前回の出走ローテーションの件で様々な意見をお寄せいただき、本当にありがとうございます。皆様からの意見は全て拝見させていただいております。
結論から言いますと、先のローテーションを修正せずにこのまま行きます。それに関する軌道修正等は今回の話に盛り込んでおります。そのため、前回からと比較して作風が変わってるかと思います。それでも納得がいかないという意見も予期しておりますが、何卒ご了承ください。
あと、後書きにも書きましたが、リュージさんのオペラオー周りのエピソードを若干ながら捏造してます。今回は割りと後書きに色々書いたので、本編後に後書きも併せてお読みください。
どうしようもなく私見なので反転させてます。リアルに寄せるかウイポに寄せるかの2択であるなら私は後者をとります。あくまでもウイポ×ウマ娘の普及活動とするなら非現実的でも派手な戦歴の方がやはり見栄えがあっていいと思いますので。というか、この小説を見に来てる人はそういう方々が多いのではないでしょうか(個人的な感想です。)
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──前略
どうも、4歳シーズンに突入したサードステージです。
古馬王道路線完全制覇と凱旋門賞を同一年で達成すると陣営から通達が来た。まあ、多少は覚悟はしてたが、陣営も思いきったものだ。凱旋門から秋天はウイポでもちょっと強行軍だから、リアルでやるとなればかなりの苦情があっただろう。というか有ったと言っていい。ディープインパクトの二の舞をやらかすのか! という声は至極全うだろう。
さて、ここら辺で一度考察タイムだ。まず、ここで判断すべきはリュージさんの反応だ。リュージさんは一頭でも多くの馬に幸せな余生を送って欲しいと騎乗依頼は片っ端から受ける人だ。そんな人がこのとんでもないローテに黙っているはずがない。
しかし、彼にその兆候は見られない。だが、それは自暴自棄や諦念とも違う。私利私欲でもない。いや、それをいうならオーナーや調教師の松下さんといった陣営の全員がそうだ。なんというか、死地に向かう兵隊のようなそんな空気を醸し出してる。まるで何かに突き動かされているかのようだ。ここから見るに数人が心替わりをしたという話ではなさそうに見える。ならば、着目すべきはこの世界そのものだ。
自分は、この世界はウイポの世界ではなく、サードステージというIFが登場した現実世界だと思っていた。だが、これが未来永劫続くと考えたのが間違いではなかろうか。ここからは競馬とは駆け離れたSFのような話になる。*1
そのためにサードステージという存在について再確認だ。ウイニングポストシリーズに登場する、父親をトウカイテイオーとする架空の競走馬。史実では泣かず飛ばずで消えたトウカイテイオー産駒の勇姿を架空の世界だけでも実現させたい。その想いから産み出されたというのはシリーズから一貫している揺るぎないものだ。固めにいうなら定義が確立されているというべきか。
さて、ここで質問だ。流れている川に軟らかい泥団子を落としたらどうなるか? 当然、川の流れによって崩れていって最終的には影も形も無くなる。では、流されない程の大きめな石を落としたらどうなるか? 水の流れによって削られるにしても悠久の時間がかかるのは言うまでもない。そして、その間、石の周りの流れは変化を強いられる。
つまり、今起こっている現象はこれでないだろうか。サードステージという確固たる異物がこの時空に登場したことにより、自分と非常に近い人々がその影響下になった、つまりウイニングポストという世界の介入を受けたのでは、という推論だ。これなら、現実かウイポかの議論に対して筋が通る。
まあ、くだらないことを長々と引き出してみたが………正直結論はどうでもいい。そもそも、結論が分かろうが分からまいがこの馬の身ではどうにもならん。というか、元から自分としてはその挑戦を受けることは吝かじゃない。断れる立場じゃないからではない。まず、周囲からの"サードステージが可哀想だ"とかいう憐れみみたいな言葉が正直気にいらない。今は走らせまくるような時代じゃないとか言うやつは多いが、このサードステージに込められたロマンに従うなら寧ろ前人未踏へ至るために走るのが流儀だ。
そう、ロマンだ。史実なら翔ばずに消えたトウカイテイオーの子供が競馬界を熱く盛り立てる、というロマンを捨てきれなかった人たちの想いがサードステージを産み出したのだ。最初の頃は用途変更にならなきゃOKだとか言ってたが、自分だってサードステージに込められたロマンは大好きだし、ここまで来たらこの体にも思い入れも生まれてくるというもの。やってやろうじゃねえかよ、この野郎! というやつだ。
まあ、1つ確かなのは予後不良になったら陣営の皆さんを世間はここぞとばかりに袋叩きにして、陣営も余計な後悔を背負うことになるだろう。というわけで一先ずはハナ圧勝して力をセーブし、馬体に負荷を掛けないように心がけよう、と決めたのが新年の抱負だ。
さて、心が決まったところで軽くヨーロッパ方面の動向だ。確かこの時期のヨーロッパは確か
話があっちこっちに跳んだが、自分のことに話を戻そう。どうやら凱旋門には馬体の影響を考慮して、前哨戦を挟まずに直行させる予定らしいが………。ウイポのような海外デバフ*2があったら流石に勝てる気がしない相手だ。そういうのが無いのを祈るしかない。
ただ、前哨戦であるフォワ賞を使える遠征計画にして、どうしても無理そうならそれを使って、その後の秋天とJCは回避するらしい*3。こんな感じに保険をかけることを忘れてないように、自制が消えているわけではないんだろう。
まあ、ローテーションの話はそろそろここまでにしよう。今は目の前のレースに集中だ。というわけでただいま6月も下旬。そう、春古馬三冠ラストを飾る宝塚記念だ。お察しの通り、大阪杯と天皇賞春は見事に勝ちました。今現在12戦12勝、G17勝のサードステージです、どうぞよろしく。
「一番人気は1枠2番サードステージ。父トウカイテイオー、騎手は
さて、史実のこの年の宝塚記念の話は自分も知ってる。リュージさんがミッキーロケットに乗って中央G1を17年ぶりに制したレースだ。もう記憶はあやふやだが、かなりドラマが詰まったエピソードだったはずだ……。
まあ、一先ずレースに向けて色々整理しよう。阪神芝2200mは前半が下り坂でペースが速くなりやすいらしい。また、最後の直線が短めなのでコーナーで前に出て直線で伸ばす足も必要になるとか。
一応、作戦の話も振るが………もう作戦という程のものでもないんだけどな。仮想敵であるサトノダイヤモンドもキセキも後方から仕掛けるタイプの馬だ。というわけで後方の動向に気を使いつつ2.3番手辺りに付けて第3コーナーから第4コーナー辺りでハナをとってそのまま足を伸ばしてゴールまで駆け抜けるというものだ。いつものやつだ。
まあ、偉そうな言い方になるが正直この戦いは負ける気がしない。この戦いは凱旋門賞の実質的な前哨戦だ。その凱旋門は、エネイブルというとんでもない強豪のホームだ。こんなところでグダグダした戦いはしてられない。当たり前に勝って、勢いのままにヨーロッパへ行くつもりだ。
問題なのは寧ろ外より内だ。リュージさん、気丈に振る舞ってるけどこっちに悲しみがダイレクトに伝わってくるんだよなあ。……もしかして、ここにもウイポ由来のあれがあるのか。ウイポだと競走馬に同一の騎手が騎乗し続けると絆Lvが上がってレース時の能力が上昇するバフがあった。いわゆる気持ちを通じ合わせる人馬一体というやつだ。……これ、こっちの思念とか漏れてないよな? 魂が人間です、っていうのがバレたら……いや、バレてもそれを証明しようがないからいいのか? まあ、こっちもリュージさんの細かい思念が読めるわけではない。ならば逆も然りだろう。
リュージさんの話に戻ろう。まあ、分かりやすいくらいオペラオー案件だ。というかあれだけの話を聞かされたらな……
《回想》
──馬房──
オペラオーが亡くなってまだ日が浅いころ、リュージはサードステージの下を訪れていた。
「なあ、サードステージ。少し、話に付き合ってくれないか?」
サードステージに向き合ってリュージは語り出す。サードステージはじっとリュージを見つめている。
「この前な、テイエムオペラオーっていう俺の恩人、いや恩馬が天国へ旅立ったんだ。」
「このオペラオーは本当に強かったんだよ。ああ、お前くらい強い馬だったんだよ。当時の俺みたいな半人前の騎手じゃなかったら三冠取ってたような強い馬だったんだ。」
「そのオペラオーって馬と俺は、最初から最後までずっと一緒に戦ったんだ。その中でたくさんの贈り物を受け取ったんだけど、俺は何にも返せなかったんだ。」
「だからさ、少しでも立派な騎手になってオペラオーに会いに行くって決意したんだ。」
「当然、上手くいかない日々だったよ。『お前が乗ってる馬はオペラオーじゃねえんだぞ!!』ってヤジを飛ばされたことだってあった。」
「そんな中で、オーナーさんから連絡があったんだ。うちの新馬の主戦騎手になってくれないかって。それがお前だったんだよ、サードステージ。」
「お前と出会えて俺はいくつものG1タイトルを取ることができた。その中には夢だった日本ダービーもあった。……本当に嬉しかった。ようやく少しはマシな騎手になれたかなって思えたんだよ。」
「それで、去年の夏に会いに行ったんだよ。日本ダービーを取れたぞって。それで久しぶりにあいつの背中に乗ったんだ。あの頃を思い出したりしてさ。あの頃より成長できた気がしたんだ。」
「でもさ、お前に騎乗すればするほどに俺は浮かれてただけの阿保に過ぎないんだって思うんだよ。だってそうだろ? 朝日杯にクラシック三冠に3歳有馬、大阪杯に天皇賞春。もう、G17勝だ。お前の爺ちゃんのシンボリルドルフやディープインパクト、そしてテイエムオペラオーくらいの凄い馬だろ、お前は。」
「そんな馬に勝たせてもらってただけなのにちょっとはマシになったって舞い上がって……バカみたいだろ? 俺は、昔から変わってない。テイエムオペラオーやサードステージという稀代の名馬に乗せられてるだけのリュックサックなんじゃないかって。……俺、オペラオーに会いに行っていい身分だったのかな?」
「なあ、応えてくれよ。お前は、誰が乗ろうが勝てる馬なんだろ……。」
《舞台は戻って──》
「大外枠8枠16番キセキ、ただいまゲートに……入りました。」
……………
《ガシャンッ!!》
……!!
「スタート! 2番サードステージ、好スタート!」
はあ……。騎手としての最低限の役割はだけはまともに果たすとか言ってたけど、まったく……。
──(スゥ~~……)
「先頭取りましたのは11番サイモンラムセス。タツゴウゲキ、サードステージと続く展開。後ろ1/2馬身ほど空いて──」
──いい加減にしろやぁ!!リュージ!!
(……!! 誰だ!? まさか……サードステージ? 俺に何を伝えようと?)
「先頭サイモンラムセス変わらず第1コーナーから第2コーナーへ。タツゴウゲキ、サードステージがそれに続いています。その外から──」
──お前がただのリュックサック?あんたは……あのオペラオーが唯一背中を預けた最高の相棒だろお!?
(この感じは……俺とオペラオー? オペラオーが背中を俺に預けようと……。なんでお前が……いや、オペラオーが俺を認めてたと、そう言いたいのか?)
「各馬バックストレートを駆け抜けていきます。先頭変わらずサイモンラムセス。1馬身から2馬身離れて──」
──そして、それはここでも変わってねえ!! 確かに、自分は誰が乗っても勝てる名馬かもしれねえよ! でも、自分が大勝負に出るときに背中を任せたいのは貴方だ!
(サードステージ……サードステージが俺を背に……お前は俺を認めてくれているのか……!? お前は……!)
「──そして最後方6番アルバート。さあ、ここで第3コーナーへと差し掛かって参ります。サトノダイヤモンドじわじわと上がって行きます。」
(サードステージ……。だから、今は……!)
──おう! やるぞ、リュージさん!
(何かデカイことをするつもりなのか? ……分かった。俺が全力でサポートするぞ!!)
「! さあここで2番サードステージ足を伸ばし始めました! 先頭サイモンラムセスを交わしながら残り400mを通過! 10番ヴィブロス3番サトノダイヤモンドも前に出る! 4番ミッキーロケットもこれに続くか!」
(もしかして……!! オペラオー、これは俺たちの自己満足だけかもしれない。お前にとってはありがた迷惑なだけかもしれない。だけど……!)
さあ、覇王に捧げる大舞台だ! こちらも伊達や酔狂で
「最後の直線、2番サードステージ先頭! 2馬身程のリード! しかし、さらに突き放す勢いだ! 2番手は──」
さあ、ご高覧あれ!
これが皇帝と帝王が遺し仔と
(覇王が見いだした男の──)
「残り100m! サードステージ脚色は衰えない! これは完全に千切れた! 後方では13番ワーザーが10番ヴィブロスを──」
「サードステージだ! サードステージだ! サードステージゴールインッッッ!! 絶対王者サードステージ、やりました! これでG18勝目! そして春古馬三冠達成!! 2着には13番ワーザー、3着には──」
(サードステージ……。俺のために、無理をさせて悪かったな。)
ふう~。体に負担を掛けすぎないように走るって決意してたのにこのザマだ。まあ、こんな千切った勝ち方も今日くらいはいいだろうよ……。
「タイムは………2:08.5!! レコード更新! このG1の大舞台で芝2200mの世界レコードを更新!! なんということでしょう! サードステージ、この宝塚記念で史上初のG18勝目、史上初の春古馬三冠完全制覇、そして世界レコード更新という3つの偉業を成し遂げました! これが皇帝と帝王に連なる意志だ! サードステエエエジ!!」
さて、今日の舞台は終わりだ。一番の聴衆に挨拶をしてこうか、リュージさん。
(オペラオー………。)
「おや、2番サードステージ外端に寄って立ち止まったようですが……?」
「おおっと! リュージ騎手、絶叫です! 嘗て自らが仕えた覇王にして盟友、テイエムオペラオーの名前を絶叫しています! そしてサードステージも高らかに嘶いた!! これはもしや、先ほどの走りはテイエムオペラオーへの貴覧試合とでも言うのでしょうか!!」
よう、世紀末覇王。聞こえるか? お前が見いだした最高の騎手の最高の名演が───。
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【サードステージとリュージ騎手との絆が最大限にまで深まったようです。これ以降、リュージ騎手がサードステージに騎乗した際には───】
我ながら、あれこれ書こうとして散らかった感が強いです。ひとまず纏めるなら、ウイポ感漂うこともやっていくよ、ということです。リアル風味が好きな方が居たら申し訳ありません。というかローテーションに特に文句は無いという方は忘れてしまっても構いません。正直言って帳尻会わせ以外の何ものでも無いので。
一応補足ですが、サードステージとリュージさんが会話出来てるわけではないです。感情のぶつけ合いに近い感じです。会話が噛み合ってないのも話し合いしてるわけではないので当然仕様です。
検量室に行かずに端に寄って叫んでいいのか?とか馬具着けてて嘶けるのかいうツッコミは無しでお願いします。ただ、あまりに問題なら一応いじくります。
リュージさんは本来、オペラオーの死後にオペラオーが永眠した地で寝そべって気持ちが吹っ切れたエピソードがあります。今回は生前に会えたがために、逆に寝そべるイベントをスキップしてしまった形にしました。流石にこれだけの強さを持つ馬に騎乗しているのに何の蟠りもないのも変だな、と感じたので。こちらも問題があるなら弄くります。
感想にて、レースの過程を省略しすぎているとのご指摘がありましたので、テンプレート的ではありますが描写を増やしました。サードステージというイレギュラーを入れたレースの流れが上手く描けず申し訳ございません。また、以前お伝えしましたように、一部有力馬以外の実況はカットさせていただきます。ご了承ください。
※以下ネタバレのため反転
この先、リュージ騎手以外が騎乗してレースに出走することはございません。
反転終わり
もう1つ反転が無いとは言っていない。更にネタバレ。故障するようなイベントはこの先ございません。
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