【悲報】無限に転生してきた私、遂に人類をやめる【タスケテ】 作:ねむ鯛
ゆらゆらと。
真っ先に感じたのは僅かな揺れ。そして体の痛み、そして肌寒さを感じた。
纏わり付く痛みを振り払うように頭と左右させてノロノロと顔を上げる。
うぅ……。ここは?
巣にいたときには感じることのなかったそれで目を覚まし、訳もわからず混乱する。
頼りなく浮かぶ木材とそれに乗る自分。常人であれば渡るのを諦めるであろう幅の川と、挟むように鬱蒼と茂る天衝く木々。
何故こんな所にいるのか理解がゆっくりと追いついていく。
崩れゆく崖と落ちる蛇。そしてそれに巻き込まれた私。
それからの記憶はありません。
まあ、生きていると言うことは着水に成功したということでしょう。私は助かりましたが、蛇はあの高さから落ちたら流石にひとたまりもなかったでしょうね。私は体も小さく鳥故に軽かったので衝撃は少なかったでしょうが、蛇はそうではありませんから。
体の傷は塞がっています。体は全身痛みますがもう血は出ていません。血が足りていない感覚はありますが、眠っていたので少しマシになったのでしょう。
お母様も心配しているでしょうし、目が覚めた以上早く帰りたいのですが難しいでしょうね。
どれほどの時間が経ったのかはわかりませんが少なくとも数時間ではないはずです。その間ずっと流され続けた事を考えるとかなりの距離になることは想像に難くありません。
今の私は疲労と怪我で長距離を飛ぶことはできませんし、水に濡れて疲れている今なら尚更です。それにここにはどんな危険が潜んでいるかわかりません。まずは生き残ることに注力しなければいけない環境です。
そうと決まれば陸に上がることからです。流木があまり大きくなかったこともあり、翼で水を掻くことで進むことができました。
水に入ることは全く考えていません。魔物でも何でもないワニが現れただけでも今は絶望的です。実際の所水を掻くこともかなり躊躇したほどです。
とは言えそれは杞憂だったようで休息を挟みながらも、なんとか岸に着くことができました。
なんやかんやと考えてしまいましたが、こうしてみると特に危険のない大きなだけの川かも知れませんね。
ほら、今もくりくりしたかわいい目玉が二つほどこちらを見ているだけで……。
あれ……?あれはワニでは?
目玉が私と同じ大きさでしかも大きさのせいでわかりづらいけどだんだんこちらに近づいてきてこれまずくないですかうわめっちゃ見られてるというかそんなこと言ってる場合じゃない逃げるんだよぉー!!
この後めちゃくちゃ逃げた。
結果迷った。どうしよう……。
どこから来たのかも方角もわからないので途方に暮れてしまいました。
深呼吸をして一旦落ち着きましょう。
最終目標は巣に帰ること。
そのためにはもう一度川に出なくては。自然界で水辺は危険ですが唯一の道しるべは川だけですから。上流に向かって行けばいずれ巣に着けると現状では信じるしかないです。
お母様がいずれ迎えには来てくれるとは思いますが、一カ所に留まることはしません。待つのは性に合わないんですよね。
探知の魔法を持っている様ですので動いても構わないでしょう。迷ったら動くなと言いますが、きっと大丈夫です。
お母様……。最後に見たときはボロボロの姿でした。何があったかはわかりませんが皆無事でいてください。
祈るように目をギュッと瞑ると翼で頬を叩く。
大丈夫です。お母様は強いです。それよりも帰った後のお仕置きを覚悟しなければ……。お母様の声を無視して飛び出してしまいましたからね。
……うん。……少し、帰りたくなくなってきました。
そうは言ってもどうしようもないので、
空も茜色になってきましたし、そろそろ暗くなるでしょう。かなりの空腹ですが今むやみに動くのは悪手です。
地上で夜を過ごすのはかなり危険だと思われますので安全のために良い感じの木を見繕って簡易の巣を作ります。まあ、枝の根元に葉っぱを集めただけなのですがないよりましでしょう。まだ体は乾ききってないないですがここは気合いです。むん!
……ふう。夜の帳が落ちきる前になんとか完成しました。
それではステータスと。
名前 メルシュナーダ 種族:スモールキッズバーディオン
Lv.20 状態:進化可能
生命力:305/305
総魔力:167/167
攻撃力:98
防御力;31
魔法力;31
魔抗力:23
敏捷力:205
種族スキル
羽ばたく[+飛行・風の力]・つつく・鷲づかみ
特殊スキル
魂源輪廻[+限定解放(鬼)]
称号
輪廻から外れた者・魂の封印・
レベルがかなり上がってステータスが軒並み成長しています。
このレベルの成長は蛇を倒したからでしょうね。しかし二匹も倒したはずなのですからもっと上がっても良いはずです。
文句を言っても仕方がありませんが。
「羽ばたく」のスキルに「風の力」が追加されています。これは蛇に向かってペシペシ打っていた奴ですね。かなり使っていたのでスキルになったのでしょう。
使えなくなっていた「魂源輪廻」は「限定解放(鬼)」が追加されています。これが私の前世の一つである鬼の力を使えるようになった理由でしょう。既にソウルボードのメインに設定されていました。
何がきっかけかわからないのが残念ですが、能力が戻ってくる可能性があるのは朗報です。
詳しく見てみましょうか。
・限定解放(鬼)
解放能力 [+頑強・剛力・鬼眼・鬼気]
「頑強」は体が頑丈になる能力です。さらに傷の治りが比較的早くなり、健康的でいられるようになります。この健康的の中には状態異常にかかりにくくなる効果と痛みに強くなる効果も含まれているので、枠に困ったらとりあえず「鬼」はセットしていました。とても使い勝手がいい能力です。
「剛力」は名前そのままで、力が強くなります。普通の人間が木を殴ってへし折ることができるようになるくらいの上がり幅があってかなり強力です。どちらも鬼の力強さを体現した能力ですが、どうやら能力値には反映されないらしく、数値として見ることはできませんが攻撃力に関しては倍以上、防御力は5割増し程にはなっているはずです。
どうにもこれらの強化幅は固定値では無く割合のようで、私が強くなればなるほど大きくなるようです。今は数値的に見ればあまり大きくはありませんが、やがてはステータス詐欺になるはずです。実際なりましたし、言われたこともありました。
「鬼眼」は意識して睨んだ相手の威圧と動体視力の強化の効果があります。威圧は彼我の戦力の差によって効果が変わります。相手の方が強い場合は挑発のような効果になってしまい、逆効果の事があるので注意が必要ですね。動体視力強化の効果はそのまま、今までよりも速い動きでも見逃すことが少なくなります。副次効果で思考速度も上がるので、使用者に優しい能力です。見えてるけど、頭がついてこないなんてことはありません。
敵の強さもなんとなくわかるようになりますね。私は色々と才能がなく、見ただけで相手の強さを推し量る事ができなかったので助けられたことは何度もあります。手合わせすればなんとなく分かるんですがそれでは遅いこともありますからね。
「鬼気」は鬼の禍々しさを孕んだオーラを纏うことができるようになるスキルです。上の三つは常時発動型のパッシブなスキルなのですが、この「鬼気」は任意で使うアクティブスキルとなっています。
発動には常に体力の消費が必要となり、「頑強」「剛力」「鬼眼」の効果を大きく押し上げてくれます。オーラは私の体の一部の様な物であり、使いこなせれば形に指向性を与えることもできます。とは言えやはり私には才能がないらしく、長年使っているのですが体や武器に纏わせて攻撃範囲を広くしたり、威力を補強したりすることぐらいしかできません。
効果に比例して体力の消耗も激しく、レベルが上がった現状でも長時間の使用は避けたいスキルです。かなりの格上にも有効だを与えることができるので、しばらくは前に使ったように闘技との合わせ技で切り札としての運用になりそうです。
称号の
そして一番気になるのが状態:進化可能です。
どうやら私、進化できるようです。