無限の転生~今世でついに人間卒業!? こんな人生こりごりだとは言ったけど、人間辞めたいとは言ってない~   作:ねむ鯛

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第45羽 顔合わせ

 

「悪かったわね、少し急ぎ過ぎたわ」

 

「ほんとだよ! メルったら泣きそうになってたじゃん!」

 

「全然泣いてないですが??」

 

 ……本当ですよ?

 あのあと、ヴィネアさんに連れられて、ちょっとおしゃれなレストランに来た。性急過ぎたお詫びだそうです。

 依頼を受けてからご飯をどうするか決めるつもりだったため、渡りに船と承諾しました。押しは強いですが、悪い人ではなさそうでしたし。

 少しお話をする事になりそうなので、今日の依頼は無理でしょうね……。

 

 明日またギルドに行くの、お腹痛い……。

 ヴィネアさんが、良い香りの紅茶を口に運び、音もなくカップをソーサーに戻した。

 

「改めて紹介するわ。わたしがヴィネア、魔法使いよ。水の魔法が得意ね。それ一本でここまで来たわ。それで、こっちがうちのパーティーメンバー」

 

 ヴィネアさんが背後に控える2人を紹介してくれた。

 冒険者ギルドの外で合流した人たちだ。

 

「執事です」「メイドです」「「お嬢様がお世話になっております」」

 

「いえ、お構いなく……って、あの……パーティーメンバー……? 従者ではなく?」

 

「どちらも違いないわ。基本的に冒険者活動は3人でやっているけど、戦闘は基本的にわたしが担当。彼らには雑務や露払い、それと身の回りの世話を任せてるわ。私、そういうの嫌いなの」

 

「なるほど……」

 

 そういうパーティーの形も見たことはあります。基本的に推奨はできないですけどね……。信頼とか安全面とかで。

 とはいえ、ヴィネアさんはSランクまで上がっているので、問題はないのでしょう。

 

 相手の紹介が終わったので、こちらも名乗る。

 

「メルです。槍を使って戦います。魔術を補助として使います」

 

「あんたは槍使いね。そのマジュツってなに?」

 

「少し変わった系統の魔法……という理解で構いません」

 

「ふ~ん……、わかったわ。あんたは?」

 

「えっとミルです。魔法使いで、水と火が得意だよ。雷もすこしできて、土と風は一応使える……かな? 最近は薬を作って売ってるよ」

 

「魔法使いで、属性は色々。薬の知識あり……と。わかったわ」

 

 ヴィネアさんの視線が、じっとこちらを値踏みしてくる。

 まるで人材査定でもしているような眼差しだ。そんなに品定めしないでほしいのですが……。

 

「……ヴィネアさんは貴族なんですか?」

 

 思わず尋ねると、彼女はやや誇らしげに顎を上げた。

 

「ええそうよ。海の物流の大半を担っているのがオケアニス家。出身は西の大陸、ウェイストリアよ。白蛇聖教ですら大陸間の渡航をするときにうちの船に依頼をする……って言えば凄さが伝わるかしら?」

 

「あ、あたしも聞いたことある……」

 

 ミルがぽつりと呟いた。どうやら、とんでもなく有名な名家らしい。

 つまり、本物の“お嬢様”……。しかも単なる自信家ではなく、実力があるタイプ。

 そして私は目をつけられている……。

 泣きたい……。いや泣きませんが??

 

「さて。幸運な出会いに感謝をするのはこのあたりにして……、そろそろ本題に入りたいのだけど……」

 

 そう言って、私たちを見ながらヴィネアさんが顔を綻ばせた。

 

「ますは食事にしましょうか。さ、どれでも好きなものを選んで」

 

「そういうわけには……」

 

「なに、遠慮? 巫山戯ないで頂戴。わたしはオケアニス家の淑女として貴女達をもてなす用意があるの。 ぐだぐだ言わずに受け取っておきなさい」

 

「メル……」

 

 困った顔で見つめてくるミルに、そっと頷いた。

 

「ミルさん、これ以上断るのはむしろ失礼にあたります。ヴィネアさんのご厚意に甘えさせていただきましょう」

 

「あら、ものわかりが良いじゃない。そういうの嫌いじゃないわ。注文なんて、選ばずに欲しいもの全部にしたって良いのよ?」

 

「あはは……、さすがにそれは……」

 

「――――ねえ」

 

 発せられたのはたった一言だったが、それには言葉を止めざるを得ない何かが込められていた。

 紅茶を口に運んだヴィネアさんが流し目を送ってくる。

 

「わたし、2度同じことを言うのは嫌いなの。それとも――――わたしにあんた達の要望すら受け止められない度量しかないって……そう言いたいわけ?」

 

「……わかりました。そこまで言うのなら精一杯、ご相伴(しょうばん)に預からせていただきます」

 

「ええ、最初から素直にしておけばいいのよ」

 

 貴族として客人をもてなすのは家の力を示す行為。

 できないとむしろ他の貴族から侮られることになりかねない。ここで下手な遠慮はむしろ不敬かもしれません。

 ならば、私も全力で応えさせていただきます。

 

「では――――ここからここまで、全部ください」

 

「元気な注文ね。嫌いじゃな――――は?」

 

 満足げな表情を浮かべていたヴィネアさんが目を見開いた。

 

「あ、あんたそれ、全部食べられるの……?」

 

「もちろんです。自慢ではありませんが、食事を残したことはありません」

 

「そ、そう。元気で良いことね……」

 

 心なしか、彼女のカップを持つ手が震えている気がした。

 

「ああ……トメラレナカッタ……」

 

 そして横でミルはどこか遠い目をしていた。

 ミル、遊んでないであなたも早く選んでください。お店に迷惑になってしまいますよ?

 

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