無限の転生~今世でついに人間卒業!? こんな人生こりごりだとは言ったけど、人間辞めたいとは言ってない~   作:ねむ鯛

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過去話につき鬱展開注意。
苦手な方はブラウザバック推奨。過去話は基本ダイジェストで行きます。
次の話の前書きに今回の話を簡単にまとめたものを置いていますので飛ばすこともできます。


第??話 鬼ノ刻

 

 それは初めて転生したとき。

 

 目が覚めたときは混乱しました。

 何せ、目の前にいたのは額に角が生えた男女の二人組で、気づけば私は赤子だったのですから。

 

 人として、武家の娘として人生を全うした。そう思っていた私は何の因果か鬼の子として新たな生を受けました。

 最初は恐ろしく思っていました。転生などと言う概念を知るよしもなく、両親は人ではなく鬼。しかし両親は子供らしくない私に当然のように愛情を注いでくれました。

 オーガのように恐ろしく乱暴な訳でもなく、姿形は違えどその愛情の形は人と同じ。本当の二人の子供ではないかもしれないと、後ろめたさは感じつつもその暖かさを心地よく感じることは避けられなかったのです。

 

 今世の家は特に武術に関わりがあるようではなかったので、ただの村娘のように生きる事になると思っていました。しかし、そもそも鬼人というのは武を尊ぶ種族だったようで、子供の頃から良く手合わせに誘われました。

 相手は前世を合わせると半分以下の年の子供。武家の子供だった私は軽く揉んでやろうと思ったのですが……。ええ、もうボコボコにされてしまいました。こちとら女の子ですよ?もっと優しくして下さい……。

 

 戦いは素手で、武器はなし。殴る蹴るの徒手空拳など手を出したこともなく、悔しい思いをしました。

 私はこっちだから、と良い感じの棒きれを拾って振り回していたのですが、元武家の娘として手合わせに誘われれば断ることなどあり得ません。もちろん敢えなく敗北。

 負け続ける事など認められるはずもなく父に手ほどきを求めることになりました。

 

 それからの私はまさに子供に戻ったようでした。飲み込みが悪くセンスが無い私に根気よく教えてくれる父。そんな私達を優しく見守って、させてくれた母。そして背格好は同じなのに、年の差を感じて勝手に距離を感じていた私を、遊びに誘ってくれた子供達。

 幸せでした。前世とは何もかもが違うけれど、それでも幸せだったと言えるでしょう。

 

 あいつらが来るまでは。

 

 突如として私たちの村は戦火に包まれました。

 一様に統一された鎧に身を包んだ人間。軍人だろう彼らが襲いかかってきたのです。

 鬼人の肉体的なスペックは人間のそれよりかなり上です。一対一なら力負けすることはないでしょう。

 ですがこれは最早戦争です。規律ある集団行動で確実に削ってくる人間相手になすすべもありませんでした。

 途中からは、最低限の知識のあった私が、皆にお願いして指揮を任せて貰うことで一瞬盛り返したものの、すぐさま潰されてしまいました。私の拙い技術ではどうにもならなかったようです。

 

 まもなくして戦いは終わる事になります。私たちの敗北という形で。

 多くの者が死に、生き残った者は開けた場所に一カ所に集められて捕らえられました。

 

 そうして一人、指揮官らしき男が前に出て言いました。

 

 彼は、拙いながらも指揮を執っていた私と戦いたいと。言葉が話せるだけの蛮族だと思っていたが、戦略のような者を使う私に興味が湧いたと。唯一武器を使う私と戦ってみたいと。

 

 鬼の村にあって武器の訓練をしていた私。戦いが始まってしばらくすると彼らから武器を奪う機会がありました。なのでそれを使っていたのです。

 

 そして勝負に勝てれば生きている者を皆解放するとも言いました。

 

 信じる信じないの以前に断る事などできるはずもありません。一も二もなく頷きました。

 

 そうして始まった戦い。彼は強かった。私が素手ではまともに戦うことすらできなかったでしょう。

 事実、村の皆も個人では弱いと思っていた人の強さに驚いていました。そしてそれとまともに戦えている私にも。

 

 前世での経験、そして今世での体術の経験と鬼としての肉体的スペックでなんとか拮抗していました。

 それでもやはり、私は足りていなかった。スペックの差に慣れたのか徐々に追い込まれていく。

 一手撃ち合う度の体勢が崩されていく。

 やがてそれが決定的になり鈍く光る刃が体に迫ったその時、咄嗟に取ったのはとある戦撃の型。

 

 実のところ私は戦撃を一度も成功させたことがありませんでした。前世で習って、そして今までに一度も。一番簡単な基礎的な技でさえも。

 

 何度も何度も挑戦し、発動することもなかった戦撃。諦めかけて、それでも諦めきれずに続けていた挑戦。

 

 無意識にすらすり込まれるほど繰り返した動きは。発動しない筈の戦撃は。

 

 私を――救ったのです。

 型をなぞるだけでは絶対に間に合わない攻防。戦撃の成功を示す、光を纏った一撃が相手の刃を押し返し、彼を大きく仰け反らせた。

 いまいち状況が理解できない中、これだけはわかりました。

 この一撃を当てれば終わる。彼に防ぐ術はない。私の勝ちだと。

 

 しかし―――

 

 ドスっと音がして、体がつんのめるように前に流れる。そんな決定的な隙を彼が見逃すはずもなく。

 体を斜めに切り裂かれた私は血だまりに沈みました。

 

 切り裂かれた部分が焼ける様な熱と、凍えるような寒さを伝えてくる。それとは別に背中に痛みが。

 

 矢が――刺さっていました。

 

 村の皆が怒りの声を上げる中一人の男がゴテゴテとした弓を片手に歩いてくる。そして言いました。

 

 ぶら下げられた希望はどうだったか?と。

 

 ああ、やはり彼らはそもそも約束を守るつもりなどなかったのです。

 

 続けて弓の男は言いました。

 

 これからは人間の時代だ。種として一番強い人間が他の種を支配するのだと。世界は弱肉強食。

 強い人間こそが正義で、他は悪なのだと。人こそが喰う側で他が喰われるのだと。

 だから弱いお前達は悪で、これから行うことの見せしめなのだと。

 

 そうして怒りに震えていた村の皆は殺されていきました。一人一人。無残に。見せつけるように。

 

 ――痛い。痛い。

 

 体ではなく心が。

 

 ――私が……強かったら皆を守れたのでしょうか。

 

 ここに生まれたのが私ではなく、前世の兄だったら。きっと誰一人犠牲なく皆を守ったでしょう。

 父だったら―――。母だったら―――。姉だったら―――。

 

 私が弱いから皆死んだ。皆喰われる側に回ってしまった。私が悪いのだと。弱い私こそが悪なのだと。

 

 止まらない涙の中、戦った彼は無表情で私を見下ろしていました。

 そうして私の鬼としての生は幕を閉じることになりました。

 

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