木ノ葉のお札屋さん   作:乙欄

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お気に入り、評価、ありがとうございます。

自分の書きたいものが他の方にも楽しんでお読みいただけるようなら何よりです。


7枚目

 波の国に来て、8日目の朝を迎えました。橋もあとちょっとで完成とのこと。喜ばしい限りです。

 

「じゃ! 超行ってくる」

 

 昨日でナルト君もサスケ君も修業を終え、今日から護衛に加わる、ということでわたしとサクラちゃんはタズナさんの家にとどまることになっていたのですが──ナルト君が修業の疲労でダウンしてしまい、結局護衛はサクラちゃん、サスケ君、カカシ先生の3人になったのでした。サクラちゃんとわたしだけだった時より安心できるとは思うのですが、再不斬復活のことを考えるとちょっと心配です。でも逆に家が襲撃される可能性もあるんですよね。うーん、こっちに再不斬が来たりしたらまずいですね……。そうはならないことを祈りましょう。

 

 ナルト君はスヤスヤぐっすりとおやすみ中なので、部屋でわたしはツナミさんとイナリ君と3人きりになります。昨晩イナリ君とナルト君の喧嘩があったので大丈夫かなと心配はしていましたが、カカシ先生がフォローしてくれたからかイナリ君もいつも通りに戻ったようです。

 

 わたしが黙々とお札を作っていると、ドタバタとした音が響いてきました。

 

「ああぁぁ、寝すごしたー!」

 

「おはようございます、ナルト君」

 

「カタナちゃん! おはよ! あれ、みんなは?」

 

「タズナさんの護衛中。わたしとナルト君は今日はお留守番です」

 

「えぇー。置いて行かれたのか……」

 

「違いますよ。ナルト君は今日は身体を休める日にするようにとの気遣いですよ」

 

 カカシ先生は今日のナルト君は動けないだろうと言っていましたが、見たところとっても元気に動いてますよね……ナルト君の体力の無尽蔵っぷりには驚かされます。影分身の術を解くと1人しか出していないわたしでも結構疲れるのに、多重影分身を使うナルト君があまり疲れていないように見えるのはそのスタミナからでしょうね。羨ましいです。

 

 今日は家にいなくてはいけないとわかり、しょげた顔をするナルト君をイナリ君がなにか言いたげな瞳で見つめています。仲直りがしたい、ということなのでしょう。手助けすべきかと迷っていると、イナリ君はやがて意を決したように口を開きました。

 

「ナルトの兄ちゃん! ボク、ボク、兄ちゃんのこと何も知らないのに、ひどいこと言って……ごめんなさいっ!」

 

 真摯に謝るイナリ君は、おそらくナルト君の事情を聞いたのでしょう。孤児であること、里の大人によく思われていないこと……こういう境遇は比べるものではないでしょうが、ナルト君も十分にツラい過去を持っているのです。いつも明るく楽しそうにしているのでついつい忘れてしまいそうになりますが……だから、イナリ君の気持ちがナルト君はよくわかりますし、逆もまた然りなのでしょう。

 

「イナリ……オレこそ、昨日は悪かったな」

 

「え?」

 

「お前を泣き虫呼ばわりしちまってごめんな。つい、カッとなったんだ。大丈夫、お前にはオレ達もついてるし、タズナのオッチャンがいて、ツナミのねーちゃんがいて……カイザのオッチャンもいる! お前は絶対強くなれる。このオレが保証してやるってばよ!」

 

 そう言われたイナリ君は、瞳いっぱいに涙を貯めていました。そんな様子を見ているとこっちまで感動してきちゃいます。うぅ、よかったですね、2人とも。

 

「くそ! ……もう泣かないって決めたのに……また泣き虫ってバカされちゃう……」

 

「…………。何言ってんのお前……!?」

 

 ナルト君は心底不思議そうに言いました。そして、少し何か考えるように間を置いて──それから。霧を晴らす太陽のように、にっこり笑ったのでした。

 

「うれしい時には泣いてもいーんだぜえ!」

 

 そんなナルト君の言葉にイナリ君はさらに感銘を受けたらしく……涙が止まらないイナリ君へ、ナルト君が優しく話しかけていました。

 

 わたしもツナミさんも横でみていて感動していました。これが、青春というものですね……!

 

 そんな仲良く話す2人を見届けたツナミさんはそっと離れ──台所へ行こうとしているようです。家事ならばお手伝いしようとわたしは声をかけました。

 

「洗い物ですか? お手伝いします」

 

「あらごめんね。ありがとう、お願いするわ」

 

 いえいえ、とてもお世話になっている身ですから当然のことです。

 

 ツナミさんは波の国で入手出来る数少ない食材から8人分もの美味しいご飯を毎日作ってくださっています。わたしもサクラちゃんもお料理はアカデミーで習ったのですが、教科書通りに作れる程度であまりお役には立てず……なのでこうして別のところで少しでもお礼をしませんと。一応、多少なら巻物から食料を取り出せる旨は伝えたのですが、それは自分たちのために取っておくようにと言ってくださり。とても優しく思いやりにあふれる方です。

 

 何枚か洗っているうちに、わたしたちがいなくなったことに気づいたらしいナルト君が台所にやって来ました。

 

「オレもやるってばよ!」

 

「ありがとう、ナルト君。でも一応、ゆっくり休んどきなさい。元気そうだけど、万が一もあるから」

 

 ね?とツナミさんに言われ、ナルト君はすごすごと戻っていきました。そうですね……のんびり座って、周囲の警戒やイナリ君のお相手をお願いします。

 

 部屋に戻ったナルト君たちはおしゃべりしたりして盛り上がっているようですが、こちらでも皿洗いをしながらツナミさんが色々とお話をしてくれます。

 

「────そういえば、あの影分身ちゃんは今はどうしているの?」

 

「影分身なら今日も……」

 

 言葉を続けようとして。カチャリ、という金属音が聞こえたような気がしました。聞き耳を立ててみますが、手元ではなくナルト君たちの方でもなく……おそらく、外からです。

 

「ツナミさん、一旦手を止めましょう」

 

 考えすぎや気の所為ならばいいのですが、刃物の音のように思えます。

 

「え?」

 

 わたしがツナミさんの疑問に答える、その前に。

 

 ドカリ、と大きな音がして……外から壁に穴が開けられたのでした。そこには男が2人。刀を持っていることからして、侍でしょうか。

 

「アンタがタズナの娘か? 悪いが一緒に来てもらおう」

 

 悪いと思うならまず壁を壊さないようにしましょうよ……いえ、ツッコミを入れている場合ではありません!

 

 悲鳴を抑えて気丈にも彼らを睨むツナミさんを守るため、一歩前に出ます。

 

「あん? お前……タズナの雇ったダメ忍者か……」

 

「お前には用は無いんだよ。さっさとそいつを寄越しな」

 

 わたしも貴方がたには用はないのですが。しかしどう考えても話し合いで解決できそうな方々ではありませんし。一応、手裏剣とクナイの数本程度なら持ち歩いていて幸いでした。そっと手を後ろに回して武器に手をやります。

 

 あ、橋も襲撃されているんですかね、この分だと。どうなんでしょう……話してくれないか試してみますか。

 

「や、やめてください……! まさかタズナさんも、もう……!!」

 

「はっ。忍のくせにブルッちまってるのか。情けねェーな」

 

「そう言ってやるな……大丈夫さ、お嬢ちゃん。あっちはもうくたばってるかもしれねーが、もうすぐあの世で会えるからよ!」

 

 ええと、つまりやはり橋の方も襲撃中とのことですね。教えてくれてありがとうございます。

 

 わたしの投げた手裏剣は刀で弾かれ、ニヤニヤとした2人はこちらへ近づいて来て……そして、背後から頭を蹴られ一瞬で意識を刈り取られたのでした。ナルト君、ナイスです!

 

 気絶した2人をロープでグルグルに縛ります。刀、どうしましょうか。使えないのでいらないのですけど、近くに置いておくのも危険ですよね。海に捨てるのは環境に悪いですし……仕方ない、2階に隠しておきましょう。

 

 さて。おそらく橋が襲撃されている以上、行かなければならないわけですが。ツナミさんとイナリ君も心配ですよね……。またならず者が来ないとも限りませんし。

 

 そう思っているわたしに、2人は力強く語りかけてきました。

 

「兄ちゃん、姉ちゃん! ここはボクに任せて行って!! ボク、強くなるって決めたから……大丈夫っ」

 

「そうよ。町の方へ逃げるから心配しないで行ってちょうだい。地の利はこっちのものだから、逃げるのは簡単よ」

 

「おう! 任せた!」

「……わかりました!」

 

 わたしとナルト君はその言葉を信じて、この場を離れることにしました。

 

 ところでわたしはザッハさんの家に寄ってから橋へ行きますけど、ナルト君を1人にして大丈夫ですかね……? いえ、仲間を信じましょう。

 

 

 

 

 〜戦場となっている橋での一幕〜

 

「うずまきナルト! ただいま見参!」

 

 もちろん、意外性No.1のドタバタ忍者の登場はバリバリ目立っていたのであった……忍びとは、一体……?

 

 

 

 

 

 

 影分身を解いてザッハさんを無事に脱出させたわたしは、2人で橋へと急いでいました。

 

 幸いにも見張りの数は少なく、ザッハさんを抱えての強行突破で乗り切ったのですが────

 

「……っ!」

 

 橋から突如として異様なチャクラが吹き出しました。それはどこか禍々しく、それでいて強大で……今まで感じた感じたことがないようなものでしたが、このチャクラによってわたしは出立前に父にかけられた言葉を思い出したのでした。

 

 

 

 任務を言い渡され、一度家に戻った時のことです。

 

「カタナ。里の外へ行くなら、これを持っていけ」

 

 父は厳かにお札を数枚差し出しました。正方形の紙で出来ており、書かれた文字は初めて見るものです。つまり、初めて見る術式 。

 

「これは……何のお札でしょうか?」

 

「あるチャクラを押さえ込める呪符だ……すまないが、今は詳しく話せない。だが、これだけは忘れないでくれ。その時が来たら、うずまきナルトにこれを貼るのだ」

 

 チャクラ木はチャクラ吸って成長しますから、その特性を利用して作られたお札なのでしょうか? わたしが聞いたことのないお札ということは、貴重なものであるということでしょう。なぜそんなものを今わたしに渡して、ナルト君に使えと言うのか……考えてもとんと見当がつきません。

 

「ナルト君に?」

 

「ああ、そうだ。異常を感じたらすぐに貼ってくれ……いいな?」

 

「わかりましたけど……」

 

「頼む。重要なことなのだ」

 

 そう言って頭を下げられると、それ以上の追求はできませんでした。不思議に思いながらもきちんと仕舞うと、なくさないようにだとか色々と念押しされながら、ついでに巻物なんかも色々といただいたわけです。

 

 

 ──今がその時、あのお札の出番ということなのでしょうか?

 

「すみませんがザッハさん、スピード上げます!」

 

 わたしは俵担ぎしているザッハさんに断りを入れました。ザッハさん、軽いですけど背が高いのでちゃんと掴んでいないと時折落としそうになるんですよね……。

 

「え、ちょ、お腹が圧迫されて……うわぁぁああ」

 

 反論は申し訳ありませんが聞けません。

 

 間に合うようにとできる限り全力で走ると、ザッハさんは段々と静かになっていきました。

 

 

 橋に着くと、戦況は……霧が深くてよく見えませんがおそらく再不斬とカカシ先生が交戦中。異質なチャクラをまとって変な感じになったナルト君が仮面の少年に殴りかかろうとしていて────はやく止めなければいけません。でも、申し訳ないですがとりあえず再不斬を優先しましょう。

 

「みなさん、聞いてください!」

 

 ザッハさん、出番です。ほら、うずくまってないで喋ってください。偽造文書と高そうな宝石も見せびらかしましょう。この霧では見えるかわかりませんけど。やって損はないはずです。

 

「ケホ、あ、あの、新しくガトーカンパニーの社長になったザッハです……もうガトーには支払い能力はありません。違約金ならお支払いしますので、どうか矛を収めていただければなぁと!」

 

 いい感じの嘘を並べてくれています。再不斬はザッハさんにお任せしましょう。一応ガトー側の人間なのですから殺されることはないでしょうし。

 

 さて、ナルト君はというと……こっちをガン無視です。ちょっと我を忘れている様子ですね。やはりこのお札を使うべき時なのでしょう。たぶん。

 

 勢いよく仮面の少年がぶん殴られ、吹っ飛んでいきます。それを追撃しようと走るナルト君の背中にわたしはぺたりと正方形のお札を貼り付けました。あれ、これどこに貼るとか指定はありませんでしたし……いいですよね、どこでも。だ、大丈夫でしょうか?

 

 心配になりながらも見つめていると、ナルト君はだらりと脱力し、異様なチャクラも抑え込まれた感触がありました。……よかったです。しかし父から必要になるかもしれないと言われ持って行かされましたが、まさか本当に使うことになるとは。ナルト君には一体何が……いえ、詮索は無用でしょう。ナルト君はナルト君ですし、あと今は戦いの真っ最中ですし。

 

 殴られた衝撃で仮面の少年の仮面が割れ、その顔が露わになっています。すごく美人さんで……少年とばかり思っていましたが、実は女の子だったのやもしれません。やっと落ち着いたらしいナルト君はその顔を見て驚いたらしく息を呑みました。一目惚れでしょうか……って、のんきに言ってる場合ではないですね。

 

「あいにくと依頼人以外からの契約解除は受け付けてねーんだ」

 

 再不斬の声がこの戦場に響き渡ります。あの人、いつもちゃんと返答するあたり意外と律儀ですよね。そして抜け忍のくせに誠実です。しかし……偽造文書を見破ったのでしょうか? 結構サインは練習して見破られない自信もあったんですけれども。

 

 よくわかりませんが再不斬はまだやる気があり、仮面が割れた少年は戦意が消失したようです。ここは、再不斬を叩くべき場面でしょうか。

 

 迷っているうちに濃い霧が少しづつ晴れてきて……そして、大量の人の近づく気配と音がありました。

 

 ガシャガシャと鳴る金属音はそれが武装した人々であることを物語っています。おそらくガトーの手下たちでしょう。橋の下に船がついていることから、わざわざ船で移動して来たようです。そういえば海運会社の社長でしたしね、一応は。

 

「……ククッ、逃げた犬っころを追ってみりャあ、かわいい小鬼ちゃんもついてたってかァ」

 

「……ガトー」

 

 ぞろぞろとならず者を引き連れたガトーが得意げに現れました。意外と背の低い、サングラスにスーツ姿の杖をついた中年男性です。犬っころがザッハさんで、小鬼ちゃんが再不斬を指しているんですかね。案外メルヘンな思考をお持ちなのかもしれません。本人もなんか小人の国とかにいそうな外見をしていますし。

 

 ちょうど霧が晴れてきて、ガトーの引き連れたならず者の多さがわかり……100人くらいはいそうです。そして、再不斬は全身を犬に噛まれていました。カカシ先生の忍犬でしょうか。こちらは8匹です。

 

「ザッハ、よォく声が響いてきたんだが……お前がいつから社長になったって? ……くっだらねェ嘘はつくもんじゃねェよ。つくならもっとビッグな嘘が必要さ。私のように、な」

 

 そう言ってガトーはそのまま再不斬にその魂胆を話しました。概ね、ザッハさんが昨日言ってたとおりです。再不斬がまだ忍犬によって拘束されていますし、後ろにたくさん手下がいるので気持ちがビッグになっているのでしょう。とても芝居がかった口ぶりでした。

 

 依頼人に裏切られたことを知り考え込んでいる再不斬を尻目に、ガトーは次はザッハさんに詰め寄っていました。

 

「ザッハ、今戻ったなら寛大に許してやるよ。ああ、もちろんその胸くそわりィ紙切れとかわいい宝石ちゃんを渡せばだがなァ」

 

 ……あの宝石、ザッハさんの胃に入ってたものなんですよね……ちょっとばっちい、いえ、まあ宝石の価値には変わりはないでしょうけれども。ガトーの嘘くさいセリフにも関わらず、後ろにいるならず者たちをチラチラ見ながらそう言われたザッハさんは、少しわたしの方に視線をやってからゆっくりとガトーの方へと歩いていきます。

 

「ザッハさん!」

 

 まずいです。あの数のならず者を相手にするのは……といいますか、おそらく一番戦えるのがわたしという状況なのです。わたしだけ戦闘に参加していませんでしたし……。

 

 とりあえず起爆札で全体を攻撃するしかないでしょうか。密接してて当てやすいのが救いですね。でも爆発で橋が壊れちゃいそうで躊躇してしまいますが……まあ、ちょっとくらいは平気でしょう。橋は強いです、きっと。すでに戦闘のダメージでヒビ入っちゃってますし、誤差です誤差。

 

 そう思ってガトーたちの方を睨むと、歩いていくザッハさんの背中がキラリと光って……ってあの人、ナイフ持ってます。まさかガトーと刺し違える気では!? 初めからそのつもりだったのかもしれません。

 

「ちょ〜っと待った!」

 

 ザッハさんを止めようとわたしが動く前に、背後から声が響いたのでした。今度は何ですか!?

 

「イナリィ!!」

 

 イナリ君と、町の人々のようです。全員武装しています。助力はありがたいのですが、だいぶ場が混乱してきましたし、わたしも混乱してきました。え、どうしましょう。

 

 ええと、今はガトーwithならず者が橋の反対側、船がついている方にいて、ザッハさんはそちらへ行きかけて足を止めています。間にわたしたち7班とタズナさん、いつの間にか忍犬の拘束から解放されてる再不斬と少年(性別不明)がいて、波の国側にはイナリ君with町民、と。

 

 よしよし。では、ザッハさんを止めてからガトーを拘束、町民と協力してならず者たちをあちら側に追い込んでいけば……

 

「待ってくださいザッハさん!」

 

 ……

 

 …………今度は誰でしょうか。

 

 町民の方々をかき分けて後ろから人々がやって来ます。みんな同じスーツ姿のようです。

 

「アンタを見捨てた俺たちの言葉なんて信じられないかもしれねぇ! だけど……アンタが逃げてたって聞いて居ても立っても居られなくて……やっぱ、ガトーカンパニーのトップはアンタしかいねぇよ、ザッハさん! 俺たち社員一同……アンタに着いていく!!」

 

 ガトーカンパニーの社員がザッハさんを助けに来た、と。すごい……すごい、熱い展開なのですが。収集がつけられなさすぎて困っています。誰かわたしを助けてください。

 

「島の奴らも……今までガトーたちの非道を見て見ぬ振りしてて悪かった。後で俺らをいくらでも責めてくれ。それで許されるとは思っちゃいねぇが……でもな、ザッハさんはちげぇんだ……あの人は、むりやり働かされてただけなんだっ!」

 

 ざわざわとする町民の方々。感動したように身体を震わせるザッハさん。ガトーは怒りのあまりなのか顔を真っ赤にしています。流石に社員の裏切りは想定外だったのですね。ええと、話を聞く限りでは……ガトーカンパニー波の国支社で働くみなさんは副社長であるザッハさんが監禁させられて働かされてることも、波の国の人々が無為に虐げられていることも知っていたが、その上で金のためなのか単にガトーが怖かったのかはわかりませんけど働いてきた、と。そしてそれを猛省し……今、ここに駆けつけた。波の国を、ザッハさんを、救うために。なるほど。とりあえずこれでガトーの味方はその後ろに立っている ならず者たちだけのようです。よし、やりやすくなってきました。では──

 

「おいおいお前らっ……誰のおかげで今まで生活できてたと思って──」

「てめェにだけは! そんなこと!! 誰も言われたくないだろーがよォ!!!」

 

 それは彼の心からの叫びだったのでしょう。

 

 興奮して前に出てきて。唾を飛ばしながら話すガトーの、その首がスパッと落ちていきました。そのまま首はゴロゴロと転がっていき……ならず者たちはそれと目が合ったようで、ちょっとビクッとしていました。よかったです、こっちに転がってこなくて。

 

 やったのは再不斬。素早い肉薄と見事な剣技でした。まるであの大刀は首を斬るためのものだったような感じです。あまりに唐突な展開すぎて頬をつねったり体内のチャクラを乱してみたりしましたが、幻術ではなさそうです。

 

 ええと、その……ガトー、亡くなりましたね、はい。

 

 …………はい。

 

 ボスをなくしたならず者たちがチラっとわたしたちを見やります。戦力的には町民プラス社員プラス忍びたちとなっておりますね、はい。

 

 ……起爆札、食らいたいですか? いっぱい用意してありますよ? 試しに1回空中で爆発させてみると、驚くほどの効果をもたらしたようでした。やべぇ、やべぇ、という感じでなんかちょっと申し訳なくすら感じるほど怯えています。

 

「ヒィ────ッ! すんませんしったァ〜〜!!」

 

 ならず者たちはみな、乗ってきた船に逃げて行き。こうして一件落着、になった……のでした。果たして状況が落ちついてると言えるのでしょうか、これは。

 

「やったぁ──────!」

 

 町民もガトーカンパニーの社員も入り混じって喜びを分かち合っていて……タズナさん、イナリ君とザッハさんまで何故か胴上げされています。ま、まあ……みんなハッピーならオッケーですよね。ええ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────それから、2週間が経ちました。

 

 橋は無事に完成し、波の国はガトーカンパニーからの支配を完全に脱却しました。

 

 ガトーカンパニーはザッハカンパニーと名を変えて海運会社のみを続け、ザッハさんとその社員は波の国でほそぼとやっていくそうです。あの偽造文書を一応は使ったそうですが、だいたい会社を整理し終わった後に燃やしてくれたようで……よかったです。偽のサインがずっと残るのはちょっと嫌ですからね。

 

 ガトーが支配していた他国や他会社、裏社会のあれこれはある程度は落ち着き……また別の支配者が現れたり、あるいは正常な運営状況に戻ったりと様々だとか。流石にそこまでは手が届かないので、少しでも平和になったことを祈るのみです。

 

 もちろん波の国の町民の方々も社員たちを完全に許したわけではないのですが、国交を開いたときの商売のノウハウなどを教えることで少しづつ少しづつ信頼を回復しているんだそうです。ザッハさんの商才はかなりのものですからね。いつかは笑顔で手を取り合える日が来ると、信じたいです。

 

 ──ザッハさんはやはりガトーとともにあの場で死ぬつもりだったそうで、遺書まで遺していました。ひどい人です。わたしに文書偽造をやらせたのも、どうやら自分が死ぬつもりであることをわたしに悟らせないようにするため意識をそらしたかっただけのようで、別にガトーのサインとかどうでもよかったようです。見事なまでに作戦にハマってしまいましたよ、ええ。すごい練習しましたのに……。

 

 再不斬と少年(男性だったようです)──白君はしばらく波の国で療養した後、そのまま姿を消しました。ザッハさんが彼らに依頼料分の金銭は渡すと言ったんですが、依頼人からじゃないと受け取らないと突っぱねたらしく……とことんストイックといいますか。あの橋の時にサスケ君もかなり怪我を負っていたらしいんですが、それを白君はきっちりと治していってくれ、わたしとサクラちゃんには軽く医療忍術のレクチャーまでしてくれました。ナルト君は彼らを木ノ葉に勧誘したらしいのですが、断られたそうでひどく落ち込んでいます……わたしもまたいずれ会えるといいな、と思います。もちろん今度は味方として。難しいことであるのはわかっていますけれども、それでも。

 

 タズナさんはザッハさんとカカシ先生と何やらゴニョゴニョ話していました。漏れ聞こえる声から判断する限り、依頼料とか大人のアレコレのようです。タズナさん払えなかった本来の依頼料をザッハさんが肩代わりしてくれるのやもしれません。ガトーの隠し財産とか発見したらしいですし……。実はわたしもそのおこぼれをちょっとだけ頂戴したのです。波の国でお土産を買うことで波の国にお返ししましたが、多少残ってしまった分で帰ってからみんなと何か食べましょうか。

 

 

「悪かったな、嬢ちゃん。ありがとな!」

「絶対また来るんだぞ!」

「お手伝い、助かったわ。ありがとうね」

「みんな、超感謝じゃ!」

 

 

 ……せーの、

 

「「「「「お世話になりました!」」」」」

 




波の国、完。

後半が完全に忍者……?になってますね。ザッハさんが強すぎた……。


悪いと思うならまず壁を壊さないようにしましょうよ……いえ、ツッコミを入れている場合ではありません!
→わりとどんなときでもツッコミを忘れない精神。無意識ではあるが、戦闘時には気を紛らわして精神的に安定させるため、という意味もある。

ザッハさん、出番です。ほら、うずくまってないで喋ってください。
→うずくまってるのはカタナが俵担ぎをしたせいである。この担ぎ方は担ぐ方は楽だが、担がれる方はだいぶ辛いらしい。しかも忍が本気のスピードで走っているため余計にザッハは辛かった。

やっと落ち着いたらしいナルト君はその顔を見て驚いたらしく息を呑みました。一目惚れでしょうか……
→完全に邪推。以前会ったことのある人物だったからである。でもナルト曰くサクラちゃんよりカワイイらしい。


再不斬、白については全然魅力を描ききれなかったので原作を……原作を読んでいただければ、と。ガトーもっと早く来いよ!そしたら円満解決できたのに……という気持ちからガトーが早く橋に来る理由を作ろうと考え、ザッハが生まれ、ザッハを連れてくるべくカタナの動きを考えたら再不斬と白の出番が減るという……一人称の欠点ですね。でも三人称で描こうにもカタナというオリキャラがいない場面であるため原作通りの展開になってしまうので、書けず……。

波の国については色々と難しかったです。特にガトー周りについてかなり悩みました。あの会社ってどんなのなのかまったく原作になく。オリキャラのザッハを登場させてなんとかしました。あんまり自分の考えたオリキャラは出さないように気をつけてるんですけど、どうしても必要だったので……今後1話限りとかの名前付きキャラが色々と登場するのはだいたいアニオリのキャラです。原作にはいないけど公式キャラ、という。アニオリでも原作に逆輸入されることがあって面白いですよね。
ザッハはザッハトルテからで、ガトーショコラと対比させています。2次創作ですし後の展開を考えてもあまり支障はないかな、と思って白たちは救済しよう!と決めていたんですけど、その方法も悩みました。その結果があれです。彼らの今後もそのうち……。
個人的には再不斬の目指すところってゴルゴ13だと思うんですよ。道具みたいな生き方の局地かと。だから依頼人の裏切りが判明しないと依頼を遂行し続けます。ゴルゴ13と同じくちゃんと前払いにしておけばよかったと思うのですが……なぜ後払いを許してしまったのか……。タズナさんの処遇も難しかったです。お金で解決できることでは本来はないんでしょうけど、事情酌量の余地があることと木ノ葉がなんだかんだ甘いこと、カカシ先生による説得や結果的にナルトたちの強化に繋がったことで木ノ葉は許してあげました。
あとはガトーの波の国の非効率的な支配方法……あれは波の国への恨みからくるものであり、実はザッハを監禁していた家は元自宅で、自身が監禁され虐待された幼少期を過ごし、だから背は小さく、残虐な性格に育った……という感じの裏設定を考えてはいました。でもやっていいことと悪いことがある。よって首チョンパは免れられず。
書いてはいませんけど、ナルトの活躍やらが少なくなってしまったぶん、本作では橋の名前はカイザ大橋になった、という設定です。町の英雄の名前を残す、というのにはナルトも納得してくれると思ってます。

前の話になりますが、カタナの恋愛観については……別にそこまでお金に執着しているわけではないのですが、前世の記憶から生まれた、人って裏切るよなあという諦観からです。お互いを完全に愛することができるならともかく、そういう人が見つからないならいっそお金で結ばれよう的な。相手と自分がお互いに割り切ってるならば家のための結婚でいいや、という感じ。
転生要素があんまり出てないですけど、前世の記憶とかちらちら影響はあるのです。
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