アサルトリリィ SPRING BOUQUET   作:Rαυs

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2023/5/1
文章の一部を改変。


{第 破 話}ムラサキクンシラン(AGAPANTHUS)

 CHARMが置いてあるであろう部屋に到着したオレは、さっそくIDカードを使用して中に入る。

 

 そこにはオレたちが使っていた部屋の何十倍もある巨大な空間が広がっており、そこには身の丈を超えた巨大なガラスケースの様な物がある。

 その頭上には型式番号らしき4桁の数字が記されていた。

 

「こ、ここにあるやつ全部CHARMなのか?」

 

 実験機。試験機。完成機。計3種類に列を分けて綺麗に並べられており、その中には様々なCHARMと呼ばれる決戦兵器が入っていた。

 

(腐るほどあるとは思っていたけど、こんなに…)

 

 CHARM。Counter (カウンター) Huge(ヒュージ) ARMS(アームズ)の略で、ヒュージという化物どもに唯一とどめを刺せる決戦兵器である。

 

「完成機…」

 

 ここの列にあるのは恐らく実験機の運用テストで何百人もの犠牲を出してデータを取り完成させた代物なのだろう。

 

 先へ進むと一番奥の方に1つだけ赤黒い巨大な何かがあった。

気になったので黒いケースの方へと向かう。

 

「なんだ?この真っ黒な箱は」

 

 恐らくこれにもCHARMが入っているのだろう。

他にも不可解な点があり、このケースだけカードを差し込む穴と数字を入力する為のキーボードがあったのだ。

 

 パスワードだろうか…いや、考え込んでも仕方ない。

取り敢えずカードケースからIDカードを抜き出す。

 

 先ほどは血が付着していた所為(せい)で見えなかった部分が姿を現す。

 

 …それを確認し、カードを穴の中に挿し込む。

 するとパネルが起動し、『4桁のパスワードを入力してください』と、音声と共に文字が表示される。

 

 やはりこのキーボードはパスワードを入力する為の物だったようだ…。だが、ここの科学者でもないのでパスワードと言われても分かる訳がない。

 

 そう思い諦めて引き返そうと、カードに手をかけた時──

 

「…20、61」

 

 ──ふと、さっき通信機を通して科学者が口に出していたCHARMの番号を思い出す。

 よく見ればこのケースだけ、どこにも型式番号が書いてないのだ。そしてIDカードとパスワードがないと開かないという厳重な警備。

 まるで関係者以外には知られたくないとでも言っているかのよう。

 いったいどんなCHARMなのかと好奇心と共に恐怖が自分を襲った。

 

「……」

 

 ぎこちない手つきでキーボードを押して行く。

 2…0…6……1───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───complete

 

 

「うおっ」

 

 唐突に機械音声が鳴り、空気の抜けるような音と共に赤黒い扉がゆっくりと開いたので思わず変な声が出てしまった。

 

 中に入っていたのは月の様に綺麗なコアが着いた純白のCHARMだった。

 そのCHARMは色々と特殊な見た目をしていた。

 どこが特殊なのかと言うと、そのCHARMの左右には小型のシールドが装備されていたのだ。

 

 通常CHARMにはオートガード機構という物がついているらしく、マギによるシールドが展開される事により身を守る事ができる。

確かに防御に特化したCHARMも存在するがそれにしてはシールドが小さい気もする。

 

「という事は、シールドを作成できないのか?いやそれよりも」

 

 だが、それ以上1番に目が行くのは刃の部分。今まで見てきたCHARMとは違い、刃の部分が剣の様な形ではなく小さな刃が複数ついた、まるでノコギリの様な見た目をしていたのだ。

 

(ノコギリ?チェーンソーにも見えるな)

 

 そして、次に目に入ったのは開いた扉に設置されていた少し大きなモニター。気になってそれに触れると研究結果だろうか、説明文のようなものが表示されている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────

 

カリギュラ

型式番号:GC-2061

開発企業:G.E.H.E.N.A

世代:第1世代

 グランギニョル社が製作した第一世代CHARMの最新機、『スパルタクス』を改造し、ヒュージ細胞を取り込ませ、試行錯誤した末、更に改造を加える事で完成した機体。

 他のCHARMと違い、通常のCHARMの2倍以上の出力を得る機能を搭載している。

スペック的にもこれを超える事のできるCHARMは恐らく造れないだろう。

 

 CHARMの出力を最大まで高める状態、これを最大駆動形態『フルドライブモード』と表記しようか

この最大駆動形態まで移行するにはやはりと言うべきか大きな欠点が2つほど存在した。

 

 1つは最大駆動形態までの条件。

その条件とは最大駆動中は使用者の『血液』がCHARM自身に喰われ続けること。

 そして更に使用者のマギを暴走、狂化させる事。

最大駆動に関しては使用者の任意の判断でCHARMのセーフティを解除する事で自動的に移行される。

代償は大きいが相応の性能が得られる。

 

 先程もいった出力もそうだが、それに加えて狂化(バーサク)状態、つまり使用者は疑似的にだがレアスキル『ルナティックトランサー』の能力を得る事が出来る。

 更に、このCHARMはヒュージ細胞を取り入れた影響なのかブーステッドスキル『ドレイン』の能力も得ている可能性もあるとの情報もあったがこちらはまだ未解明。

 

 次に2つ目の欠点。

これが最大の問題で、契約する際に契約者自身を喰らってしまうのだ。

 

 CHARM自身のヒュージ細胞が契約者を侵食しマギだけではなく、肉体その物を喰らい尽くし最後には跡形も無くなる。

 契約をさせるには高いスキラー数値と膨大なマギで服従させる必要があるが、成功しても大量のマギの消費とヒュージ細胞の影響で負のマギに犯され、契約者は実験の途中で狂乱状態に陥り、結局死に至っている。

そのため現状、完全に契約できた者はいない。

 

 完成機と分類してあるが、以上の実験記録によりこのCHARMはまだ調節と解析が必要と判断している。

 

 最後に、あくまで私自身の意見だが

 

 

 

 

 

 このCHARMは、間違いなく意思があり、生きている。

 

 

 

 

担当記録:飯島蓮也(いいじまれんや)

 

──────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「契約者を…喰らうって、なんだよそれ」

 

 失敗すると分かっていて、こんな恐ろしいCHARMの実験をあいつらは何度もしていたのか…?

 

 CHARMにヒュージの細胞を組み込むなんて馬鹿げた事をした挙げ句になんてことを…

 

 だが、契約すればそれ相応の力が手に入る…

 あのクズどもや外にいるヒュージを殺せる力が入る

 失敗する確率の高い無謀な賭け

 

「─?」

 

 そういえばこのCHARMはヒュージ細胞を使っていてそのヒュージ細胞が契約者を喰らいに襲いかかるんだよな…

 つまり、半分はヒュージでできている様な物

 なら、こいつにはオレの()が効果絶大じゃないのか?

 

「……やるしかない」

 

 博打(ばくち)だが、やってみる価値はある。

オレは目の前にあるCHARMに手を伸ばすが、指が触れる寸前で手が止まってしまう。

 心臓が激しく鼓動し、息も荒く、全身の震えも止まらない。

 恐怖が身体を支配していた。

 

「……っ」

 

 怖い、死ぬかもしれない。

こんな時、アイツなら……バカだから、逃げないよな。

さっきまで強気だったのに、何を今更怖がってんだ。

死ぬ覚悟なんか、ずっと前からアイツと約束した時から決まってるっての。

 

 それに───

 

ダメ(禁止)って言われるとやりたくなっちまうよなぁ!)

 

 力一杯CHARMを握る。

 

 握った瞬間、獲物が来るのを待ってたのかのようにCHARMから禍々しい、まるで獣の様な殺意を放つ黒いナニかがオレの右腕を一瞬で包み込み、想像を絶する痛みが走る。

そして、痛みと共に身体から何かを抜き取られる様な気持ち悪い感覚がオレを襲う。

 

「〜〜〜ッ“!!?」

 

 言葉にならないほどの痛みと共にグシャグシャとまるで咀嚼するかのような音がより一層恐怖を駆り立てる。

 

 マギ、肉、血、オレの全てを喰い尽くそうとしている。

黒いナニかは棘の様な物に変化し侵食は少しづつ進行していた。

このまま進めば恐らく数分で死に至るだろう。

 

 すると変化が起こる、左肩まで来ていた黒いナニかがまるで時間が止まったかのように進行を止めたのだ。

 

「はぁ…っ…美味(うま)かった…か?オレの(どく)は」

 

 侵食が止まった隙を見てオレは自分のマギを流し込むと共に、手のひらの位置にナイフを突き刺し、更に血を与え続ける。

 

「遠慮せずに…もっと味わえよ」

 

 ここの奴らに連れてこられ、身体をイジられ、更に改造された事でオレの血は普通の人間とは違う性質を持ってしまった。

 

 そう、ブーステッドスキルのような存在となったのだ。

 

 それは、ヒュージを弱らせる毒(・・・・・)となる能力。

人間に害があるのかは知らされていないのでまだ分からないが、ヒュージに対しては効果が絶大だって事は知っている。

 

 マギを流し続けていると、契約が成功したのか侵食が完全に止まり、肩まで来ていた黒い物が光の粒子となり、霧散した。

 腕を見るとあちこちに傷跡が出来ていたが、少しずつ再生していき数秒で完治した。

 

 だがそこで違和感に気付いた。

 

(CHARMの色が、変わってる?)

 

 まるで邪な物を一切引き付けない輝きを放つような色をしていた白銀のCHARMが、それとは真逆の禍々しい雰囲気を漂わせる血のように真っ赤な深紅のCHARMに変貌していたのだ。

 

「いったいどういう…

 いや今はそれよりも取り残されてるやつらの救出だ」

 

 オレは急いでIDカードを回収し、この部屋から去ろうとすると───

 

『それ、れんやのカードでしょ』

「─!?」

 

 どこからか声がし、思わず身構えてしまう。

 周りを見渡しても人影はない。

 ならば、一体どこから…

 

『上だよう〜え』

「なっ……は?」

 

 上と言われ上に顔を上げるとCHARMが入ったガラスケースの上にポツンと小さな影があった。

 その正体は───

 

「ね……猫?」

 

 

 

───猫だった。

 

 

 

『そうだよ〜

 吾輩は〜猫である♪』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────

{ 第 破 話 }

ムラサキクンシラン

A G A P A N T H U S

TAITED LOVE

-×-

[ 愛おしい日々、心の涙 ]

───────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そう、猫である。

 真っ黒な毛に(あお)色の(ひとみ)をした猫である。そして何故か尻尾が2本に枝分かれしている。

 

 だが、猫が喋っているようには見えない。

口を動かしていないのだ、今だって呑気に欠伸あくびしてるし。

そしてその声も耳で聞いているような感じではなく、まるで頭の中から聞こえているような感覚。

 

 

「…テレパシーか?」

 

『ご名答』

 

「な、なんで猫がそんな能力を…」

 

『君と同じ、と言えば分かるかな?』

「なっ」

 

 

 まさか、動物も実験に使っていたのか…

 いや、よく考えてみればありえなくはないよな。

 そしてその猫は『まぁそういう事さ』と適当に返す。

 

 

『話をもどけど…それ、れんやのカードだよね?

 なんで君が持っているんだい?』

 

「……殺して、奪った」

 

 

 オレは包み隠さず答える。

 隠す必要もないしそれ以前にアイツが思考を読める能力を持っていたとしたら意味がないからだ。

 

 

『ふーん…なるほどね。

 君はれんやとは会った事がないから仕方ないか…

 まぁ、何があったかはあえて訊かないでおくよ』

 

「……飼い主だったのか?」

 

『んー、どちらかと言うと恩人かな〜? 』

「恩人?」

 

 

 どう言う事だ?

 実験されかけた所を助けられたって事か?

 いや、あの尻尾や能力を見る限り実験はされている筈。

 ならいったいどういう───

 

『詳しい事情はここから出られたら教えてあげるよ…っと』

 

 そう言い黒猫はガラスケースからオレの前に飛び降りる。

 そして頭だけをこちらに向けて来た。

 

『2人を探しているんでしょ?

 ついてきなよ、案内してあげる』

 

 そう言って先へと進んだ。

やはり、考えてることが分かるのだろうか?

少し疑問がよぎったが、この研究所から出ると言う考えは同じらしいので大人しく従う事にする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その部屋は意外とすぐ近くにあったみたいで

保管室を出て右を曲がり、真っ直ぐ行った場所にその部屋はあった。

入口をCHARMで切り裂いて中に入るとそこには2人の少女がいた。

 

 1人は向日葵(ひまわり)の様な金髪に紅い瞳をもった少女が警戒心丸出しで後ろにいる子を守りながらこちらを睨みつけている。

 

 もう1人は猫柳(ねこやなぎ)の様な銀髪に猫みたいなつり目をした子が目を見開いてこちらを見ていた。

 

『カードを使って開ければいいのに…』

 

(……うるせぇ、そこまで頭が回らなかったんだよ。)

 

『脳筋だにゃぁ…』

 

『やかましいわ化け猫が』と内心毒づいていると、こちらが研究者ではないと判断したのか向日葵の子が警戒心を解いてその場にへたり込み、再びこちらへと顔を向ける。

 

「験体番号0818、0137だな?」

 

「……そうだけど、あんたは?

 …外で何が起きてる?」

 

「オレは…1087、ヒュージの襲撃だ」

 

「なっ……それで、そっちは何をしに?」

 

「助けにきた───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───ここから逃げるぞ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

To Be Continued




・主人公
験体番号1087。
身体を二重に改造された事で新たなブーステッドスキルを身に付けてしまった。
それ故に余計に研究者達に目をつけられて多くの実験に参加させられている。
毒の効果は強力だが殺すまではいかない。


・カリギュラ
型式番号GC-2061(本来の番号は707)
防御を捨てて攻めに全振りした脳筋CHARM。
グランギニョル社が制作した最新機を秘密裏に奪取してそれを改造して更に改造した第一世代CHARM。
喰らったリリィは数知れず、そしてCHARM自身が意思を持っている可能性があると言う恐ろしいCHARMであるが、主人公を喰って食中毒を起こしたのか今は物凄く大人しい。

スパルタクスが盗まれたあとは本社は大騒ぎになり血眼になって犯人を見つけようとしたが結局見つけられず、未解決事件となる。


・黒猫
名前はまだ無い。
『ヒュージはヒュージ細胞が生物に寄生する事でヒュージ化する』
『ならば、寄生させるのではなく、リリィの様にヒュージの一部を直接体内に取り込ませたらどうなる?』
という研究者達の馬鹿げた考えで実行された実験で死にかけた。
実験は成功したかに見えたが、衰弱しきっていたので研究者達は失敗と判断し、廃棄処分が決定され、それを飯島が担当したがそこで奇跡的にブーテッドスキルのリジェネレーターが発動し、助かった。


・飯島蓮也
黒猫が助かった所を見てまた実験台にされるのを恐れ、CHARM保管室で隠れて育てていた。
黒猫が研究所内の事やCHARM、強化リリィ達のことについて詳しいのは全て飯島が教えていたから。
黒猫いわく飯島は「僕にはいつか天罰が下るだろう」と自分なりに覚悟はしていたらしい…


・紅眼の少女
験体番号0818。
男の子っぽい口調をした少女。
趣味は折り紙で暇な時は同室の少女とずっと折り紙をしている。
主人公の登場に驚いていたがそれと共に肩に乗っていた黒猫に目が釘付けであった。


・猫目の少女
験体番号0137。
主人公の登場にかなり驚いていたがその後は肩に乗っていた黒猫に目が行ってしまった。
その後、主人公と金髪少女が会話している間はずっと黒猫と遊んでいた。


・G.E.H.E.N.Aの研究者達
だいたいG.E.H.E.N.A(こいつら)のせい。
面白そうと思ったことは即実行するため多くの犠牲者が出ている。
リスクやその後のことなど頭の隅に入れてるのか考えてるのか分からないからタチが悪い。
改造しているCHARMは基本的に他の会社から盗んだ物。
因みに葛鬼は文章力が皆無なので記録などは全て飯島が指示されながら記録していた。





















紫君子蘭(むらさきくんしらん)の花言葉は
「恋の訪れ」「愛の訪れ」
また、今回のサブタイトルの様にアガパンサス、またはアフリカンリリィとも呼ばれている。

ご愛読ありがとうございました。
次回も楽しみに!
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