無限の転生~今世でついに人間卒業!? こんな人生こりごりだとは言ったけど、人間辞めたいとは言ってない~ 作:ねむ鯛
「それにしても、壁を抜けられるスキル……。凶悪だね……。持ってるのがメルで良かったよ」
「住居だけでなく、重要施設や保管庫なんかにも入り放題ですからね。あまり広めると、冗談抜きで監視対象にされそうです」
「それをイタズラに使うなんて……」
「……えへ」
「……それあたしにバラすんじゃなくて隠しておくべきだったんじゃ……」
「? ミルさんに隠す理由が、どこにあるんですか?」
「……ふーん」
思わず首をかしげれば、ミルはジトリとした目つきに。
なぜかにじり寄ってきたと思えば、不意に腕を広げ――
「……このッ!」
ガバリを私を抱きすくめた。
「なにごと!?」
そのまま抱き上げられた私はミルの膝の上に座ることとなった。
「大事なことをあっさり他人に話しちゃうメルには、仕置きです」
「こ、これがお仕置きなんですか?」
「そうなのです。反省してね」
「反省しました。……下ろしてもらえるんですか?」
「ダメです」
「あれぇ?」
困ったように首をかしげると、後ろでミルがクスリと笑う。
私もつられて笑ってしまった。
「そういえば、ミルさん。晩ごはんは食べましたか?」
「ううん、まだだよ」
「じゃあお詫び……というわけでもありませんが、私が作りますよ。台所を借りても?」
「えっ……、いいの!? じゃあお願いしよっかな……」
「任せてください。今使って良いものって何かありますか? 私はこれが出せますよ」
「えっとね――――」
「――じゃあオムレツと、きのこのスープを作りましょう。その間、ミルさんは勉強に戻っていいですよ」
「ううん。せっかくだし……メルの料理するところ、ちょっと見てたいな」
「そうですか? では楽しみに待っていてくださいね」
台所に必要な材料を並べ、アイテムストレージからエプロンを取り出して身につけた。結び目を整えると、後ろからぽつりと声が飛んできた。
「エプロンだ……。いい……」
なんだか後ろからの視線が強いような……。
いや、気のせい……ですよね?
……新しい前世の力が開放されたことですし、作ってる間にステータスでも確認してましょうか。
―――ステータス――――――――――――――――――――
名前 メルシュナーダ 種族:アジャースカイファルク
Lv.46 状態:普通
生命力:144011/144011
総魔力: 25051/ 25051
攻撃力: 28153
防御力: 10724
魔法力: 15663
魔抗力: 10654
敏捷力: 99873
種族スキル
羽ばたく[+高速飛翔・
特殊スキル
称号
輪廻から外れた者・魂の封印・
――――――――――――――――――――――――――――
高速飛翔 → 『飛翔』から強化。飛行能力が強化され、より素早く飛行できる。
鋼翼 → 翼が鋼のように堅くなる。スキル使用時も飛行可能。
浸透撃 → 攻撃したとき、ダメージの一部が内部に届くようになった。ちょっとした防御無視攻撃。
蹴撃 → 脚力が強化。
水かき → 水を掴んで進みやすくなる。
さわぐ → 大声で騒ぎ立てる。発する音が大きくなる。
爆音 → 耳をつんざくような大きな音を発生させる。
声真似 → 聞いたことのある声を真似して再現できる。
鷹の目 → 視力が良くなる。動体視力も向上。
遠視 → 遠くまで見通せる。
夜目 → 暗いところでも目が見える。
巨大化 → 一時的に体を大きくする。身長は大きくならないし、成長もしないのでハズレです。せめて体の一部分だけ大きくするとかもできたんじゃないですかね。期待外れでした。もっと頑張ってください。
スキルについては前回から変化があったものついて簡単にまとめてみました。
順当に強くなったスキルに、使い所のよくわからないスキルもあります。そちらはないよりマシといったところでしょうか。
半年前と比べると、スキルが大きく増加しているのですが、目を惹くのが基礎ステータスの上がり具合です。
レベルは19から46と、レベルの上がり方はそこそこ。
それなのに、ステータスはゆうに7倍近くになっています。
レベルがそこまで上がってないのに、ステータスが上がった理由には、ちょっとした秘密がありまして……。
その最たる要因が
鬼として生きていたとき、私は鬼気を使えませんでした。しかし今は使えます。
これは
それで今回の件なのですが、今世で驚くべき新しい仕様が判明しました。
それが、過去の進化前の姿になれるというものです。まあ、魔物になったことなんてないので、知らなくて当然なんですけどね。
しかも過去の姿になってみると、当時の最後の状態のまま。
――――進化待機状態のままでした。
つまり選ばなかった進化先を全て選び直すことができるということです。これは他の魔物に対して、明確なアドバンテージです。というより、チートと言っても良いでしょう。
もうズルです。とはいえ、生存競争なので有効活用はさせてもらいますが。
それとは別の理由で、進化し直すのはかなり悩みました。
――――下手したら、今の姿には戻れなくなるかもしれない。
進化前の姿になった後、アジャースカイファルクに戻ることは確認できました。でも、だからといって進化を選んだ後も戻れるとは限りません。姿が上書きされてしまう……なんてことがあるかもしれませんからね。
戻れない確率は低いとは踏んでいましたが、ゼロではないのです。
結局私は3日ほど悩んだ後、進化し直すことを選びました。
なんてことはありません。転生と一緒です。また修行をし直せば良いのです。
さて、進化してみると決めたら準備が必要です。
エネルギーが減ってお腹が減ることはわかっていたので、ご飯は準備しておいて。
選ばれたのは――――ギガバーディオン。
お母様の進化先と似た系統で、しかも巨大。大きな生き物になってみたかったのもあります。大きい生き物は強いですからね。大きくなったら強そうに見えるでしょう?
そして進化後――――私の目論見はほぼ大成功を収めました。
元の姿に戻れるうえ、ギガバーディオンにもなれる。
ただ、大きな誤算がありました。
ギガバーディオンで人化しても――
――身長が大きくならない。
巨大化のスキルを使っても、そのまま体が大きくなるだけで、成長はしない。
とんだ期待外れでした……。
それ以外は本当に最高の結果だったんですが……。
ギガバーディオンになるとレベルは1から再スタート。ステータスは据え置きです。
試しにギガバーディオンの姿でご飯を狩って見ればレベルが上ったのを確認して驚きました。別の進化前の姿に戻れば、レベルがお手軽に上げられるわけですからね。 アジャースカイファルクに戻ると、レベルは19のまま。
切り替えながらレベル上げができるという、至れり尽くせり設計。
なんだか世界が私に優しくなってくれている気がします。……いや、そうでもないですね。最初は森スタートですし、慣れない鳥の姿でしたし。下手したらこの1年で死んでましたからね。そうなっていれば、この発見もできなかってでしょう。
そもそも
なんてボヤキはさておき。
これはチートですよ。まさか
ただ、ちょっとしたデメリットもありました。
なので、素の実力で戦う必要があります。まあ、勝てそうになかったら
あとは、今の姿の進化が遅れるということですね。別の姿のレベルを上げるわけなので、その分遅れるのは必然。どっちのレベルを上げるかは今後悩むことになりそうです。
ランクの低い魔物の姿であれば、レベルは上がりやすい。しかしランクが上がれば、そうはいかない。今後の進化先はレベルも上げづらくなるでしょうから。
この半年は狩りの時はほぼ
現在の最終進化のレベルはあまり上がってないけど、レベル上げ自体はやってたということですね。乱獲なんかはしてないですけどね。そう言うのは嫌いなので。
それをやるなら修行します。
それと増えた前世の力についても確認してみましょう。
・幽魂族
→
・人魚族
→水中適正・
増えたのは幽魂族と人魚族。
幽魂族はピーキーな性能をしています。
まず、ソウルボードにセットしてもステータスは上がりません。皆無です。なかなかに致命的。
続くスキルも一癖も二癖もあります。
このスキルの影響で日中は使えません。
ポルターガイストは離れた場所にあるものを、ちょっと動かせる程度の力。槍をゆっくり持ち上げるのが精一杯で、投げることもできないくらい貧弱です。イタズラ位にしか使えません。
さっきはこれで離れたミルに触っていたわけですね。
サイコメトリーは物体に残された思念を読み取ります。といっても、私が読み取れるのはかなり強烈な残留思念だけで、しかもそういうのに限って大抵ロクなものじゃない。はっきり言って、精神衛生上よろしくないのでこのスキルは苦手です。
浮遊は……ふわりと浮けます。速度は歩くより遅いです。使い所はほぼ皆無です。これを飛行目的で使うなら、獣人族:チーターで跳んだほうがよっぽど良いです。
そんな残念性能の幽魂族ですが、真価を発揮するのは
半透明の幽体になり、物理干渉を全て透過させます。
壁を通り抜けられるし、殴られたり斬りつけられたりしても効きません。ほぼ無敵の存在になります。
……ただ、魔法は効きます。魔力をまとった攻撃も当たります。魔法防御が施された壁は抜けられません。
そして、攻撃を当てられると防御力がゼロなので即昇天コースです。
戦闘中にこの姿になっても、攻撃はできません。槍が持てないし、私が殴ってもすり抜けるので。ポルターガイストで槍の保持はできますが、それで攻撃したところで反作用すら支えられないので威力はありません。
戦撃も使えません。
なんとも言えない性能をしています。一発屋というか、初見で弱点がバレてないあいだならとても強いですね。
人魚族はとても普通です。
ソウルボードにセットしたときに上昇するステータスは防御より。後は魔法系がちょっと強めです。
水中適性は、その名の通り水の中での動きが良くなります。一応水中での呼吸もできますが、ちょっと苦しいので長時間は無理ですね。
鱗は肉眼では、普通の肌にしか見えませんし、触っても普通の人肌の感触です。ただ、衝撃を加えると硬化して、身を守ってくれます。
魔法適性は名前の通り、魔法が得意になります。
歌唱は歌が歌いやすくなります。当時、最初は全然歌えなかったんですけど、親切な方に手ほどきしてもらって、歌えるようになったんですよ。
代わりに水中での機動は自在になり、呼吸も楽にできるようになりますね。
と、そんなことを考えているうちに料理も完成です。
ツヤツヤと黄金色に輝く、ふわとろ卵のオムレツ。中にはお肉と野菜がぎっしり具だくさん。
横にはあっさり飲みやすい、きのこのスープ。
そして焼き立てのパンが、香ばしい香りを放っている。
「できましたよ、ミルさん」
「わあ……! すごく美味しそう!」
「ふふ、味は保証しますよ。さ、召し上がれ」
「うん、いただきます」
真っ先に手を出したのはオムレツ。スプーンで切り取ると、肉汁がジワリと溢れ出してくる。
すくい取って口に運んだ、方からも同様。肉の旨み、野菜の主張しすぎない甘さ、そしてそれを包む優しい卵の抱擁。
「美味しい!すごいよ!こんなのお店でも食べたことない!」
「お口に合ったようでよかったです」
「卵も今までに食べたことないくらいまろやか!」
「溶き卵にソースを混ぜてるんですよ」
「スープもあっさりしてて飲みやすいから、オムレツとよく合うね」
作った料理は大好評で、ミルはペロリと平らげてしまいました。ちょっと多めに作ったつもりだったんですけど、次はもう少し多めでもいいかもしれませんね。
満足そうに頬を緩めるミルを見て、そう思う。
「……美味しかった。ごちそうさま」
「おそまつさまです」
「メル、絶対良いお嫁さんになるよ」
「ありがとうございます。ミルも練習すればできるようになりますよ」
そう返せば、ちょっと微妙な顔。なぜ?
そうして洗い物も終わり、また明日とドアから出た時。ミルに腕を掴まれた。
「ねえメル……、今日は泊まらない……?」
おや、と振り向くとその表情は微妙な怯えが見て取れた。
……これさっき脅かしたせいですよね。さすがにこの状態で放置するのは……。
「わかりました。では、今日はお世話になります」
「お世話されたのはあたしの方だけど……」
……まあ、細かい事は気にせずに。