そんなわけで戦闘訓練。エヴリンVS轟となります。初のエヴリン以外の視点でも描きます。楽しんでいただけたら幸いです。
パパの話をまとめると以下の通りだ。
・一試合制限時間15分。
・二対二で行うチーム戦で「ヒーローチーム」と「ヴィランチーム」に分かれる。
・チームメイトと連絡がとれる小型無線、建物の見取り図、捕縛道具の確保テープといったアイテムが支給される。
・建物内には今回の訓練で重要な「核兵器」のハリボテが置かれているので、ヴィランはそれを制限時間まで守りヒーローはタッチして回収するのが目的。確保用テープで巻かれると「捕縛」扱いになって離脱する。
・ヴィランチームは建物内で待機、ヒーローチームは外からスタートする。なおヒーローチームには核兵器の場所は知らされない。
わかりやすく言えば「立て篭もりをするヴィランと潜入することになったヒーローのシミュレーション」を想定したアメリカンな訓練だ。パパの趣味だなこれ。チーム分けや対戦順はくじ引きで決めるらしい。私は「I」を引いて葉隠とペアになった。相手は…轟と障子ペアで第二戦か。…うーん。
「ねえねえ、葉隠。話があるんだけど」
第1戦であるヒーロー側の緑谷出久・麗日お茶子ペアVSヴィラン側の爆豪勝己・飯田天哉ペアが派手で危険な試合をやる中で私はちょいちょいと葉隠を招きよせて耳を(見えないけど)近くに寄せる。
「どうしたの?エヴリンちゃん」
「いや、あの…私の個性の件なんだけど。轟の個性って氷と炎だよね?」
「昨日の個性把握テストを見る限りそうだったね。それがどうしたの?」
「…それが、私の個性。カビ…なんだけど」
ここでカビの生態を教えようか。繁殖しやすい群体生物の一種で、有機物を分解させる「分解者」としても有名。アレルギーや病気の原因にもなる他、猛毒を持つ物や感染症を引き起こす種類もある。私の操るカビである「特異菌」は猛毒性はないけども、鋼構造物を容易く破壊できるほどの硬度とどんな形状にもできる柔軟性を持つ。しかし弱点もあって……
「カビだったんだ。意外ー。でもそれがどうしたの?」
「…それが、炎と氷、どっちにも弱いんだよね…」
特に焼却滅菌される炎が天敵だが、カビは生物故に冷気にもとんでもなく弱い。ルイジアナみたいな熱帯気候ならともかく、北国である日本では繁殖するのも一苦労だ。
「え、それは…どうしよう?」
「うん、どうしよう…」
【炎も氷も持つとかズルすぎだよ死ね!】
うんうん二人して考えていると、緑谷が腕を犠牲にして天井に大穴を開けて爆豪に勝利を収めていたのが見えた。アレは保健室行きかなあ。その後、機転を利かして麗日が核兵器にタッチしてヒーローチームの勝利に終わったけど、勝った方がボロボロで負けた方が無傷と言う凄い結果だった。爆豪が落ち込んでいて笑う。
「さて講評も終わったところで…あのビルはもう使い物にならないから移動しようか。次はヒーローチームの轟・障子ペアとヴィランチームのエヴ…八木・葉隠ペアだ!準備を頼むよ!」
「………八木」
「うーん…え、あ、なに?轟」
上の空で考えていると、轟に呼ばれてやっと次が自分の番だと気付く。でもいったいなんだろ?と思えば轟は仏頂面で睨んできて。ちょっと怯んでしまう。
「昨日見せたお前の力は本物だ。俺は右の氷だけでお前に勝つ」
「え、あ、うん。…でも私は負けないよ。パパのためにもね」
「っ…お前は父親のために勝利を目指すのか…?」
「え、そうだけど?」
「…そうか、ならなおさら負けられねえ…!」
なんか知らないけど逆鱗に触れたらしく轟は怖い顔をしながらそのまま去って行く。…なんか焦ってるみたいだけど利用できそうだな。
ヴィランチームが守る核兵器を廃ビルの最上階に置いて、私達は作戦会議と準備をする。まずは個性把握だ。水を一気飲みしてから口を開く。
「私の個性はさっきも言った通り「カビ」。水分を使って自分で生み出したカビを自在に操る個性。モールデッドって言う家来を作ることもできる。水分さえあればどこまでも繁殖できるよ」
「うわー、一瞬疑問符が浮かんだけど強個性だー!私の個性は見ての通り「透明化」!直接戦闘は苦手だけど、不意打ちなら任せて!」
…化ってことは解除することもできるんだろうか。まあいいや。見えないってのは結構アドバンテージだ。もう一回水を一気飲みしながら続ける。
「それで、轟は多分、個性把握テストで氷を溶かしてたから凍らせて燃やす個性で、障子は多分腕を複製する個性?かな。だからね、多分轟はビルごと凍らせて私達を戦闘不能にしてくると思うんだよ」
「え、そんなことできるのかな?」
「できると思う。多分私と同じタイプだ」
条件さえ整えば大規模に行使することも可能なタイプと見た。必ず勝つつもりなら、大規模攻撃を間違いなくしてくるはずだ。だから私は、防御に回る。さらに水を飲みながら既に個性を行使しながら、私はうずうずしている葉隠にジト目を向けた。
「言っとくけど、葉隠がこの作戦の肝だからね。裸足になったらアウトだからやめてね」
「うん、わかった!あ、でも私のことは名前呼びでもいいよ!」
「それはハードル高いから…」
≪「用意はいいか?それでは、スタートだ!」≫
オールマイトの号令が聞こえた。私の考えが正しければ、やってくるとしたら……速攻。その瞬間、入り口や窓から冷気が流れ込んできた。やはり、ビルごと氷結してきた。…だけど。
「この程度の氷じゃビクともしないよ」
既に、敷き詰めさせた。冷気には弱いがやりようはある。
轟side
「轟、二人は最上階の奥の部屋にいる。…だが、うん?」
「どうした、障子?」
「…いや、事前に渡された地図と何か違うような…?気のせいか?」
「とりあえず、ヴィラン二人は最上階にいるんだな。離れてろ障子」
耳を複製して索敵してくれた障子を離れさせ、右から放つ冷気でビル一棟丸ごと凍り付かせる。八木エヴリン。奴の個性は未だによくわからないが、こうされたらどうしようもないはずだ。
「障子は念のために外で待機していてくれ。俺が核兵器を回収してくる」
「了解だ」
凍り付いたビルに足を踏み入れる。通路は塞いでないから問題なく最上階まで行けるはずだ。階段を上り、最上階まで来ると思わず首をかしげる。廊下が、氷壁で塞がれているのだ。調整をしくじったか?使う気はなかったがしょうがないので左手を氷壁にくっ付けて熱を放つと、氷壁はぱらぱらと崩れ落ちて黒い壁が姿を現す。これは、八木の個性か?
「これは…!?」
≪「轟!外から上を見たんだが、最上階の窓が黒い何かに覆われているのを確認した!気を付けろ!」≫
障子からの報告を聞きながら黒い壁に恐る恐る触れると凍っていた様で崩れ落ちていき、その先の光景に驚く。さっきの壁でせき止められていたのか凍結しておらず、窓も黒い何かに塞がれ真っ暗な廊下が広がり警戒する。炎で明かりを…いや、俺は氷だけで…!氷を溶かしたことによる湿気でコスチュームが湿って嫌な感触を感じた、その時だった。真っ暗な廊下が、さらに黒く染まる。それは、間違いなく八木の個性だ。だがどうして突然……いや待て。アイツは個性を使う前に必ず水を飲んでいた。水を必要とする…湿気か!まずい、はめられた!
「上質な湿気をありがとう。これでやっと対等に戦える!」
「ちい!」
湿気が充満する空間に響く奴の声と共に蔓延った黒い何かが波打ち、咄嗟に冷気を放つが凍り付いた壁すらも上から飲み込んで俺は完全に取り囲まれてしまう。そして前から、何かかが高速で駆け抜けてきた。それは、八木が個性把握テストで使っていた四つんばいの怪物だった。
「そんな奇襲が通じるかよ!」
咄嗟に冷気を前に放って怪物を氷漬けにして床にゴトンと落とすが、その間に横を何かが駆け抜けて行った気配を感じた。しまっ…葉隠か!
「障子、そっちに葉隠が…」
「そっちに気を取られるよね!」
インカムで報告しながら振り向いたその瞬間、真上を覆った黒い何かから八木が飛び出してきて俺の背中にしがみ付き、確保用テープで左腕を巻かれてしまう。よりにもよって左…反撃できねえ。見上げれば、獰猛な笑みを浮かべた八木が見下ろしていて。
「つーかまえた、舐めプ野郎♪」
その後、障子も葉隠に確保用テープで巻かれて捕まった報告がオールマイトからなされ、俺達は敗北した。
№1ヒーローオールマイトである養父が大好きなエヴリンと、№2ヒーローエンデヴァ―である実父が大嫌いな轟。その勝敗はエヴリンの作戦勝ち。表面だけ凍らせて全部凍らされるのを防ぐと言うシンプルな作戦でした。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。