木ノ葉のお札屋さん 作:乙欄
「やっと任務が終わりましたね……」
「ほんっと疲れたわ。なーんか2人、前より仲悪くなったわよね……」
あのカカシ先生のマスクの下を暴こうとした時の団結力はどこへいったのやら、という感じです。
最近の7班は……と言いますか、ナルト君とサスケ君の2人がどうもギスギスしていてチームワークが乱れているのです。ナルト君もサスケ君も強くなりたい、というような想いは同じだと思うのですが、それがどうも噛み合わないらしく段々と仲がこじれていっています。
わたしとサクラちゃんが口出ししてもどうにもならず……むしろ悪化していくような感じすらしており、カカシ先生も眉をひそめてはいるものの何もしてくれず。どうすればいいものかと悩む現状です。年下の男の子の扱い方なんてわかりませんし。年齢的に反抗期とかでしょうか?
「さーてと! そろそろ解散にするか」
カカシ先生がそう言うとサスケ君はさっさと帰ろうとしました。いつも通りですね。サクラちゃんが一緒に行こうと誘うも、すげなく断り。今日は虫の居所が悪いのかいつもよりツンツンしていました。流石に言い過ぎだと言おうとしたところで、カカシ先生から呼び止められてしまいます。
「カタナ! ちょっと来て」
「わかりました」
何でしょう。報告書のことですかね?
ちょいちょいと手招きされて、3人とは離れたところへ行きます。他の班員には聞かれたくない話ということでしょうか。
「カタナは中忍選抜試験ってご存知?」
「はい。今回は木ノ葉での開催と聞きました」
「ん? あー、お父さんから聞いたのね。なら話がはやいか…………いや、あれって
そう言われましても……まさかカブトさんの言った通り、7班が今回受験することになるとは思いもよりませんでした。せいぜい半年後、次回とかだろうと思っていたのですが。近頃簡単な任務を多く受けていたのは中忍選抜試験のためだったんですね。
にしても……わたしとしては確かに最近乱れっぱなしのチームワークのことを考えるとわたし以外の3人で受けてもらうのがいいと思いますが、そうするとカブトさんのお願いを聞けないんですよね。困ったものです。
「ええと、質問を返して申し訳ないのですが、その場合わたしはどうなるのでしょう?」
「あ、ごめん言い忘れてたね。カタナは他の下忍と組んで参加するか、次回を待つかになる。正直誰が受かるかわかんないから、次に受けるとしても7班でいけるかは微妙だな……」
うーん、これはサスケ君と組みたいって言ってる人がいるんですけど!とは言えない雰囲気です。もう1個の方でいきましょう。
「そうですか……でしたら、2人ずつに別れて誰かに加わっていただく、というのは難しいですか? 例えばわたしとサスケ君、サクラちゃんとナルト君とか……」
「んー、それだとチームワークがなぁ……それにそうするとしたら男子と女子で分けるよオレは」
ですよね。男子2人の仲が一番問題ですもんね。実力的に考えてもバランスがいいですし。わたしとサスケ君で組ませるメリットは……7班の中だとわたしとサスケ君、サクラちゃんとナルト君の2ペアが一番問題が起きなさそうということくらいです。しかしこれだと中忍選抜試験終了後はむしろ両ペアの、ひいては7班の溝が深まってしまいうのは手にとるように想像できます。ええ、くっきりはっきり思い浮かべることができてしまうのです。試験中に対立することもあるでしょうし……となると流石にちょっと説得は無理でしょう。ごめんなさいカブトさん。わたしは努力はしました。
さて。となるとわたしが今回受験するかどうかですよね。うーん、別にわたしは次回でも構わないといいますか……今はまだ中忍にそこまでなりたい熱意もないですし、他の班員と戦うことになっても嫌ですし。本来は下忍になってすぐ受けるものじゃあないですしね。
「わかりました。では、今回は受験を見送らせていただきたいです。サクラちゃん、サスケ君、ナルト君の3人で受けてもらうのにわたしも賛成します」
「ホント? ……ありがとね、カタナ」
「いえ、わたしも最近チームワークのことは心配になっていたので……お気遣いいただいてこちらこそありがとうございます、カカシ先生」
わたしがそう言うとカカシ先生はくしゃりとわたしの頭を撫でてから「じゃ、そういうことでよろしく。あ、みんなにはこのこと黙っててね」と言って慌ただしく去って行きました。報告書を提出しに行ったんですかね。目の前でフッと消えるのはいつ見てもすごいです。これが上忍の瞬身の術……わたしもいつかできるようになりたいものです。
さて、ナルト君たちは何をしているんでしょうか。先ほどから声は聞こえていたのですが、何やらちびっこ3人組が増えています。サスケ君はもう帰ってしまったようですね。
「ちがーう!!!」
サクラちゃんに殴られたナルト君が見事にローリングして壁に突っ込んでいきました……本当に何をしているのでしょう? 結構な音がしましたけど大丈夫ですかね。
ナルト君を心配したらしいちびっこがサクラちゃんを煽る言葉を言ってしまい、ナルト君ともども殴られました。うん、今のはちびっこ……えっと木ノ葉丸君?も悪かったでしょう。
「ナルト君、大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫だってばよ……! ありがとカタナちゃん」
ナルト君は頑丈ですね。今日の任務での怪我もすぐ治ってましたし。でも、大事に至ってないならよかったです。
木ノ葉丸君も普通に起き上がりましたし、大丈夫そうです……と、思ったらじっと見つめられました。何でしょうか。
「も、もしかして姉ちゃんが兄ちゃんのコレなのか?」
……?
…………コレって、お付き合いしている彼女ってことでいいんですかね?
「ええと、違いますよ。ナルト君とは同じ班の仲間なのです。あっちのサクラちゃんも」
サクラちゃんは怒ってスタスタと帰ろうとしていました。会話の流れがいまいちわかりませんが、まあサクラちゃんの鉄拳制裁は理由があってのことなのでしょう。たぶん。わたしは基本的には女の子の味方です。
「木ノ葉丸君、ですか? あまり事情はわからないですが、女の子にひどい言葉を言ってはいけませんよ」
「えー。でも、あのデコぴかちんが兄ちゃんにひどいことしたんだぞコレ!」
あ、だからそういうこと言うのは……とわたしが言う前に、すごい形相をしたサクラちゃんがかなりのスピードでこちらに走って来て。ナルト君とちびっこ3人とのおいかけっこを始めたのでした。みんな元気ですね……。
止めるのも億劫になったので眺めていると、木ノ葉丸君が通行人の方とぶつかってしまっていました。う、これは……先に止めておくべきでしたね。失敗しました。
ぶつかられた人は砂隠れの忍びのようでした。顔のペイントでわかりづらいですが同年代のようなので、中忍選抜試験を受けに来た下忍なのでしょう。
「いてーじゃんくそガキ!」
……そして喧嘩っ早い方のようです。運が悪いと言いますか口は災いの元と言いますか。
流石に止めませんと、これは。木ノ葉と砂隠れの問題になるかもしれませんし。と言いますか、この人たちは試験を受けに来てなぜ喧嘩を始めようとするのでしょう……? 中忍選抜試験、受けられなくなってもいいのでしょうか。
「砂隠れの中忍選抜試験受験者の方ですか? この度はこちらからぶつかったことでご不快にさせてしまいたいへん申し訳ございませんでした。ですが、どうかその子を離していただけたらと。木ノ葉で何か問題が起きたなら、わたしたちは上にご報告しなければいけなくなります。そうなると、受験にも差し障りが出るやもしれませんし……」
「そうだよ、やめときなって。後でどやされるよ!」
「はァ……仕方ないじゃん。ほらよっ」
ドサっと木ノ葉丸君が地面に落とされます。痛そうですが、放されたのはよかったです。そのまま彼はこちらへ元気よく走って来ました。どうやらたいした怪我はないようですね。
「中忍選抜試験……?」
不思議そうな顔をするナルト君を見て自分の失言に気づきました。木ノ葉丸君を助けるためとはいえ、カカシ先生との約束を破ってしまいました……でもたぶん、一番言っては駄目なのはわたし以外の3人で受験するということですし、セーフだと思いたいです。ごめんなさい、カカシ先生。
「ナルト君、後で説明しますから今はお口チャックでお願いします。それと、木ノ葉丸君。あのお兄さんにぶつかってごめんなさいしましょう。まだ謝ってはいないでしょう?」
「え……うん、わかった。おい、ぶつかっちゃってごめんなさいだぞコレ!」
「ふん……」
喜ばしいことにどうにか丸く収まったようです。なんだかどっと疲れました。学校の先生っていつもこんなことやってるんですよね……改めて尊敬します。
「おい、カタナ」
とりあえずこの場を離れようとしたわたしたちでしたが、名前を呼ばれて止まらざるを得ませんでした。今度は何ですかサスケ君。というか空気を読んでください空気を。今、完全に終わりの流れだったのに、君のおかげでみんな立ち止まっちゃったじゃないですか。というかどこに、いつからいたんですか? 帰ったんじゃなかったのでしょうか……まさか、本当はわたしたちと帰ろうと思って待っていてくれたとか? ちょっとキュンときました。いい子ですね。
「なぜお前だけ中忍選抜試験について知っていたんだ」
それ、今聞く必要あります? ねえ、ないですよね!? そういうのは明日の任務の時とかに聞いてくださいよ。しかも今、ナルト君にあとで説明するってわたし言ってましたし。
聞かれると答えざるを得ないのですが、この場の注目を浴びてしまってすごく居心地が悪いです……サスケ君のおバカ! さっき上がったばかりの好感度がグンと下がりました。
「父から聞いていたんですよ」
中忍試験について、カブトさんから聞いた内容を軽く説明します。まあきっかけは父から聞いたことなので嘘ではないです。
カブトさんとカカシ先生のことは黙ってないとですよね。なんか父を矢面に出しすぎてちょっと申し訳ないです。少なくとも今日は父に優しく接することにしましょう。
「へー、すげェってばよ! オレもそれ出たいなァ」
……それには、わたしは何も言えないんですよ。ごめんなさいナルト君。後のお楽しみです。
「フンっ……」
サスケ君も一応納得してくれたようで何よりです。
砂隠れ2人の方を見ると、顔面ペイントさんは立ち去ろうとしているのですがもう片方の大きな扇子を背負っているくノ一さんがサスケ君に見惚れているようです。だからまだいるんですね……え、この状況、いったいどうすれば……? わたしたちから去るべきなのでしょうか? サクラちゃんがくノ一さんの熱視線に気づいてしゃーんなろーしてますし、なんだかもう、カオスな状況です。
「何をグズグズしている?」
まるでわたしの心を代弁するかのような言葉を言って現れたのは、砂隠れの少年でした。真っ赤な髪に額には愛の文字、目にはひどい隈があり、さらにはひょうたんを背負っているというなかなかの強個性っぷりです。
しかもなぜか木の枝に逆さまに立っています。何ででしょう……? チャクラコントロール力のアピール? それともぶら下がり健康法か何かでしょうか。頭に血が巡るとよく眠れる、みたいな。今度チャレンジしてみてもいいかもしれません。あ、でもスカートがめくれちゃいますか……駄目ですね、女子として。やめましょう。
「行くぞ」
高圧的に振る舞う態度を見るにこのひょうたんさんがリーダーのようで、彼に何か感じるものがあったらしいサスケ君が熱視線を送っています。そう見つめなくてもまた試験会場で会えますよきっと。
当のひょうたんさんは一瞬で砂隠れの2人の間に立つと、そのまま3人は瞬身の術で高速移動したらしくどこかへ消えました。
……砂隠れの人たち、なんか色々と濃かったですね。今回は受けないことにして正解だった気がします。相対しているだけで疲れました。
そのあと。いまだ元気いっぱいの木ノ葉丸君たちと忍者ゴッコで遊んで(お互いアカデミー生と下忍なのですけれども)判明したことですが、彼は火影様のお孫さんだそうです……もし顔面ペイントさんを止めていなかったら木ノ葉と砂隠れの戦争になっていたかもと冷や汗をかきました。最悪の事態にならなくてよかったです。あと、家庭教師がエビス先生とのことで、そうなると彼は一応わたしの弟弟子にあたるのですかね。エビス先生はお元気とのことでしたが、中忍選抜試験の間はどのみち暇ですしたまにはお会いするのもいいかもしれません。
「あら、失敗したの?」
「はい、大蛇丸様……申し訳ありません」
「いいわ、別に。参加はするんでしょう?」
「ええ。サスケくんは九尾の人柱力のうずまきナルト、春野サクラとともに受験するとのことです。一応メンバーの変更は当日ギリギリまで間に合うことは伝えましたが、おそらく変更することはないだろうと思われます」
「わかったわ……それにしても、不参加になるなんてその子は幸運ねェ……そういえば川上家には私も昔少しばかりお世話になったかしら。カブト、お前は知ってた? あそこにも穢土転生の資料があるのよ。ちょっとばかり拝借したのよね……残念なことに全部写本で、あのジジイの持ってた以上の情報はなかったけれど……ああ、でも呪符の作り方は参考になったわねェ」
蛇は暗く、暗く、嗤った。
顔面ペイントさん→この世界って歌舞伎とか隈取とかあるのかなあ、と思ってとりあえずペイントと表現。どちらかというと仙人イコール隈取の認識の方が正しい気もして……。
しかもなぜか木の枝に逆さまに立っています。何ででしょう……?→メタ的に言うと登場時のインパクトを狙ってのこととはわかっているものの、ツッコミたかった。
いまだ元気いっぱいの木ノ葉丸君たちと忍者ゴッコで遊んで(お互いアカデミー生と下忍なのですけれども)判明したことですが、彼は火影様のお孫さんだそうです……もし顔面ペイントさんを止めていなかったら木ノ葉と砂隠れの戦争になっていたかもと冷や汗をかきました。
→ヒルゼンと親しいため木ノ葉丸の存在を知っているとすべきか迷ったものの、まだ木ノ葉丸は小さい子どもだしまあ、孫がいる程度で名前までは知らない、写真なんかを見たとしても赤ちゃんの時とかの写真しか見てなくて気づかなかった、という感じで想定。なお、相手は風影の子であるため実は火影の孫vs風影の息子であった。なぜそんな争いを道端でやってるんだ。
川上家、カタナのおじいちゃんは戦時中ですし一応忍びではあったものの後方専門でお札ばっか作ってる人でした。その息子のカタナ父は忍びにはならず、しかし札作りの関係上忍術は習っていて使えます。忍者学校には通ってたとか、通ってなくともエビス先生みたいな家庭教師に教わったりしていたのでしょう。親戚連中には似たような人も多いです。お札作りにはなんと言っても影分身が欠かせません。生産量が2倍になるのです。戦闘しなければいいので、内勤には最適だと思います。影分身を自らの意思で消せば経験値は入るものの疲れる。影分身へわざと攻撃すれば経験値は入らないものの疲れもまた入らないので、使い分ければなかなか強力なきがします。そんなわけで、カタナも幼い頃から叩き込まれ習得に至っていますし、お札作る人はみんなだいたい使えるという設定です。
カタナの家庭教師はエビス先生でした。影分身を主に教えたのも彼です。カタナは一応、いいとこの娘ですし。エビス先生的にはカタナも火影候補だったかもしれませんね。基準がちょっと謎いですけど、彼の言う火影候補は。他には誰へ教えていたのやら。