お久しぶりです。
思った以上に話が膨らまない&話の流れが滑らかに出来ないんで頭抱えてました。多分今もざらついてます。
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──前略
どうも、サードステージです。自分は花の都パリに来ています。
まあ、今さら説明は不要だろう。そう、パリロンシャンは凱旋門賞だ。
さて懸念の海外デバフだが、結論から言うとこちらの滞在及び現地調教で良い感じに仕上がった。こういうのはウイポでも再現してほしかった……っと話が逸れた。というわけで直行ルートだ。海外デバフが無いなら直行は怖くないってやつだ。まあ、懸念材料はあるがこれに関しては直行以前の話なので触れないでおく。
「さあ、2018年凱旋門賞の出走時刻が刻一刻と迫ってまいりました。日本最強馬サードステージ、ここまで13戦13勝、G18勝と日本競馬史の記録を更新し続ける生きる伝説がパリロンシャンという大舞台に挑みます。数多の名馬たちを阻み続けた凱旋門に日本の旗を掲げることは出来るのでしょうか?」
さて、パリロンシャン芝2400についてだ。まず、特徴なのはその高低差だ。流石に200mとはいかないが、その差は10mと日本の競馬場の比ではない。ヨーロッパの競馬場は自然に沿ったものが多いと言われているので、このコースもその影響なのだろう。他には最終直線の一つ前の直線、所謂フォルスストレートだ。約250mの下り坂を駆け抜けた後、ラストの約530mの直線を突っ走るというわけだ。ここで調子にのってペースを上げすぎると、最終直線で撃沈する罠というわけだ。
しかし、聞けば聞くほどに日本の馬には辛い環境だ。ただでさえ、パワーが必要だという洋芝にパワーを更に要求される極端な高低差だ。更にスタミナが切れれば最後の長い直線で失速する。スピード・パワー・スタミナの全てが要求されるわけだ。ただでさえ、馬の遠征疲れの心配もしなければならないのに過酷なものだ。この辺は人間の精神でよかったと思える点だ。
「12枠16番サードステージ。父トウカイテイオー。騎手は
そして作戦だが、エネイブルに対するマーク戦法だ。エネイブルの前側に張り付いて、エネイブルが仕掛けてきたところを並走しながら最後に前に出る、というやり方だ。さっき言ってた懸念材料がこれだ。現ヨーロッパチャンピオンに対して真っ向勝負を仕掛けるというわけだ。注意すべき点は勝負を仕掛けるタイミングだ。相手の仕掛ける脚に合わせて溜めた脚を吐き出せるか、という点に勝負が懸かっている。後はリュージさんとの息を乱さないことも当然必要になってくる。まあ、結局はなるようにしかならないだろう。今まで通り力を尽くすだけだ。
そして、何より重要なのは調子を崩さないことだ。ここから先は秋古馬三冠が控えてる。手を抜くつもりはないが、燃え尽きるつもりもない。凱旋門賞とはいえ、大レースならいくらでも越えてきた。ならば今まで通りに越えられない道理はない。さあ、肩の力を抜いて初の海外公演といきますか!
「さあ、大外枠のスタディーオブマン、ゲートにただいま入りました。」
……………
《ガシャンッ!!》
──!!
「スタートしました! 各馬揃ってのスタートです。」
──外だからって慌てない。好位置につけることを優先に……
(出遅れてないなら構わない。次はポジションを……)
「まず、先手を取ったのは17番ネルソン。その後を3番カプリ、9番クリンチャーと続いています。ここで10番エネイブル、3番手に上がっていきます。」
(エネイブルはあそこ……。カプリに合わせるのが最善か?)
──カプリを目印にする感じでいいのか? まあ、エネイブルを警戒する以上、その辺が最善か。
「外側5番手16番サードステージは徐々に上がって行く構え、並走するようにその外からから1番デフォーも続いていくようです。続いて中盤の──」
──さあ、登山の始まりだ。返し馬でも走ったが、相変わらずとんでもない坂だよ、全く。
(日本では絶対に見られないような傾斜だ……。サードステージはまだ余裕があるか。)
「さあ、坂を上りきって第3コーナーへ。先頭17番ネルソン。1馬身程離れて3番カプリ2番手。そしてここで上がって来た16番サードステージ3番手に着いて1番デフォーが続いて4番手。インコース5番手に──」
──脚を溜めることに意識を……。爆発させられなきゃ勝てない……。
(ペースが上がるが、それに惑わされないように……。)
「さあ、各馬フォルスストレートに入ります。17番ネルソン先頭。2馬身程空いて3番カプリが2番手。その外に並ぶ形で16番サードステージ。インコース4番手に9番クリンチャー。10番エネイブルが──」
──落ち着け……。流れに身を任せて………。
(まだだ………。流れに合わせることに集中を……。)
「──最後方19番シーオブクラスで第4コーナーから最終直線へ。1番手17番ネルソン、1馬身ほど空いて3番カプリ、すぐ後ろに16番サードステージが──」
──……!! エネイブルが来る! リュージさん、ここから一騎討ちだ!
(! 気合い入れろ、サードステージ!)
「さあ、16番サードステージがここで一気に伸びて先頭に立つ! 10番エネイブルが17番ネルソンを捉えるか! ここで残り300を切って追ってくるは6番の──」
(追い付かれることは問題じゃない! ゴールで先頭に立てればいいんだ!)
──ひとまずエネイブルに張り付く!
「──馬群の中から5番のヴァルトカイスト! サードステージとエネイブル、激しい追い比べ! 後続と2馬身差! 後方から一気に19番シーオブクラス!」
(ここだっ!! 一気に吐き出す!)
──! ここか! 了解!
「ここでサードステージ頭抜ける! すぐ隣後方エネイブル! シーオブクラス来る!」
(行けえぇぇっ!!)
──だあぁぁぁぁぁ!!
「サードステージ! このままか! サードステージ! サードステージ! サードステージイイイィィィィ!!」
──よしっ……!
(………間違いない! やった、やったぞ!)
「サードステージです!! 間違いありません! 16番サードステージ一着です!! 遂に! 遂にやりましたぁ!!! スピードシンボリが初挑戦してから実に半世紀!! シリウスシンボリ、エルコンドルパサー、ディープインパクト、ナカヤマフェスタ、オルフェーヴルと数々の名馬が崩れさったこの凱旋門賞を遂に制しました! 見ているか、シンボリルドルフ! 見ているか、トウカイテイオー! お前たちの遺した血は日本競馬の呪いを打ち崩したぞ! そして
──……さて、凱旋門の呪いは解けた。撤収しようぜ。天皇賞が、秋古馬戦線が待ってるぞ。
(……? 日本の競馬場? もしかして、もう次のレースのことを見ている? お前は……。いや、お前がその覚悟なら俺は共に行くだけだ。帰ろう、日本に。)
「──で、ここでの滞在期間で……」
「──だからこの日までに手続きが済めば良い、と。」
「するとサードステージの調整期間は逆算すると──」
フランスから日本へと飛ぶ飛行機の3列シートにオーナー、松下、リュージのいつもの三名が座っていた。凱旋門賞での勝利の余韻も冷めやらぬ中、天皇賞秋という前代未聞のローテーションを果たすために速やかな帰路に就いていた。
「……では、飛行機内で出来る準備はここまでです。後は日本に着き次第、一秒でも早く検疫を完了できるようにしてください。」
「松下さん有り難うございます。リュージさんも休まれてはいかがですか? 日本に帰国したら他の騎乗依頼があるのでは?」
「いえ、サードステージの今後のこともあります。自分も付き合いますよ。」
「今後のことといえばオーナー、来年以降はどうされますか? 現状ならば種牡馬入りさせるのが自然な流れとも思えますが。」
「今後ですか………。」
オーナーは顎に手を当て静かに考え込む。
「サードステージの戦歴を考えれば、このまま引退でも充分でしょう。しかし………」
「しかし?」
「お二人にお聞きします。サードステージはレースに挑むことを、競走馬であることを疎んではいないでしょうか?」
「……分かりました。では現状確認から。調教師の目線で言いますと、調教を嫌っている様子は見せていません。また、馬体の様子ならば現状だと衰えは見せていません。来年のスケジュールにもよりますが、来年一杯も走らせることは充分可能です。リュージさんから見てどう思われますか?」
「ええ。サードステージの闘志は衰えを知らないと言っていいですね。というか、凱旋門に勝った直後からもう次のレースの方を向いていました。俺たちより覚悟が決まってますね。」
「ほう、まるでサードステージの考えが読めるかのようですね。」
「いや、読んだわけじゃないですよ。自分に馬の心のなんて読めませんよ。………オーナー。横から口を挟むようなことで恐縮ですが、自分から意見を述べてもいいでしょうか?」
リュージからの言葉にオーナーは静かに首肯し、それを見てリュージは言葉を続ける。
「俺たち人間に競走馬の気持ちは分かりません。いや、馬を無理やり調教して重荷を載せて鞭打って走らせる自分たちとの意志疎通なんて出来ない方がいいんじゃないかと思います。だから、我々は馬云々ではなく、自分たちが後悔がないように走らせるしかないんだと思います。」
「私たちが後悔のないように、ですか……。」
「申し訳ありません。分かってるかのような話をしてしまいまして。ですが結局のところ、自分たち人間がどう思うかに尽きるのではないでしょうか? 例えばサードステージだって"トウカイテイオーの遺志を継ぐ"なんて考えてるわけではないでしょう。どんなに言い繕っても馬にこっちの都合を押し付ける事実は変わりません。もちろん、馬を蔑ろにしていいという意味ではありません。馬体を慮るのは当然として、我々が周りの言葉ではなく自分たちで決めていくしかないんじゃないでしょうか?」
「……ええ、どこまでいってもそれに尽きるのでしょう。リュージさん、ありがとうございます。私も腹を決めます。来年もサードステージを走らせます。」
「では私から提案なのですが、来年の有馬記念をラストランに調整するのでよろしいでしょうか?」
2人の話を聞いていた松下が自分の考えを述べた。
「来年の有馬、ですか……。」
「ええ。トウカイテイオーは今でいうところの5歳の有馬記念で有終の美を飾りました。来年以降の動向はサードステージの体調次第にもなりますが、そこを見据えて調整を行えば踏ん切りもよくなるかと。」
「そうですね……。良い案だと思います。分かりました。競走不可能で無い限り、有馬記念は必ず走らせる。そして、その上で有馬記念を走るのに問題がなければ他のレースにも積極的に出走させる。これで行きたいと思います。松下さん、リュージさん、サードステージのこと、今後ともよろしくお願いします。」
「分かりました。サードステージの調整は私が万全を尽くします。」
「騎乗の依頼、ありがとうございます。サードステージと共に勝つことを誓います。」
(サードステージよ、お前は私を恨むかもしれない。そして許せと言う資格すら私にはない。だが、お前の力を私は見たい。トウカイテイオーの血筋とかではない、お前自身の力を……。)
(素晴らしい馬を最善の状態で世に送り出す。そこに馬の意思を挟ませる余地はない。陣営が望むのならば馬に好かれるも嫌われるもない。忘れるな、それが調教師である私の仕事だ。)
(サードステージ……。お前は、何故そこまで走れるんだ? お前はそれが自分の使命だと、そう言いたいのか?#……分からない。お前は俺がその覚悟に添い遂げるだけで構わないのか? それとも、お前の意思も念も、俺の思い違いでしか……いや、揺らいだら駄目だ。俺のやることはあいつを勝たせるために戦うことだ。それだけは間違っていないんだから……。)
──日本調教馬による凱旋門制覇。
その報道は競馬関係者や応援者たちに歓声を促した。約半世紀に及ぶ挑戦が遂に通じたからだ。
一方、サードステージの陣営は淡々としていた。 "凱旋門制覇などサードステージが起こした奇跡の舞台の一幕に過ぎない。" そんな出自不明な虚偽の発言が広まるほどにだ。
──彼らは本当に秋古馬三冠を獲りに行く気なのか?
もう、ローテーションに関する苦言は下火になっていた。期待に戸惑い、そして多少に残る罵声。様々な聴衆の声を浴びながら、"舞台"と演者は更なる演目を駆け抜ける。
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実況は中継に日本で声を当てている感じに脳内補完をお願いします。
>我々に馬の気持ちなんて分かるわけがない
これについては後々何処かで触れようと考えています。少なくともリュージさんはサードステージからの感覚は自分の幻覚に過ぎないとか切り捨ててたりはしません。
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