木ノ葉のお札屋さん   作:乙欄

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10枚目

 あれからは特に他国との問題も起きなかったのですが、中忍選抜試験のことをカカシ先生がみんなに話すこともありませんでした。

 

 カブトさんの話では試験は明日からということなので、十中八九今日の呼び出しで話すのだろうなとは予想がつきます……でも何でこんな朝っぱらから呼び出すのでしょう。ちょっと眠いです。

 

「寝坊したからってブローをあきらめてくる乙女の気持ち、どうしてくれんのよ!!」

 

 サクラちゃんもナルト君も今日は寝坊してしまったようです。別に、サクラちゃんはいつも通り可愛いらしいですし綺麗な髪をしていると思うのですが、やはり好きな異性の前ではいつも完璧でありたいものなのでしょうか。

 

 たまにはわたしも髪を下ろすのもいいかもしれません。いつもなら邪魔になりそうで躊躇してしまいますが、しばらくは何もないでしょうし……。

 

「やあ、お早う諸君! 今日はちょっと人生という道に迷ってな……」

 

 カカシ先生は鳥居の上に現れました。ちょっと罰当たりな気が……それにしても、カカシ先生の今回の言い訳って前に言っていた「今日は道に迷ってな……」をひねったバージョンなのでしょうか。言い訳のバリエーションが無駄に豊かです、無駄に。

 

「ま! なんだ……いきなりだがお前達を中忍選抜試験に推薦しちゃったから」

 

 そう言うと先生は4枚の志願書を差し出しました。……4枚? わたしは受けないことになったはずではなかったのでしょうか。戸惑うわたしの前で、感極まったらしいナルト君が先生にダイナミックに抱き着いていました。

 

「カカシ先生大好きーっ!」

 

 先ほどまで先生の悪態をついていたとは思えない掌返しっぷりです。ナルト君、わりと現金な子といいますか、単純一途といいますか。

 

 カカシ先生は困った感じでナルト君をそっと振り払い、そしてわたしたち一人ひとりに志願書を手渡してくれました。わたしに渡すときも、特に変わった素振りは見せません。何か言っていただけるとありがたいのですが──

 

「……といっても推薦は強制じゃあない。受験するかしないかを決めるのはお前達の自由だ。受けたい者だけその志願書にサインして、明日の正午までに学校の301に来ること」

 

 うん、嘘ですね。3人1組(スリーマンセル)でないと受けられないはずです。つまりわたしにまで志願書を渡したことも、嘘を話すのも他の3人への試験の一部ということなのでしょうか。だとしたらわたしは黙っておくほかありませんけれども。先にそこら辺を説明していただけているとありがたかったのですが。

 

「以上!」

 

 ひとまず渡された志願書が偽物なのかじっくり見ているうちにカカシ先生はあっさりと去ってしまいました。……何も言われませんでしたし、とりあえずわたしも明日みんなと一緒に学校へ行くべきなのでしょう。お前いらないやって言われたら帰ればいいですし。

 

 志願書を手にしてわかりやすく浮かれるナルト君に、わかりにくくも浮かれているらしいサスケ君でしたが……サクラちゃんが暗い表情を浮かべてるのが気になりました。

 

 

 それは、次の日、中忍選抜試験当日も同じなのでした。

 

 

 久しぶりの学校は懐かしくも異様な雰囲気に包まれていました。かなり多くの忍びが来ており、先日の砂隠れの方々みたいになかなか多様なファッションが見られます。

 

 わたしたち7班が301へと足を運ぶと、そこではひと騒ぎ起きていました。友人であるお団子頭の可愛いくノ一、テンテンと彼女の班員のリー君、それと知らない木ノ葉の忍び2人が争っているようです。

 

 ん? ……301のプレートを見ていると、何か違和感があります。身体のどこかがおかしいような……いえ、チャクラが……となるとこれが、これは、幻術でしょうか? ええ、ええ、落ち着いて考え直せば答えは明白です。わたしたちはなぜかここに来るように意識を誘導されました。誰かの妨害ということになるのでしょうか。

 

 しかし……リー君もテンテンもあっさりと殴られていますが、おそらくわざとでしょう。あの班はみな体術に特化していますから、避けるのは造作もないはずです。なぜわざと殴られたのかはわかりませんが……もっとわからないのは中忍試験受験者をふるいにかけると話している謎の2人の目的です。試験官ごっこでもしたいのでしょうか。にしては3人組でないことも気にかかりますし。あと1人が隠れてたりしているのでしょうか、野次馬の中とかに。

 

 そんな怪しい2人にサスケ君はあっさりと声をかけました。勇気ありますね。

 

「オレは通してもらおう。そしてこの幻術でできた結界をとっとと解いてもらおうか……オレは3()()に用があるんでな」

 

「ホウ……気付いたのかキサマ」

 

 自白がはやいです。秒で白状してくださいました。そんなはやく観念するなら最初からこんなことしないでいただきたかったです、ええ。

 

「サクラ、どうだ? お前なら一番に気付いてるはずだ……お前の分析能力と幻術のノウハウはオレ達の班で一番伸びてるからな」

 

 そう言って笑うサスケ君の顔は、いつもよりもだいぶ爽やかで優しいものでした。ちょっと胡散臭いなんて思ってませんよ? まあ……なんだか憂鬱気で、様子のおかしいサクラちゃんを気遣っての発言なのでしょう。チームワークの向上に、サクラちゃんの顔がだいぶ明るくなったことに思わず笑みが浮かびました。

 

 好いている相手に思いがけず褒められたサクラちゃんは、すっきりとした顔で力強く指摘しました。サスケ君効果は絶大ですね。恋する乙女、強いです。

 

「……もちろんとっくに気付いてるわよ。だってここは2()()じゃない」

 

 そうして。301と見えていたプレートが、201に戻ります。結界が解かれたのでしょう。

 

 そのまま蹴られそうになったサスケ君が蹴り返そうとして、リー君が双方を止めました。流石、体術が得意だけあって素早いです。謎の2人は……もう邪魔をする気はなさそうですね。

 

「テンテン、大丈夫でしたか?」

 

 殴られたテンテンたちの頬の腫れはもう引いていました。チャクラで身体を活性化させたんですかね。うーん、流石の一言です。

 

「うん! ありがとカタナ。……それで、ね、あの子、名前は?」

 

 リー君が一目惚れなのかサクラちゃんに告白している中、テンテンはサスケ君が気になっているようでした……すごい、サスケ君。魔性の男ですね。今、ネジ君にも名前を聞かれていますし。

 

「うちはサスケ君ですよ」

 

「そっか……かーわいい!」

 

 かわいいのでしょうか……? なんか、年下なのに背伸びをしているのがグッとくるそうです……まあ、そうと捉えられないこともないですけど……。やはり顔か、顔なのでしょうか。確かにイケメンさんだと思いますけれども。

 

 誘われたのでそのまま3人に断りを入れてテンテンたちと301までは行くことにしたわたしでしたが、代わりにリー君がサスケ君に用があるようでした。サスケ君、やはり魔性の男……!

 

 よってテンテンとネジ君と歩くことになり……テンテンは友人ですしよくおしゃべりもする仲なのでいいのですが、ネジ君は話したこともなく、ちょっと苦手なので緊張します。

 

 ────でもなんだかんだで意外と会話もはずむもので、特にテンテンたちの担当上忍のガイ先生とカカシ先生が『永遠のライバル』ということで彼らの話で盛り上がりました。みんなガイ先生を尊敬しているようで、班員同士の仲が良くてちょっと羨ましいです。お互いに実力を認めあっている感じですし。青春ですね。うちの班ももっとチームワークを高めねば……!

 

 リー君が追いついてきてテンテンたちとはお別れになり、301の前で待とうとしたわたしの前にカカシ先生が現れたのでした。やーっと説明してくださるんですね。

 

「先生……」

 

 じとーっとした目で見るわたしに、先生はゴメンゴメンと言いながら笑って説明しました。曰く、班員3人が自分の意志でここに来るかどうかを確かめたかったのだそうです。わたしにも志願書を渡したのは、わたしが受けないことを話すとその理由として3人1組でしか試験が受けられないことも話さなくてはいけなくなるからだと。

 

 まあ、いいですけどね。偶然テンテンにも会えましたし、これから試験へ向かう3人に言葉をかけられるのは喜ばしいことです。うう、これからしばらく会えないんですよね。何だかんだでほぼ毎日顔をつきあわせていたので寂しくなります。

 

 やって来たサクラちゃん、サスケ君、ナルト君にカカシ先生がネタばらしをして、そのあと激励し。3人は堂々と扉の向こう側へと踏み出しました……安全第一で、頑張ってください!

 

 

 

 ギイと扉が閉まります。

 

「行っちゃいました……しばらくわたし1人、ですかぁ」

 

「寂しい?」

 

「それはもう」

 

 カカシ先生は笑いながら頭を撫でてきました。だって7班のみんなはもう、一人っ子のわたしにとって弟妹のような感じなのです。

 

 3人が無事に戻ることを願って、帰ってきたときにあげるために何か用意しておきましょう。お菓子とかですかね。いつもの団子屋さんのお団子なんかがいいでしょうか。それともあんころ堂のぜんざいでもいいかもしれません。ときどき任務終わりのご褒美に食べに行くんですよね。サスケ君にはお煎餅とかどうでしょう。

 

 そうやって考えていると、新たに受験生が1人やってきたようでした。灰色の髪に、丸眼鏡をして柔和な表情を浮かべた男性……カブトさんです。もしかして前に「ギリギリまで待ってるから、もし参加したくなったりしたらいつでも言ってね」と話してくれたのは社交辞令ではなかったのでしょうか。う、結局サスケ君のことで何もできず、申し訳なかったです。カブトさんがいい人なだけにすごく悪いことした気分に陥ります……。今回は試験に合格できることを心よりお祈りいたします、はい!

 

「カブトさん! あの、すみません……わたしは受験しませんが、カブトさんの御健闘を心からお祈りしております!」

 

「ありがとう。今年こそ頑張るよ」

 

 そう言ってカブトさんは笑って中に入って行きました。いつもながらお優しいです。もしかしたら中忍選抜試験に今まで合格できなかったのは優しすぎて周りを蹴落とせないからとかかもしれませんね。うーん、ルーキーのナルト君たちを手助けしていただけるとありがたいのですが、ご自分の合格へ注力していただきたくもあり……複雑な気分です。せめて知り合い同士があまり争うことにならないことを祈りましょう。

 

 不思議そうにカブトさんのことを尋ねるカカシ先生にお得意様ですと答えます。常連さんとしてはカカシ先生の方が長いですが……お店で会ったことはないようです。まあ買うものだけ買ってさっさと店を出る人が多いですからね。子どもであるわたしや親戚の子たちが店番をしていると、気前よく話しかけてくださる方もいるのですが。

 

 それで先生はあと少し、試験が始まるまではここにいるそうで……先生もお優しいですよね。わたし、カカシ先生が担当上忍になってくださって本当によかったです。

 

 部屋の中の喧騒は外まで聞こえてきて──先日の砂隠れとのこともありましたけど、みんな大丈夫ですかね? 新人だからっていじめられたりしていないでしょうか。喧嘩っ早い人もいましたし、不安になります。

 

 横を見ると先生も心配らしくちらちらと扉の方を見てはちょっとソワソワしていました。でも。

 

「オレの名はうずまきナルトだ! てめーらにゃあ負けねーぞ!!」

 

 …………

 

 そんな声が中から響き、わたしたちは心配して損したと顔を見合わせて笑ったのでした。

 

 

 

 




「……といっても推薦は強制じゃあない。受験するかしないかを決めるのはお前達の自由だ。受けたい者だけその志願書にサインして、明日の正午までに学校の301に来ること」→地味に時間の部分は原作改変。1次試験のあと直ぐに2次試験を行ったとすると時間の辻褄が合わなかったため。


川上という名字は紙の神様、川上御前からいただいております。カタナという名前については……別に剣術キャラにしたかったわけではなく、これからもなりません。あの世界、侍がいますし……霧隠れには七人衆がいますし……今、1人しかいませんけど。火影様からなにかの拍子に褒美として刀をいただいていて、そこからとったという感じを想定しています。どんな刀剣かも、どの火影かも考えてはないです。おじいちゃん命名だったら間違いなく卑劣様ですね。家宝なので実戦で使われることはないですし、カタナがクナイ以外の刀を使うこともたぶんないです。草薙の剣は何本かあるらしいからその一振りとかかもしれませんね。

カタナに決まったのは、ある理由から「神からの贈り物」って感じの名前にしようと思って、日本神話だと三種の神器だよなあ、でもいい名前が作れないなあ……勾玉、鏡、剣(刀)だったらカガミかカタナだよなあ→既に うちはカガミさんがいらっしゃる→じゃあカタナでいっか、という。もしかしたら扉間小隊を尊敬するおじいちゃんが亡くなってしまったカガミさんにあやかって似た名前にした、というのもあるかもしれませんね。ツルギはカブトの潜入下忍仲間に剣ミスミさんがいるので駄目でした。そもそもツルギだとちょっと男の子っぽいですしね。かっこいいのですが。
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