アサルトリリィ SPRING BOUQUET   作:Rαυs

4 / 12
一年生編を『seed nexus編』と命名することにしました








2021/9/12
時系列調整。

2022/8/16
文章を改変(らんについて)


{第 壱 章}何気ない日常に花束(しゅくふく)
{第1話}カタバミ(WOOD SORREL)


 日の光が当たっているのか暖かく不思議と心地よい。

 小鳥の(さえず)りが聞こえる、もう朝なのだろうか。

 まだ、起きたくない…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───か!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 声がする。

誰だろうか…

そういえば、俺は…何してたんだっけ。

確か今日は大事な日だった気がする。

 

…思い出せない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───うか!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まぁいいや。

 それよりも、なんか異常な程に眠いな。

 何もしたくないくらいに体が重い。

 

 てか、誰だよさっきから───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「とうかってば!」

 

「─!?」

 

 

 耳元で叫ばれて思わず目が覚めてしまう。

目を開けるとそこには真っ白な空間が広がっている。

 

 何かと思い、顔を横へ向けると案の定、声の(ぬし)がそこにいた。

 

 

「…ひめ、の?」

 

「そうですよ!あなたの大好きなお姉ちゃん定盛姫騎(さだもり ひめの)ですよ!聞こえてる〜!?」

 

 

 翡翠(ひすい)色の瞳を持ち、桃色の髪を紫色の細長いリボンでツーサイドに纏めた同い年ぐらいの少女、定盛姫騎(さだもり ひめの)が口をプクッと膨らませて明らかに不機嫌な顔でこちらを見つめている。

 

 

「だぁもうやかましい!なんだよ」

 

「私の話ちゃんと聞いてた?」

 

「…いや、ボーっとしてた」

 

「ん〜っもう!」

 

 

 狭く、真っ白な部屋に姫騎の可愛らしい怒声が響き渡る。

姫騎はここに来る前はかなりレベルの高い学院に通っていたらしく、基本的に暇なのでよく座学などを教えて貰っている。

 

 そして今回はヒュージとCHARMについて学んでいたのだが…

 

「せっかく私が可愛い天使(いもうと)達の話をしてあげてるというのに!」

 

 ヒュージの生態に関する話しから綺麗な流れで話題が変わったのだ。

それが役に立てば文句はないのだが、いかんせんこいつの話は大体がその妹達の自慢話なのだ。

 

 その妹達は2人おり、1人は血の繋がった妹、もう1人は将来、何かの誓いを立てて義妹となる予定の妹だ。

 

 そして何故か勝手にオレの妹候補にもされている。

なにが『妹達は一つ下だからとうかはお兄ちゃんになるね!』だ。

 

 顔も知らぬ少女達を勝手に2人をオレの妹にしたそして挙げ句『お兄ちゃんなんだから妹達をしっかり守るんだよ?』ときた。勘弁してくれよ…

 

 座学の途中でも隙あらばその2人の自慢話で流石のオレも(まい)っている。

 話の合間(あいま)に妹達の自慢話を入れないと死ぬ病気にでもかかっているのだろうか?

 

「はぁ……えっと、帰ってきたら2人から手紙が届いてたんだっけ?」

 

 確かこんな感じの話ではなかっただろうか。

他校とのコミュニケーションを図る為に、選ばれた数名の生徒が一カ月の間だけそこの寮で暮らし、学院に通う短期転校のような企画があり、それに選ばれたんだとか。

 そして週に1回は2人の妹から手紙が届くんだと。

 

「はっ!そうそう!───

 

 そして目を輝かせると両手を打ち合わせ、引き続き自慢話を始める。

 

 話す時のタイミングを分割(ぶんかつ)して欲しいだけで別段、嫌と言う訳ではない。

 

「それでねそれでね?ひめひめとりんりんがね!───

 

 むしろ好きなのかもしれない。

 ヒュージは勿論、リリィやそのリリィ達が通う学院での訓練知識など、とても興味深く勉強になる。そしてなによりも、学院での生活をとても楽しそうに、時には寂しそうにそれでいて幸せそうな表情で話す彼女を見ているとこちらも感情移入してついつい夢中になってしまう。

 

 

「もう可愛くて尊くて愛おしくて切なくてホントに萌え萌えキュンなの!」

 

「なるほど、わからん」

「なんで!?」

 

 ただし、理解できた時の場合だが。

 語彙力が全く仕事をしていない所為(せい)で話の6割が理解できない。

話を聞いていると、その2人がとても可憐で学院の人気者なんだというのはなんとなく分かる。

 

「もう、とうかはまだまだだね〜ここまで言ってひめひめとりんりんの良さが分からないなんて」

 

「いや分かるかよ」

 

 なぜこんな破天荒でおバカなやつの頭がいいのか理解に苦しむ。

本人曰く、勉学は中等部のレベルまで進んでいるらしく、こうやってその知識を教えて貰っているのが何よりの証拠だ。

 

「てかお前、2人の事ずっとその呼び方なのか」

「ん?そうだよ?ひめひめに関しては小さい頃からこうだし」

 

 そんないかにも「え、私なにか変?」って顔されてもなぁ…

 

「お前なぁ、もしその子が学院で『私の事はひめひめって呼んでね!』とか言い出したらどうするんだよ」

 

 それ以前にお前の名前にもその『姫』がついている訳だが、そこら辺どうなのだろうか。

 

「ものすごく可愛いと思う!」

 

 思わず「はぁ…」とため息を()いてしまう。

恐らく直る事は一生ないであろう、もう慣れたが。

 

「あぁ〜話を戻して貰ってもいいですかね」

「あぁそうだったね、ごめんごめん」

 

 そして改めて授業の続きに入る。

 今回は姫騎が短期入学中の合同訓練で初めて遭遇したと言う人型のヒュージについてだった。

その時は護衛に着いてくれていた高等部のリリィ達が対処してくれたらしい。

 

 姫騎曰く、骨格は成人男性の物でヒュージ特有の鉄のような皮膚を纏い、まるで獲物を捕らえる為にあるかのような鋭い爪と牙が備わっていたらしい。

 

 もちろんそのヒュージには知能はなかったが、かなり厄介なヒュージで苦戦していたらしく、まるで軍の兵士の様な動きをしていたらしい。

 

 当時そのヒュージと相見(あいまみ)えたメンバーは『戦いに慣れた手強いヒュージだった』と感想を述べていたらしいが。

 

 姫騎自身はその意見に対して違和感を持っていたらしい。

 

 

「何がおかしいんだ?リリィとの戦闘を生き延びて強くなる個体だっているんだろ?」

 

「とうかの言う通り、レストアの可能性は十分にありえるね」

 

 

 ならなぜ、と思っていると「でもね」と姫騎が付け加え指を立てる。

 

 

「レストアにはある特徴がある。とも教えたよね?」

 

「あぁ、確かネストに戻って傷を修復するから大体のレストアには古傷らしき物があるんだよな」

 

 

 オレがそう答えると姫騎は「その通り!」と言ってわざわざ抱き着いて頭を撫でてくる。

 

 暑苦しい重いウザいさっさと離れろ。

 

「ところがどっこい一部の人も気付いていたんだけどそのヒュージにはね、傷を修復した傷跡なんてどこにもなかったの」

 

「…なに?」

 

 つまり、最初から知識があったという事なのか?しかも軍隊が使うような体術の知識を?

 

 姫騎自身も、そのヒュージはまるでリリィに関する知識を持ち合わせているように見えたとも言っていたが、いやそれでも…

 

「私の仮説ではね、何かの実験で被害者がヒュージになったのでは。って思ってるの」

 

「な、なにを…」

 

「元々その学院ではね、ある恐ろしい(ウワサ)で持ち切りだったのよ」

 

 噂?いったい何の噂なのだろうか……まさか──

 

「察しがいいね、その噂はね───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ───『動物や植物だけではなく人間もヒュージになるんじゃないか』っていう噂」

 

 

 姫騎の一言に思わず唖然(あぜん)としてしまう。

 

 そんな恐ろしいこと、誰が思いつくだろうか。

ならば人類は人類とも戦っていると言うのだろうか、考えるだけでも背筋が凍ってしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───うか!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「その仮説はあながち間違ってはいないのかもしれないと、私は思うの。

 なぜならヒュージは、ヒュージ細胞と呼ばれる巨大化細胞が大元(おおもと)になっている。

 

 それに、ここの研究者たちは───

 

 

 すると室内のドアが開き、白衣に身を包んだ男性が入ってくる。

そして姫騎の験体番号を口にし、オレに見向きもせず姫騎に「実験の時間だ」と()げる。

 

「あらら、もうそんな時間か〜」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───だよ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …なぜだ、とても嫌な予感がする。

 

 そう思い咄嗟(とっさ)に姫騎の手を取ろうと腕を伸ばした瞬間、唐突に強烈な眠気がオレを襲う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───きて!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ダメだ、今ここで意識を失ったら取り返しがつかない気がする。

 

 お願いだ、行かないでくれ!実験ならオレが代わりに受けるから!

 

 だから!

 

「とうか」

 

「─?」

 

「もし、もしだよ?

 私がヒュージになっちゃったらさ───

 

 

 やめてくれ、それ以上は言わないでくれ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───とうかが、私を殺し(たすけ)てね

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

── さよなら ──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

燈華(とうか)!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「─ッ!?」

 

 あまりの大声に思わず飛び起きてしまう。

一気に解放された目を、焼く様な眩しい光が辺り一面を照らし、周りの景色が(あらわ)になり視界に入ってくる。

 

 目の前にあるのは先程の様な真っ白な部屋ではなく、キッチンや窓もある、ごく一般的な普通の部屋だった。

 

 自身が尻を着けている柔らかいベッドの先には青色のカーペットと小さなテーブル。

 

 そしてその右の壁側には3つほど木製の本棚があり、そこには小説や漫画、辞書などが色分けして並べられている。

 

 そしてその反対側には40型のテレビを木製のテレビ台に置き、その下にDVDプレイヤーとゲーム機がしまわれている。

 

 その他にも様々な家具が置かれているが、元々が2人部屋な為、かなりのスペースが余っており、質素な部屋に見えてしまっている。

 

「……夢、だったのか」

 

 なんて目覚めの悪い夢だろう。

よりにもよって、あそこでアイツと過ごした夢なんて…

 

 

「あ、やっと起きた」

 

 

 不意に横から声がしたので不意に声のした方へ顔を向ける。

そこには付いた透き通るレモン色の髪を後ろで纏め、藍玉の様に綺麗な瞳をした同年代の少女がいた。そして頭に1本のアホ毛がついている。

 

「んっ……そら、は?」

 

「はいはいそうです、天葉さんですよ?」

 

 なかなかこちらが起きなかった為か少し不機嫌になっている。

その表情が少し面白く、思わず笑みが溢れてしまった。

 

 そしてふと、視界と両頬に違和感を感じた。

手をやると、そこには生暖かい水玉が付いていた。

 

「もう、なに笑って…って大丈夫?」

 

 様子がおかしいと思ったのか顔を覗かせこちらへ声をかけてくる。

 

「怖い夢でも見ちゃった?」

 

「……いや、ちょっと懐かしい夢を見ちまってな」

 

「そう、なんだ」

 

「あぁ、だから大丈夫……おはよう、天葉」

 

 そして彼女に「おはよう」と返す。

すると彼女も「…うん、おはよう、遅刻するよ?」と言い、中等部時代からの同級生、天野天葉(あまの そらは)が窓越しに輝いている太陽と負けないくらい眩しい笑顔でこちらへ微笑みかけてくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして俺、村雨燈華(むらさめ とうか)の新しい1日が始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アサルトリリィ

SPRING BOUQUET

[ スプリング ブーケ ]

-seed nexus -

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第 壱 章

何気ない日常に花束(しゅくふく)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────

{ 第1話 }

カタバミ

WOOD SORREL

Shining heart

-×-

[ 輝きを放つ命の花たち ]

───────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今年は西暦2051年。

特型ギガント級との戦闘で(から)くも勝利し、研究所から救出されて2年もの月日が流れた。

2年、と言っても目が覚めた頃には年が明けていたので1年ちょっとだろうか。

 

 あれからは各学院の責任者が共同で運営している保護施設『ミソロジー養護学園』に引き取られ、そこで他の研究所出身の子達と共に半年間、遅れた分の知識を取り戻すように勉学に(はげ)んだ。

 

 そこからの進路は、どこのガーデンへ行くかであった。

 

 そして、俺とたづさはこの『百合ヶ丘女学院』へ、らんは東京の六本木にある『エレンスゲ女学院』へ入学した。

 

 らんに関しては施設にきてから数週間後に出身場所であったアウニャメンディ・システマス社の研究所に引き戻され、そこが運営母体となっているエレンスゲ女学院に入学する事になったらしいのだが……かなり心配だ。

 

 お互い離れ離れになってしまったが、一応連絡を取り合ったり、時間がある時は3人で直接会うことだってある。

 

「ごめんね、朝食(ちょうしょく)ごちそうになっちゃって」

 

 寮を退場して校舎に向かっていると、先ほど俺が天葉の分まで朝食を作った事に対して申し訳なさそうな顔で謝罪してくる。

 

「いや、俺も悪かったな、電話に全く気付かなかったよ」

 

 俺がそう言うと「いえいえ」と天葉が返す。

 

 どうやら天葉は中々連絡のつかない俺を心配して朝食も食べないでわざわざ俺の部屋まで起こしに来てくれたらしい。

といっても部屋はそんなに離れていないが。

 

 

「入学式だってのに遅れたら大変だからね」

 

「まぁ、1ヶ月遅れだけどな」

 

「それは仕方ないよ」

 

 

 そう、今は5月で俺たちの場合は進学式だが、本日は新入生を迎える入学式なのだ。

1ヶ月経っているので桜も満開とはいかず、花弁が散ってしまっている木もある。

 

 なぜ、1ヶ月も遅れたのかと言うとそれは今年の4月に御台場で、御台場女学校の中等科生、1年生、そして百合ヶ丘女学院やエレンスゲ女学院などの新入生を含めた合計9校のガーデンの生徒達で『ノインベルト戦技交流会』という合宿が行われていたのだ。

 

 本当は入学式の後に合宿をする予定だったらしいのだが、それが何故か急遽(きゅうきょ)早まり、前夜祭と言った感じで合宿が行われた。

 

 だが、突如そんな所に無数のヒュージが現れた。

 

 場は混乱し、そこからは早急に対応。

民間人を避難をさせる部隊と、主戦力のリリィを集め、ヒュージを迎撃する為の部隊で別れた。

 

 そして全5部隊の混成迎撃レギオンを作り挑んだ大規模作戦

御台場迎撃戦(おだいばげいげきせん)』が開始された。

 

 その迎撃部隊には俺や天葉も参加した。

天葉は第2部隊、俺は第5部隊に所属して戦った。

自分たちの安易な判断ミスで全員が死を覚悟して応戦する事となってしまった戦いで、人生で一生忘れる事のできない、色々な意味で思い出の激戦となった。

 

 そして結末は第3部隊の救援により作戦は成功。

奇跡的に全員生還し、九死に一生を得る事ができた。正直、あんな思いはもう二度としたくないと言うのが俺の素直な感想だ。

 

 

「ほんと、1人も犠牲を出さずに帰って来れるなんて、今でも現実味がないな…」

 

「ー?

 …あ、うん…本当に、よかった」

 

 

 負傷者や重傷者は出てしまったが、民間人も含めてどの部隊にも死者は出ておらず、無事勝利を収めた。

 

 その後は全員で合流し、ボロボロの俺たちを見て天葉が大泣きして俺に怒りながら抱きついて来た。それを引き金に緊張していたその場の全員が泣き崩れ、『生きてるっ、生きてるよぉ』と、お互い抱き合って心の底から喜んでいたのはいい思い出だ。

 

 

「…ん?どうかした?」

 

 感傷に浸っていたらどうやら無意識に天葉の事を見ていたらしく、キョトンとした様子でこちらを見ている。

 

 うーむ、どう誤魔化そうか

 

 

「いや、大泣きして抱き着いてきた時の天葉の顔を思い出してた」

 

 ……あ、やべっ、つい本音が

 

「え?……な、なっ、ななななっ!」

 

 

 すると、みるみると天葉の顔が赤くなって行く。

泣き止んだ後も同じように羞恥心(しゅうちしん)で顔を真っ赤にして(うつむ)いてたもんなぁ…

 

 

「と、とととと燈華だって大声で泣いてたじゃない!」

 

「なっ、大声で泣いてた覚えなんてないぞ!?」

 

「あたしちゃんと見てたし聞いてたもん!」

 

 

 その後も年端も行かない子供のようにあーだこーだと小競り合いをしていると背後から「おぉー、2人とも朝から元気だな〜」と声がかかる。

 

 お互い声のした方へ顔を向けるとそこには孔雀石の様な瞳に、緑色の短い髪を黄色のリボンで両サイドに纏めた同い年の少女、吉村(よしむら)Thi(てぃ)(まい)が苦笑いでこちらを見ていた。

 

 前までは髪は降ろしてたのだが、イメチェンだろうか?

 

「あ、梅おはよう、その髪型似合ってるね」

 

「ようウメじゃん、おはよう、イメチェンか?」

 

「おはよー、そうそうイメチェンしてみたんだゾ〜……って、ウメって呼ぶなぁ!」

 

 そしてウメと呼ぶとぷんすかと怒る。

ちなみにこいつも御台場迎撃戦に参加したリリィの1人だ。

 

 所属は俺と同じ第5部隊。

よくふざけてるがこれでもかなりの手足(てだ)れのリリィで、その経験を活かして迎撃戦の『橋上(きょうじょう)死守戦(ししゅせん)』では一緒に大量のヒュージを食い止めてくれた戦友の1人だ。

 

 

「ねぇ梅きいてよ!燈華ってば──

 

「あぁ…またデスカ」

 

 そして天葉がこうやって梅に愚痴りだすのもいつも通りだ。

 

 まぁ、大体の原因は俺なんだが。

 

 色々あったが迎撃戦は色々な意味で俺達にいい変化をもたらしてくれたと思っている。

 

 もともと俺は校内で唯一の男と言う事で天葉や梅の様に興味を持って話しかけてくる奴はいたが、学院のリリィ達の(ほとん)どがあまり俺にあまり良い印象を持っていなかった。

男と言う得体の知れない存在に苦手意識や恐怖を抱く子もいれば、俺のスキルを不気味がって近寄らない子もいる。

 

 その他にも、俺が任務などで暴れ過ぎた所為(せい)で変な噂が回った。

恐らくこれが一番の理由だと個人的に思う。

まぁ、これに関しては完全に自業自得なんだが…

 

 ところが迎撃戦から帰還すると前と比べて話しかけてくる子が増えた。

 

 ぎこちない子が多かったがそれでも十分マシである。

元々、まともに会話ができるのが俺や天葉が住んでいる特別寮の人達か、同じクラスの人達ぐらいだったのだ。

 

 そいつらも周りと同じで最初は俺を()けていたのだが、普通に声をかけてくれるようになったのはここにいる天葉と梅、あとは2人と同じように入学初日に声をかけてくれた人達。

 

 

 そして───

 

 

『ボクを置いて行くなんて酷いと思うなぁ』

 

 

 こいつのお陰だろう。

 そしてすっかり存在を忘れていた。

 

「うおっ」

 

 なんの前触れもなく肩に乗ってきたので思わず声が出てしまった。

 

 黒色に輝く毛に宝石のような碧眼をした猫、パルことシェパルである。

そしてこの学院でもそれなりに人気がある。

猫好きな人や尻尾が二つあることに興味を持つ人もいれば逆に不気味だと思う人もいる。

 

 その人気者のお陰で近付いてくれる人もいると言う事だ。

他校のリリィとも激戦を乗り越えて交流はできたし、功績で少しは良い印象を持ってくれる人もいたし、俺としては十分である。

 

「あ、パルだ」

 

「おぉ、パルじゃないかー」

 

「にゃ〜♪」

 

 パルが来たのを合図に予鈴の鐘が学院中に響き渡る。

どうやら知らない内にかなり長話してしまったらしい。

 

『あらら、入学式始まっちゃうよ〜?』

 

「やべっ、急ぐぞ!」

「ちょっ、待ってよー!」

「あははっ!燈華たちと居るとホント飽きないなー!」

 

 そして俺たちは学院へと大急ぎで向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

To Be Continued




・村雨燈華
本作の主人公。
保護施設で勉学を学び、姫騎が通っていた百合ヶ丘女学院に希望、と言うよりはとある人物に連れられる形でたづさと共に無事入学。
入学当初は唯一の男だった為、周りからは異質な存在として扱われていた。
本人も1人の方が気楽だと割り切っていたが、天葉や梅達の助けがあり、今ではそんな事を思うようにはならなくなった。

本人は気付いていないが天葉と一緒に過ごしている事が多いので一部のリリィからは嫉妬の対象となっている。


・定盛姫騎
燈華の身代わりとなって実験台となりその命を落としてしまった少女。
可愛い物には目がなく、手を出してひたすら()でる癖があったが、かなりモテていた。
元々は百合ヶ丘女学院のリリィで、学院には1人のシルト候補がいた。
座学に関しては飛び抜けており、初等部5年の時点で中等部2年まで進んでいたらしい。

趣味は裁縫、ヘアアレンジなどで1つ下の妹やシルト候補生を自作の衣装などでよく着せ替え人形にして楽しんでいた。


・天野天葉
入学した燈華に初めて声をかけた少女である。
任務などで一緒に行動する事が多く、燈華と日々を過ごしていく内に燈華を深く信頼する様になり、天葉の中で家族の様な存在となっている。
因みに学院ではかなりモテる。

御台場迎撃戦の終戦後、全部隊が合流した時、部隊の中でも目に見えて重傷な状態でヘラヘラと笑いながらやってくる燈華を見て泣きながら説教した。

趣味はお花の育成で、様々な花を育てている。
燈華の部屋にも自分が育てたカランコエの花を置いている。

カランコエの花言葉は───
「幸福を告げる」「あなたを守る」


・吉村・Thi・梅
燈華の親友であり、戦友。
燈華が入学した当初からの付き合いでよく天葉などを含めたメンバーで燈華の部屋にゲームをしに行くことがある。
シェパルの世話をすることもあり、本人からも熱い信頼を寄せられている。
迎撃戦、橋上の死守戦では燈華の独断とはいえ、多くのヒュージを任せてしまった事に対して負い目を感じている。


・シェパル
周りからは愛称とパルで呼ばれている。
燈華達と共に研究所から救出された後は別の研究施設で様々な実験の末ヒュージ化する恐れはないと証明され、なんとか殺処分されずに済んだ。
その後は監視付きではあるが本人の希望で燈華と一緒に過ごしている。
学院ではかなりの人気者で今ではマスコット的な立ち位置にいる。

・フュルフューレ
2年前に燈華達が対峙した、特型ギガント級。
ガントレットのような手に鋭利な爪を持つ。
電気を自由自在に操る。
不気味な見た目をし、無差別に人や動物を捕食するのでリリィ達の間では恐怖の対象となっている。


・ミソロジー養護学園
強化リリィや孤児を保護、そして教育し、本人が望めばリリィとして戦えるように育成する養護学校と育成機関、両方の役割を持つ保護施設。
授業は基本的にガーデンを卒業した年配のリリィ達が教えているが、各学院から教導官やリリィが教えに来てくれたりもする。
因みに責任者同士の意見の食い違いで揉め事が発生する場合もある。


























片喰(かたばみ)の花言葉は
「喜び」「母のやさしさ」
また、雀の袴、鏡草、酸味草など、様々な名前で呼ばれている。

ご愛読ありがとうございました。
次回もお楽しみに!
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