無限の転生~今世でついに人間卒業!? こんな人生こりごりだとは言ったけど、人間辞めたいとは言ってない~   作:ねむ鯛

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第三十四羽 勢い任せの勧誘

 

 突然の提案に固まるミル。そして私も言ってしまった内容を認識して固まる。

 

 や、やってしまった。突拍子もないことを口走ってしまった。今のミルにパーティーの話は御法度でしょうに……! どうやって挽回しようかと目をザバンザバン泳がせてもなにも案は浮かばない。そのうち固まっていたミルが再び動き出した。

 

「昨日も聞いたけどやっぱりあたしのこと聞いてたんだね」

 

 わっつ?

 悲しそうに俯くミルだが、私にはなんのことだかわからない。昨日の記憶もあまりない。何事ですか?

 

「噂は本当だよ。白蛇聖教に勇者として認められたリヒトに、弱いからって追い出されたんだ。あたしがいると他のパーティーメンバーに迷惑をかけるからって。実際あたしを庇って大怪我を負った人もいたし」

 

 全くの初耳です。そんな噂を流すなんて随分悪趣味ですね。

 

「パーティーから追い出されるのもしょうがないよ。あたしが弱いから、役立たずだから悪いの。だから……同情でパーティーを組もうと言うのならやめて。あたしはそれを―――望まない」

 

 ……そっか。ミルは自分の弱さに悩んでいるんですね。弱い自分を庇われるのが辛いんですね。

 私にも痛いほどその気持ちがわかります。

 

「……そうですね。貴女は敵に勝てる力を有していない。今のままだときっと私が昨日助けた時みたいなことが繰り返されるでしょうね」

 

「ッ!! そう……だよ……。だから……パーティーの話は……」

 

「はい。私とパーティーを組みましょう」

 

「……え? ……なんで?」

 

 惚けた表情をするミルに私は思わず笑いが漏れる。この際だ、全部言ってしまおう。

 

「ふふ、何を驚いているんですか? 別に私は同情から貴女と組もうと言ったわけではありませんよ?」

 

「そう……なの……?」

 

 それはそうですよ。強さが足りないことに同情するくらいなら、私は組もうなんて言わずに街の中にいろと言いますよ。無理して死んで欲しくないので。

 

「私には詳しい事情はわかりません。でも―――貴女はまだ諦めていないじゃないですか?」

 

「あたしが……?」

 

「ええ、だってこんなにも―――悩んでいるから」

 

 諦めたらそれについて悩みなんてしない。ああ、嫌なことがあったな、それでおしまい。しばらくしたら忘れて別のことに目を向ける。時折思い出して、あんなこともあったなと考える事もあるでしょうか。

 

 諦められないから、どうしたら良いのだろうかと悩む。諦められないから、なんで出来ないのだろうと悩む。諦められないから、諦めるべきか悩む。

 

 諦めていないからこそ、それは湧き上がる感情だ。割り切っていないのなら、それは諦めきっていない査証に他ならない。

 

「でもあたしは……こんなんじゃ故郷の村に帰れないって考えて……」

 

「それはそうでしょう。誰だって思いますよ。私だって思います。人は見栄っ張りで、自分の弱いところを見せたがらない生き物です。その考えはごく普通の事ですよ。でも―――」

 

 そこで言葉を切った私はミルの瞳をまっすぐに見つめる。

 

「それだけじゃ、ないでしょう? それは貴女が一番わかっているはず」

 

「でもあたしは……弱くて……メルみたいに強くないから……」

 

 ……私は別に、強くないですけどね。

 

「今は弱くてもまだ時間はあります。私も昔は誰にも勝てない時期がありました」

 

「ホントに!? あたしより小さいし、最初から結構強いのかと思ってた……」

 

「最初から出来る人なんてそうはいないですよ。いいですかミル。貴女は確かに敵を倒す力は持っていません。でも貴女が卑下したように役立たずなんかじゃありません。現に私は貴女の薬に助けられました。あれが無かったらまだ寝込んでいたかも知れませんよ? 私に敵は倒せても病気や毒は癒やせない。これは月並みな言葉ですが……貴女にしか出来ないことがきっとあるはず」

 

「あたしにしか……できないこと……」

 

「ええ。私はそんなミルに助けてもらいたくて組んで欲しいとお願いしたんです。私は冒険者としてまだまだヒヨコです。ノウハウもないしルールも詳しくない。そんな私に冒険者の先達として色々と教えて欲しいのですよ。

 

 ―――私には貴女が必要です。私を助けてくれた貴女だからこそ言っているんです」

 

「ッ!!」

 

 息を飲んで視線を合わせたミルに、何一つ嘘はないんだと笑顔で頷いた。

 

 一度会っている彼女だからという部分が全くないとは言いません。でも彼女の心根を知っているからこそ、この決断に至ったのも事実です。

 素人の私が冒険者ランクを上げるためには他の冒険者の協力があった方がずっと良い。私の容姿では舐められて、足下を見られる可能性が高い。その点彼女なら信頼できるから、警戒する時間を省くことが出来ます。

 ……まあこれらはそれっぽい理由付けに過ぎないかも知れません。本心では何もなくても彼女としばらく行動を共にしたいから思っている訳ですからね。

 

「組んでいる間になにか成長のヒントが見つかるかも知れない。少なくとも座して待つよりはずっと良い。迷っているならお試し感覚ででもどうですか?」

 

 ミルの瞳が揺れている。後ろ向きな感情はそれなりに払拭出来たはず。それなのに唇は空いたり閉じたりとまだ返事は帰ってこない。

 僅かな不安が私の心にスルリと差し込まれる。

 

「それとも……私と組むのは……嫌……ですか?」

 

 抱いた不安のままに恐る恐る彼女を見上げた。

 今世で最初に話した人間。鳥である私に人として接してくれた人。そんな彼女に避けられるかもしれないと思うと、言い知れない喪失感に襲われて。

 

「組むよ組む組むめっちゃ組む」

 

「わわっ!?」

 

 態度が一変して食い気味に私の両手を力強く握ってきたミルに驚いて体が仰け反ってしまった。

 

「……こほん。それでは仮ですが、しばらくよろしくお願いしますね。パートナーさん?」

 

「うん、ありがとうメル。あたしもうちょっと頑張ってみる。出来ることがないか探すことにするよ」

 

 決意を瞳に秘めて頷いたミル。その様子はきっと大丈夫だと確信させるほど力強いもので。

 

「ええ、絶対出来ますよ」

 

 私は自信を持って太鼓判を押した。

 

 というかリヒト君なにしているんですか。多分北大陸でナンパまがいの事をしてきた少年でしょう? 悪い子ではないと思ったのですが……。ともかくぶん殴ってから事情を聞きましょう。君のせいでミルが不安定になったんですから、妥当ですよね?

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