アサルトリリィ SPRING BOUQUET   作:Rαυs

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どうも、Rαυsです。
投稿頻度が遅くて申し訳ありません。
やっと投稿することができました、本当はリリなのコラボが来る前に投稿する予定だったのですが間に合いませんでした。
投稿ペースは月に1〜2話くらい出したいなぁとは思ってるんですけど甘く見てました。
こんな自分ですがこれからのお付き合いくださるとありがたいです。

pixivでもこの作品を投稿してます。
pixiv版はこちら↓
https://www.pixiv.net/novel/series/7672362

それでは本編をお楽しみください。


{第3話} テンジクアオイ(G E R A N I U M)

とんとん拍子で話が進み意義を申し立てる事すら許されなかった俺、村雨燈華(むらさめとうか)はパルと共に理事長室へと向かっていた。

 

『今夜は眠れないねぇ?燈華ぁ』

 

「……」

 

 こいつ、テレパス越しに好き放題いいやがって、直接口で反論できないのが悔しい。

 

 パルの正体やテレパス能力を知っているのは理事長、生徒会長組を含めたごく一部の人間だけなので先程の様に声に出して反論でもしたら猫と口喧嘩してるヤバいやつにしか見えないのだ。

 

「ったく、アイツら人の部屋をなんだと思ってるんだよ…」

 

 確かに俺の部屋は広いがパーティー会場にするほど広くはないぞ…

それ以前に男の部屋に女子が出入りするのもいかがなものかと思うが………今更か。

 

『にしても相変わらず似たような道で迷っちゃいそうだね』

 

「まぁここまでデカいとなぁ…」

 

 今こうやって理事長室を目指して足を進めているが、パルが言うように似たような道ばかりが続いているので油断していたら「あれ?ここどこだっけ?」となってしまうのだ。

 

 そしてしばらく歩いていると前方から黒いセーターの上に白衣を着た見覚えのある女性がこちらへとやってくる。

 

 黄金(こがね)色の瞳、腰まで伸ばした茶色の髪をリボンで三つ編みにして肩にかけており、側頭部に獣耳のような癖っ毛が特徴的な女性だ。

 

「ん?シェリス(ねぇ)じゃん、お疲れ」

「燈華?とパルも、どうしたのこんなところで」

 

 シェリス・ヤコブセン先生。

学院の保険医であり、教導官であり、そして俺にとって師のような存在である。

俺や鶴紗、天葉達が住む特別寮の支配人でもあり姉の様な存在でもある。

 

 元リリィで現役時代は苛烈な戦闘スタイルで戦場を荒らし、「歩いた後には何も残らない」とまで言われていたことから『シスターゼロ』という異名がついていたらしい。

 

「ってもう、学院では先生って呼びなさいって何度言ったら分かるの〜?」

「いや今更だろ」

 

 そして施設にいた頃に世話になった人でもある。

俺たちの施設では数人の者に担当指導員として各ガーデンから教導官が出向いてくれるのだ。

 

 そして、ここ百合ヶ丘から派遣として一時期俺や鶴紗などの教導官として主に実戦訓練や、もう1人の先生、座学担当の教師の2人で教育係をしてくれたのがこの人である。

 

 そう言う事もあり一緒にいる事が殆どだったからなのか、『シェリス姉』と呼ぶようになった。

 

「だったらせめて『おねぇちゃん』って呼んで欲しいかなぁ?」

「やだ」

 

 なんでそんな恥ずかしい呼び方せにゃならんだ。

俺がそう返答するとシェリス姉は頬を風船の様にして唸る。

 

「むぅ、ケチ。それで、なんでこんな所に?この先は理事長室しかない筈だけど」

「その理事長室に用事があるんだよ」

 

 そう言うとシェリス姉は天葉達と似たような反応をしてくる。

 

「い、いったいなにしたの……」

「してないから、野暮用だよ野暮用」

 

 なんでどいつもこいつも真っ先に思いつくのが俺が何かをやらかしたと事なんだよ…

 

『日頃の行いだとボクは思うんだけどなぁ…』

 

 うるせぇ!基本的に俺は無罪だ!

 

「んで、そう言うシェリス姉こそ何をしたんだよ」

 

 その理事長室へ繋がる通路から来たのだ、理事長代行に会いに行ったその帰りなのは間違いないだろう。

 

「失敬だなぁ、理事長代行からの許可申請をしに行ったのよ

 あ、丁度よかった、あたし燈華にも相談しようと思ってたの」

 

「ー?」

 

 俺に相談?その理事長代行との話と関係があるのだろうか

 どちらにしろ嫌な予感しかしないのだが…

 

「今日ね、一般寮(あっち)の生徒が特別寮(うちの所)に部屋を移動してくるの」

「なに?」

 

 またいきなりな話だな……という事は訳ありか。

 

 俺たちが住んでいる特別寮は一般の学生寮と違い、寮費が払えない者、研究所から保護された者など、いわゆる訳ありな者達が入居する寮である。

 

「ちょっと色々あってね、まぁそれで困った事に部屋の空きがないから倉庫にしてた部屋とかの改修工事が終わるまで燈華の部屋に引っ越してもらう事にしたの」

 

『………え?』

 

 そして稀に一般寮から特別寮に移動してくる者もいる。

一般寮の生徒達と一悶着があったり、精神的な問題で他の生徒と離した方がいいとガーデンから判断されたなど、色々な事情で移動してくる事がある…………………ん?

 

「………………ん?」

「あれ?聞こえなかった?燈華の部屋に引っ越して貰う事にしたの」

 

 ………………はっ?

 

「いやいやいやいや」

 

「んでその許可をたった今理事長に貰いに行ってた所」

「まてまてまて!いや…は!?」

 

 全く頭が追いつかない。

なんだ?つまり俺は新しい部屋ができるまで女子生徒と2人暮らしするって事か?なんでそうなった?まずなんで許可した?

 

 いやまて、まだ希望はある。

 

「それって俺と面識はあるのか?」

「ん?ないと思うよ?だってその子、今年で中等部3年だしあなたと会話してる所見たことないし」

 

「はぁ!?」

 

 絶対初対面じゃねぇか!だって中等部に知り合いなんて指で数える程しかいねぇし!

 

「あぁだけど、本人は燈華のこと知ってる様子だったよ、あと燈華と同じ部屋でも構わないですって言ってたね」

 

 そりゃあ俺ってそれなりに有名人だし知ってるだろ……。

 

「寝る時はどうするんだよ!」

「個室があるから大丈夫でしょ?」

 

「いやあんな申し訳程度で作られたような部屋で…」

 

『ベッド1つくらいしか置けないスペースだから今は物置部屋と化してるけどねぇ』

 

 まさにその通りである。

いや、マジでどうすんだこれ、女学院にはいるが俺は列記とした男子だぞ、もし何かあったら───

 

「あ、そうそう燈華だから大丈夫だと思うけど、もし手を出したら死んでもらうから気をつけてね?」

 

 ───まぁ、そうなるわな……重くね?

 

 

「まぁ、あとは燈華からの許可かな」

「あぁちゃんと俺にも選択権はあるのね」

 

 そういうとシェリス姉は「え、なに言ってるの?」みたいな表情をしてくる。

 いやそれがこういう場合いつも俺には拒否権も何もないんですよね、『はい』か『Yes』だもん。

 

「はぁ…なんでよりにもよって俺の部屋なんだよ」

「だって燈華の部屋って特別に広いしスペースも大分余ってるでしょ?」

 

「いやそうだけど…」

 

それに、燈華ならあの子を…

 

「ん?」

「ううん、なんでもない。それでダメ…かな?」

 

 少し申し訳なさそうな表情で彼女はそう言った。

 

 ……その顔はズルいだろ。

 

「だぁもう分かったよ、本人が嫌がってないなら俺から言うことはない」

「燈華…ありがと」

 

 俺の言葉を聞いて安心したのか顔を綻ばせる。

はぁ、これから大変になるなぁ……そういえばいつから来るのだろうか。

 

「んで、引っ越しはいつなんだ?」

「ん?今日だよ?荷物も夕方には全部届いてると思う」

 

「は?」

 

 いや、早すぎないか?話から察するに決まったのは今日の筈だ。

引っ越しの話は前から出ていたのだろうがいくらなんでも……。

 

「……まさか」

 

 こいつ、俺や理事長代行が了承するのを分かってて先手を打ってやがった!

あと純粋に百合ヶ丘(ここ)専属の引っ越し業者が優秀過ぎるだけというのもある。

 

 いや、引っ越しだけではないのだが…。

とにかく言える事は、あいつらは人間じゃねぇ。

 

「はぁ…」

「ごめんごめん、お詫びはするから…許して?」

 

 そう言い彼女は両手を合わせて頭を下げると片目だけ開けて上目遣いをしてくる。……あざとい

 

「分かった、分かったから……じゃあ、俺はもういくぞ」

「うん!本当にありがとね燈華」

 

「へいへい、じゃあな〜」

「はーい」

 

 そう言い俺は理事長室へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとう燈華、そしてごめんね…。

 あたしじゃ、あの子にはなにもしてあげられないから…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────

{ 第2話 }

テンジクアオイ

GERANIUM

unexpected meeting

-×-

[ 君と出逢えた奇跡 ]

───────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 理事長室へ到着した俺は早速その扉を軽く3回叩く。

 

『入りたまえ』

 

「失礼します」

 

 入場の許可が降りたので扉を開けて中へと入る。

 

『相変わらずホントに広いよねぇここは』

 

 中へ入るとパルが素直な感想を述べる。

まず目に入るのは学校の教室と同等の広さを持つ部屋、そして地面から天井ほどまである巨大な窓ガラスが4枚設置されており、目の前に広がる森林と海が美しくその姿を見せている。

 

 次に目に入るのは入り口から奥まで続く大量の辞書が並べられた巨大な本棚、その目の前に設置されている理事長用の机と椅子には60は過ぎているであろうご老人、来場者用のソファーには3人の女子生徒が腰掛けており、それぞれの手元にはティーカップが握られていた。

 

「すいません、お邪魔でしたか」

「よい、既に話を済ませてお茶をしていた所じゃからな」

 

 眼鏡をかけ、羽織を身に纏い手には真っ黒なグローブを着けたご老人…理事長代行、高松咬月(たかまつこうげつ)がその手を挙げて俺を引き止める。

 

「そうですか」

「君もどうかね、燈華君」

 

 すると理事長代行直々にお茶の誘いがくる。

忙しいと思い手短に済ませて帰る予定だったのが、流石に断るわけにもいかないのでこちらも応じることにする。

 

「では、お言葉に甘えて失礼します」

 

 そう一言だけ告げると俺は来客用のソファーの元へ移動する。

ソファーには先ほど述べたように3人の女子生徒がおり、その内の2人は今朝講堂の入り口で出会った出江史房(いずえしのぶ)先輩と山崎明伽(やまざきめいか)先輩だった。

 

「……」

「今朝ぶりですね燈華さん♪」

 

「……?」

 

 史房先輩が明らかに不機嫌なのに対し、明伽先輩は上機嫌であった。

 いったいなにがあったのかと思わず物思いにふけていると──

 

「ごきげんよう、村雨燈華さん。そして進学おめでとう」

 

 ──その隣にいたもう1人の女子生徒に声をかけられる。

 

 腰まで伸びる白銀の髪とアクアマリンのような瞳をもった少女。

百合ヶ丘の秩序を守る『ジーグルーネ』の称号をもつ史房先輩と同じく高等部2年のロザリンデ・フリーデグンデ・v(ふぉん)・オットー先輩だ。

 

「お疲れ様ですオットー先輩。

 ありがとうございます、先輩も進級おめでとうございます」

 

 同じ特別寮の住人とはいえあまり関わる事がない所為(せい)かどこかぎこちなくなってしまう。

 

「ありがとう…ふふっ、前にも言ったけどロザでいいのよ?」

「い、いやそれは流石に…」

 

 ある日1人で訓練をしてる時に偶然会い相手をしてもらった後に言われたのだが…親しい間柄という訳でもないのにいきなり愛称で呼ぶは流石に抵抗があったのだ。

 

 というか、まともに会話したのあの日が初めてな気がする。

 

「あら、史房と明伽様はよくて私は駄目なの?」

「いや、そういう訳ではなくてですね…」

 

 痛いところを突かれて焦ってしまう。

 

貴方(あなた)とは前から親しい間柄になりたいと思っていたの、碧乙の恩人でもあるしね……それともイヤだったかしら?」

 

 碧乙とは俺と同じクラスだった石上碧乙(いしがみみお)の事で、先輩と碧乙は守護天使(シュッツエンゲル)の誓いを結んだ姉妹だ。

 

「ーっ…分かりました、ロザ、リンデ先輩」

「ふふっ、今はそれでいいわ。

 よろしくね、燈華」

 

 そう微笑むロザリンデ先輩。

彼女は学院内でも上位に入る程の人気があり、その気高く凛々しい姿に数多の女子生徒を落としていったと言われるほど。

 

 下手をしたら仲間入りしそうで怖いね。

 

 話が終わるとロザリンデ先輩は右側に移動し真ん中を空け、俺がそこに座る事となった。

配置は左から明伽先輩、史房先輩、俺、ロザリンデ先輩、そして俺の膝の上にパルだ。

 

「はい燈華さん、どうぞ」

 

 するといつの間に用意したのか明伽先輩が俺の目の前にティーカップを差し出してくれた。

オレンジやレモンのような香りが漂う紅茶で色も透き通っている、明伽先輩が得意とするアールグレイだ。

 

「ありがとうございます。

 では、いただきます……美味い」

 

「ふふっ、お口にあってよかったです」

 

 自分で入れるインスタントの紅茶よりも格別に美味しい。

 こうやって口にできる機会が少ないのが本当に残念である。

 

「……」

 

 史房先輩の視線がこちらを捉えている気がする、いや間違いなくこっちを見ている。

 

 え、もしかして俺が原因か?やはり、入学式の時眠っていたのがバレたのだろうか……ならば

 

「ふにゃぁ〜……っ?」

 

 カップを目の前の机に置き、膝の上で欠伸をかましているパルを抱き上げ、史房先輩の膝の上へと移動させる。

 

「……‼︎」

 

 すると先輩の先程の不機嫌なオーラが消え去りパアッと明るくなって行く。

 

『え、燈華?ウソだよね?燈華はそんな事はしないよね?』

 

(俺の為に犠牲となってくれ)

 

『いぃぃやぁぁぁっ!』

 

 そんなパルをよそに史房先輩はパルを抱き上げるとそのまま抱き寄せて頬擦りをし始める。

 

 そう、史房先輩は大の猫、と言うよりパル好きなのだ。

とにかくスキンシップがかなり激しいのでパルは先輩に対して苦手意識を持ち合わせている。

 

 立場的な問題で疲れが溜まっているのかそれを晴らすようにパルに気持ちをぶつけており、それが分かっているのでパルも拒む事ができない。

 

「にゃ”ぁ“ぁ“ぁ”っ」

「〜♪……はっ!?」

 

 そして我に返って顔を真っ赤に染めるのもお約束である。

 史房先輩は頬擦りをやめ、何事もなかったかのようにパルを自分の膝へと置く。

 

「…と、ところで燈華君、シェリス君とは会ったかね?」

 

 話題を変えようと理事長代行が俺へ質問をしてきた。

 

「えぇ、ここへ来る前に」

「ということは話も聞いておるな?」

 

「流石に驚きましたよ……にしてもなぜ許可を?」

「儂も彼女の状態は把握しておったからの……まぁ君と同じ、押し切られたという事じゃよ」

 

 それほどまでに複雑なのか……いや余計にどうしろってんだよ。

あっちは知っていても俺は恐らく初対面、シェリス姉は一体何を考えて…。

 

「私は今でも反対です」

 

 すると史房先輩がパルを撫でながら少し不服そうに意見を述べる。

 

「ふふっ、猛反対してましたね」

「まぁ、私もジーグルーネという立場上、気持ちは分からなくもないわ」

 

 それに続いて他の2人もそれぞれの反応を見せる。

もしかして不機嫌だったのってそれが原因なのだろうか、よくこんな状態で押し通せたな……流石としか言えん。

 

「まぁ燈華君なら大丈夫だと判断した上での決定じゃ、くれぐれも粗相のないように」

「信頼が厚くてなによりです、もちろん何もしませんし、もし何かあったら首が飛ぶので何も出来ませんよ」

 

 宣言はするが正直な話、何が起こるか分からんから怖いわ。

身内でもない異性と同じ部屋で生活するなんてこと人生で一度も……あったわ。

 

「く、首って…大袈裟な」

「甘いですね史房先輩、シェリス姉は()る時は()る女なんですよ」

 

 実際にそれで何度死にかけたか…思い出したくもないね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後はしばらく小さなお茶会をし、話に花を咲かせていた。

明伽先輩が作ったクッキーや茶菓子の味を楽しみ、気がついたら時間は1時間近く経っていた。

 

「あら、もうこんな時間」

「あっという間だったわね」

 

 その頃にはもう紅茶もなくなり、お菓子も底を尽きていた。

 そろそろ本題に入らなければならない。

 

「ふぅ……理事長代行、本題に入ってもよろしいでしょうか」

「……なにかね」

 

 俺の目を見て察したのか、理事長からは先程の穏やかな雰囲気は消え去り真剣な目で俺を見つめる。

 

 俺達を見て他の3人の雰囲気も一変した。

 

「……席を外しましょうか」

 

「いえ、大丈夫です。

 恐らく生徒会3役の方々にも関係してくる内容なので」

 

 ここで聞かなくてもいずれ理事長から伝達が行くだろう。

 

 すると史房先輩がパルを抱き抱え席を立つ。

 

「では、わたしはこれで──

「よい、君もいずれ(・・・)知る事だ」

「…?しょ、承知致しました」

 

 この場を後にしようとする史房先輩を理事長が静止する。

『いずれ』とは恐らく…いや間違いなく史房先輩が明伽先輩の跡を継ぐことを確信しての発言だろう。

 

「では燈華君、話してみたまえ」

「はい、では担当直入に申し上げます───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──レギオン、『エリニュエス』への加入許可をいただだきに参りました」

 

「「──ッ!?」」

「…ほう」

「…?」

 

 俺の言葉にロザリンデ先輩、明伽先輩は絶句、理事長は興味深そうな反応をするのに対し、史房先輩は首を傾げていた。

 

「燈華、貴方なにを!」

「落ち着いてロザリンデさん。

 燈華さん、本気なんですね?」

 

「はい」

 

 恐らく生徒会と言う立場上2人はあのレギオンがどんな所なのか知っているのだろう。

 

 特にロザリンデ先輩は。

 

「ね、姉様?エリニュエスとは…」

「史房さん、裏レギオンの噂は聞いたことはないですか?」

「は、はい、ご存知ですが…」

 

 裏レギオン。

リリィの間で有名となっている一種の都市伝説のような存在だ。

目的の為なら手段を選ばない『暗殺集団』

G.E.H.E.N.Aの研究所を襲撃し、強化リリィを救助する『仮面集団』

黒衣のコートを身に纏い、暗闇に紛れて獲物を始末する『死神部隊』

 

 などなどあちこちで噂が立っている。

 

「それがそのエリニュエスなのよ」

「自分達の情報は積極的に消すのでごく一部の者しか知らないんです」

「な、なんで燈華さんがそんなレギオンに……ッ!?」

 

 

 ───瞬間、その場の空気が凍る。

 

 

 殺気。

その場の全員が思わず身構える。

その凶器を自分達…いや、俺に向けているのは目の前に座る老人だ。

 

「……少年、君はあのレギオンがどんな所なのか知った上で言っているのかね?」

「えぇ」

 

 裏レギオン、『エリニュエス』

レギオン、というよりは組織といった表現が正しい。

そのレギオンの主な活動内容はG.E.H.E.N.Aが行う非人道的な実験の阻止、改造ヒュージの討伐または捕獲、そして強化リリィの救助だ。

 

「ふ、普通のレギオンに見えますが…」

「そう、普通よ…表向き(・・・)、はね」

 

 そう、あくまで表向きである。

そのレギオンの本当の目的は『G.E.H.E.N.Aの殲滅』である。

現在は主にブラックリスト入りした研究所を積極的に潰しているが最終的にはG.E.H.E.N.Aの全てを滅ぼす事を目的としている。

 

 リリィの救助はおまけ程度、目的は指名手配者の捕縛、それ以外の者は抵抗するようなら容赦なく排除と、かなり過激なレギオンである。

 

 そして、人型ヒュージ、特にその最上位種である『セラフィム級』の討伐も重視しているらしい。

 

「それを分かってもなお加入すると言うのかね」

「はい」

 

「と、燈華さん貴方はなぜそこまで…」

 

 そう悲しそうな表情で俺を見つめてくる史房先輩。

 他の2人も似た反応でこちらを見ている。

 

「…先輩方、『竜爪山(りゅうそうざん)研究所強化リリィ救出作戦』をご存知ですか」

 

 俺がその名を出すと、史房先輩は目を見開いてパルを抱きしめる、明伽先輩は目を伏せ、ロザリンデ先輩は苦虫を噛み潰したかのような、それぞれ三者三様の反応を見せる。

 

「燈華さん、貴方…」

「えぇ、俺はそこの出身です……2人は知っていたんですね」

 

 俺が強化リリィ…いや、ローゼンだと言うことは公開していないので知らないのは仕方ないが、やはり気付かれていたみたいだ。

 

 特にロザリンデ先輩はシェリス姉と共にレギオンとしてその救助作戦に参加していたはずである。

 

「薄々勘づいてはいました」

「あんなCHARMを持ってる時点で察していたわ」

 

 ロザリンデ先輩が言うCHARMとは現在ある人の研究室で保管されているG.E.H.E.N.A製のCHARM、『カリギュラ』の事だ。

 

 ここ百合ヶ丘女学院は反G.E.H.E.N.A主義の代表的なガーデンであり、G.E.H.E.N.Aとの一切の接触を禁止している他にCHARMの使用も禁止されている。

 

 なので普通であればG.E.H.E.N.Aによって造られたカリギュラがこの学院にある時点で大問題なのだが、カリギュラを扱えるのがこの世で俺しかいないのと、解明できる人物がここの工廠科(アーセナル)しかいないと言うのもあり、異例ではあるが隠される形で保管されている。

 

 もし、カリギュラを使用する場合は担当のアーセナル、そして3人の生徒会長からの許可申請が必要であり、更に最大駆動形態(フルドライブモード)へ移行する場合は理事長、または代行の許可も取らなければならないほど厳重にされている。

 

 許可申請はパルのテレパスを通して行われる事となっており、その為、パルの能力に関しては生徒会や理事長達は存じている。

 

「研究所の壊滅やリリィの救助が目的だと言うのなら私のレギオン、『ロスヴァイセ』に入ればいいじゃない!なんでそんなレギオンにっ…」

 

 確かに、ロザリンデ先輩が所属する特務レギオン、ロスヴァイセは強化リリィの救助を主に活動している。

 

 だが、俺の目的はそうじゃない。

 

「ありがとうございます。

 でも、俺の目的はそうじゃないんです」

「…っ」

 

「ならば、君の目的とは何かね」

 

 理事長が射抜くような鋭い視線でこちらを見据える。

 

「とある指名手配犯の捜索、人型ヒュージの殲滅。

 そして……『ヴァルキュリア』の討伐です」

 

 俺がそう言うと今度は理事長も俺の言葉に驚愕の色を見せる。

 

 ヴァルキュリア。

正式名称はセラフィム級ヒュージ、識別名ヴァルキュリア。

現在目撃されている7体のセラフィム級の内1体であり、積極的に戦闘はせず、高見の見物をする事が多い為『不戦のヴァルキュリア』とも呼ばれているが、目撃情報は極めて少ない。

 

「ヴァルキュリアに固執する理由は」

「申し訳ないですが、今は言えません」

 

「…迎撃戦の終戦後に別の場所で戦闘があった事と関係しているのかね」

「……」

 

 流石、としか言わざるを得ない。

 俺はその戦闘に偶然遭遇し、参加した。

 そこで奴ら、エリニュエスのメンバーと会い、勧誘を受けたのだ。

 

「分かっておるのかね、相手にするのはヒュージだけではないのじゃぞ」

 

 理事長の殺気が更に強まる。

冷や汗が流れ落ちるが、俺も負けじと理事長を睨み返す。

 

「…分かっていますとも、覚悟は既に決まっています」

 

 ここで引き下がる訳にはいかない。

俺の目的を達成するにはあのレギオンが必須なのだから。

 

「……はぁ、子供に反抗される親の気持ちとはこう言う物なのかのぉ」

 

 室内が凍るような気迫が一気に霧散し、先程のような穏やかな雰囲気が戻る。

 

 恐らく、許されたのだろう…

 

「で、では」

「許可しよう」

 

 その言葉を聞いた瞬間どっと身体の力が抜けた。

 一時はどうなるかと思ったが、なんとかなったようだ…。

 

「と、燈華さん…」

「史房さん、わたし達が軽い気持ちで介入していい物ではありません」

 

「……はい、姉様」

 

『史房ぅ、ゴメンだけどそろそろ離してくれると助かるんだけど…』

 

「ふぇっ!?なに!?」

 

『ぐぉっ、ギブギブ!』

 

 史房先輩に抱きしめられていたパルがテレパス越しで伝えるが、驚きのあまり余計に強く抱きしめてしまい、逆効果であった。

 

「し、史房?落ち着いてパルが死んじゃうわ」

「えっ、もしかして今のは…」

 

 先輩が力を緩めるとパルは腕から抜け出し俺の所へと移動してくる。

 

『もう、いつも思うけど力加減って物を知らないよねぇ』

 

「えっ?あっ、はい、ごめんなさい」

 

 混乱している先輩を他所(よそ)に理事長から契約書のような物を渡される。

 

 そこには加入する上での条件や活動内容が記載されており、その他にレギオンリーダー、理事長のサインと印鑑の後があり、あとは俺がサインするだけである。

 

 契約書が気になったのか他の3人も顔を寄せてくる。

 

「加入条件ランクAAA以上…高いわね」

「確か燈華さんのソルジャーランクはSランクでしたね」

 

 ソルジャーランクとはレギオンランクとは違い、リリィ個人に与えれるランクの事でそれぞれ基本的にD〜SSSまでランクがあり、その間に(ニア)(オーバー)が存在する。

 

 更にその上、最高ランクとしてアサルト(AS)ランクがあり、ASランクまで到達した者には『アサルトリリィ』の称号が与えられる。

 

 因みに史房先輩はS+ランク、ロザリンデ先輩や明伽先輩がSS−ランクである。

 

「レギオンリーダーの名前は、『咲蘭(さら)S(しどねい)・ラクスリーア』? 聞いたことない名前ですね」

 

「得体の知れないレギオン、私ちょっと心配です」

 

「彼女の指揮、そしてレギオンも優秀じゃ、そこら辺は儂が保証しよう」

 

 不安そうにする明伽先輩に対して理事長がフォローを入れる。

知り合いなのだろうか……と思っていると顔に出ていたのだろうか理事長は「なに、ただの腐れ縁じゃ」と返す。

 

 時間も押してきていたので、ささっと契約書にサインをし理事長へ提出し、俺とパルは理事長を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だぁ〜やっと寮に着いた。

 今日はどっと疲れたな」

 

『いやぁ、凄い気迫だったねぇ』

 

「できれば2度と相手にしたくないね」

 

 特別寮へ帰り着き俺達は自分の部屋へと向かっていた。

今から食事の準備や掃除の事を考えると余計に疲れが……まぁ楽しいからいいんだけどさ。

 

 今日のメニューは何にしようかと考えているとあっという間に自分の部屋の扉へとたどり着いていた。

 

『……ん?』

 

 そしてドアノブに手をかけて扉を開ける。

 ……あれ?俺、鍵閉めてなかったっけ?

 

「……まぁいっか」

 

 気にせず中へ入ると、嗅ぎ慣れない香りが俺の鼻腔をくすぐった。

窓が空いているのか風が吹き抜けると共にクロッカスの香りを運んでくる。

 

 出たばかりの綺麗な夕日が窓際に立つ見知らぬ少女の背景となっている。

 

 よく見ると部屋の中には複数のダンボールが置かれており部屋が少し狭く感じるが、それに気が付かないぐらいに俺は動揺していた。

 

 腰まで伸びるライトブラウンの髪の一部を黒いリボンで結んでおり、他の子たちとは少しデザインの違う制服を着込んでいる。

 

 …あの後ろ姿には見覚えがある。

 

 こちらに気が付いたのか、その少女はこちらへと振り向く。

右に紅、左に金と左右で違う二色の、宝石のように綺麗な瞳、いわゆるオッドアイという奴だろう。

 

「……っ」

 

 やはりあの日、桜の下で出会った少女であった。

 

 

「ごきげんよう村雨燈華様、そして進学おめでとうございます」

「あ、あぁ…ありがとう」

 

 ぼーっとしてしまった為か返答が思わずぎこちなくなってしまう。

 

「君は…」

 

「…?あっ、申し遅れました。

 わたくし、(くぉ)神琳(しぇんりん)と申します」

 

 片足を前に出し、スカートの裾を両手でつまみ、軽くスカートを持ち上げ「どうぞ、お見知り置きを」と軽く腰を落とす、いわゆる『カーテシー』というやつだ。

 

 そして彼女は身体を元の位置に戻すと真剣な顔つきでこちらを見据える。

 

「……どうした?」

「いきなりで申し訳ないのですが、わたくしのお願いを1つ聞き入れては貰えないでしょうか」

 

 そう発言する彼女に思わず戸惑ってしまうが、すぐに気を取り直して「俺にできる事ならば」と答えるとパアッと表情を明るくする。

 

 まぁ引っ越し祝いとしてはいいだろう、他のやつらよりも真面目だろうし、流石にシェリス姉や天葉達みたいな無茶苦茶なお願いはしないだろう。

 

「はい、では───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───私と決闘(デュエル)をしていただけませんか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あっ、ダメみたいですね。

 前言撤回するわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

To Be Continued




・村雨燈華
本作の主人公。
終戦後にヴァルキュリアと戦闘を繰り広げるエリニュエスのメンバーを目撃し、それに成り行きで参戦するが、手も足もでなかった。
その後はシェリスに発見され、救助された。


・シェパル
いずれ知られるだろうと思い、史房に自分の正体を明かしたが、最初からこうすればよかったと少し後悔している。


・シェリス・ヤコブセン
姫騎がまだ百合ヶ丘にいる頃は姫騎の教官をしていた事もあり、姫騎と戦闘スタイルが似ている燈華はかなり指導しやすかったとのこと。

因みに救出作戦時、フュルフューレとの戦闘で疲弊しきった燈華達を救出し看病をしたのもシェリスである。


・出江史房
燈華の事情やパルのテレパス能力など色々ありすぎて頭が追いついていない状態で話が終わった後も数分くらい心ここに在らずだったご様子。


・山崎明伽
史房が不機嫌だった理由をよく理解している為それが愛らしくて燈華がくる前はずっと上機嫌であった。
試しに作ったお菓子や紅茶も燈華達から高い評価をもらったので更に機嫌がよかった様子。


・ロザリンデ・フリーデグンデ・フォン・オットー
燈華の事は一通り耳に入っていたので興味津々だったらしい。
なによりも彼女の興味を引いていたのは燈華のデュエルの実力。
シルトである碧乙や史房から聞いて自分も一度やり合ってみたいという気持ちで一杯だった為、今回は一方的に攻めた。


・高松咬月
百合ヶ丘随一の苦労人である。
恐らく関わることはもうないであろうと思っていた人物から直接電話があり、その人物と話すだけでどっと疲れが溜まったご様子。

・セラフィム級
人型ヒュージの最上位個体である。
目撃情報は少ないが現在確認されているのは全部で7体。
意思疎通が可能で背中から天使のような光り輝く翼を展開することと、本人達がそう名乗ったことからこの名前になったという。
それぞれに識別名がついており、ヴァルキュリアもその一体である。


























ゼラニウムの花言葉は「予期せぬ出会い」「尊敬」
また、タイトルのように天竺葵(てんじくあおい)とも呼ぶ。

ご愛読ありがとうございました!
次回もお楽しみに!
評価、感想、お待ちしております。

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