木ノ葉のお札屋さん 作:乙欄
火影直属暗部い班の隊長。それが俺の肩書だ。一応、猿飛一族ではあるが……まあ、名乗るほどの忍じゃあない。
さて。中忍試験……これは各国の次世代の代表戦力をお披露目するいわば代理戦争のようなものだが、今回はそれ以上の意味があった。
大蛇丸──三代目火影の弟子にして伝説の三忍と謳われた抜け忍。奴が中忍試験に現れたのだ。木ノ葉に恨みを持っている、一人で小国程度落とせる忍。何が目的かは不明だが、予選時の うちはサスケ襲撃の際には警護していた同僚も殺られた。おまけに試験を中止にするなとの脅しをかけるほどの執心っぷりだ。うちはサスケの身柄と、本戦でなにか起こすことが目的の一部であることは間違いないだろう。
同盟各国と組んでいるのか、単独犯か、それすらも不明な状況……本戦までに各国へ情報収集に走ったが、俺達暗部は芳しい成果は挙げられず、今日の本戦を迎えることになってしまっていた。さらに病院から消えた うちはサスケを捜索したが発見できていないことも気にかかる。既に大蛇丸の手に落ちた可能性もあるな。
今日の試験会場には暗部は8人、い班とろ班が配置されており、一応俺が総指揮を務めることになっている。たった2小隊なのは大蛇丸の出方がわからない以上、里の主要部にも分散して配置せざるを得ないからとのことだ。俺達がうまく情報収集できていればと思うと、口惜しい。
──ただ、ダンゾウの責任も多分にある。ダンゾウは三代目の友人かつライバルであり三代目が表から木ノ葉を守るなら彼は木ノ葉を陰から守る存在……であるはずなのだが、どうも野心家な面がちらほらしているように見える。謹慎中とはいえ未だに多くの権力を握っており、会場の警備を減らすよう主張したのも奴だ。理由は十分に納得がいくものであるし、里を守る気持ちが一応あるのは知っているのだが…………どうにも怪しい。あと奴は、解体したはずだがほぼ私兵と化している「根」の連中を今回まったく動かさなかった。動かしたら動かしたで怪しむのだが、動かさなかったら動かさなかったでイラつく。まあ、要は俺は奴が嫌いなのだ。
まあ、いい。誰が何を思っていようと、俺達が三代目とこの里を守ればいい話だ。
試合は うちはサスケが来ないこと以外は問題なく始まった。途中、日向の秘密が暴露されてヒヤッとした場面もあったが……当主本人がこの場にいる以上、自分で何とかするだろう。というか頼むからしてくれ。
うちはサスケは試合時間ギリギリセーフ……?の場面でカカシに連れられて来た。本来ならば受験者の公平を期して失格なのだが、大名達のご機嫌取りやらもあり試合は普通に行われた。しかしカカシの遅刻癖も相変わらずだな……よく担当の下忍が愚痴をこぼしていたが。まあ、奴はオビトの件を未だ引き摺っているからな……。しかしカカシよ、こちらは散々うちはサスケを捜索したのだ。大蛇丸に見つけらないためだったとは理解できるが、もう少しこう、うまくやれなかったものか。俺達の睡眠時間を返せ。
────そしてその うちはサスケの試合中。それは起こった。
会場全体に、幻術。なかなかの使い手だ。部下達は問題なく解除出来ているが……さて、狙いはやはり三代目か? それとも うちはサスケか?
急いで会場を見渡すと三代目の物見やぐらから煙が上がるのが見えた。
────三代目かっ!
「い班は上! ろ班は下……大名達を守れ!!」
即座に駆けつけたが……物見やぐらの中にいる大名どもも守らねばならん。チィッ、ただでさえ人数が少ないものを!
風影の護衛どもがこちらに向かってくる。砂隠れめ、血迷いよって!
「邪魔だ……」
2人とも斬り伏せ……いや、手応えがない!? ……今は捨て置こう。
さらに三代目の方からは護衛についていた並足ライドウの悲鳴が聞こえる。殺られたか……!
煙の中からは風影にクナイを突きつけられた三代目が飛び出し、屋根の上へと連れられていく。俺達も向かおうとした瞬間……先に背後から何者かが追随して行った。
「追え!!」
屋根の上に着くも、完全に先手を取られた形となってしまった。急いで風影を排除しようとした俺達に──
「やれ……」
「はっ」
突如。行く手を阻む壁が出現した。勢い良くその紫色の壁に突っ込んでしまった部下の身体が燃え上がる。
「くっ……結界か……!」
この程度の炎なら死ぬことはない。結界を解く術のない俺は、ひとまず屋根の上に座ることにした。まずは状況を把握しなければ、やりようがない。
三代目を囲う壁は4人の少年少女によって展開されている。ご丁寧に、この術者どももきちんと結界内に入っているので、こちら側からは手出しができない。ちらりと下を見ると風影の護衛どもの裂けたマントだけがあって死体はない。クソっ、あの時手応えがなかったのはあのマント中に二人羽織のように隠れていたということか。俺が斬った時にはちょうど4分割されるように避けることで無事だったんだな。そしてその護衛に化けていた4人が今こうして結界を出して三代目と俺達を分離している、と。くっ……あの時きちんと斬っておけば……いや、今は後悔している場合ではない!
観客席には音忍がゾロゾロと攻めて来ている。幻術をかけた術者もいて……暗部の仮面を被った奴のようだ。チィ、裏切り者の9人目、か。つくづく無能な自分に嫌気がさすな。
砂隠れの受験者……風影の子女3人は会場から逃げていった。それを うちはサスケが追って行き……いや、待て。大蛇丸に狙われている奴が追ってどうするんだ。別の奴がやるべきだろ……?
本来ならば部下の一人でもつけてやりたいところだが、今は三代目だ。先程から結界内ではクナイを突きつけたままの風影がグズグズと三代目に話しかけている。何がしたいんだ、コイツは。攻撃しないのはありがたいが……ひどく不気味な行動だ。
「……そうか、そういう事か……」
しかし三代目は何やら得心がいったらしい。
「大蛇丸」
三代目の言葉に、風影の顔が剥ぎ取られる。下から出てきたのは……大蛇丸の顔、だった。
──クソっ、今思えば死の森でも大蛇丸の手で草の受験生の顔が溶かされたようになっていたという報告があった。奴は消写顔の術で自在に顔を奪いその顔に変えられる。もっと変装に警戒すべきだった……しかしまさか風影に化けてくるとは……完全に予想外だ。後手後手に回ってしまっている。これだから優秀なテロリストは厄介なんだ。
「それほどに嬉しいか……それとも……」
大蛇丸はなぜか瞳に涙を、そして顔は哀愁を帯びた表情を浮かべていた……奴にも人の心がまだ残っているのか? ……だとしたら、引き返せ……。伝説の三忍と呼ばれた忍に戻れ……! そして大人しく投降しろ!
しかし大蛇丸はそのままクナイを三代目の首に──
────血が、吹き出した。
「……師であるワシを殺すのに、多少の悲しみを感じる心を持ち合わせておるのか?」
────大蛇丸の、掌から。
奴はなぜか途中でクナイの向きを変え、自分で自分の掌に突き刺したのだ。
「やっと……すっきりした」
その目の涙はもう、拭われ……後は張り付いたような笑みを浮かべるだけだった。
「イヤ……眠くてね……あくびをして涙が出ただけですよ……」
そのまま風車がどうのとわけのわからん理由をほざいた後、大蛇丸は三代目と対峙した……瞬間、俺達のいる屋根の上にまた人がやって来る。
敵かと思って危うく攻撃しかけたが、その顔に見覚えがあり……すんでのところでとどまった。危ない危ない。隣の部下も抑える。
「川上のヤツだ」
呪符を作る家、川上。その店の一人娘だった。何度か起爆札を受け取る際に顔を合わせたこともある。その時は面はつけていないので、あちらとしてはまったくわからないだろうが。
彼女はカカシの班の下忍だ……カカシの奴、気を利かせて寄越したか。まったく、憎たらしい程に優秀な奴だ。
「気をつけろ。結界に触れると炎に包まれるぞ」
「わかりました! ありがとうございます」
忠告したにも関わらず、少女はクナイを投げたり起爆札を爆発させたりと色々とやっている……まあ、俺達は結界は専門外だし……頑張ってくれ。頼んだぞ。
────しかし、油断も隙もないことに術者の若造4人は内側からも結界を張っている。いくら三代目でも大蛇丸の相手をしながら術者を攻撃するのは不可能になった、と言っていいかもしれない……敵が有能すぎて涙を流したいほどだ、まったく。攻略はこの川上の娘次第になってしまうな。
「フン……そう簡単に出られそうもないのォ……」
「心にも無い。あなたにとっては足手まといに入ってこられる方がやりにくいでしょう!」
「チィ……」
大蛇丸に完全に馬鹿にされているが、反論できないのが腹立たしい。現に今俺達は若造の張った結界の前で指をくわえて見ていることしか出来ていないのだから。こちとらあらゆる忍術を使えるようなアンタらと違って、暗殺やら情報収集が専門……結界については門外漢なんだ……! くっ、無事戻ったら結界に明るい奴を暗部に入れるよう進言しよう。
──大蛇丸と三代目の戦いは静かに始まった。しかし結界外にまで伝わる程気迫に溢れていて……思わず、息を呑んでしまった。
大蛇丸の口寄せした棺の蓋がゆっくりと開く。そこには────
「初代様と二代目様!?」
その通りだ。あの方々は前の火影様。しかしあの死体は……いや、まさか? まさか大蛇丸はあの術を……!?
「何!?」
炎も消えて回復したらしい部下は驚いている。火影様の顔を知らないというのはまずいな。今度、武勇伝でも話してやるか……いや、俺の予想が正しければ今からその伝説が目の前で繰り広げられてしまうか。大蛇丸だけでもアホほど強いものをこのお二人まで追加してくるとは、つくづく絶望的な状況だ。
【久しぶりよのォ……サル……】
【ほぉ……お前も年を取ったな猿飛……】
「まさかこのようなことで御兄弟お二人に再びお会いしようとは……残念です……」
死人が喋る、か……これはおそらく確定だな。穢土転生の術だ。こんな時でなければ伝説のお二人に会えるだなんて光栄と思うかもしれないが……まあ、死者は所詮は死者。本来ならば期待してはいけない邂逅だ。
「……では、始めますか」
大蛇丸の手で頭に札が埋め込まれる。お二人の魂の人格は殺され──殺戮人形と化したわけだ。流石は大蛇丸、術の研究も制御も完璧か。失敗することを願っていたのだが……最悪なことに大蛇丸は穢土転生に慣れていそうだな。さぞかし実験を繰り返したんだろう、あのマッドサイエンティストめ。
「……みるみる生気を帯びていく……なんなんですあの術……!?」
部下が再び疑問を発する……無理もない。穢土転生は先の戦争の遺物──禁術中の禁術だ。初代様が禁術指定した術の記されている封印の書にある多重影分身なんかとはわけが違う。多重影分身は大量のチャクラを消費するため使うだけで命に関わる危険があるからこその禁術指定であって、今の世でも使える者だって多少はいる。
対してこちらは術自体に問題性があるものだ。木ノ葉の忍でも本当にごく一部しか知らない禁術……俺が知っているのは猿飛一族であることと、後は偶然の産物に過ぎない。
「穢土転生……死人を蘇らせる、禁術です」
しかしこの少女は知っているようだ。川上家も、穢土転生の知識を受け継いでいたらしい。話している内容は俺の知っていることとほぼ変わりなかった。
ただ、あちらは対処法を知っているらしく迷いない手付きで何やら巻物から机やら筆やらを取り出している。この状況からするとかなりのんき……不自然な状態だが、おそらく何かしら穢土転生に対抗できる札を作れるんだろう。心強いことだ……流石に大蛇丸もこれは想定外だった違いない。
しかしまあ初めて見たが……穢土転生、胸くそ悪い術だ。大蛇丸らしいと言えばらしいが。
「ククク……知ってますか? かつて師と呼んだ者を傷つけるという達成感と喜び! その喜びを知ってもらおうとこの場を用意したのですから……楽しんでください!」
そう大蛇丸が言い放ち──三対一となってしまった戦いは再び幕を開いた。
三代目の火遁──龍のように迫る炎を二代目様は難なく水遁で対処する。
しかし……水の無い所でこのレベルの水遁を発動できるとは……信じられん!
なにせあそこは火の結界の中である上に……おそらく多少なりともあの穢土転生体は弱体化している。そうでないと大蛇丸などにあの方々がああも縛られるものか。
……しかしやはり火影2人相手はキツいらしい。三代目の出した土流壁に木々が絡まって三代目は拘束されてしまった。
──チャクラが生命の源に……あれが乱世を治め木ノ葉を築いた初代様伝説の木遁忍術か! ……暗部にも「木遁のテンゾウ」がいるが……奴も今、どこかで戦っているんだろうな。
絶体絶命の状況の中、三代目は冷静に口寄せして猿猴王を呼び出し、金剛の如意棒に変化させた。その金剛の体は容易に初代様の木遁で出した木々を叩き折っていく。
──何というレベルの忍者合戦……これが火影というレベル……なのか。
穢土転生で蘇える場合は死の直前の状態になる……つまり3人揃ってご老体のはずなのだが……今がこれだと思うと、全盛期はいかなるものだったのだろうか。考えるだけで末恐ろしいな。
「あの……」
横から川上の娘に声をかけられる。穢土転生体に貼ると行動不能に出来る封印札と、代わりに埋め込めばこちらで制御を奪える命令札が書き上がったらしい。……若い世代も怖いな。いや頼もしい、が正解か。命令札の方は効くかは不明だそうだが、封印できるだけでもありがたい。
部下どもに配って一安心……これで穢土転生体は対処できる望みが出てきた。
三代目が攻防の隙に足に起爆札を貼り爆発を起こすも、穢土転生体はあっさりと修復されている。不死の体……本当にえげつない術だ。
「暗部の方。できました! 5箇所、同時にこれを投げたいのですが……」
そう言って札が付けられたクナイを渡される。結界を解く方法まで即座に作るとは──流石は川上、呪符を使った封印や結界はお手の物か。
ここまでやってもらって壊す方までやらせるのは忍びない。それに同時に当てるとなるとやはり彼女には厳しいものがあるだろう……ろ班を1人呼んでやらせよう。
しかし5箇所、となると上と側面か? 結界がかなり高くて飛べる奴でないと難しいんだが……いないんだよなあ、部下の中に。
「側面と底……合図は水遁か風遁をぶつけるのがいいかと」
「わかった」
なるほど。直方体のこの結界の6面のうち、今目に見えているのは5面だがおそらく底にも結界の壁はある。上ではなくそちらを狙うのか。
俺は急いで下へ降り、ろ班の1人のもとへ行き説明し……やはり物見やぐらの天井には結界の底が見えた。
風遁をぶつけた3秒後……俺達い班4人で側面を、ろ班1人が底を狙って放ったクナイは……無事、同時に命中したようだ。
ブゥゥンと音を立てて結界が崩れていく。
俺達はもちろん中へと飛び込んで行った。
「結界が!」
幻術で暗闇に包まれているが、俺達暗部にとっては闇なんぞ慣れきったものだ。動いている気配は3つ……三代目と、穢土転生体!
遅れて闇に部下達も飛び込んで来る。さて、じゃあ、お先に行くか。
ぶすりと穢土転生体の胸を刺し貫く。そのまま札を貼ろうとして……部下も来たようだ。
──────封印!
結界もきちんと解けたことだし、信用はしていたのだが……やはりこちらの封印札もちゃんと効くようだ。確かな手応えがあったが……同時にチャクラがごっそりと抜けた感触があった。2人がかりでやってもこれか。やはり穢土転生、厄介極まりない。
【世話を……かけたな……】
低く、優しい声が聞こえ──そして、闇が……消えた。
目の前には動かなくなった二代目様の体────札から這い出た文字が身体中に回って、びっしりと身体が黒い文字で埋め尽くされていっている。
初代様、二代目様……我々の不始末で、申し訳ありませんでした。どうか、お安らかにお眠りください……。
「結界はもういい! 増えた奴らを蹴散らしなさい……私の邪魔をさせないように……!」
大蛇丸の声が響く。よほど三代目との勝負にこだわっているらしい。
「「「「はっ」」」」
こちらが4人、あっちも4人……はやく倒して、三代目の援護へ…………!
三代目火影、猿飛ヒルゼンはここを己の死地にしようと定めていた。大蛇丸を昔、見逃したこと。いくらかわいい弟子とはいえ──やってはならぬことをしたのだ。それはもう盛大に。今度は、確実に殺す……例え命を引き換えにしても。それが、彼なりの責任の取り方だった。
外には川上家の子──カタナが駆けつけていることに彼は気がついていた。彼女ならば穢土転生の対処ができると信じている。故に、そちらについては心配はない。実は穢土転生体を見た瞬間、二代目様お得意のアレを使われるかとヒルゼンは密かに心配したが……それもないようであったのだ。そのため、問題なのは……大蛇丸だ。
正直なところ、今殺しても死ぬのかという心配がある。大蛇丸ならばヒルゼンすら知らない術で復活してもまったくおかしくはない。そうでなくとも例えば大蛇丸の部下が穢土転生を使えば……大蛇丸は不死の身体すら手に入れることになり、むしろ脅威を増やすことになるわけだ。それはまずい。
よってヒルゼンは四代目の封印術──屍鬼封尽で大蛇丸の魂を封じることを決意した。封印した者もされた者も死神の腹の中で永遠に戦い続ける術。これならばさすがの大蛇丸も復活できまい。それに……師弟で思う存分争い過ごし続ければ大蛇丸も、あるいは改心するのでは……という思いもあった。
ヒルゼンは術の発動中、幻術による暗闇に囚われるも────結界を崩し入って来た暗部の活躍によって穢土転生体2体は封印され、闇も晴れた。
光を取り戻した世界の中で、真っすぐに大蛇丸の目を見る……いつまでもヒルゼンにとっては弟子はかわいい弟子のままだ。しかし、それ以上にヒルゼンは木ノ葉の里の────火影だ……!
思わず涙が溢れる。
つい先ほど再会できた初代と二代目火影の言葉を思い出す。この術を使って亡くなった四代目のことも。
────心から認めて、信じて愛している者……この里の全ての者たちを守る。それが、ヒルゼンの信念で……今まで受継いできた、これから受継いでいく……火の意志だ。
カッと目を見開く。もう涙は消えた……迷いも、ない!
「来い! 猿魔!!」
ヒルゼンの如意棒が大蛇丸の草薙の剣をはじく。そのまま猿魔が手を伸ばすも、如意棒ごと蛇に絡め取られてしまった──だが、ヒルゼンの勢いは止まらない。
「終わりじゃっ!!」
大蛇丸の胸ぐらが掴まれる。そのままヒルゼンの背後にいる死神の腕が彼の腹を通って大蛇丸の魂をがっしりと手にして……
「「死ねっ!」」
大蛇丸が草薙の剣を操り背後からヒルゼンを刺し……死神の手が大蛇丸の魂を引きずり出そうとし……しかし、膠着状態に陥っていた。
「この里には……私の部下も含め砂隠れの忍どもも攻め込んで来ている。あなた方木ノ葉の忍は女子ども一人残らず全滅ですよ……木ノ葉崩しここに成る!」
「分かっておらぬのォ……大蛇丸よ。この里の忍を甘く見るな。木ノ葉の里の忍は皆里を守るため……命懸けで戦う!」
それはもちろんヒルゼンとて同じこと。
しかしそんな彼も老いた身。加えて剣が刺さっているダメージも大きい。
────仕方ない。
「封印!!」
ヒルゼンは大蛇丸の腕と、下半身の魂のみが切り取られていくのを見て……
「このくそジジィが! 何が可笑しい!!」
────笑みを浮かべて倒れていった。
「三代目!」
周囲を巻き込む勢いで激しく抵抗する4人に手こずり、ようやく倒しきって屋根の上に戻った俺達の目には────倒れる三代目と大蛇丸が映っていた。
身体を赤黒く染め、うめき声をあげる大蛇丸に止めを刺そうとした瞬間……もくもくと煙が上がった。周囲が白く何も見えない。だが、何者かが大蛇丸に近づいた気配はあった。
「大蛇丸を追えっ!」
大蛇丸か、その部下の仕業であることは想像がついた。急いで煙から抜け出すも、そこには────
「チィッ……」
大蛇丸の、影も形もなかった。
「まだそう遠くへは行っていないはずだ。辺りを探せ!」
部下にそう命じ、俺自身はここで煙が消えるのを待つ。
やがて、煙が晴れると、木々に囲まれた中……三代目が、静かに横たわっていた。
「っ………………ヒルゼンさんっ……!」
思わず駆け寄って────
安らかな、顔だった。
腹には何かの術式が書いてあり、胸には穴が開いてそこから血が出てきている。
偉大なる火影様の最期だ。ちゃんと整えようと触った時……わずかながら、息をしていることに気づいた。
────まだ、生きている。風前の灯火ではあるが。
はやく病院へっ……!
木ノ葉崩し、終結。この長い長い一日によって三代目火影、猿飛ヒルゼンは────昏睡状態に、陥った。
火影直属暗部い班ろ班→実際はい、ろは漢字だけど変換できなかった。木い、火ろ、という漢字。
解体したはずだがほぼ私兵と化している「根」
→根、とはダンゾウの作った暗部養成部門。解体されたもののそのままダンゾウのもとで働いている。解体とは……?火影直属の暗部と同様、暗部の動物を模した仮面はつけているものの、命令系統としてダンゾウの命令のみしか聞いておらず火影の指示は受けていないものと思われる。ややこしい。
さらに三代目の方からは護衛についていた並足ライドウの悲鳴が聞こえる。殺られたか……!
→この暗部の人は確認してないけど生きてる。原作でも生きてた。運がいいな……。
何度か起爆札を受け取る際に顔を合わせたこともある。その時は面はつけていないので、あちらとしてはまったくわからないだろうが。
→火影に納める起爆札の受け取り係。ヒルゼンから「怖がらせてもアレだから店に行く際は面を外せ」と言われている。実際店に暗部が入ってきたら店内のお客さんは帰っちゃうと思う。
炎も消えて回復したらしい部下は驚いている。
→原作でもフードと仮面が焦げた感じの暗部なので、たぶんこの人が燃えた人。生きてるか原作読んで結構確認した。
やはりこちらの封印札もちゃんと効くようだ。確かな手応えがあったが……同時にチャクラがごっそりと抜けた感触があった。
→大蛇丸の穢土転生が想定と違ったことから念の為強力めの封印を施してるためであり、本来はもっとチャクラ消費は少ない。
何でこの暗部の人たち9人目のカブトに気づかなかったんだろう?と思ったのですが、まあ前に対峙したはずのカカシ先生ですら気づかなかったので、よっぽど上手い隠形をしていたんだな……ということにしました。彼らも連日の激務に疲れていたんでしょう。
だいたい全部ダンゾウって奴が悪いんだ……
大蛇丸って何で川上家にエドテン関連資料あること知ってたのにカタナのこと警戒してなかったの?
→ぶっちゃけ舐めてた。カタナが穢土転生のことどこまで知ってるかなんて知らないし、本来はここで一尾さんが暴れる予定だったから会場の人間はそっちに釘付けになるはずだった。大蛇丸が結界を張らせたのは多分三代目と一対一でやりたかったのと単純に周りの攻撃の余波を受けないためだったと思います。あと三代目はもっとサクッと殺るはずだったんでしょう。ここでの穢土転生は大蛇丸にとっては単なる三代目への嫌がらせの意味が強かったのも理由の一つだとは思います。
影分身でチャクラが3分の1になったヒルゼンが腕しか取れてないから、3倍でじゃあプラス下半身も、という感じです。すごく概算。死神さんは優しいので取った分と同量の魂だけ奪っていきました。影分身も魂でOKで分割払いOKの優しいお方。
【中忍試験について】
中忍試験は受けないという。ルーキーで唯一ですね。年上のくせに。
迷ったのですが、やっぱり死の森でのあの大蛇丸との遭遇の恐ろしさや予選の試合は作中屈指の名シーンですし、ぜひぜひ原作を読んでくださいということになりました。ばっさりカットです。カタナ突っ込むとどうなったでしょうね……オリキャラの木ノ葉下忍を登場させるかカブトの班に入ったか。オリキャラ班だと死の森で敗退させたかもしれません。サバイバル生活って信頼関係がないと厳しいと思いますし。カブトと同じ班だったらさぞかしサポートしてくれていたことでしょう。カブトに上手くコントロールされて、大蛇丸遭遇後の7班と合流とかする感じですかね。中忍試験に出てたとしても大蛇丸はカタナに全く興味ありません。あ、川上家かってくらい。サスケとの接触にせいぜい使うくらいでしょう。
【木ノ葉崩しについて】
わりと働きました。
まず結界の外にいる暗部の方々、原作だとただ結界内を見守ってるだけだな……と思い。結界が破れたあとも鬼童丸の糸に捕まって大蛇丸一味を逃しちゃいますし。「この結界は内側からじゃないと崩せんな…」とえらく簡単に諦めてるんですよね、そもそも。いえ、話の展開の都合上仕方ないのだろうとはわかってはいるのですが。なのでまず結界を壊そう、と思ってこんな感じに。絶対に壊れない結界なんて存在しないんや……たぶん。あとは穢土転生も見させたかったですし、かの有名な水の無い所で〜を書きたかったのもあります。満足です。
しかしわりと7班と別行動するなあ、カタナ。まあ、仕方ないのでしょうか……幻術とか逆口寄せの術は書き方にかなり迷いました。
木ノ葉の暗部ってカッコイイのにやられ役が多くて……活躍してほしくて猿飛一族の暗部の人が生えてきました。半ばオリキャラと化しています。猿飛一族にしたのは戦争の時いっぱいいたな、というのとなぜか穢土転生について知ってたからです。木ノ葉丸の父母にしようか、とも考えたんですが生死不明のためボツになりました。でもたぶんお亡くなりになってるんでしょうか……?わからないので触れないでいこうと思います、はい。
【展開上変えた部分。原作台詞を入れたかったもののカタナ登場タイミング的にカットでした】
結界内に入れないのが、もどかしい。
「……くっ……」
「この結界は内側からじゃないと崩せんな……」
その通りだ。今度からこういう場合は結界に詳しい奴をメンバーにいれることを進言しよう。三代目に加勢できないのが本当に口惜しい。せめて──
「火影様があいつら4人のどいつかさえやってくれれば加勢できるんだが……」
完全に三代目任せだ。ちくしょうめ。