木ノ葉のお札屋さん   作:乙欄

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奥付

「ねぇねぇ、ママ。これってなあに?」

 

 月光を溶かしたような銀色の髪をした少女は、綺麗な茶色の瞳を輝かせながら話しかけた。その手には開きかけの巻物が握られている。

 

 かなりの蔵書量を誇るこの家の、ぎっしりと詰まった本棚の間に無造作に置かれていたそれは、残念ながらまだ幼い少女が読むには難しい文字で書かれていた。

 

「あら、そんなところにありましたか……それはですね、パパの書いたお話ですよ」

 

「え、父上が? それは……ろくなものじゃあない気がする……僕、心配だなぁ」

 

 鳶のような色の髪を揺らしながら答えた女性に、同じく茶髪の少年は気弱そうに、それでいてふてぶてしく呟く。彼女と彼とは髪色は同じなものの、その瞳の色は違っていた。女性の瞳は少女と一緒で茶色。対して少年の瞳は黒々としている。

 

 クスクスと少年のあまりの言い様に笑いながらも、女性は嬉しそうに言葉を紡いだ。

 

「いえ、これはわたしのために書いてくれたものですし……すっごくちゃんとした大作ですよ。大丈夫ですとも」

 

「パパがママに? それは気になる!」

 

「うん、スズナに同意……僕も知りたい、かな」

 

 教えて教えてとせがむ子どもたちに、彼女はゆったりと微笑む。

 

 大まかにしか話せませんけれども、と言いつつ受け取った巻物を軽く読み直し。おもむろに目を閉じると、やわらかく歌うように話し始めた。

 

「むかーしむかし、とっても綺麗な女人がいました。月のように輝く白銀の髪は艶やかで長く──」

「ね、その髪ってわたしみたいな感じ?」

 

 しかし少女の質問によって話はかなり冒頭の部分で中断される。自身の髪を軽くつまみながら話す少女へと、彼女はにこにこと答えた。

 

「そうですね……ええ、ちょっと色合いが違いますけど、スズナたちの髪色に似ていますね」

 

「ふーん……母上、その人の名前は?」

 

「カグヤ様というお名前ですよ、カシュビ────では、続けますね。宇宙からやって来たカグヤ様は竹やぶへと光とともに降り立ちました」

 

「え、最初っからすごくかっ飛ばしてきてるんじゃないかなあ、その設定……宇宙って……僕、先行きが心配だよ」

 

「なーに言ってんの! 宇宙、いいじゃないのよ。スケールが大きくてワクワク感があるわ。でもママ、確かに宇宙よりも月とかの方がロマンチックかも」

 

 え、月ですか……ちょっと後の出来事との整合性が……とブツブツと呟いて悩んだあと、まあいいかという結論に至ったらしい。彼女は「ではカグヤ様は月から来たということで」と言って話を続けた。

 

「兵に見つけられ国の皇(おう)の前まで連れて行かれたカグヤ様は、間者ではないかと怪しまれつつも、その美貌で皇の側室の地位をゲットしました」

 

「展開がはやい!」

 

「そうだよ母上……身元を疑われてるならまずは牢屋行きでしょ……」

 

 子ども2人からツッコミを入れられしょんぼりとする母。その様子を見て慌てて彼らはフォローを入れた。

 

「え……ええと、あれだ、兵じゃなくて一般人が見つけたことにすればいいんだ……うん、竹を取りに来た人……戦闘能力も低いお爺さんが、竹やぶでカグヤ様に会ったことにしようよ」

 

「いいわね。じゃあ、竹が光り輝いてたから見つかったってことに……そう、竹の中からカグヤ様が現れたことにしましょう。変化の術よ!」

 

 子どもたちによって段々と話が変わっていくのを聞いた母は、それを修正すべきか少し迷って──でもこれはこれでいいやもしれないと考えた。子どもの豊かな想像力でこの話がハッピーエンドになるのなら、と。それに彼らが楽しそうに作るその物語を聞いてみたくもあった。そもそもカグヤが月から来たということにした時点で話は食い違ってきているのだし……実際、大筒木一族はどこにいて宇宙のどの辺りから来たのか不明のままであることも確かなのではあるが。

 

「わかりました、それではこうしましょう……月からやって来たカグヤ様は竹やぶに降り立ちました。しかしそこへ人が来てしまったので隠れようとして竹に変化します。ところがその竹は光ってしまっていたので竹取りのお爺さんに見つけられてしまいました。そしてお爺さんが身元保証人となり皇のところへと彼女を連れて行くと──」

「待ってママ。ただの竹取りのお爺さんがノーアポで皇のところへ行けるのは変だと思う」

 

「うん……しかも見覚えのない人物を連れてるわけだし……国の警備が心配だよ」

 

 妙なところでリアルさを求めてくる子どもたちである。ならどうすれば、と思う彼女に彼らはそのまま言葉を続けた。

 

「お爺さんが、カグヤ様を家まで連れて帰ったことにしよう……そして彼女の美しさの噂を聞いた皇が、都へと彼女を呼びつけるんだ……権力者の横暴ってやつだよ……」

 

「それなら、そう、お爺さんが見つけた時には赤ちゃんだったことにしましょうよ。それでお爺さんは庇護欲をそそられたの。あ、子どもを育てるなら老夫婦ってことにした方がいいわね」

 

「なるほど……じゃあ、そこも変化の術ってことか……彼女は竹に変化して……見破られたあとも赤ん坊に変化した、と」

 

「ええと、スズナ、カシュビ。でしたらカグヤ様が忍術でご自身の見た目を操作できる、とかの方がいいのでは……?」

 

 前の火影である綱手の医療忍術の腕では、それが可能だったと聞く。弟子であるシズネやサクラにはできないことを考えるとあれは千手一族由来の技であった可能性もあるが、それはともかくとして。今ごろ綱手様は何をしていらっしゃるのでしょうかと思いながら話す彼女に、子どもたちは「それだ!」と熱い口調で叫んだ。

 

「老夫婦を信頼できていないカグヤ様は……ずっとカグヤ様っていうのも変だよね……美しく高貴な人……うん、姫、かぐや姫でいこう……かぐや姫は忍術を使ってしばらく赤子の姿で過ごすも、彼らが真に善良な人々とわかったから元の姿へと戻るんだ」

 

「そして美しいその姿はたちまち噂になり、皇からの呼び出しが来るのね! よーし、ね、ママ、側室になったあとはどんな感じなの?」

 

「はい……側室になったカグヤさ、かぐや姫は毎晩夜空を眺めていました」

 

「月が、故郷が恋しいってわけね!」

 

 どちらかというと逆なんですよねとちょっと苦笑するも、まあこれはかぐや姫のお話だから、と彼女は話を進める。

 

「そして皇はそんなかぐや姫と一緒に夜空を見上げて……上着をかけてあげたり、何か望みのものはないかと声をかけたり。毎日会ううちに段々と2人の仲は深まっていきました」

 

「……かぐや姫の望みって?」

 

「ふふ、いい質問ですね、カシュビ。彼女が求めていたものは……争いのない平和、でした」

 

「へぇ、ならもう叶ってるじゃない! 木ノ葉はもちろん、世界だってもう平和だもの。ママたちのおかげで!!」

 

 そんな無邪気なスズナの言葉に、彼女はくしゃりとその頭を撫でた。ふんわりと髪を優しく触るその手付きに、スズナは気持ちよさそうに目を細める。

 

 カシュビも、と呼び彼女はもう片方の手で息子の頭も撫でていく。和やかな雰囲気の中、一瞬悲しげな色をその瞳に映しつつも、彼女はにっこりと笑みを深めて言った。

 

「そうですね……ありがとう、スズナ。でも、昔は戦争も多かったのです。すごく悲しいことに────さて、続きを話しましょうか。かぐや姫は皇の子を身籠りました」

 

「かぐや姫、勝ち組じゃん!」

 

「皇の……他の妻たちによる妨害工作が、心配……」

 

「はい……ええと、ですが、皇とかぐや姫の間にすれ違いが起きてしまい、かぐや姫は皇に命を狙われることになってしまうのです」

 

「あ、来たコレ正妻の仕業だっ! ドロドロの昼ドラだ!!」

 

 実際はどちらかというと国家間の争いなんですよね、と思いつつも……そこらへんを説明すると神樹とかの話までしなくてはいけなくなる可能性があるため、話そうにも話せないのである。よって彼女はスズナの言葉に曖昧に頷き一応肯定しておいた。

 

「しかし皇の軍勢は、かぐや姫によって倒され……そして、かぐや姫は女王となり、双子の子どもたちとその地を治めます」

 

「かぐや姫超強い! しかもわたしたちと一緒で双子だったんだ!」

 

「うん……かぐや姫、心配の必要、なかった……」

 

「でもお爺さんとか途中から忘れられてる! わたしが皇とか正妻とかだったら絶対かぐや姫に対する人質にするもの」

 

「卑劣だなぁ、スズナは……心優しい僕と違って」

 

「うっさい! 頭が回るって言いなさいよ」

 

 軽口の応酬をする2人をまあまあとなだめつつ、「では2人ならどんな話の展開にしますか?」と彼女は尋ねてみる。すると待ってました、と言わんばかりに2人は仲良く話し出した。

 

「かぐや姫は強すぎるから弱体化させよう……皇の軍勢戦ったのは……地上戦だと血なまぐさいし……月から来たかぐや姫を迎えに来た使者たち、とかにして……彼らが圧倒したため、戦いに死傷者とかは出なかったことにする……」

 

「うんうん、あと皇のことはいっそ振ったことにしちゃいましょう。側室ってなんか嫌だし、どうせコイツ裏切るんだし。それで最後にはお爺さんお婆さんもかぐや姫と一緒に月に帰って、みんな仲良く暮らすの!!」

 

「でも皇だけを振ったら、角が立つ心配が……うん、他にも、その前に振った男共がいたことにして……100人くらい、振ったことにすれば……」

 

「多っ。5人くらいでいいでしょ……なんか大臣とか、皇の従兄弟とか、そのあたりの貴公子たちにしてさ。ね、ママ、どうかな?」

 

「なるほどね」

 

 そう問われ、彼女が口を開くよりもはやく。横合いから新たな声が加わった。

 

 忍(しのび)の一家である。母子3人は自らの持つ武器へと手を伸ばし──そして、一同にため息をはいた。つまるところ、敵の侵入などではなくよく知る人物だったのだ。男はそのまま芝居がかった口調で話していく。

 

「話としてはまず……月からやって来たかぐや姫は竹やぶへ降り立ち、光り輝く竹に変化。しかしお爺さんに見つかったため忍術で赤ん坊の見た目になる。そしてこのお爺さんとお婆さんに引き取られ、彼らを信用したことで元の美しい女人の見た目に戻ると、彼女には求婚の嵐が! 5人の貴公子を振り、皇をも振った彼女の下には月からの使者たちがやって来て……皇と月の軍勢の戦いの末、月側が圧勝。かぐや姫はお爺さんお婆さんとともに月へと渡った、と。いいじゃないの」

 

 白い男だった。真っ白な装束には背に赤で『六代目火影』の文字があるだけ。髪も白に近い銀色であり、肌の色も白い。首に巻いた布も白く、口元を覆う黒いマスク、そして黒い双眼だけが色彩を持っているようにすら感じられる。

 

「うん……パパ、気配消して現れるのやめてよ。心臓に悪いから」

 

「不覚…………流石、父上……」

 

 ごめんごめん、とまったく悪びれない様子で彼はポンポンと子どもたちの頭を軽く撫でた。

 

「お帰りなさい、カカシさん……あの、いつから聞いてたんです?」

 

「ただいま。んー、それはカタナが『パパの書いたお話ですよ』って言ったあたりからかな」

 

「序盤も序盤じゃあないですかそれは!?」

 

 思わずツッコミを入れたカタナに、カカシはハハハ、と軽快に笑って返す。そして「だったら最初から会話に入ってくればいいものを……」とでも言いたげな母子へと、「だってカシュビに『ろくなものじゃあない』とか言われて悲しくなってね」と飄々と言い放った。絶対に嘘だ、ただ人が悪いだけだコイツ、と再び母子の意見が一致した。

 

「こ、コホン、兎も角です! わたしもいいと思いますよ、そのお話」

 

「やった! ありがと、ママ」

 

「感謝……でも父上には、謝罪する……僕たち、お話、だいぶ変えたから……ごめんなさい」

 

「そっか。ごめん、パパ。ついつい話を考えるのが楽しくなっちゃったの」

 

「いいよいいよ。ま……どのみち、それは未完の話だからね」

 

 その言葉にカタナは目を伏せた。木ノ葉は今のところ平和だ。六代目であるカカシも、その側近的な役割を果たしているシズネやシカマル、ヤマト、サイ、そしてカタナも、七代目を目指すナルトも、その右腕になろうとしているサスケも、医療の最前線で働くサクラも、他のみんな、里の皆の努力によって平和を実現できている。しかし世界は、宇宙の脅威は、と問われると不完全であると言わざるを得ない。つまり完全な平和はまだ実現できていない……プライベートでも仕事でもこの六代目火影の側にいる彼女はそのことをよく知っている。

 

 それでも、いずれは。六代目が七代目へと移り変わって……八代目、九代目と受け継がれていって、そうすれば。彼(・)女(・)が望んだ、争いのない平和が──────

 

 ポンポンとカタナの頭に大きな手が置かれる。大丈夫だよ、と温かく伝えてくるカカシの瞳を彼女はそっと見つめた。

 

「あー、イチャついてるー。ま、いいけど、とりあえずパパはその火影の服脱いだら?」

 

「うん……白すぎるし……暑そうで、心配になる」

 

「んー、別に着てるとそうでもないけどねェ」

 

 そうは言いつつも、カカシは少し嬉しそうに火影の装束を脱ぐ。そしてそのまま部屋へと仕舞いに行った。

 

 その様子を見ながら子どもたちはぽつぽつとまた話し始める。

 

「パパって本当に白いよね……たいていの人、パパのこと白い火影の人って認識してるよ」

 

「火影、なのに……白い……」

 

「うーん、綱手様はあの装束をほとんど着ていらっしゃいませんでしたし……ヒルゼン様は、確か赤い服を下に着ていらっしゃいましたからね。それで、でしょうか」

 

 カカシも下に黒い服を着ているものの、火影の装束をぴっちりと前で閉じているためまったく見えない。よって、白い。火影の赤い笠を被っても、それに付随する布が白いため余計に白くなるのだ。残念ながら赤はアクセント程度にしか映えない。

 

「ってか、カシュビも人のこと言えないでしょ! アンタ、暗部でもないのに外ではずっとお面してるせいで『お面の人』って言われてるからね。不審者感、パパとどっこいどっこいだから!!」

 

「いや、心配ない。僕も父上には、負ける」

 

「そこは心配しろし! つーか双子のくせしてお面着けないでよね。妹のわたしの顔までじろじろと見られちゃうのよ……わたしはママ似で、アンタはパパ似の顔だから意味ないのに」

 

「でも、僕……ほら、お面つけてないと……みんなが倒れちゃうから」

 

 カシュビの言葉はスズナにとっては残念なことに、事実である。彼の父譲りのイケメンフェイスの力によって周囲の女子をノックアウトする、あるいは彼に近づかないようにと牽制し合うキャットファイトが繰り広げられることが少なからずあった。

 

 よって別にカシュビが必要以上に自信過剰、というわけではないのだが。心配症で臆病な発言をするわりには自信家な彼のことをいつもスズナは何とも言えない気持ちで見ているのである。しかもこの兄、実力が伴っているだけになんとなく腹立たしいのだ。もちろん尊敬もしているし、心から嫌っているわけではないものの……それはそれ、これはこれである。

 

「だとしてもよ! ひょっとことか着けてると爆笑されるのよ……特に火遁を使ってる時とか。せめて普通の能面にでもしろや」

 

 ひょっとこは火吹男の面。故に、チャクラから変換した火を吹いて使う火遁には妙にマッチングしてしまうのである。

 

「だってひょっとこ……倉庫に、あって……なんか使い心地が良くて」

 

 その言葉にうっと心の中で呻(うめ)いたのはカタナ。何を隠そう、ひょっとこの面を入手して倉庫に放り込んだのは彼女である。別に欲しくてもらったわけではないが、それは言い訳にはならないだろうと彼女は感じていた。

 

「あー、それを入れたのわたしですね……ごめんなさい、スズナ」

 

「ううん、ママは悪くないから!」

 

「そうだよ……僕が、僕の顔が、周囲を惑わすのがいけないんだ……」

 

「カシュビ、お前いっぺん黙れや」

 

 ドスの利いた声で話すスズナに、カシュビはとりあえず怯えたフリをして黙り込む。その様子に少なからずカチンときたスズナであったが、母の前だからと抑える。スズナは母を困らせるのは嫌だし、怒らせるのはもっと嫌なのだ。

 

 ちょっと異様な雰囲気の中、部屋着に着替えたカカシが帰ってくる。今度は上下真っ黒の服。両極端としか言いようがないが、みな見慣れているためこちらへのツッコミは特にない。なお、火影服に関しては見慣れていてもやはり白すぎるのである。

 

「ん? どうかしたの、みんな」

 

 不思議そうにするカカシに、子どもたちは母親の方を見る。頼られたカタナは苦笑しつつ話しかけた。

 

「カシュビのお面の話ですよ」

 

「ああ、アレね。いや〜、おかげでオレも はたけ家の男は顔を隠せって家訓でもあるのか?ってよく言われるよ。別に父さんはそんなことなかったのにさ……」

 

 カカシの父、はたけサクモは息子と違ってマスクをすることもなく、孫と違って仮面を着けることもなく。普通に顔を出していた。カカシは会ったことはないもののその父、つまりカカシの祖父もそうであったらしい。たぶんさらにその先祖もそうだろう。よってカカシこそがイレギュラーであり、はたけ家の家訓とかそんなものはまったく存在しない。

 

「ま……個性ってことでいいんじゃないの? オレは何も言える立場じゃないしね」

 

「カカシさんはまあ、そうですよね……」

 

 マスクを外では絶対に外さない男、はたけカカシである。しかも暗部時代は狐面も着けてた。二重の意味で何も言えない男なのだ。

 

「わたしも個性だとは思いますけど……ともかく、カシュビはできたらお面を能面に変えてはいかがです? お面屋さんに確かあったはずですし」

 

「パパもママもカシュビに甘いよ」

 

 ぷっくりと頬を膨らませ口を尖らせるスズナに、両親はその頭を撫で頬を優しくつついた。満更でもなさそうにスズナが微笑む。

 

「ごめんね、スズナ……わかった……能面にする……ちょっと心配だけど」

 

「今度は何の心配よ」

 

「怖がられないかなぁって……ひょっとこは、面白いから……みんな僕に話しかけてくれたり、するけど……能面は……心配だなぁ」

 

「うぐっ……」

 

 まあ、確かに。この兄が、ひょっとこの面を着けるようになったことで、素顔よりもむしろ友人が増えていたことは事実である。特に男子。火影の息子でありかつ天才児の名をほしいままにするカシュビには変な面を着けたくらいの方が話しかけやすくなっているらしかった。

 

 そう言われてしまうと、それを気にしている自分の方が狭量に感じられてしまう。スズナの胸に罪悪感が芽生え始めた。

 

「でも、いいんだ……僕、友人よりも……スズナの方が大切、だから──」

「はいはいもうわかったわよ、ひょっとこ着けていいわよ、わたしが悪かったわよ!」

 

 わざとらしく顔を曇らせてしゃべるカシュビにスズナは負けた。負けてしまった。一見するとこの兄妹、気弱な兄と彼を振り回す気丈な妹という印象を持たれがちだが……実際のところは、強(したた)かな兄に心優しい妹が振り回されることが多い。

 

「でも能面も週一くらいで着けてみなさいよ、とりあえず」

 

「わかった……前向きに、検討する……」

 

「それ絶対やらないやつぅぅ!」

 

 仲の良い兄妹の様子をにこにこと温かく見守り、「まあまあ、では能面を購入しておきますね」となだめるカタナであったが。そういえば、と思い返したように話を切り出した。

 

「だいぶ話を戻しちゃいますけど……2人の作ったかぐや姫の物語、とても素晴らしかったですし本とかにしてみますか? 自来也様の伝手(つて)を頼ればいい感じにできると思いますよ」

 

「え? やった、めっちゃ嬉しい!」

 

「うん、僕も……売れ過ぎやしないか心配だけど、いいと思う」

 

 乗り気の様子の子どもたちに、じゃあ出版社に連絡しなくちゃと気合を入れるカタナ。対してカカシはのんびりと彼らに尋ねた。

 

「それで……スズナとカシュビは、その物語の最後をどんな感じで締めるの?」

 

「やだ、パパ。そんなの決まってるじゃない!」

 

「うん、心配ないね」

 

 2人は一瞬、顔を見合わせ。そしてにっこりと笑いながら、よどみなく宣言した。

 

「かぐや姫はとっても、とーっても幸せに暮らしましたとさ」

「めでたし、めでたし──でしょ」

 

 第2部 終わり




起爆札はある種、核兵器的なあれだと思います。大量に所有していることでお互いに威嚇しあうけれど、自分たちに使われると困るから使わないみたいな。小競り合いで個人としては使う忍びもいるけれど、組織的には使わないのが暗黙の了解なのです。きっと。報復合戦になりますから。で、小南はそういう理由で長年大量に保管されてきた、けれど使われることのない起爆札さんたちを盗んだり奪ったりして6000億枚を集めた、と考えています……どうやって数えたんだろう6000億枚。あの里からは何枚奪って〜とか計算したんですかね。

木ノ葉の保管しているやつは自来也への恩義からか単に警戒していたのか取られることがなかったので木ノ葉は気づいていませんけど、他の里はみんな内心やばい、盗まれ(奪われ)たとか思っているんじゃないんですかね。でも起爆札が無くなったことを言ってしまうと他の里から舐められるので黙っておく的な。だから発覚しなかったのだと。尾獣とそこも一緒ですね。

起爆札の使い方に関しては小南は特殊なのだと考えています。本来はクナイにつけて一緒に投げたり、その場に貼って使うもので、単体で投げて使おうにも上手く投げられない。風遁を使って風の流れを操って相手に届かせるとかできても面白そうですけど、そんな術をわざわざ開発するくらいならクナイ付き起爆札を使って、風遁は普通に攻撃に使った方がいいんだろうなと思います。小南みたいに紙を操る特殊な忍術があってはじめて一人であんな大量の起爆札を爆発させることができたのです。起爆札も時間経過とか条件達成をしなければ使えないという枷がありますけど、小南の紙を操る忍術はそういうのを塗り替えられる。紙に書かれた文字による条件よりも、小南の忍術での命令の方が強い的な。
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