アサルトリリィ SPRING BOUQUET   作:Rαυs

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2021/9/12
時系列調整。

2022/1/17
文章の一部を編集。


{第 急 話}ヒガンバナ(RED MAGIC LILY)

「逃げる?他の子達はどうするの

 研究者達も……てかそれ以前にヒュージは?」

 

 少女はオレの答えに戸惑いつつも冷静に返す。

そして明らかにこちらを警戒している、流石に敵対する気はないようだが…

 

「助ける」

「それを信用しろと?それに、例えあのクズを凌げてもその先にはヒュージがいる、アンタに何ができるの?」

 

 確かにアイツらから助けて逃げれても、その後は外のヒュージを相手にしなければならない、普通なら守りながら戦うのは厳しいだろう

 

「……ヒュージはオレが1人で相手をする」

 

 予想外の答えが返ってきて思わず息詰まってしまう少女。

 

 

「……正気?」

 

「あぁ…できれば協力して欲しい」

 

「…わかった。

 それで、なにをすればいい」

 

 その後、少女とその場で作戦会議をする事となった。

まずは得物(ぶき)が必要だと言う事で一度CHARM保管室へと戻りCHARMを取りに戻った。

幸いな事に2人とも実験の時に契約していたCHARMの番号を覚えていたのですぐに見つかった。

 

 早速、改めて作戦会議の続きを始めた。

 

 作戦は簡単。

オレが研究者達の気を引き、2人は別のルートから研究者達の後方へと回り、子供達の救出し、護衛しながら逃すことだ。

 

 そう言う方向性で進めていたが───

 

『あぁ〜話してるところ悪いんだけど…

 これはまずいかもね』

 

「は? ──ッ!?」

 

 黒猫が不穏な発言をした瞬間、研究所内の恐らく逆側、このD区画の出口付近であろう場所から巨大な爆発音が響いた。

 

「ん〜?

 あっ…この感じヒュージだ〜」

 

「なっ」

 

 銀髪の子がさっきまでの眠そうな雰囲気が嘘のように晴れ、まるで新しい玩具(おもちゃ)を見つけた様なキラキラした目で言う。

 

 というか初めてまともに喋ったな、ずっと眠そうに『うん』としか言わんかったからビックリしたわ。

 

 いや、それよりもアイツらまさかもう包囲網を突破したのか。

 

 

『この感じは…小型(スモール)が10、中型(ミドル)が3、大型(ラージ)が1。

 …ん?だけど何故かこっちは別行動をしてるね』

 

「分かるのか?」

 

 集団の司令塔である筈のラージ級が独断行動ってどういう事だ?

 不可解ではあるがそれはそれでリスクが減るから好都合だ。

 

『ん、ついでに言うと研究者達もこちらに向かってる』

 

 恐らくオレ達を回収したのち、ここの脱出通路を使って逃げるつもりなのだろう。

 だがヒュージの数も多いな、どうするか…

 

「はーい。らん、ヒュージと戦いたいな〜」

「なっ、お前なにを──

『いや、ヒュージに関してはその子が適任だよ』

 

 オレの声を(さえぎる)ように黒猫が割り込んでくる。

そして何故か背中から頭の上に登ってくる、重い。

 

「お前まで何を言って──

「いや、そいつの言う通りだ。

 ヒュージはらんに任せた方がいい」

 

 そして今度は金髪の子が割り込んできた。

……お前さっきまで黒猫がテレパシー使って喋ったこと目が飛び出る程ビビってたクセにもう慣れたのか。

 

「どういう事だよ、いくらなんでもこの数を1人で相手にするには流石に無茶があるだろ」

 

『大丈夫だよ、彼女は特殊だから』

 

「いったいどう言う…」

 

「らん、強いから大丈夫。

 安心して任せてー」

 

 自身に満ち溢れた顔でいってくる。

どうやらあちらも(ゆず)る気はないらしい。

 

「……分かった

 じゃあ頼んだぞ」

 

「はーい」

 

 恐らくどう言っても訊かないだろう

それにヒュージをどうにかしないといけないのも事実だ。

ここはこいつに任せるしかない。

 

『とは言ったけど、この子だけじゃあ少し心配な面があるから連絡役としてボクが付いていくよ』

 

「頼んだ」

 

 そういい黒猫はオレの頭から銀髪の子の頭に飛び移った。

 

「よろしく〜」

「にゃ〜♪」

 

「じゃあ早速、作戦開始だ」

 

 そしてオレ達は保管室を出て、2つの別れ道まで来る。

 

「…そういえば」

 

「「『─?』」」

 

「今更だが、お前ら名前はなんていうんだ?」

 

「ホントに今更だなお前……たづさ、だ」

「ん?らんは、らんだよー」

『ボクはシェパル。

 パルと呼んでくれてもいいよ』

 

「それで、お前は?」

 

 不意に金髪の少女──

たづさがオレに訊いてきた。

 

「─?オレは……とうかだ」

 

「とうか、ねよろしく」

「みんなよろしくー」

『よろしく』

 

 お互い自己紹介もしたところで、(しば)しの別れだ

 

「そっちは頼んだぞ、らん、パル」

 

『了解、ちゃんとフォローするよ』

 

「らん、頑張るよー

 だからあとで頑張ったご褒美が欲しいなー?」

 

「あ、あぁ…了解だ」

「また後でな、2人とも」

 

 そしてオレ達はその場で別れる。

 

 お互い、死を背負いながら前へと進んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 A区間から移動していた研究者達はヒュージが研究施設内に侵入したことをいち早く察知し、ヒュージに対抗する為に途中で火器などが整備してある保管庫へと行きアンチヒュージウェポンを回収。

 とうか達のいるD区間へと向かっていた。

 

「やっぱり繋がらないか」

 

「飯島の事はもういい!それよりも残った被験体どもとヒュージだ!」

 

 ここの責任者、葛鬼 伍廻(くずき いつみ)が声を荒げて言う。

 物事が上手くいかない所為(せい)で相当ご立腹のようだ。

 

「それにしても何故ここがバレたのでしょうか…まさか0137の?」

 

「いえ、それはあり得ないはずです。

 誘引(ゆういん)の能力範囲はそこまで広くありません」

 

「ならなぜ…」

 

「ええい!今考えても仕方がないだろう!今は生きてここから逃げ───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『逃げられると、思うか?』

 

 

 突然、葛鬼の声を遮るように、長く続く通路の先から声が響いた。

 

 

『『『ッ!?』』』

 

 そして次にギギギギ、と金属を引き()るような音がし、暗闇の中から火花を散らしながらそれは姿を現した。

 

 身の丈に合わない深紅のCHARM(捕食者)をその手に持ち、今にも喰らい付いてきそうな形相で殺気を放ちながらその少年(死神)は姿を現した。

 

「なっ、お前は験体番号1087!?

 な、なぜ貴様がここに…」

 

「しかもあのCHARM、まだ実験段階だったはずじゃ…」

 

「あの人、やっぱり裏切ったのか…」

 

 研究者達は予想外の人物に呆気に取られているが約1名だけはその表情を焦りと恐怖の色で染まっていた。

 

「あれは、まさか……カリギュラか?」

 

 その正体は先程まで不機嫌であった葛鬼であった。

 

「ま、まずい、あいつにカリギュラを持たせるのは駄目だ!今すぐ殺せ!」

 

「なっ、あれは貴重なサンプルですよ!?

 それに1087はリジェネレーター持ちです!」

 

「言ってる場合か!ここで死ぬよりはマシだ!

 なに、サンプルなんてまた造ればいいだけの話だ」

 

葛鬼の様子がおかしい事に戸惑う研究者達だったが「いいから撃て!」という命令に研究者達は迫り来る少年に容赦なく銃口を向け、一斉にトリガーを弾く。

 

 約20以上の機器から放たれる銃声と共に弾丸の嵐が少年を襲う。

 

「リジェネレーターも無敵ではない!マギがなくなれば役に立たんのだ!(たま)がなくなるまで撃ち続けろ!蜂の巣にしてやれ!」

 

 その後も銃声は続き、やがて全員が弾切れを起こす。

廊下に薬莢(やっきょう)がばら撒かれ施設内を硝煙(しょうえん)の煙と匂いが充満する。

 

「……やったか?」

 

 やがて煙が晴れ先程まで見えなかった景色が見えてくる。

 そして1つの影が姿を現す。

 

「なん……だと?」

 

 ほぼ無傷の少年がそこには立ち尽くしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 CHARMに付属していたシールドで弾丸を防いだオレを見て研究者達がまるで蘇った死人を見るような驚愕の目でこちらを見ている。

 

 まぁ、足や肩に銃弾が命中していたので無傷ではないが、すぐに再生した。

 

「なにをそんなに驚いている?

 自分たちの作ったCHARMにご自慢の玩具が通用しないのがそんなにショックだったのか?」

 

 あまりにもマヌケな顔をしていたので思わずわざとらしく(あお)ってしまう。

 

「防いだ?この特殊弾はラージ級にもダメージを与えられるんだぞ…」

「確かに頑丈に設計したがここまでの耐久性能は……まさか」

 

 よほどショックだったのか他の研究者達が余計に騒ぎ出す。

 

「き、貴様!なにが目的だ!」

「…簡単なことだ、お前達を殺してここから出る事だ」

 

「なんだと?

 ……ははっ!さては1017だな、復讐のつもりか?」

 

 いきなり笑い出す責任者に思わず苛立ってしまう。

 

「何がおかしい」

 

「笑えるとも、何故ならあいつが死ぬ元凶となったのは誰でもない貴様なのだからなぁ!」

「……なに?」

 

「ならば教えてやろう!今回の実験の内容は───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──リリィに生きたヒュージ細胞を取り込ませ、誰も到達したことのない100以上のスキラー数値を持つリリィを創り出す実験だったのだよ!」

 

「なん……だと?」

 

 生きたヒュージ細胞を取り込ませる…だと?

 そんなの、ヒュージ細胞をリリィに寄生させる行為となんら変わりないじゃないか!

 

 ヒュージから摂取されるヒュージ細胞と、生きた状態の、まだ何にも寄生していない純粋なヒュージ細胞では全く違う。

 

 まず純度が違う、と確か研究者の1人が言っていたのを覚えている。

詳しいことは分からないが、オレたち強化リリィに投与されるヒュージ細胞は基本的に前者のヒュージ細胞。

 だが、後者のヒュージ細胞は生物に寄生し、ヒュージ化する原因となっている細胞。

 

 これだけ聞けば生きたヒュージ細胞がどれだけ恐ろしい代物か想像ができる。

 

「本来、この実験は1087、貴様にする予定だったのだ

 だが、どこで知ったのか1017が名乗り出て身代わりとなった」

 

「…うそ、だろ?」

 

 オレが、オレが殺したのか?オレが居たせいでアイツが死んだのか?

 

 

「モルモット同士で仲がいいものだ」

 

 …悪いかよ。

家族はヒュージに殺され、居場所がないオレを引き取ってくれた、家族だと思ってた人達には裏切られ、ここに連れてこられて、身体をあちこち強化され(いじく)られ、人生その物がどうでもいいと思ってた。

 

「モルモットはモルモットらしく大人しく実験道具にされればいいものを、最後まで気に食わない小娘だったなぁ」

 

 そう思っていた時にアイツと出会った。

同居人ができたと勝手に大喜びし、挙げ句の果てに『これから私は貴方のお姉ちゃんよ!』だ。同い年だっての。

 

 最初はなんなんだこいつって思ったさ、オレにはとても眩しかった。

 だから関わりたくなかった、1人になりたかった。

 

 だから何回も拒絶した。

 

 なのにアイツは1人にしてくれなかった。

 そしていつの間にかアイツはオレの中で掛け替えの無い存在になっていた、オレの希望になっていた。こいつさえ生きていればどうでもいいと、一緒に過ごせるのなら、なんだってすると。

 

 だというのにアイツは、オレが居たせいで

 

「これも全部お前達が悪いんだ

 私に逆らうからこうなる、全部、全部お前達が!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ───あんたら…いい加減にしなよ」

 

『『『─!?』』』

 

 声のした方に研究者達が思わず振り向く。

そこには別ルートから来るために先程とうかと分かれたたづさの姿があった。

 

 近くには子供達を乗せた荷台を運んでいた研究者達が倒れており、たづさの後ろにはその荷台があった。

 

「なっ、貴様は0818!貴様も脱走していたのか!」

 

「しかもそのCHARMは、ティルフィング!?

 秘密裏に入手して保管していた筈、なぜ持っている!」

 

「なんでって、こいつと契約させたのあんたらじゃん…」

 

「なに!?誰だ勝手に実験で使用したやつは!」

 

 どうやら運ばれてきた新型機をみて好奇心に駆られた他の研究者が無断で実験に使ったらしい。

まるで新しい武器を手に入れて早速キャラに装備させて試し切りをするプレイヤーのように。

 

「諦めて、あんた達はここでもう終わり……とうか!いつまでボーっとしてる!」

 

 うるさい、分かってるさ。

こんな事言ってたっていつまでも変わらないことくらい…

でも、オレにはもう生きる為の目的なんて

 

「お前がここで死んだら意味がないだろ!そいつはお前に生きて欲しいから身代わりになったんじゃないのか!?」

 

「─ッ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───とうかは私よりも長く生きてね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …そう、だったな

アイツはよく『私より先に死んじゃダメだよ?』とか『私よりも多く、外の世界をみないと!』とか縁起でもないことばかり言っていたな…

 まるで死期が近いのが分かっていたかのように…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───もし、外に出られたら、桜を観に行こうよ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 可愛い妹達も一緒に連れて、だったよな。

 

 あぁ、観てみたいな。

隣にお前が居ないのは寂しいが、お前がそこまで綺麗だって言うんだ、気になって仕方がない。

 

 そして、もし叶うのなら、学院に咲く綺麗な桜とその周りに咲く小花達に囲まれながらオレと一緒に花見をしたい。とも言ってたな。

 

 ここを無事に出て、いつか咲き乱れる綺麗な春の花達を観に行こう、出会えるかは分からないが、お前の大事な人達も連れて。

 

「お前のおかげで生きる為の目的ができたわ」

「…あっそ」

 

 素直じゃないやつだなぁ

 

「何をバカなことを!」

 

 オレの発言が不愉快だったのか、それとも相当頭に来ているのか先程よりも一層言動が激しくなる責任者。

 

「降参しろ、それともここで死ぬか?」

 

「ほざけ!お前達モルモットがのうのうと生きられると思うな!

 おい!ドラッグを使え!」

 

「なっ、ヒュージドラッグはまだ実験段階です!

 どんな症状がでるのか分からないんですよ!?」

 

 ヒュージドラッグ?

 またヒュージ細胞を使った物で何かするつもりか?

 

「何もしないで死ぬよりはマシだろ?」

 

『『『─ッ…』』』

 

 どうやらこいつらに降参の二文字はないらしい。

 

 すると葛鬼以外の研究者達は(ふところ)から小さな箱を出し、そこからを出す。その中には緑色の液体が入った細長い瓶のような物が入っており、先端が鋭く尖っている。

 

 あれが、ヒュージドラッグ?一体何を……まさか

 

「お前たちなにを──

 

 とうかが声を荒立てた瞬間、その瓶を首元、または腕に突き刺し、瓶の頭に付いているボタンを押し込む。

 

 するとプシューっと空気が抜けるような音がし、中に入っていた緑色の液体が研究者達に流れ込んでいく。

 

 そう、やはりあれは注射器だったのだ。

 

「「なっ」」

 

「ふはははははっ、これで貴様達は終わりだ!」

 

 そこからはまさに地獄絵図であった。

葛鬼の周りにいる研究者達が目を血走らせ、尋常ではない表情で(かお)苦痛のあまり発狂しはじめたのだ。

 

 阿鼻叫喚とはまさにこの事だろう。

 

 そして眼球が血のように真っ赤になり身体のあちこちが膨張し、やがて人ならざる者へと変化した。

 

 背中から触手の様な物が生える者、方腕が身の丈ほどに巨大化し、鉤爪の様な物を生やす者、爬虫類の様な鱗と鋭い爪を持った者とそれぞれ違う品種をしている。

共通しているのは全員人の原型は保っている部分と所々にヒュージの様な機械的な肌を持っている所だ。

 

「ひ、人がヒュージに…」

 

「─ッ!たづさ!」

 

 巨大な鉤爪を持った研究者───ヒュージがたづさに襲いかかった。

背後には荷台があるので避けることも出来ず、CHARMでその一撃を受け止める。

 

「うぐっ…」

 

「どうだ、私の最高傑作は。

マギクリスタルをナノマシン化し、大量のヒュージ細胞と融合させた力作だ、ゆっくりと楽しみたまえ」

 

 そう言い残して葛鬼はたづさの横を通り過ぎ、立ち去った。

 

「ま、待て!……あぁもう邪魔!」

 

 たづさは力任せにティルフィングを横薙ぎしてヒュージを薙ぎ払う。

そして飛ばされたヒュージに対して即座にブレイドモードからバスターランチャーモードに切り替えて放ち、木っ端微塵にする。

 

「な、なんて威力だよ…」

 

 そう思ったのも束の間、こちらにもヒュージが接近していた。

 

「っ、やるしかない」

 

 こちらもCHARMを構える。

 すると月色のクリスタルコアが光出し、まるで唸り声のような音を発する。

 まるで獲物を目の前にした時の空腹の獣のように。

 

「……喰わせろってか」

 

 オレの声に答えるようにCHARM本体がギチギチと音を立てる。

 

「…使えよオレの血を、好きなだけ」

 

 目の前にいる爬虫類型のヒュージが雄叫びをこちらへと接近してくる。

 

「……ふぅ───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ───セーフティ、解除」

 

 

 

 

 

complete(承認)

 

安全ロック解除、最大駆動形態(full drive mode)へ移行します

 

 

「……つうっ」

 

 音声が流れた瞬間、契約する時に出現した黒い棘のような物がオレの手を包み込む。

 そして刺されるような痛みと共にCHARMからバイクなどが発するエンジン音が鳴り響き、鋸歯状(きょしじょう)の刃が高速で回転する。

 

 そして自分の血を食わせたことで抗体を得たのだろうか、契約する前よりも元気な気がする。

流石に気のせいだろうか。

 

 早速オレは約1mくらいの距離まで接近したヒュージに対してCHARMで横一文字に切り裂く。

 

 ヒュージの爪が目と鼻の先で止まる。

そして胴体から血飛沫を上げて上半身だけが倒れた。

 

「……っ」

 

 得体の知れない力が溢れてくると共に、凶暴で暴力的な衝動が湧き上がり、こちらの意識を持って行こうとしている。

 

 心臓がバクバクと動悸(どうき)を打っている、意識を保ち続けないと頭がおかしくなりそうだ。

 

 落ち着け…落ち着け…よし、まだいける。

 

「おら、こいよ

 お前達の獲物は目の前だぞ」

 

 オレの挑発が効いたのかは分からないが、ヒュージ達は悲鳴にも似た雄叫びをあげて一斉に襲いかかってくる。

 

「そうだ、それでいい…オレも長くは無理そうなんでな」

 

 そしてオレは地を蹴る。

 

 数は約13。

 鉤爪型が6、爬虫類型が4、触手型が3だ。

 残りの5体、爬虫類型3、触手型2をたづさが相手にしている。

 

 被害がないように荷台を遠ざけて戦闘しているがかなり苦戦している。

これは早く合流してから片付けた方がいい。

 

 ここの通路は縦横幅が約3〜4mとかなり広いのでCHARMも容易に振り回す事ができるので存分に戦える。

 

 まずは1番前にいる鉤爪型へ接近し、頭上へ跳ぶ。

鉤爪型はその巨大な腕についた爪で串刺しにしようと一直線に腕を突き出してきたがオレはシールドを展開して身体を斜めにし、受け流す。

 その後オレは身体を回転させそのまま首を切り裂く。

 

 そのまま踏み台にして一気に跳ぶ。

それを読んでいたのか爬虫類型が跳躍(ちょうやく)して高速で接近してくる。

 

 更にその後ろには鉤爪型が身構えていた。

恐らくこいつを避けるか、斬り伏せた隙を狙って刺突して来る気だろう。

 

 オレは爬虫類型の腹に目掛けてCHARMを思い切り投げる。

するとCHARMは爬虫類型に刺さりそのまま後方にいる鉤爪型の顔面に突き刺さり大量の血飛沫を上げる。

そのまま爬虫類型の腹に着地し、CHARMを引っこ抜いて更に跳んだ。

 

 そしてCHARMを上に向けて、身体を縦に回転させてその先にいた、たづさに攻撃を加え妨害している触手型を背中から頭ごと真っ二つに割る。

更に勢いを利用し、着地すると同時に今度は身体を横に連続でニ回転させ、たづさの目の前にいる爬虫類型2体を斬り伏せる。

 

「ふぅ、無事か?」

「……まぁね」

 

 たづさ自身キズだらけだったが、やがて一瞬で再生する。

 なるほど、リジェネレーター持ちか。

 

 そしてヒュージ達の方に向き直る。

数は約9、かなりの距離を移動してきたので生き残りが意外と多い。

 

「…さて、どうする」

「まかせろ」

「……は?」

 

 たづさはティルフィングを再びランチャーモードにし、その強威力の巨大な弾丸を無表情でヒュージ達に弾が切れるまで乱射する。

数発の爆音が施設内に響き渡り、硝煙で目の前が完全に見えなくなる。

 

 煙が晴れるとそこにはヒュージであった者が存在していた。

 

「ふぅ、すっきりした」

 

「………」

 

 なんていい笑顔だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後はCHARMのセーフティをロックし、荷台の中から子達を出してあげた。

同い年の子もいるかと思ったが驚いたことに年下しかいなかった。

 

 らんの方も片付いたようで今から此方(こちら)へ向かうとパルからの通信があった。

 

 そしてオレ達はA区画の出口を目指して歩いていた。

 

「とうか、あんたこの後はどうするの?」

 

 不安になっていた子達を落ち着かせていたたづさが不意に声をかけてくる。

 

「あぁ、一度施設内に戻って大切な人を迎えに行く」

「……そうか」

 

 またヒュージが現れる可能性があるので念のためにオレは一緒に出口まで向かっている。

 

 パルが言うには何故か単独行動を取っていたラージ級の反応が消えたらしく念のために警戒をしてて欲しいとのことだ。

 なので、らん達と合流するまで護衛するつもりだ。

 

「そういえば、たづさ」

「─?」

 

「お前どこか行ってたけど何しに行ってたんだ?」

 

 そう、出口に向かう途中で何かを見つけたらしく少しの間だけ別行動をしていたのだ。

その間ほかの子達の相手をしていたのだが、どうやらオレは年下が苦手のようだ…

 

「あぁ、保管庫があったからこいつの弾を補充しに行ってたんだ」

「保管庫?カードは必要じゃなかったのか?」

「さぁ?切り倒したから分からない」

 

 えぇ…

 なんて荒技だよ。

 やっぱりこいつ、意外と脳筋なんじゃないか?

 

「ん?あれは…出口か?」

「みたい、だね」

 

 通路の先にカードの挿し込み口が着いた扉があった。

そして扉の目の前まで来ると早速IDカードを挿入する。

 

 すると扉が開き、外に出る。

 

 そして日の出の光がオレ達を照らした。

太陽が出始めてる所為でまだ少し肌寒かったが、数年ぶりに浴びた日の光はとても眩しく、そして涙が出るほど暖かかった。

そして目を開けるとそこには青く染まり始める空、光り輝く緑の大地が広がっていた。

 

「あっ…」

 

 声を発したのは誰だろうか。

いや、恐らくここにいる全員が出したのかもしれない。

やがてその場で数名、泣き崩れる者が現れそれにつられて全員が涙を流した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、現実はそんな暇も与えてはくれなかった

 

 

『─ッ!?』

 

 オレとたづさ、そして他数名がその気配に気付いた。

さっきのヒュージ達とは違う、今まで感じた事のない禍々しい気配。

 

「たづさ!」

「みんな中に逃げて!」

 

 たづさの呼びかけにみんな驚いていたが状況を察した一部の子が研究所内に急いで避難させた。

 

 誰かが扉の真ん中にいたお陰で扉が閉まらなかったのでスムーズに避難させる事ができた。

 

 そしてオレはたづさに近付き───

 

「たづさ、ごめん」

「─?……なっ」

 

 研究所内に向けてたづさを突き飛ばした。

 

「とうか!なにを───

 

 たづさの声を遮る様に扉は閉まった。

見た感じ今までの扉よりもかなり頑丈に作られているのでそう簡単には破壊できないだろう。

 

 そして、大きな足音が近づいてくる。

 

 身体中が震え、危険信号を伝えている。

 

 今なら間に合う、逃げろ、死ぬぞ、と。

 

 

「今更、逃げられるかよ……」

 

 

 やがてそいつは姿を表した。

尻尾の生えた人型のヒュージで体長は恐らく10mは超えているだろう。

白い皮膚に眼球のないウナギのような頭、背部には鰭のような翼を2枚生やしている。

腕は細いが、肘から下はガントレットのようになっており鋭利な爪が見られる。

 

 先程までここを死守していたリリィと激しい戦闘を繰り広げたのか返り血を浴びており、身体中が切り傷だらけで頭部や背中、腕などにCHARMが刺さっている。

 

 そしてその手には──

「た、助けてくれ!」

 

 先程、逃げ出した諸悪の根源(葛鬼 伍廻)が捕まえていた。

しかも何故か(さか)さに持っている。

 

「き、貴様!早く私を助けろ!」

 

 恐らく逃げた先に偶然、こいつがいて運悪く捕まってしまったのだろう。

 

 にしてもあのヒュージ、なんであいつを捕まえて──

 

「なにをボサッとしている!はやく私を───

「………は?」

 

 そんな葛鬼の声を(さえぎ)ったのはヒュージだった。

 奴その手を口元まで持っていき、食ったのだ。

 

 しかもわざわざ、下半身から。

 

「ギャアアアァァァァッ‼︎

 痛イッ!!痛イィィッ!」

 

 そしてヒュージはまるでその味を楽しむように

よく噛んでゆっくりと、ゆっくりと捕食していき───

 

「アッ…アッ…助ケ──

 

 最後は一気に口に放り込んだ。

グチャグチャと咀嚼音(そしゃくおん)だけがその場で鳴り響く、そしてペッと何かを吐き出した。

吐き出された物を思わず見てしまう。

 

 その正体は先程まで食べていた食料の頭だった。

 

「……」

 

 あまりの衝撃的な状況に思わず固まってしまう。

ヒュージが人間を捕食するところなんて生まれて初めて見るのだ。

できれば見たくもなかった。

 

 やがてヒュージは身体を前屈みにして頭部を上下に臭いを嗅ぐような動作をする。

 

 そしてこちらに顔を向けて、ニタリと笑う。

まるで新しい獲物、と言うよりは玩具を見つけた子供のような笑顔だ。

 

「─ッ……こいよ」

 

 そしてヒュージはゆっくりとこちらへと向かって来る。

 こちらもCHARMを握り、身構える。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ははっ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ───やっぱりオレ、桜見れないかもしれないわ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──とうか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 走馬灯(そうまとう)だろうか

 アイツの後ろ姿が見える。

 

 宝石の様に輝く翡翠(ひすい)色の瞳。

 

 腰まで伸ばした綺麗な桃色の髪。

 それをツーサイドアップにした少女。

 

 

「…はぁ、しっかり伝えとくべきだったな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──まだ、ダメだよ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わぁ〜ギガント級だー

 らん、始めてみるー」

 

「うわっ、何あれ気持ち悪っ」

 

『うへぇ、趣味わるいねぇ』

 

 

 

 

 

「………は?」

 

 不意に後ろから三つの声が聞こえて来る。

 そして思わず、後ろを振り向く。

 そこには、らん、たづさ、パルがいた。

 

「お、お前らなんで…」

「なんでって、あんたの手助けに来たんだよ」

「らんはとうかにご褒美もらいにきたー」

『ボクも〜』

 

「なっ、なんでここに

 それ以前に扉は──

 

 

 そう思い、扉の方を見ると見事に真っ二つに切り裂かれていた。

嘘、だろ?いや、らんのCHARMなら不可能ではないかもしれない。

 

 …バカか、こいつらは

 なんで来ちまったんだよ…

 

「避難しろって言っただろうが!」

 

「…お前、死ぬ気だっただろ」

 

「─っ、そんなこと」

 

「ある、それ以前に私そんなこと言われてない

 それと、わたしも頑張ったから、何か欲しい…」

 

「らんも、言われてないし欲しい」

 

『それ以前にギガント級を1人で相手にするなんて、自殺行為だよ、バカなの?』

 

「……はぁ」

 

 コイツらには一生敵わないのかもしれない…

つうか、この期に及んで何がご褒美だよ、そんな金ないっての。

 

 ここまで言われたら簡単には死ねないな…

 

「お前ら、死ぬなよ」

「当たり前、みんなで生き延びる」

「らん、強いから大丈夫!」

『サポート任せてー』

 

 ヒュージも本能的に戦闘態勢に入る。

全身から雷を放ち威嚇(いかく)をする様に放電をしながら耳鳴りがするくらい激しい、悲鳴の様な雄叫びを上げる。

 

「……行くぞ!」

 

 そしてオレ達は生きる為に立ち向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 オレ頑張って生きる、お前の分まで。

お前が託してくれた物、無駄にしない。

 

そしてお前の妹達にも会って、知り合って、いつか桜を見に行こう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …あぁ、なんで素直に自分の気持ちを言えなかったんだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ───姫騎(ひめの)、オレは…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アサルトリリィ

SPRING BOUQUET

[ スプリング ブーケ ]

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────

{ 第 急 話 }

ヒ ガ ン バ ナ

RED MAGIC LILY

Sorrowful memorys

-×-

[ 悲しみの向こう側へ ]

───────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

To Be Continued




──西暦2049年12月。

私立百合ヶ丘女学院、相模女子高等学館、御台場女学校、聖メルクリウスインターナショナルスクールなどの名門校に差出人不明のメールが届いた。

そこにはとある研究所の居場所や研究内容などの情報が事細かく記載されていた。
そこに記載されていた研究所や研究者達は長年調査しても捕らえる事のできなかった重罪者たちである。

罠と言う事も考え、その情報を元に各学院が調査したところ、その情報に嘘偽りはなかった。

そしてすぐに各学院はそこに属する研究者達を捕らえ、実験台にされているリリィ達を救出する為に『竜爪山《りゅうそうざん》研究所強化リリィ救出作戦』を計画した。











───同年12月。
竜爪山研究所強化リリィ救出作戦、実行。
各学院から派遣されたリリィ達で4つの合同部隊を用意する程の大掛かりな作戦となった。
4つの部隊でそれぞれ分かれ、4つの出口を塞ぐように襲撃をする作戦だ。

第1部隊が研究所付近に到着するとヒュージとの激しい戦闘があったのか大人数のリリィとマディックの亡骸が確認された。

そして、その先へ進み、救助隊は目的地である研究所へと着いた。
だがそこには我々でも予想のできない光景が広がっていた。
レストアらしき特型ギガント級の死骸、そして傷だらけの身体でCHARMを持ち、その場で気絶した3人の少年少女が発見されたのだ。
これに対し第一部隊は早急に救助。
その後、研究所内の近くで避難していた幼いリリィ達も保護した。











第2部隊の情報では数年前に失踪し、行方不明扱いとされていたCHARM開発会社、アウニャメンディシステマス社の社員、飯島 蓮也 主任の亡骸が発見された。
飯島主任以外の研究者は見つからず、それらしき人物に似た人型ヒュージの死骸が確認された。


また、第3部隊の情報では研究所の廃棄処理場と表示された巨大な部屋では、少女達であった物が見つかった。
室内は強烈な異臭が漂っており、遺体も腐敗が進んでおり、まさに地獄絵図だったとのこと。


そして最後に、第4部隊の情報ではCHARM保管庫という部屋で大量の違法CHARM、そして各国で開発され、盗まれた筈の最新型CHARMが多数発見された。





















調査の結果
死者は約1200人以上。
生存者は約25名。








最後までメールの差出人の正体は分からなかった。
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