無限の転生~今世でついに人間卒業!? こんな人生こりごりだとは言ったけど、人間辞めたいとは言ってない~   作:ねむ鯛

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第62羽 修行の成果

 ミルとのお泊り会から1週間が経った。

 

 私達は相変わらず修行に励みつつ、クエストをこなしていた。

 

 午前を修行の時間にあて、午後から近場での依頼を請け負う。たまに孤児院へグルーヴくんの様子を見に行く。そんな日々。

 とりあえずミルの護身術は一定の練度になったので、魔法・魔術の修行をメインとしている。

 

 今日はその成果を試す機会でもある。

 

 ヒッポグリフの討伐。今日受けた依頼だ。

 街道で馬車や通行人を襲っていて、被害も出ている。

 

 馬の下半身に大鷲の上半身を持つ凶暴な魔物で、Cランクの冒険者が複数人で討伐するのが推奨される危険な相手だ。

 

 とはいえ、今日は私は極力手を出さず、ミルだけで討伐する手筈になっています。修行の成果を試す機会だからですね。

 

 ミルの冒険者ランクはD。本人曰く、実力はEよりのDとのこと。

 なので今までのままだったら、勝てはしない相手。しかしここ数日、護身術と魔術の修行をしてきたのです。今となっては、必ず勝てるはず。

 そう確信を持って送り出した。

 

 ――――そんな戦いも、もう佳境に差し掛かっている。

 

 ヒッポグリフは片翼が穿たれ、全身にも傷だらけ。自慢の飛行能力ももう発揮はできません。

 

 遠距離からヒットアンドアウェイで攻撃してくる戦法は非常に厄介でしたが、《壁空》でしっかり見を守りつつ隙を見逃さなかったミルが一方上手でしたね。

 しかし下半身は馬であるためか、地上での移動速度も十分早い。油断は命取りになる。

 

「はあ……、はあ……」

 

 一方のミルも傷はないとは言え、肩で息をしており魔力もそろそろ尽きそう。これ以上長引けば、戦闘手段を失ってしまうでしょう。

 本人もそれをわかっているのか、杖を握る手に力がこもる。

 

 私の方もハラハラしながら、いつでも介入できるように見守っている。

 

 ヒッポグリフが、間合いを図るようにようにぐるりと円をかく。

 ジリジリと距離を詰め、ミルに接近。そして――――突如として地を蹴って突進した。

 

 ミルはその勢いに臆せずタイミングを測って、杖を向ける。

 

「《白陣:砲魔》!」

 

 魔力の弾が放たれ、ヒッポグリフの肩口をえぐった。だが動きは止まらない。それでも速度は緩んだ。

 その僅かな時間を活かして、ミルは横っ飛びに回避。直前にいた場所から離脱する。

 

 そして魔物が踏み込んだのは――――さっきまでミルがいた場所。

 

 そこに描かれていた陣が輝きを放つ。ミルが仕掛けていた罠。それが発動した。

 

「《橙甲陣(とうこうじん)剣咬岩(けんこうがん)》!!」

 

 地面に描かれていた陣から、鋭い岩刃が突き出し、魔物の胸を穿つ。

 咆哮とともに暴れもがくその巨体に、ミルが両手で握った杖を向ける。

 

「《双白陣:砲壊槌(ほうかいつい)》!」

 

 放たれた白の光線が、まっすぐに魔物を貫いた。ヒッポグリフの体は力を失って項垂れ、だらりと体を投げ出した。

 もう、この魔物は動かない。

 

「お疲れ様です、ミルさん。見事でしたね」

 

「か、勝った……?」

 

「そうですよ。ミルさんが勝ったんです」

 

「そ、そっかぁ」

 

 やっと実感が湧いたようにヘナヘナと地面に座り込んだ。

 自力で勉強を続けたミルは、私が陣を5つ重ねてようやく使える魔術を使えるようになった。羨ましい成長速度です。

 

 とはいえ、時間をかけて準備をする必要があるので、今罠として使ったように何らかの手を講じなければならないのですが。

 双白陣は普通に発動できるので、重複陣を戦闘中即座に使えるようになるのも、そう遠くはないでしょうね。

 

 弛緩した空気。

 

 しかしそれを狙っていたかのように、鋭く風がざわめいた。

 

「ッ!!!」

 

 へたり込んだままのミルに影が迫る。その間に割り込み、咄嗟に魔の手を打ち払った。

 

 打ち合いは、一息に6度。

 

 ――――手数が多い……! 立ち止まって応戦するのは不利……!

 

 瞬動を発動し、一歩で最高スピードへ。バックステップでミルの下へ退く。

 

「え? ぐえ!?」

 

 まだ状況が飲み込めていないミルの首根っこを掴んで、更に距離を取った。

 

「ミルさん、無事ですか?」

 

「……喉が締まって死にそうになりました」

 

「なら無傷ですね」

 

「……あれ、あたしの扱い雑になってない?」

 

「仲良くなったと言うことで」

 

「……えー」

 

「それより、あれを」

 

 視線を向けた先に、下手人が立っていた。 

 カマのような六本の前肢を蠢かせる、巨大な昆虫型魔物――カマキリの魔物。

 全身は黒い外殻に包まれ、無感情な視線がこちらを鋭く貫いている。

 

「あれは……アシュラマンティス!?」

 

 名を呼ばれたカマリキリは、仕留められなかったことを不思議がっているように首をかしげていた。祈るように畳まれた鎌を携え、前後に体を揺らし始める。

 ……間合いを測っている。

 

 どうやら逃がしてくれる気はないようですね。

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