最後の私の番だ。ここまでくるとクラスメイトからは期待と好奇の目が向けられた。
「緑谷じゃないけど……私も、SMASH!」
右腕をマッスルフォームにして渾身の力でぶん投げる。1205m行って爆豪や八百万には勝利したけど、∞という記録を出してた麗日には負けた。それは勝てないよ、うん。
第六種目は上体起こし。30秒間でどれほどできるかを競うらしい。ならばと私はモールデッドを二体形成。やっぱりみんなは驚いているが気にせず、手伝ってもらって45回を記録した。バネを作った八百万や跳ねまくってた峰田には普通に負けたけどやっぱり爆豪には勝った。爆破じゃどうしようもないもんね。
第七種目は長座体前屈。ファット・モールデッドを形成して押してもらって手伝ってもらったけど49.5が限界だった。痛い。
「見ての通りだが、雄英はグラウンドもでかい。カラーコーンを置いたレーンの外周は1周1kmあるから5周走れ。他の奴を妨害しないならなにしてもいい。周回数のチェックは機械がしているから、ズルは出来ねぇぞ。準備いいか?位置について、スタート」
最終種目は持久走だ。八百万がさっき作ったバイクで走ろうとしているのを横目に、私もクイック・モールデッドを形成してその背にしがみ付く。普通にモールデッドなら二体出せるんだけどブレードとクイックとファットは一体ずつしか作れないんだよね。作れるだけいいけどさ。
「お先に、八百万」
「えっ?」
クイック・モールデッドはとにかく速い。原付バイクやエンジン、爆発程度じゃ負けない。最前線を走っていた飯田を優に追い越して全力疾走。トラックを駆け抜ける。そしてしっかりとカビで固定してしがみ付いてるだけの私はそんなに疲れないのだ。腕は攣りそうだけど。そんなわけで私が一位、飯田が二位、八百万が三位を記録した。やったぜ。
「んじゃ、パパッと結果発表。トータルは単純に各種目の評点を合計した数だ。口頭で説明すんのは時間の無駄なので一括表示する」
全種目が終了し、空中モニターに順位が発表される。ほとんどの種目で好成績を収めた私がダントツ位の一位であった。二位は八百万、三位は轟だ。爆豪は惜しくも四位であった。笑っていいかなこれ?
しかしトータル最下位が除籍となるんだったと思い至り緑谷を見やる。結局ソフトボール投げ以外で好記録を出す事が出来なかったのだ。見れば、最下位は緑谷だ。…なんで透明人間の葉隠が緑谷だけでなく下から二番目の峰田にも勝ってるのかちょっと謎だ。
「…ちなみに除籍はウソな。君らの最大限を引き出す、合理的虚偽」
「「「「「はーーー!!?」」」」」
絶叫。小さいから一番前にいたのでもろに音がダイレクトに伝わって耳鳴りが凄い。八百万はそんなに驚いてないみたい。あと爆豪と轟も。いや私も反応してないけどさ。
「あんなのウソに決まっているじゃない。ちょっと考えればわかりますわ」
「そゆこと。これにて終わりだ。教室にカリキュラムなどの書類あるから目ぇ通しとけ」
そう言って相澤先生が離れた行った先に見覚えのある巨体が見えた。…パパ、なにやってるんだろ。私を見に来たのかな?いや、でもあの視線の先は……胸を撫で下ろしている緑谷がいた。
【なんでこいつがパパに期待の目を向けられてんの?ムカつく】
……緑谷…デク?だっけ。覚えておいた方がよさそうだな。
凡庸性はアホみたいに高いからこういう勝負だとめっぽう強いエヴリン。爆豪とは犬猿の仲。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。