無限の転生~今世でついに人間卒業!? こんな人生こりごりだとは言ったけど、人間辞めたいとは言ってない~   作:ねむ鯛

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第八羽 藪から蛇

 

 思わず口調が崩れてしまいましたが私は冷静です。私は冷静です……!! もう何が何だか分からなくなってきました。突発的な出来事やアドリブはすこぶる苦手なんですよ……!!

 

 なんとか軌道修正を試みなければ……。

 

「いえ、お姉さんにご迷惑をおかけするわけには……」

 

 ここで、秘技! 相手を気遣う姿勢でやんわり断る……!!

 

「迷惑だなんてとんでもありません! この話をいろんなところに広げれば、きっとお友達を見つけやすくなります。ぜひ、冒険者様のお手伝いをさせてください!!」

 

 相手の押しが強く全く効いていません。秘技がことごとく打ち破られていく……!!

 善意が……!! 純粋な善意が私を追い詰めていく……!!

 ここでまで言われてこの流れを止めるのは不自然……!! すでにダラムさんの術中にはまって抜け出すことはできません。ダラムさん、なんて恐ろしい子……!!

 

「あはは……。じゃあもうそれでお願いします……」

 

「はい! 任せてください!!」

 

 きっと明日には私の噂が千里先まで広がっていることでしょう。どうしてこんなことに……。私はただ、蛇の討伐報告をして運搬クエストを受けに来ただけなのに……。

 

「良かったですねメルさん、これでお友達の件は安心ですね」

 

 はい、とても胃が痛いです。うぼぁー。

 

「実は他の大陸にも似たような冒険者の方がいらっしゃってですね、その方は姉を探しているそうですよ。いつか会った時に、情報交換でお話ししてみるのも良いかもしれませんね」

 

「ご丁寧にありがとうございます……」

 

 私のは嘘なのに、同じ扱いを受けるのは本当にさがしているその人になんだか申し訳無いですね……。今は祈ることしか出来ませんが、早く無事に見つかることを願っておきましょう。

 

「それじゃあメルさん、この運搬クエスト、お願いしますね。すみませんルマー、このクエストの申請をしたいのですが……」

 

 受付のウサミミお姉さんはルマーさんですね、覚えました。

 

「承りました。書類をお預かりします。これは……指名相手がメル様の運搬依頼ですね。運搬品は回復効果のあるポーション。運搬量は……かなりありますね!?」

 

 どれどれ……。おや、本当に思ったより多いですね。アイテムストレージの中身を少し減らした方が良いでしょうか……。あ、そうでした。アイテムストレージといえば。

 

「あの……先に討伐報告をしても良いですか? 討伐したのはフィスクジュラという蛇の魔物なのですが……」

 

「え……、本当にアレを討伐したのですか?」

 

「モルクオーナーも確認したそうですよ。あの人はまったく……」

 

「なにがあったのかお察しします……。ともかく彼が確認したのなら嘘はないですね」

 

 ちょいちょいとルマーさんがダラムさんに手招きをして、そこで二人は何やらアイコンタクトを取る。彼女たちは仲が良いのでしょうか?

 

「こほん。それでは討伐データを確認しますね」

 

 目でのやりとりを終えたルマーさんがカウンターの上に置いていた冒険者カードを写真立ての枠だけのような装置に差し込んだ。……まさか冒険者カードに勝手にデータが保存されていて、それを今読み取っているのですか? この冒険者カード関連の技術、ものすごいオーパーツですね。 昔の文明はどれほどのものを……。

 

 カウンターの上にある石版のようなものに目を通していたルマーさんが頷いた。

 

「はい、無事確認できました。討伐はお一人で成されたのですか? ものすごいお力ですね……」

 

「私は物理攻撃が主体ですので、魔法が効かない能力のフィスクジュラとは相性が良かっただけですよ」

 

「何言っているんですか! この蛇は魔法が効かないだけでなく、硬い早い強いを体現した魔物ですよ? Sランクパーティーを撤退まで追い込んだ強さは伊達ではありません。蛇ゆえに毒にもそれなりの耐性を持っていますし、隠れてからの奇襲も上手くいきづらい。格下では万が一にも勝ちはありません。フィスクジュラに勝てると言うことは、素の実力が高いことを意味します。冒険者様はすごいのですよ?」

 

「そ、そうなのですね……」

 

 藪蛇だったかもしれません。うう……、私はチート能力のおかげで勝てただけで、本当は才能の欠片もないのに……。褒められるとなんだか申し訳無くなってきます。

 

「討伐されたフィスクジュラはどうされました? 場所さえ教えていただければ、ギルドのものが回収に向かいますよ。手数料は少々頂くことになりますが」

 

「アイテムストレージに収納しているので大丈夫ですよ」

 

「アイテムストレージ……。もしかして冒険者様は収納系のスキルをお持ちなのですか?」

 

「そうですよ。一定量を超えると負荷がかかるタイプですが」

 

「なるほど。それで運搬依頼を。強い上に便利なスキルを持っているなんて、さすが未来のSランク冒険者ですね!!」

 

「あ、あはは……」

 

「あれ? 冒険者様、それ以前に他にもたくさんの魔物を討伐されているようですね。確認しても?」

 

 それ以前……? まさか冒険者カードをもっている間に狩った魔物全て表示されているんじゃ……。 それだとこの半年、あの森で魔物を食料確保目的で狩りまくっていた事がバレてしまう。奥に行くとヤバいのがたくさん居たのでそれが表示されるのは拙い……!!

 

 や、藪蛇です!!

 

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