木ノ葉のお札屋さん 作:乙欄
────ざあざあと、雨が降っていた。
三代目火影・猿飛ヒルゼンの葬儀には、参列できる者はみな参列し。しかしその人数の多さに反して、実にしめやかに行われた。
今ばかりは俺も……い班の隊長という肩書も、暗部の仮面も外して。1人の参列者として、親族の1人として。ただ、立っていた。
雨の中でも忍は基本的に傘はささない。目立つうえに、邪魔になるからだ。だが今回は。しっかりと見届けたい、その想いが強いからこそだろう。
忍に涙は禁物。俺達の涙は代わりに天が流してくれている。ほとんどの者はもう、病院で……伏す三代目と別れを告げていることもあって、子どもたちの中にも泣き出す者はいなかった。孫である木ノ葉丸もキュッと唇を噛み締めてはいるものの、立派に涙を堪えている様子だ。
静かに黙祷を捧げる。偉大なる、火影の最期に。
──木ノ葉舞うところに火は燃ゆる。火の影は里を照らし。また木ノ葉は芽吹く、か。
火の意志。そんな高尚なものを、たぶん俺は持ち合わしちゃあいない。猿飛の……忍の親から生まれ、忍として育てられたから忍になった。任務をするのだって命令だからであり、金を手に入れる、生活していくためだ。
一生懸命やった任務が実は囮であったり、逆に自分が部下を囮として使ったことだってある。胸くそ悪い任務だってあった。死にかけた経験だって両手じゃ数え切れないほどある。
それでも俺は忍を続けるだろう。俺はこれ以外の生き方を知らないし、知る必要もないと思っている。それに……生まれ育った里だ。木ノ葉のことは別に、嫌いではない。
忍はみな多忙。葬儀は簡素に、比較的短く終わった。
親族として片付けを手伝い……ある程度終わったところで帰ろうかとした時、雨の中ポツンと残る人影に気づいた。
小さい子どもと、少女。あれは……木ノ葉丸と、川上カタナか。
三代目の孫と、最後の弟子であるこの子ども達は……全てを、見届けたいのだろう。棺が運ばれるのをじっと見るその瞳は静かで、されど確実に炎を宿していた。
ああいう子達を、三代目は守りたかったのだろう。育てていたのだろう。そして、こうして火の意志が継がれていくのだろう。
声をかけようかと迷う俺よりも先に、動いた人物がいた。はたけカカシだ。葬儀には遅刻してきたくせにこういう時は動きがはやい。
「風邪ひいちゃうよ」
そう言って上着をかけてやっているカカシに俺は子ども達を任せることにした。奴の弟子と、弟子を慕う子どもだ。上手くやってくれるだろう。
──それにしても、思ったよりも元気そうだな。
カカシは元暗部。ろ班の隊長であったため、同じ隊長として交流があった。おかげで奴のことにはそこそこ詳しい。
カカシの父、はたけサクモは「木ノ葉の白い牙」と恐れられた凄腕の忍だ。当時は五代目達「伝説の三忍」の名すら彼の前ではかすむものだったらしい。
だが……極秘任務で部隊を率い敵地に潜入した際、仲間の命と任務遂行の二択を迫られ。隊長であった彼は仲間の命を選んで任務を中断したという。
しかし、そんな彼を。里も、助けた仲間すらも非難し中傷し……そして確かカカシが7歳の頃、彼は心身を病み自刃した。
もちろん今は「白い牙」の汚名は雪がれている。だが、父の死が奴に暗い影を落としていたのは間違いない。
そして写輪眼。うちは一族ではないカカシがそれを片眼だけとはいえ持つ理由は単純だ。譲り受けたのだ、戦死した仲間から。
カカシは四代目様の下で うちはオビトと のはらリンと
のはら の死後、就任間もない四代目様から暗部に任命され、冷血カカシとも呼ばれるようになり。九尾襲来で四代目様が亡くなってからしばらくして……三代目から暗部を辞め上忍師となるよう言われ、何度か下忍をアカデミー送りにしてからこうして うちはサスケ、うずまきナルト、春野サクラ、川上カタナを受け持ち7班の担当上忍になったわけだが。
うちはサスケが里抜けし、大蛇丸の下へ走り。大蛇丸については自来也様が追っているためか里から追い忍が出ることはないものの、師としてさぞ辛かろう。
しかしこうして改めて考えると壮絶なものだ。カカシが外で堂々とイチャイチャシリーズを読み歩いているのもストレスからだろうか。あのシリーズのファンの俺としては勝手に広告塔になってくれて嬉しい反面、青少年の教育に悪いと言われては何も言い返せない複雑な気持ちである。というか、隠し本棚に入れて家でコソコソ読んでいる身からすれば一種の尊敬の念すら感じる。本人は知らぬことだろうが里の男衆の一部からカカシは勇者と呼ばれ称えられていることだし。
──いくら独り身でもあれは無理だ。ある意味Sランク任務より難しい。
そんなことを考えて突っ立っていたからか。可愛い彼女持ちの憎たらしい男がのっそりと現れ、パイプをくゆらせながら声をかけてきた。
「おい、お前さん今日は暇なのか? なら木ノ葉丸を見てて欲しいって言ってたぜ」
猿飛アスマ。三代目の息子だが、親子仲は正直なところ非常に悪い。そのために木ノ葉を離れ「守護忍十二士」という火の国の大名を守護する精鋭の組織に入っていたこともあるほどだ。
とはいえ、やはり今日ばかりは幾分かしんみりとした様子に見える。
「……そこは叔父ちゃんが可愛い甥っ子を見てやればいいだろう」
「残念。生憎と、この後は予定があるんでな」
──デートか。
10班の担当上忍であるアスマは、あまり他には知られていないことだが8班の担当上忍である夕日紅と交際中だ。彼女と同じ仕事に就けるとは羨ましい。爆発しろ。暗部なんてのは出会いもなければ常時仮面をつけているせいで顔すらわからないんだ。
「久しぶりの休暇を……と言いたいところだが、女連中にくどくど言われるのがオチか。わかった、引き受ける」
木ノ葉丸は三代目の孫として猿飛一族全体からそれはもう可愛がられている。女性陣なんかは特にだ。断って木ノ葉丸に何かあれば冗談抜きで殺される。
それはまあいいとして、気になっていたのだが──
「お前、煙草はやめたのか?」
アスマは愛煙家だ。しかしコイツが吸うのは煙草。であるにも関わらず、今日はパイプを咥えている。
同じく愛煙家でありながらパイプを好んでいたのは……三代目だ。
「……ああ、しばらくはやめようかと思ってる。コイツで吸い納めってやつだ」
ふー、と息を吐きながらアスマが言う。相変わらず煙臭い奴だ。だが……この煙の匂いは、やはり懐かしい。
三代目は両腕が使えなくなっていたこともあり、木ノ葉崩し以後にその愛用のパイプを吸うことは無かった。どうやらアスマはわざわざ三代目のそれを持ち出したらしい。
「アイツは最後、これを楽しめずに逝った。だから見せつけてやろうと思ってな……ざまーみろ、ってわけだ」
「…………そうか」
そう話すアスマの顔は雨粒で濡れていた。つつつ、と一筋雫が流れる。
慣れていないからだろう。パイプを吸い、吐くその動作はひどく緩慢だ。
──煙が、目に染みるな。
俺達はそのまま、しばらく無言でいた。
そして。雨がやむ。
雲の隙間から光が差し────プカプカと浮かぶ煙が空へと昇っていった。
アスマと分かれた俺は、木ノ葉丸を追っていたんだが──どういうわけだかそこはかなり異様な状況になっていた。
今日、このまま うずまきナルトは里を発ち2、3年ほど自来也様と旅に出るのだそうだから、その見送りに来たことはわかる。だがしかし……
木ノ葉丸と話すうずまきナルト……を陰から見守る日向ヒナタ……を陰から見守る川上カタナ……達を陰から見守るカカシ、を見る俺。なんという大渋滞だ。
うずまきと一緒に歩いている自来也様がこいつら何やってるんだ、という目で俺達を見ている気がする。……自来也様、それは俺にもさっぱりです。
流石にまずいと思ったのか川上が日向へと話しかけにいった。いいぞ、頑張れ! 何をかは俺にもわからんが。
「ヒナタちゃんもナルト君の見送りですよね? 行きましょうよ」
「あ、あの……いいの、私は。会わす顔がないから……」
「?」
「お見舞いに行った時に……また、倒れちゃって。だから恥ずかしくて」
赤面してて俯く日向のその姿はまさしく恋する乙女そのものだった。まだ若いのに随分と青春しているようだ。俺は世の不条理を呪った。
「なるほど……でも、これからしばらく会えなくなっちゃうんですよ。本当にいいんですか? あとで後悔したりは……」
「…………」
「…………」
少女達は無言で向き合う。そのあまりに真剣な様子に周りの通行人から物珍しそうに見られているが、当人達は気づいていないようだ。
口火を切ったのは日向だった。
「……うん。そう、だよね……私も、頑張らなくちゃ。ありがとうカタナさん。私、行きます……!」
死地に向かうような瞳で語る少女に、川上はコクリと頷いていた。日向よ、うずまきは目と鼻の先だ。別に道中に何ら危険はない。
物陰から意を決して飛び出した日向がうずまきの下へと駆け寄っていく。
「ナルトくん……!」
「あれ、ヒナタ。どうかしたのか?」
不思議がる うずまきの視線を受けて日向は軽く俯く。もじもじと恥じらう仕草。その頬はやはり赤くなっている。
一気にラブコメ空間が形成されている。クッ……独り身の俺にはどんな忍術よりも辛い。
日向はゆっくりと深呼吸してから前を向き、うずまきと目を合わせた。
「えっと、えっと……私も……頑張るから。ナルトくんも元気で、身体には気をつけてね」
「サンキュー! お前やっぱいい奴だな、ヒナタ」
「ナルトくん……」
その笑顔は少女にとってはかなりの攻撃力があったらしい。ボン、と顔から火が出そうなほど真っ赤になった日向がよろけるのを、川上が慌てて受け止める。
どうした?といった様子でうずまきはそんな日向の顔を覗き込み。トドメを刺された日向は完全に意識を失ったようだ。
「兄ちゃんも隅には置けないなァ……」
「? もちろんオレってばいつでもスポットライトど真ん中のド主役だってばよ!」
違う、そうじゃない。
うずまき。お前の恋愛偏差値は木ノ葉丸以下……いや、未満だ。
「ナルトの兄ちゃん! 帰ってきたらまた勝負するんだぞコレ! 約束だかんな」
「オウってばよ!」
長いマフラーをなびかせコツンと拳を合わせる木ノ葉丸の姿は、表情は。「ジジイィ! 勝負だァコレ!!」などと叫んで三代目に奇襲ばかり仕掛けていた頃と似ているようで、違っていた。
その成長に柄でもなく目頭が熱くなる。
しかし────
ウンウンと満足気に頷く
──忍とストーカー。それは、紙一重。
そんな、
カカシは元暗部。ろ班の隊長であったため、同じ隊長として交流があった。
→ろ班隊長というのはカカシ暗部編でのアニオリ設定。木ノ葉崩しのろ班と同じなのかは不明なものの、本作では同じということにした。でもカカシとイタチとテンゾウがいた班にしては木ノ葉崩しで全然活躍してなかった……まあ人の入れ代わりとか激しいんだろうなと。
卑劣様、好きです。
間違えました。二代目の互乗起爆札については、彼から委託されて川上家で作ってるんだぜ☆と勝手に生産者になっております。というかその発想からカタナの家の設定が生まれました。それで火影様御用達ということに。初代様は……ご自身が強すぎてそんな小手先のお札なんて使わないけど買ってくれてはいたのでしょう。お優しいですし。四代目は……火影代々の付き合いがあるのでまあ買ってくれていたんじゃないでしょうか。在位が短くてあんま川上家と仲良くなってはなさそうです。逆に三代目と(カタナの)おじいちゃんはズブズブの関係です。長い付き合いですから。おじいちゃんは扉間様ラブ。卑劣様のためにせっせと起爆札を作っていたし、作り続けるのです。ダンゾウも地味に買ってくれてそうですよね。あの人も卑劣様ラブですし。おじいちゃんの影響があってカタナも卑劣様のことは尊敬しているので、もし卑劣なことを考えたりしていたらたぶんそのせいです。
互乗起爆札の仕組みについては……口寄せするお札とはなんぞや。封入・開封の術ですかね。口寄せの術とは術者のチャクラ量に比例して呼び寄せるものの量や大きさが増えると言われてますから、元々のチャクラ量の上限が無限になるわけではないエドテン体だと呼び出せる枚数は違っていて威力が人それぞれ違ったんでしょうか。それともチャクラが無限回復するエドテン体は起爆札のある限り何枚でも口寄せできたんでしょうか。わかりませんけどどちらにせよ発想も効率性もすごいと思います。エドテン体の無限回復するチャクラについては、本来は人間の身体の細胞一つ一つから取り出す「身体エネルギー」と、修行や経験による「精神エネルギー」でチャクラを練るけど、エドテン体はそれがバグってるんじゃないかなと。不死の身体で魂はなんか囚われ?状態ですし。この世界のチャクラの法則を利用したバグみたいなものだから、時々修正力と言いますか不具合も発生して、チャクラが無限回復できないときもあったのでしょう。時々エドテン体の術がチャクラのわりに弱く見えるのはそのせいだと思っています。
と、いうわけで穢土転生についての知識も川上家は有しております。想像としては火影邸に資料があって、1話でナルトも入れたガバガバ警備から大蛇丸も余裕で資料を盗み見れてエドテンの術式獲得。ただ、互乗起爆札については川上家にしか記載がなく、そこは厳重に保管されていて気付けなかったし見れなかった……一般宅に負ける火影の警備とは。まあヒルゼンは弟子のことを信用していたんでしょう。川上家でもエドテンについて火影邸にあったのと同じ記載内容があるのとか命令札の作り方はなんとか知ることができたからまあいいやと思って、わかった内容から推測も加えたり研究していってあのバージョン違い的なのを作ったんだろうなと。エドテンでエドテン体から解除する印は口伝だから存在すら知ることができなかったとかでしょうか。ただ、エドテンにそういうリスクがある可能性は大蛇丸の頭にもあったと思います。