木ノ葉のお札屋さん 作:乙欄
変身して強くなるならその前に倒そう、という。ごめんなさいウラシキ……アニメではもうちょい強いです、はい。
「本当に申し訳ないです、復元できないばかりか紙を駄目にしてしまって……」
「ううん、いいの。やるだけやってくれたんでしょ? なら仕方ないわよ」
うぐっ、罪悪感が……ごめんなさいサクラちゃん。わたしも自身の突拍子もない推測に戸惑いが大きくて、正直どうしていいのかわからないのです……。
時空間忍術、というものがあります。巻物に物を封入したり、空間移動ができたりするものですね。口寄せの術もこの一種です。シロマリみたいに自身の臓器だけを転移させることもできたり、とにかく不思議な術ではあるのですが……空間移動ができるなら。時空移動もできるのでは、と思うのでして。
過去の世界への、時空移動。あの旅芸人の師弟がそれを行っているのだとして。黒髪の青年の方はサスケ君の未来の姿で、金髪碧眼の少年がナルト君の……親戚とかだったりして。
たぶんあの紙に書かれていることの中でサクラちゃんが1番気になるのは、サスケ君が誰と結婚してるのか、ということになるでしょう。まあ、あの『サラダ』という子が養子の可能性もあると思いますし、そこは何とも言えないのですけれども。ともかく、奥さんがサクラちゃんであるにしろないにしろ。知っちゃうのはまずい気がして……いえ、わたしもとっても気になりますし、サクラちゃんが気になる気持ちもわかります。でも、ヤキモキするよりは黙っていた方がいいのかなあ、だとか。悶々と考えてしまうのです。
あと間違ってたら恥ずかしいですけど……この推測が合っていたら、サクラちゃんにとはいえ他の人に言っていいものか、という葛藤もありまして。とりあえず黙る、隠す、ということにしているわけなのです。うぅ、非常に申し訳ないのですが……。
旅芸人さんたちに会ってみるのが1番はやいんでしょうけど、こうして会いたいと思うと掴まらないんですよね……用がない時は普通に会えましたのに。空いている時間に里を歩き回っているのですが、なかなかおらず。あんまり大っぴらに探して怪しまれるわけにも、他の人に事情を説明するわけにもいきませんしで困っているのです、はい。
「それに、あの紙のことは一応問い詰めてみたの」
「問い詰めたって……旅芸人さんを、ですか?」
「ううん、ナルトに似てるヤツの方しかいなかったからそっちだけ。サスケくんのことを知らないとは言ってたけど、怪しくて……だから、今度は旅芸人さんの方にも聞こうと思うの」
そ、そうなのですか……。と言いますか、サクラちゃんは旅芸人さんの居場所がわかるのでしょうか。
聞いてみると、旅芸人の少年の方はナルト君と修業しているらしく、サクラちゃんは森で会ったとのことです。道理で町をいくら見てもいないわけです……。だって旅芸人というなら、どこか人のいるところで芸をしていると思うじゃあないですか。まさか忍術修業をしているとは。はじめっからナルト君に聞けばはやかったのですね。灯台下暗しです。
ならばその修業場へ行こう、とするわたしにサクラちゃんも「今度は旅芸人さんもいるかもしれないから」と言って、一緒に向かうことになりました。
森の中を歩いていると自分の家の森を思い出しました。森、というよりはチャクラ樹が繁っている場所ですけれども……そういえば見回り当番がそろそろだったような気がします。
清廉な雰囲気の森は静寂に包まれて、と言いたいところなのですが。あいにくと修業中だからでしょう。戦闘音が響いていました。
「やってるわね……」
「ええ。頑張ってますね」
ナルト君の螺旋丸は高威力。うるさくなるのも当然、と思っていたのですが…………近づいていくと、どうにも様子がおかしいように感じました。修業、というには殺気に満ちていて。言い争う声も聞こえてきます。
サクラちゃんも同じことを考えたのでしょう。わたしたちは音を立てないようにしながらも急ぎました。
木々の隙間から見る、その光景は────
「どういうこと?」
「わかりません……」
自来也様、ナルト君、旅芸人の師弟が誰かと戦っている、というものでした。
「手間をかけさせてくれますねェ……」
服も髪も、肌も全体的に白っぽい男性。パッと見、少し……いえ、まさか。違いますよね。
まだ若く見えるのですが、かなりの手練れらしくあの自来也様ですら押されています。おそらくは彼が敵なのでしょう。これが、ものすごく実戦に近い修業とかでない限り。
……うーん、状況がさっぱりわかりません。様子を見ましょう。
「ボルト! ナルトを連れて逃げろ!!」
「んなことできるかよ!」
「オレたちが来たのはナルトを守るためだ。それを忘れるな……!」
ナルト、という聞き慣れた呼び方。そして『ボルト』という名前は手紙にもありました……これは、やはり……。いえ、とりあえず今は彼らがナルト君を守ろうとしていて、あの白い青年がナルト君を狙っているということが重要です!
「行けェ!」
そう言って旅芸人さんが刀を投げます。
ナルト君たちはというと、自来也様が口寄せした蛙によって一旦退くようでした。ナルト君とボルト君?は蛙の舌に巻かれて連れて行かれます。自来也様にお任せすればとりあえずは安全でしょう。
「放しなさい!」
一人残った旅芸人さんは白い青年にタックルして、崖の方へと一緒に落ちようとしていて────
「サクラちゃん! 下の川に行きましょう!!」
幸いにして崖から落下した旅芸人さんはすぐに見つかりました。目を閉じていて、どうやら気絶している様子です。周囲にあの白い青年は……よし、とりあえずはいませんね。
「ね、カタナ。この人、一体何者だと思う?」
「…………確証はありませんが、少なくともナルト君の味方なのは間違いないようです」
「……そうね」
サクラちゃんと2人で持ち上げますが……かなり、重いです。白君に再不斬を持ち上げた時のコツを聞いておけばよかったです。
一応追跡されないよう、足跡を消したりはしていますが……人を運びながらなので完璧に、にはできません。相手が追跡の手段を持っていないことを祈りましょう。
「重っ……」
「ですね……あ、あの辺りがいいんじゃないでしょうか」
白い青年に見つからないようにと、草や木で視線が遮られている場所まで旅芸人さんを運びます。そっと地面に寝かしますが、やはりまだ目を覚ます様子はないですね。
サクラちゃんは医療忍術を使って治療してくれながらも疑問が隠せないようでした。
「何がどうなってるのよ。あの敵は何者なの?」
「……わかりません」
白い青年については本当に、ナルト君を狙っているらしいこと以外何もわかりません。その目的すら……いえ、九尾、ですかね。だとすると彼は暁のメンバー? でも暁は
考えていると、こちらへ語りかける声が聞こえてきました。
「聞こえていますかァ? どこの誰かは知りませんが危ない真似はやめた方がいい」
これは。白い青年の声です。
サクラちゃんと顔を見合わせます。声の調子からして、たぶんわりと近くにいますね。
治療中のサクラちゃんに「様子を見てくる」と手で合図して、わたしはコソコソと声の方へと近づきました。
「お互いに無駄な手間は省こうじゃありませんか。その男を差し出せばアナタの命だけは助けてあげましょう」
草の中に隠れながら少しばかり移動すると、白い青年の姿はあっさりと見つけられました。木の上に立って……いえ、浮いています。何の忍術なのでしょう。
ともかく、辺りを見渡しているのでわたしたちがどこにいるかはわかっていないようです。これが演技などでなければ、ですが。
それにしても……この台詞、嘘くさすぎるでしょう。例え旅芸人さんを差し出そうとこちらを攻撃してくる気配がプンプンします。命だけは、というところからもわたしたちに害意があるのは明白です。
「縁もゆかりも無い男を助けるためにアナタが命を落とす必要はないでしょう?」
……
…………おあいにくさまですけど、縁もゆかりもあると思うのですよ。たぶん、ですけれども。
そうでなくともこの白い青年、怪しすぎますし。暁の関係者である疑惑がある以上、どのみち戦わなくてはいけない相手です。
「やれやれ。ワタシの目で捜すことは簡単ですが、余計な力は使いたくないですねェ……」
その言葉にわたしは疑問を抱きました。先ほどはよく見えませんでしたが……その口振りからしても、おそらくあの白い青年の目は
まあ使われても困るのですけれども。と言いますか、だとすると彼は日向の者? いえ、
とりあえず、2人の居場所がわかってしまう前に1人で攻撃をしかけるべきでしょうか。
相手は……自来也様ですら手こずる敵なのですが。まあ、やれるだけやるほかありませんよね。
そう、思い。手裏剣を投げようとした瞬間。
わたしの手が動くよりも先に、ボルト君?が白い青年へと襲いかかりました。
「しつこいガキですねェ」
ナルト君も起爆札を括りつけたクナイを投げながら登場していました。おそらく自来也様も控えているのでしょう。
──ここは、ひとまず戻りましょう。
「どうですか?」
「まだかかりそう……!」
サクラちゃんは一生懸命手を当てて頑張ってくれていますが、旅芸人さんの治療はまだまだ時間が必要なようでした。
わたしは四方に4枚のお札を貼り付けました。パン、と手を叩くと簡易的な結界が組み上がります。とりあえずこれで一撃くらいは耐えられるでしょう。
あとは────やはり、わたしよりも自来也様と共に戦い慣れている方にご登場を願った方がいいですよね。あまりお呼び立てするのも申し訳ないですが、ナルト君の……九尾の危機は、木ノ葉の危機です。
「口寄せの術!」
なかなかのチャクラが減っていくのがわかります。うぅ、わかってはいましたが忍猫さんたちとは段違いの消費です。
時空間忍術で消費するチャクラは、基本的に呼び出すものの量や大きさ。そして距離によって変わってきます。例えばナルト君のガマ親分さんの口寄せは、ガマ親分さんが単純にすっごく大きいこと。そしてお住まいのところが蝦蟇の秘境である妙木山、という木ノ葉から歩いてひと月ほどの場所なのでとっても遠く……それで、かなり難しいのです。さらには格、存在力のようなものもあって、格が高すぎると口寄せに時間がかかったりもしますね。
わたしのお呼びした方も大きさは人と同じくらいのサイズですが、同じく秘境、仙猿のいる花果山に住まわれていて────
「川上、何用だ」
「……申し訳ありません、猿魔様。至急、お力添えいただかなければならない事態でして」
ナルト君が狙われていて自来也様が交戦中で、というわたしの手短な説明に猿魔様──ヒルゼン様と口寄せ契約をされていて、恐れ多くもわたしも契約していただいた猿猴王様です──は重々しく頷き、すぐに戦闘音のする方へと駆けていってくださいました。
猿魔様はヒルゼン様とともに戦場を駆け抜けた歴戦の強者です。ナルト君を守る一助になってくださることでしょう。
「わたしは増援と医療班をお呼びしてきます! 旅芸人さんのことをお願いします、サクラちゃん」
「うん、気をつけて……!」
◆
──厄介な相手だのォ。
自来也は己の弟子、ナルト達と戦っている白い青年……ウラシキの姿を見やりながら。心の中でそう、嘆息した。
時は少し遡る。
自来也がいつも通り銭湯の覗きを決行し、逃走した先で出会った(覗きの罪を擦り付けた)黒髪で左目を隠した青年と金髪碧眼の少年。旅芸人と自らを称した2人は……それからしばしの時を共に過ごすにつれ、自来也はその正体をおおよそ察していた。
青年は、うちはサスケの未来の姿。そして少年はナルトの……息子。
確実な証拠があるわけではない。だが、その態度。彼らはなぜかナルトに対してひどく親しげに接していた。自来也の、軽薄な態度に反してよく回る頭脳はこの2人がナルトと以前からの知り合い、それも親しい関係であろうことを見抜いていた。ナルトの方は、そうは思っていないにも関わらず。
さらに少年……ボルトの方は螺旋丸を使う上に、ナルトとチャクラ性質があまりに似ている。自身の弟子・波風ミナトの考案した忍術である螺旋丸は、印を必要としない術であるためコピーは難しい。そして、習得難易度はかなり高い。カカシが螺旋丸を習得したのも写輪眼によってでなく、単にミナトが何度も使っているのを見て真似てのことだ。しかも習得した後、螺旋丸に性質変化を加えられなかったからという理由で千鳥という新術まで開発している。自来也の孫弟子にあたるカカシはやはり天才なのである。しかし彼と自来也以外にミナトが螺旋丸を教えたことはないし、自来也もナルトのほかには教えた記憶はない。この少年がどこかで螺旋丸が使われているのを見て真似た、というよりは未来の木ノ葉で螺旋丸を教わったと考える方がまだ自然に思えた。
両親を失っているナルトとチャクラ性質が似ている、つまり血縁者であるというのも非常に不自然だ。彼の父方の血縁者である波風家の人間はもういないし、母方のうずまき一族──千手一族の遠縁であり、火の国の同盟国の渦の国(今は亡国)に住んでいた──は散り散りになってしまっている。自来也が昔、雨隠れの里で育てていた長門などはその血を引いているのか真っ赤な髪をしていたが、記憶の限りでは少なくとも彼のチャクラ性質はここまでナルトと似通ってなんかいなかった。やはり、ナルトの血縁者……その息子と考えるのが1番しっくりくる。なにせチャクラだけでなく、そのまっすぐなよい目などなども本当によく似ているのだ。
そして青年。うちは一族っぽい外見で、使う刀は大蛇丸の収集している草薙の剣の一振り。なぜかナルトに非常に親身な彼に自来也は「ところでお主……うちはサスケか?」とそれはもうド直球に聞いて探りを入れた。その時の沈黙、困った表情。ほぼ確実に うちはサスケだろうなと自来也は確信した。
何よりずっとナルトとサスケを見守ってきた己の師、ヒルゼンは彼らを一目見るなり自来也と同じ結論に達していたのだ。
故に。自来也はこの2人、うちはサスケ(仮)とうずまきボルト(仮)を信用している。未来から来てナルトを守ろうとするその気持ちを。
されど自来也は彼らの事情、すなわち未来のことを詮索する気は全くない。
──小説の結末は知らんほうが、楽しみが増すというもんだからな。
ウラシキは釣竿を使って釣りのように人のチャクラを奪うことができ、九尾……つまりナルトのチャクラを抜き取るためにここに来た。そのチャクラを抜き取る術は自来也の封印術で防げていたのだが、ナルトの封印術はミナトによる特別製であり、しかも九尾化したときはチャクラを多少とはいえ抜き取れてしまっていた。故に過信はできないこと。
さらにウラシキは時空間忍術の類いで空間を移動することができる。ただし、その術を使えばサスケ(仮)はそれを感知することができること。
他にも術はあるだろうが、それはサスケ(仮)達にもわからない。つまり敵の強さは未知数であること。
サスケ(仮)はウラシキとの以前の戦闘で抜き取られた分のチャクラも回復できておらず、十分に戦える状態ではないこと。
とりあえずそれらがわかっていれば十分である。
そして自来也は辛くも撃退したウラシキの再度の襲来の対策としてナルトとボルトに修業をつけていたら──予想通りと言うべきか。ウラシキより2度目の襲撃を受けていた。
サスケ(仮)がウラシキを連れて崖に飛び込んでくれたおかげで、自来也はナルト達を連れて逃げることができた。だがボルトの仲間を助けたいという訴え、そしてウラシキの使う術を見抜く作戦があるという主張により3人は再びウラシキの前に戻っていた。
ボルト、ナルト、自来也の猛攻をウラシキは難なく躱していく。
途中から猿猴王・猿魔が現れ攻撃に加わるも、やはりこれも当たらない。
やがて。ボルトがウラシキの服につけた血が明らかに早く乾くのを確認すると、自来也達はまた一旦退いた。
ウラシキから離れ、話し合った結果……彼らは1つの結論に至った。ウラシキは他の人々より長い時間が経過していた、すなわちヤツは未来を見てから自身の時間を巻き戻せる能力を持つ、という。
その推測は彼らを見つけ出し攻撃してきたウラシキによって肯定された。
何十回でも同じ瞬間を繰り返し、最適な一手を選べる。その言葉を聞いて、自来也が考えたのは……時間を戻せるのは数秒程度だろうということ。それ以上戻せる能力を持っているならばとっくのとうに自分達はやられている、と。
ならば。自来也は1つウラシキを倒す手段を講じた。
──忍法・蝦蟇口縛り
妙木山・岩宿の大蝦蟇の食道を口寄せし、その腹の中へと入る術が発動される。
数秒しか時間を戻せないのならばこの術の効果範囲からは逃げられない。大蝦蟇の食道はかなり広いのだ。
そしてこの腹の中の空気は無色無臭の酸性の毒で満たされている。短時間なら我慢できるが、10分もいれば毒の効果で全身が痺れ始めるだろう。
ウラシキがそれに気づかずに、こちらの攻撃を避けるべく同じ時間を何度も繰り返せば、その分何倍も多く毒の影響が蓄積するというわけだ。
自来也は賭けた。ウラシキが毒を喰らう方へと。
「────ぐはぁっ! ……妙だ……クッ、何事です……?」
そして。その賭けに勝った。
苦しみ座り込むウラシキを見て、ナルトとボルトは攻撃に使っていた多重影分身を解除する。次に、掌にチャクラを集中させ始めた。
「やるぞ!」
「オウ!」
この2人が自来也に課せられていたのは互いのチャクラを意識的に同調させる修業。相手のチャクラを感知し、互いに流れと力を合わせてその性質を変化させるということなのだが、これをできる者は上忍でもそういないというほどで、かなり難しい。彼らは螺旋丸の回転と力を同時に合わせる練習を行っていたものの、今まではてんで成功しなかった。
だが。なぜか。今この瞬間ならできると、息を合わせられると、そんな気がしていた。互いに信じていた。
──螺旋丸!!
ナルトとボルトは見事その修業の成果を発揮し……彼らのチャクラを同調させた螺旋丸・ナルトストリームをウラシキに叩きつけた。
壁まで吹き飛び、床に仰向けになって倒れたウラシキを見て自来也は口寄せを解除する。
徐々に周りの景色が森の中へと戻る中、猿魔は油断することなく追撃を加えた。
────金剛牢壁
猿魔が変化した如意棒を分身させ、数多の如意棒を出現させてウラシキを取り囲む。幾重にも重なったそれは箱のように、格子のようになりその動きを封じた。
さらに自来也がウラシキの腹を勢いよく五指で突く。
──五行封印!
封印術にも長ける自来也によるその一撃は、チャクラを練れないという悪質な効果をウラシキへともたらしていた。
毒に
────天照!!
駆けつけたサスケの眼が、一瞬。赤く輝いていた。それを見逃さなかった自来也は確証を得て、されどそっと黙っていた。
「サル、以下の、存在のくせに……この、ワタシを……っっっ!」
五行思想において火は金を溶かす。自身を拘束する如意棒と共にその手を、足を、頭を、全身を燃やされるウラシキは。甲高い悲鳴をあげ……そして。
「終わった……?」
……灰すらも残さず、燃え尽きた。
「ああ、完全に消え去った。もう心配はいらないだろう」
じっとウラシキの居た場所を見つめながらサスケが言う。
その頼もしい姿に、ボルトはふぅと安堵の息を吐いた。そしてニカッと笑うナルトとコツンと軽く拳を合わせる。「やったな!」と子ども達はお互いの健闘を讃えあっていた。
そんな和やかな光景を見ながら、自来也はコキコキと首を鳴らす。
──一件落着、か。
脅威は、去った。サスケと、ボルトと、ナルトと、自来也と、猿魔の尽力によってウラシキは完膚無きまでに倒されたのだ。
もう問題は無いならばさっさと戻ろう。そう思い歩こうとする一同に、それはそれは元気な大声が割り込んできた。
「ダイナミック・エントリー!!」
自来也は吹っ飛んだ。なんだかひどく既視感のあるものだった。デジャヴである。
「……あれ?」
全身緑タイツの珍獣による憎たらしいほどに華麗に決まった飛び蹴りは、悲しいことに丁度ウラシキによって怪我を負った箇所にクリーンヒットした。率直に言ってかなり痛かった。
「なにしてるんだってばよ、ゲキマユ先生……」
わりとダメージを受けている師匠を見て、流石のナルトですら呆れた声を出す。
しかし珍獣、あるいは木ノ葉の気高き碧い猛獣ことマイト・ガイはその太い眉を落としながらも悪びれずに話した。
「いやぁ……ダイレクトにキメてすみません! 敵は白い髪のヤツって聞きまして……ハハ。慌てていたものでついつい……」
自来也はムスッとしていた。当然の怒りだった。至極真っ当な感情である。
だが……ガイの後から慌てて現れた少女を見ると、その怒りもすっかり収まった。というよりも、ここでガイを叱ると何も悪くない彼女の方が猛反省してしまいそうな勢いだった。
ペコペコして涙目になっている、己の可愛いひ孫弟子兼妹弟子へと自来也は慰めの声をかけた。
「大丈夫だ、カタナ。ワシらを助けようと思ってガイを連れて来てくれたのはわかっとる。ありがとな」
──流石に3度目があったらガイには説教しよう。
そう、決心しつつ。
特にひどい怪我を負った者もいない。仲良く帰途へ着こうとする皆を、猿魔はゆっくりと眺めていた。
ナルトが興奮しながら先ほどまでの戦いについて話すのを、カタナがニコニコと聞いている。その様子をボルトは面白そうに見つつも時々口を挟んでいた。
目を細めて見守るサスケは、話を振られては戸惑っている。そんな、平和な光景だった。
「これが……お前の望んだものか、猿飛」
ポツリ、と猿魔はつぶやく。
「甘い、というのも存外悪くはないらしい」
──よかったな、猿飛。
そう、ニヒルに笑った。
秘境、仙猿のいる花果山
猿猴王・猿魔
→四尾は水簾洞の美猿王であり仙猿の王らしいが、人柱力になっているため今の王は猿魔が代理になってるのかなとか考えている。ただ四尾誕生以前から蝦蟇がいたことを考えると仙猿も先にいた可能性も……。西遊記では花果山の中に水簾洞があるらしいので本作では両者を同一としている。
自来也が昔、雨隠れの里で育てていた長門などは
→以前の戦闘でウラシキの輪廻眼を見て自来也も彼を連想したものの、チャクラとか外見とか性格とかまったく違ったから流石に別人と判断。
猿魔が変化した如意棒を分身させ、数多の如意棒を出現させてウラシキを取り囲む。幾重にも重なったそれは箱のように、格子のようになりその動きを封じた。
→五行思想で金は木に強い。大筒木は木遁を使えることを考えるとわりとクリティカルな気がする。また、木生火で木は燃えて火を生むため、倒し方も天照で大丈夫な気がした。太極螺旋丸とかは……理屈がよくわからない……。
「ダイナミック・エントリー!!」
自来也は吹っ飛んだ。なんだかひどく既視感のあるものだった。デジャヴである。
→イタチvs自来也戦後。この時も自来也は忍法・蝦蟇口縛りを使用していた。なお、そこで会った際ガイはナルトに緑色の全身タイツをあげてた。