あまり詳細を詰めると文才の無さがバレるので端折ってます
……えっ、知ってたって?
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──前略
毎度お馴染み、サードステージの中の人です。
さて、季節は春。それも夏の足音も近づいている頃だ。そして、競馬において春に行われる最大のイベントといえば、やはりコレになるだろう。
………えっ、弥生賞に皐月賞はどうしたって? わざわざ言わなくてもいいだろう。結果はお察しの通り、完勝だ。三冠馬を目指すんだ。"一番速い馬が勝つ"戦いで負けてなんかいられない。ここからは速さだけでは勝てない戦いが待ち受けているんだから。
さて東京芝2400mだが、総合力が試される舞台らしい。最後の直線に差し掛かってから残り300m辺りまでが上り坂で、後は平坦な直線になるとのこと。また、内枠がとにかく有利で如何に内枠に陣取れるかがポイントなんだとか。
「7枠13番、一番人気サードステージ。父トウカイテイオー、騎手は
で、ご覧のように外側だ。"一番運の良い馬が勝つ"とは良く言ったものだが、今のところ幸運はご機嫌斜めのようだ。まあ、走るか死ぬかの二択みたいな競走馬の世界に産まれた時点で運は無いよな。いや、サードステージという世界的に見ても稀代の名馬に転生したから運は良いのか? ……まあいい。勝つしかないんだから勝とう。それで充分だ。
さて作戦についてだが、これもいつも通りの先行策だ。ただ、このコースは差される可能性が高いらしいので残り600m辺りからハナをとって、直線に差し掛かったらスパートを駆けて相手を振り切るという感じで行くとのことだ。
そして仮想敵に関してだが、陣営の皆さんはレイデオロとアドミラブルを警戒しているらしい。ただ、個人的にはスワーヴリチャードも警戒している。確かウイポだとこの世代の有力馬として紹介されていた記憶がある。そういえば、キセキって有力馬もいたはずなんだが……故障でもしてたのか?
何度も言うように自分の知識はウイポで噛った程度のものだ。どの年にどんな感じの強い馬が居たかくらいまでは分かるが、どの馬がどんな勝鞍を上げたかはちんぷんかんぷんもいいところだ。というか、この辺の有力馬を何となくでも知ってるのはちょうどこの辺りをウイポでやってたからだ。そうじゃなかったらサトノダイヤモンドとかの世代とごっちゃになってたことだろう。
話が逸れた。個人的に警戒するのはレイデオロ、次いでスワーヴリチャードとする。これで実はダービーを取ってたのはここの一発屋の穴馬だったら……いや、そのときはアドリブで何とかしよう。幸いにも先行策だ。前寄りで走るならゴール板前で先頭になるように加速して、追い込んで来るなら追い付かれないように加速すれば良い。これもサードステージという恵体だからこそ出来る力業だ。
「サードステージ、祖父・父に次いで三代連続でのダービー制覇となるか、はたまたライバルたちがその偉業を阻むのか、日本ダービー、間もなく出走です!」
さて、そろそろ時間だ。鬼が出るか蛇が出るか……。いや、何が出てきても、それらをかわして先頭でゴール板に飛び込むだけだ。
「大外枠8枠18番、アドミラブル。ゲートに入って体勢が整いました。」
………………
《ガシャンッ!》
GO!
「さあスタートしました、日本ダービー! 一番人気サードステージ、良いスタート! その勢いのままに内枠につけて、これはいつも通り前に行く構えのようです。」
よし、内枠に入り込めた。今は、先頭と並走している感じか。ちょっとペースを下げるか………いや、脚を溜められるのはよろしくない。このまま行こう。
「さあ、先頭の2頭が1000m付近を通過。ペースは、少々平均より遅めといったところでしょうか?」
遅いか。後ろにいるレイデオロやスワーヴリチャードのことを考えると少し前に上がってもいいか。
「おっと、サードステージ。第3コーナーに差し掛かってペースをあげていきます。後方を警戒してのことでしょうか? これが後続に影響を与えそうです!」
後ろは………少しずつ上がっても来てるか? ただ、スパートを考えるならこれ以上ペースを上げるのもまずいな。ハナは既にとれている。最後の直線まではこのままだ。後はリュージさんの指示を………よし、行こう!!
「さあ、サードステージ! 直線に入ってきて脚を伸ばしてきた! このまま振り切りにかかるかあ!」
後ろは……レイデオロが来てるか!
「さあ、レイデオロ! ぐんぐんと脚を伸ばしてサードステージを捉えにかかる! スワーヴリチャード、アドミラブルも良い足だぁ!!」
更に伸ばすか、このまま行くか! 落ち着け! まだこちらに有利だ! リュージさんも押してはいない! 残り100mで決断で!
「残り200m! サードステージ先頭! レイデオロが迫る! スワーヴリチャード! アドミラブルも前に上がって来た! このまま差しきるのか!」
………よし! 振り切れる! 後はこのままゴールに突っ込むだけだ!
「サードステージ粘る! サードステージ! サードステエエエエジ!!! やりましたぁ!! サードステージ1着! サードステージ1着! 今年の日本ダービー、制したのは13番サードステージィ!! 父トウカイテイオーと同じく無敗の二冠達成! そして祖父シンボリルドルフ、父トウカイテイオーに続く史上初の三代連続でのダービー制覇! 鞍上のリュージ騎手もやりました! 18年前の"世紀末覇王"でも届かなかった日本ダービーを制覇し、念願のダービージョッキーのタイトルを遂に獲得しました!」
ふう~。我ながら良くやった。これでクラシック二冠だ! マークはされてたみたいだが、それを振り切れるくらいの実力があると分かったのも大きいな。さて、後は菊花賞を残すだけか。まあ、ここはウイポの世界じゃ無さそうだから宝塚だのサマーシリーズだの夏の海外遠征もないだろう。秋まで休みますかねえ。
《2017年7月上旬》
競馬の春シーズンは終わりを告げた。G1タイトルを狙う馬たちは秋シーズンに備えて一時の休息を楽しむ者もいれば、海外タイトルを目指して日本を出立する者もいた。また、秋シーズンでの参戦を目指して夏の空の下を走る、いわゆる夏の上がり馬の卵たち、そしてサマーシリーズ制覇に向けて動き出すOP・重賞馬たちにとっては今が本番だと言えるだろう。
そんな中、サードステージのオーナーに調教師の松下、そして騎手のリュージはサードステージの牧場の施設の一室に集まり、秋以降の方針を考えるのであった。
「いや~、去年の今頃が懐かしいですね~。あの頃は目指せ三冠! なんて言ってましたけどまさかそれが本当に目の前まで来てるなんて………。本当にあの仔には頭が上がりませんよ。」
「ええ、懐かしいですね。素質がある馬だったのは確かでしたが、まさかここまでの逸材だったとは正直に言って私も思ってもいませんでした……。」
「はい。私も、騎手としてあの馬に有り余る名誉を頂きました。ですが、ここで満足する気はございません。ここまで来たらやりましょう、無敗の三冠を!」
朗らかにそして明るい空気で会話は進む。
「では、菊花賞を目標にして前哨戦をどうするかを考えましょう。現状ですと神戸新聞杯とセントライト記念、もしくは前哨戦を挟まずに直行の三択になるかと思いますが、お二人はそれぞれの立場からどれが良いかと思われますか?」
「そうですね……。サードステージに関しては直行でも悪くはないかと思います。調教してて思うのですが、あの馬は気持ちの切り替えが早いんです。普通の馬だと長期の放牧で競馬に戻りたくないという調子になったりもするんですが、サードステージはそれが本当にないんです。そういった意味では9月半ば頃から関西の外厩で調子を戻して直行させるのでも良いんじゃないかと思いますね。」
「ええ、サードステージの調子という観点の話ですと私としても異論はありません。ですが、騎手の立場として意見を言わせて頂くと、呼吸といいますか気持ちと言いますかそういうのをもっと合わせたいので前哨戦を使って頂けるとありがたいです。」
「呼吸や気持ち、ですか?」
オーナーの言葉に、リュージは首を縦に振る。
「はい。サードステージに乗ってレースに出る度にサードステージが発する感情というか意志みたいなのが掴めてくる感じがあるんです。もちろん、気のせいと言われたらそれまでなのかもしれませんが、でもやっぱり、あの馬ともっと気持ちを通じ合わせられるような気がするんです。なので、自分としてはレースにより多く出て頂ければと思います。」
「なるほど……。分かりました。松下さん、私はリュージさんの言葉を信じてみようかと思います。前哨戦を挟んで菊花賞に挑みましょう。」
「分かりました。それならば、関西の外厩を利用しつつ神戸新聞杯を使いたいと思います。お二人もそれでよろしいでしょうか?」
オーナーとリュージは松下の提案に首肯する。
「ありがとうございます。では、神戸新聞杯を叩き台に菊花賞へ向かいましょう。さて、菊花賞絡みの話はここまでにして、もうひとつここで決めておきたいことがあります。有馬記念です。」
「有馬記念ですか……。確かに今のままでしたら、菊花賞の結果に問わずサードステージが選ばれるのはほぼ間違いないでしょうね。オーナーはどうお考えですか?」
「もちろん、出走出来るのであれば出走させたいですよ。私としては大いに賛成です。」
「そうなると、やはりキタサンブラック対策が必要になりますね。」
松下の言葉に2人の表情も少し強ばった。──キタサンブラック。5歳春シーズンを終えて17戦10勝。うちG15勝と現世代古馬最強候補筆頭とも言える名馬だ。古馬戦線に突入して現在の主戦であるタケ騎手に乗り変わってからは先の宝塚記念での9着になるまで馬券内を外さなかったという安定感の高さも驚異だ。
「……ええ、キタサンブラックも騎手のタケさんもはっきりいって高い壁になります。でも、ここまで来たんです。やるからには俺たちで勝ちましょう!」
「ええ、そうですね。確かにキタサンブラックはよい馬です。でも、よい馬という点ならサードステージだって互角以上です。やりましょう、オーナー、奇跡の有馬を!」
「松下さん、リュージさん……。ええ、そうですね。言い出しっぺの私が尻込みしてちゃいけませんよね。やりましょう。勝つために。」
斯くして、有馬記念に向けての対策と菊花賞へ向けての最終調整とで議論は続いていくのであった。
これより先は秋シーズン。夏を越えて名乗りを挙げる強者たちも加わるクラシック終盤戦、そして待ち受ける古馬の洗礼。それでも彼らは頂点に向かって突き進む。己が夢を叶えるために、己が望みを実現させるために。
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○タケ(騎手)
騎手界の生きる伝説。
リュージと同様に、あるクラシックG1の最年少獲得記録を持っているらしい。
※実在する人物及び団体とは一切関係ありません。
3歳シーズンは菊花賞編と有馬記念編で終わる予定です。
書いてる自分が言うのもなんですが、先が長くなりそうです。
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