木ノ葉のお札屋さん 作:乙欄
あとがきとかも書き足したりしていますけど、好きで書いているだけなので読まなくても支障はないですし全然読み飛ばしていただいても大丈夫です、はい。
8枚目
「え~……と、いうわけで今日の任務は終了!」
カカシ先生がそう告げるも、ナルト君はとても不満気でした。
「最近ショボい任務ばっかじゃん。Sランク任務はいつだ!」
「Sって……上忍のお仕事ですし、国家レベルですよ国家レベル」
「そーよ。私たちはまだ下忍なんだからね」
先日の波の国がBランク相当の任務だったとして本当は中忍が担うのがふさわしいのですから、Sランク任務なんて降って湧くわけがありません。あるとしたらカカシ先生だけで行う任務とかになるかと。
……それにSランク任務があったら、それはとても難しく危険なものになるでしょう。あまり無理はしてほしくないものです。したくもないですし。
「あー、ハイハイ……じゃあはい解散〜」
カカシ先生はけんもほろろに去っていきました。サクラちゃんはサスケ君に2人で帰ろうと誘うも断られてしまい……いつもの光景ですね。一緒に帰るくらいしてあげればいいですのに。
「ちょっち待てーい! オレたちでもやれるSランク任務が1つだけあるってばよ!!」
わたしも帰ろうとしたのですが、ナルト君の声に引き止められました。一体何のことでしょうか?
ちょっと気になるわたしたちに、ナルト君は高らかに続けたのです。
「……幾度となく失敗し続けたオレたちだけの任務…………カカシ先生の素顔を見ることだってばよ!」
……それはいいとこCランクくらいですよ、ナルト君。確かに難易度だけは高いでしょうけど。難易度だけは。
アホくさ、いえ、面倒なので帰ろうとしたわたしでしたが、意外にもサスケ君が乗り気になり。そうなるとサクラちゃんも参加せざるを得ないわけで。わたしとしてもチームワークを盾にされるとしぶしぶでもやらざるを得ませんでした。
……帰りたいです。
「カカシ先生の今までの写真をすべて探し出せばいくら何でも1つくらいはあるってばよ」
「それもう私が前に調べた。全部マスクしてたわよ」
「それは……徹底していますね」
もう調べてたんですか、サクラちゃん。貴女も気になってはいたんですね……。
そうなると他に手段は思いつかず。諦めて帰りましょうとわたしが口にする前に、後ろから声がかけられたのです。
「火影様に提出する忍者登録書には素顔の写真が使われているはずだよ」
第一印象は、とにかく怪しい!というものでした。
ある意味タイミングよく話しかけてきたのはカメラを構えた男性です。茶髪で、ナルト君たちと同級生だったキバ君のようなペイントを顔に施している方。彼は頬に赤色のものですけどこちらは紫色で目元にあります。あとはマフラーをたなびかせているのも特徴的ですね。
「とは言ってもそれは里の最高機密扱いの書類。簡単には拝めない代物だけどね」
「……ご助言はありがたいのですが、どなたですか?」
「失礼。僕は写真家のスケア。スクープを求めて西へ東へ……」
「北と南は?」
「ナルト! そんなのどうでもいいでしょ!」
サクラちゃんに怒られたナルト君でしたが、ちょっと面白かったです。
「ナルト君、慣用句ですよ慣用句。色んなところへ行ってるってことです」
「そうなのか! にーちゃん、すげーんだな」
「ありがとう。それで、スクープを探してる所へ面白そうな話が聞こえてきたからさ」
聞かれたからには消すかと言い謎の部分で忍者らしさを発揮したナルト君に、サクラちゃんがおバカとツッコミをいれます。なんだかんだ仲よくなりましたよね、この2人も。
「僕もキミたちのそれに一枚かませてもらえないかな。木ノ葉始まって以来の大スクープになるし、もみ消されるにしてもかなりの額が手に入るからね」
どこからお金が出るんでしょう、それ。と言いますか、カカシ先生の素顔にそこまでの価値が……?
「あのさ! あのさ! じゃあ、お金入ったらラーメンおごってね。約束だってばよ!」
「ギョウザもいいですよ。じゃあ決まりですね」
その言葉にやったーとはしゃぐナルト君。君はラーメンとギョウザで担当上忍の情報を売り飛ばすのですか……ちょっと忍び的に、どうかなと思いますが──
「フッ……面白くなってきたじゃねえか」
意外とノリノリなサスケ君。君もですか。
サスケ君は波の国から帰って以来ちょっとカリカリしているようだったのですが、今は比較的機嫌がいいようです。いつも遅刻してくるカカシ先生へのイラつきもあったから仕返しできるチャンスにワクワクしているんですかね。同じ写輪眼持ち同士、仲良くすればいいですのに。
子どもっぽさを見せる男子2人に、わたしとサクラちゃんはやれやれと顔を見合わせたのでした。
「そんじゃ、ミッション開始だってばよ!」
……わたし、抜けたらバレますかね。7班の交代要員はスケアさんということで、駄目でしょうか。
意外なほどに侵入はあっさりと成功してしまい、ネックだった鍵開けも火影直属の情報収集班だったというスケアさんがこなしてしまいます。その慣れた動きはお手本にしたいと思いまじまじと見てしまうほどです。こうしてみると波の国でのわたしの潜入はまだまだ未熟だったと思わされます。
しかし元暗部、ですか。ますます怪しいと言いますか、何と言うか。情報収集が仕事だったのなら、こういうことをするのはまずいとわかっているはずですが……木ノ葉の下忍であるわたしたちはともかく、スケアさんが本当にただの写真家だった場合、処断は免れないと思うのです。少なくともうちの店でこう侵入されたら、間違いなくお縄にかけます。サスケ君も怪しんでいますが、わたしも同感です。
大量の巻物の中からカカシ先生の忍者登録書を、元から場所を知っていたかのようにあっさりと見つけ出したのもちょっと不自然です。偶然と言われればそうなのかもしれませんが……。
つらつらと考えていると、背後からの殺気。先ほどまではまったく感じませんでしたが、大勢の気配が降って湧いたように現れました。
「動くな。少しでも動けば反抗の意とみなし、場合によっては処理する」
こうしてあとちょっとズラせば先生の顔の写真が見える、というところでわたしたちは暗部の方々に見つかったのでした。……ここまでしたのですから、見たかったような気がしますけれども、ちゃんと見つかってホッとしたような。里の警備がしっかりしていて何よりです。
火影様にもカカシ先生にも叱られ、わたしは完璧にやる気を失ったのでした。スケアさんなんてこっちに責任転嫁してきましたし。ひどいです。わたし、火影様にも先生にもほとんど怒られたことなんてなかったですのに。
「みなさん……途中で申し訳ないのですが、ちょっと急用を思い出したので失礼します」
任務放棄だ!と騒ぐ班員を尻目にわたしは帰路につくのでした。ラーメンくらい奢りますから許してください。と言いますか、そもそも任務じゃないでしょう。わたしは帰って報告書を書くのです。
結局あのあと写真を撮ろうと連写するも鳩さんやキバ君の忍犬の赤丸君が写り込んでしまっていて失敗。そのすさまじいまでの幸運?はサスケ君ですら神の力を感じると慄くほどだったそうです。いっつも顔を見ようとするとそんな感じになっちゃうんですよね。
まあ、成功しても別に忍びってそこまで顔を隠している人いないですし、そんな大層なことにはならないと思っていましたが。顔を隠しているのって暗部の方々くらいですよね。あの動物を模した仮面、可愛くて好きです。
それにしてもスケアさんって結局どういう目的があって接触してきた方だったんでしょう……どこかで顔を見たような気もするんですが。あんなペイントがあると顔自体の印象が薄くて、なかったら気づけなさそうですし……もしかしたらお店に来たことがあるのかもしれませんね。
とりあえず、木ノ葉隠れが今日も平和で何よりです。
◆
それは、わたしがお店に立っている時のことでした。
「カタナ。しばらく蔵の警備を厳重にして、あと店に出せる品も減るから気をつけなさい」
「わかりました。何か木ノ葉で事件が起きたのですか?」
「いや、違う。……これから起きるやもしれないが」
いったい何でしょう。奥歯に物が挟まったような言い方です。そうやって隠されると気になってしまうのですが。
そう思っていると、横合いから父ではない男性の声がしました。
「中忍選抜試験の会場になるんだよ、この里が」
「中忍の……本当ですか、カブトさん!」
薬師カブトさん。わたしと同じく下忍の方なのですがお金はあるのか
ともかく、200枚くらいちゃんと作っているカブトさんは本当にすごい方だと思います。その情報収集能力も含めて。前にわたしや友だちの札を見せてもらいましたけど、かなり正確な情報でした。御本人は中忍選抜試験に6回も落ちた ただの下忍と謙遜されていらっしゃいますが、戦闘能力を抜きにすればすぐにでも中忍になれる素質のある方なのではないでしょうか。うーん、中忍になれる方法が厳しすぎるといいますか、もっと門戸を広げるべきかと思うのです。
「ああ。既に他国の忍もちらほら見かけるよ」
え、そうなのですか。うぅ、まったくわかりませんでした。
きっとカブトさんは中忍選抜試験にかける熱い想いからお気づきになったんでしょう。1年に2回しかないとはいえ連続で6回も受けるのはなかなかの不屈の精神だと思います。1回くらいお休みしてもいいと思うのですが──
「……では、カブトさんは今年も受験されるのですか?」
「もちろんさ……ただ、そのことで一つお願いしたいことがあって」
「お願い、ですか」
「もしできたらでいいんだ。頭の片隅にでも置いといて欲しいんだよ」
まあ、そのくらいなら。お得意様ですし、いいのではないでしょうか。
了承の意を伝えたわたしに、カブトさんはしきりにお礼を言ってくださってからその内容を告げました。
中忍選抜試験は
カブトさんは下忍仲間の協力を取り付けているらしく、カブトさん以外の2人は今回の中忍選抜試験を受けても受けなくてもいいと考えているので、どうとでも対応できるそうです。
そして重要なこととして、彼はあの うちは一族で今年No.1ルーキーのサスケ君を誘いたいらしいのです。確かに彼はとっても優秀ですが、少々チームワークに欠けるところもありますよと言ってもその意思は変わりませんでした。と言いますか、もともとそういう性格であることも知っていたそうです。流石の情報収集能力ですね。
さて、つまりカブトさんはサスケ君以外の班員で
わたしとしてはそもそもペーペーの下忍の7班が中忍選抜試験を受けられるのかどうか、という疑問があったのですが……そこは大丈夫だそうです。形式上は8任務以上こなしている下忍なら担当上忍による意向で推薦できるのだとか。通例その倍の任務が相応らしいですが。8任務程度ならもうこなしているので、あとはカカシ先生のご意向次第といったところですね。
カブトさんはカカシ先生ならわたしたちを試験に推薦すると考えているようですが……どうでしょうか。さっぱり読めません。
あくまでもお願いであって無理であればすっぱり諦めるので、あまり気負わずに、あと恥ずかしいのでカブトさんの名前はできる限り出さないようにしてほしいと言われました。
サスケ君本人に言ってみては?ともご提案したのですが、カブトさんのこれまでの成績を考えるに良い返事はもらえないと思うから、とのことでした。確かに中忍選抜試験に何度も落ちているということを聞かされると躊躇してしまうかもしれません。だから、チームメイトであるわたしの方から上手く言ってもらえないかと。
「そういうことで、よろしく頼むね」
そう言ってカブトさんはお札を数枚買っていってくださいました。いい人です。試験に推薦してもらえるかはわかりませんが、お得意様のお望みとあらばなるべく叶えて差し上げたいですね……鋭意努力しましょう!
カタナは基本的に年上をさん付け、同じ年齢や年下はちゃん君付けで呼び、木ノ葉の偉い人とかは様付けで呼びます。犯罪者とかは呼び捨て。テンテンが呼び捨てなのはテンテンちゃん、というのが呼びづらいし発音的に違和感があるのでそうなっているだけで他意はないです。
他里の偉い人とかは心の中ではさん付け、会話にする時は様付けとか、使い分けてたりします。カカシ先生がスズ取り演習時は地の文ではさん付けで会話文では先生呼びになっていたのも同様で、心のなかではまだ担当上忍と決まったわけじゃないから今まで通りさん付けになってる感じです。なので合格とともに心のなかでも先生呼びに変化しました。
第七班が第7班になっているのは原作とは違う班ということの表現と、個人的に横書きの場合は算用数字のほうがしっくりくるからです。でも1人と一人とかの使い分けの基準はなんとなくで曖昧になってます……読みづらかったら申し訳ないです。
額当てを額あてにしてるのは原作でも1話ではこちらの表記になってて、額あての方がマイルドな感じがして好きだからです。
スケアさん→のちのち。
御本人は中忍選抜試験に6回も落ちた ただの下忍と謙遜されていらっしゃいますが、戦闘能力を抜きにすればすぐにでも中忍になれる素質のある方なのではないでしょうか。うーん、中忍になれる方法が厳しすぎるといいますか、もっと門戸を広げるべきかと思うのです。
→原作には描写はないもののおそらく中忍になるには合同の選抜試験だけではなく推薦や里のみでの試験もあると思われる。理由として選抜試験だと本戦に残れる人数が少なすぎて半年に一回開催でも中忍になれる人数が少なすぎること、暗号班や(一般的な)医療忍者など戦闘能力の低い忍が無為に殺されるのは里としても防ぎたいのではと思うこと。でも、カタナは普通の下忍の身なのでその存在を知らない。カブトは知ってるけど目的があるから中忍選抜試験を受けてる。
忍識札について
明確にカブトさん開発という描写はなかったはずなので製造元に。カブトさんが開発してたらごめんなさい。でも普通にあんなのが作れる人と知られていたら暗号班とかからスカウトなんてのも来てそうだし、ミニコーナーでとはいえアニメでヤマト先生も使ってたのでいいかなあと思いまして。はい。
なんで忍識札博士ってワードを思いついたんだろう、と考えたらたぶん蛇博士が元凶だとわかりました。ナルトスのインパクトよ……。