最近の私のサマポケSS、この間までのIFストーリーの世界軸を引っ張ってしまっているのが多いですね。書きやすいのでいいですが。
もちろん、やることは変わりません。
命あるものは、やがてその終焉を迎えることになる。
「死」、それは絶対に避けられない、人間の呪い。
そしてそれが、今、目の前に訪れている。
私の、30回目の夏の事。
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十数年前、私は高校を卒業した。
やりたいことなんてなかったから、大学に進学するなんて考えはなかった。それに、私はここが、「鳥白島」が大好きだったから。
それに、おとーさんは私を男手一つで育ててくれた。私が小さかった頃は仕事に全てを注ぐあまりに私に全然かまってくれなかったけれど、島に戻ってからはずっと、私に一心の愛情を注いでくれた。
そんなおとーさんに進学すると言ってこれ以上の負担をかけたくなかった。誤解されないよう、ちゃんとおとーさんの前でそう思ってることも伝えた。
それでもおとーさんは言った。「ちゃんと世界を見てこい」と。
そして私を本土へ送り出した。きっと、おとーさんにとって辛いものでしかなかった本土での生活でも、多少なり学ぶことがあったのだろう。私はその言葉を信じた。
そうしたら、本土で新しい縁が出来た。新しい世界を見た。ここで働こう、そう思った。もちろん、しょっちゅう島に顔を出すことも忘れず。
生憎まだ男性に縁はなく、一人働く日々が続いていた。辛くないかと言われたら少し辛いけど、そんなことをいちいち気にするほどでもないくらいに毎日が楽しい。
そして、私の夏休みがやってきた。
仕事のないお盆の連休、私は浮足立つ体を引っ張りながら島へと向かった。長い事顔を見てない友達に会う事が楽しみで、お父さんとあれやこれや話すことが楽しみで、島での休暇が楽しみで。
荒波を超えて島へたどり着く。あいにくの雨なんて気にしない。私はまっすぐ私が昔住んでいた家へと足を進めていく。
鍵を自分で開けて、ガラガラと年季の入ったドアを開ける。
「おとーさん、ただいまー!!」
おとーさんがこの時間家にいることは知っているつもりだった。お母さんの墓参りをするにしろその時間も大体決まっている。ましてや、今日は雨。
それなのに・・・声がしない。
「おとーさん?」
私は声を出しながら前へ進んでいく。リビングだろうか、食堂だろうか。おとーさんを探す。
そして・・・。
「えっ・・・」
おとーさんはそこにいた。
リビングで、血を流して苦しそうに倒れていた。
「おとーさん!? ねえ! おとーさんってば!!」
その体に駆け寄って思いきり体を揺さぶる。それでも返事はない。代わりに小さく、苦しそうな息だけが私の心臓を揺らした。
私は急いでスマホを取り出し、救急へ連絡する。この島の医療機関のレベルはたかが知れているけど、これが急を要する事態だという事は判断で来ていた。
そして、私とおとーさんの、最後の夏がはじまった。
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おとーさんが目を覚ましたのは、8月の24日だった。その間は、ずっと眠りっぱなし。
本土の病院へ救急搬送されてそこまでの間、おとーさんはずっと眠ってた。手術もして、あれやこれやと手を打って、とある日私は医者の先生から残酷な真実を告げられた。
「あと、一週間です」
「え・・・?」
「手はつくしました。・・・ですが、体の衰弱が激しく、どうにかできるだけの体力が、もう・・・」
「嘘、ですよね・・・?」
目を反らしたい現実に私はそう呟くけど、分かっている。これは紛れもない現実。先生が無言で俯くのがその証拠なんだ。
でも、逃げなかった。逃げないことの大切さを教えてくれた人が、目の前で眠っていたから。
だから私は、おとーさんの意識が戻るなり島へ帰った。残り一週間の命なら、せめてそうしてあげたほうがおとーさんの為だと思ったから。
おとーさんは診療所へ移された。といっても、特別することはない。自分一人で動くことも出来なければ、治療の欠片もない。ただ痛みが出れば鎮痛剤を飲むの繰り返し。本当に死んでしまうのかと疑いたくなるけど、一つ一つの動きが遅いのがそれを物語っている。
島に帰ってからはたくさんの人がおとーさんのお見舞いに来た。皆それを別れと知っているから、それを逃したくないからと。きっと、おかーさんのことが皆の心に残っていたんだと思う。何も言えないまま訪れる急な別れは、果てしなく悲しい。
だから、私とおとーさんがようやくゆっくり話ができるようになったのは、夏が終わった9月の1日だった。
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「おはよう、おとーさん」
「・・・おは、よう」
うっすらと目を開けたおとーさんの近くの椅子に腰かける。一週間の命というのが本当ならきっと、今日が最後の日になるかもしれない。だから、言いたいこと、話したいこと、ちゃんと全部言わないと。
おとーさんの身体は動かない。ほんの少し首を動かして、その先におとーさんは窓の外の光を見た。その先には何があるんだろう。聞くことは出来ない。
はぁ、と小さく一つ息を吐いて、おとーさんは重たげに口を開いた。
「うみ・・・元気、してたか?」
「そんなのもちろんだよ。・・・送り出してくれて、ありがとう」
「そうか。・・・間違えずに、すんだんだな」
おとーさんは力なく笑う。今なら分かる。おとーさんは、昔の自分を見ていた。間違えて間違えて、今度は間違えないようにと生きてきた人生の自分を見ていたのだろう。だから、間違えずに済んだという言葉の重さが身に染みて分かる。
「・・・なあ、羽未。俺は、やり遂げた・・・のかな?」
「・・・うん。ちゃんと、最後までやり遂げてくれた。私の自慢のおとーさん。だから」
「そっか。・・・やっと、報われた気がするよ。・・・しろはのところに、俺は行けるのかな」
おとーさんはずっと小さく笑い続ける。それと対照的に涙を流すのは私。
やめてよ・・・そんな悲しい事言わないでよ・・・。いかないでよ・・・まだ、一緒にいたいのに・・・。
でも、それが許されないなんて・・・なんてこんなに、哀しいの。
「・・・昔は、本当に」
「謝らないで! ・・・謝らないで。お願いだから、私の好きなおとーさんでいて。自信持っていいんだよ。胸張っていいんだよ、やり切ったんだって。もう、大丈夫だから」
「・・・そう、だよな。俺は、羽未の、おとーさん、だから」
二人でニッと笑う。せめて最後は笑っていようと、私は涙を全て拭い去った。
そして、その時が訪れる。
おとーさんが目を伏せた。呼吸はだんだんと小さく、小さくなっていく。
最後に、もう一度だけ口が動いた。
「羽未」
「うん、聞くよ」
「誕生日・・・おめでとう」
それが、おとーさんの最後の言葉だった。
機会がピーっとなり、おとーさんの命の終わりを告げる。
泣きすがることはしなかった。逝くおとーさんを、最後まで頑張って頑張って疲れ果てたおとーさんを泣かせて困らせたくなかったから。自慢の娘らしく、私はニヘッと笑う。
今日は、九月の一日。
おとーさんが大好きだった、おかーさんの命日。
そして、頑張って頑張って生き抜いた、おとーさんの命日。
そして、私の誕生日。
最後の一文が非常にお気に入りです、どうも白羽凪です。
さて、最近こんな内容増えてませんかね・・・。一次にしろ、二次にしろ。
死生観、ということに重きをおいている最近ですが、そろそろ脱却せねばと。
といったところで、遅刻懺悔しつつ今回はここらへんで。