無限の転生~今世でついに人間卒業!? こんな人生こりごりだとは言ったけど、人間辞めたいとは言ってない~   作:ねむ鯛

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第71羽 異様

 

 今までトロッコ用の線路一本と、かろうじて人が通れるくらいの狭い通路が続いていた。

 だが、カンテラの光が届いた先は、比べ物にならないくらい広大な空間になっていた。

「……広いな」

 

「それがどうしたんだ? 動きやすくて助かるじゃないか」

 

「……明らかにおかしいだろう。こんなに広いのに線路は一本しか通ってない。ここまで広いなら線路を複数引けば有効活用できるはずだ。なのにそれをしていない。それに、あまり広く掘れば崩落を招く危険もある。今まで歩いてきた坑道と、雰囲気が明らかに違いすぎるんだ」

 

「……たぶん原因はあいつだね」

 

 そう言って緑髪くんが指し示したのは、広い空間の奥。こちらに背を向け、ガリガリという音を響かせ続けている大きな影だった。

 

 「ガブリザード……、あいつがなにかしたってことか?」

 

 その質問には答えず、この部屋の入口の壁に目を向けた。

 そこにはあるのは、今まで辿ってきた魔物の痕跡。巨大な牙で削り取られたような傷跡がだった。

 そこから広大な空間に向け、ボロボロに崩れた岩壁が続いている。

 だがそれはよく見れば、同じ痕跡、すべて強靭な顎で噛み砕かれたものだった。

 そしてそれは尋常ではない数、壁一面に存在していた。まるで収まらぬ飢えを満たそうとでもしたように。

 

「……食べたんだよ。この広い空間、全部」

 

「……なるほど。線路が一本しかなかったのは、ここが巨大な部屋などではなく……本当は通路だから。……しかしいくらなんでもそれは……」

 

「広すぎるだろ!? あいつの体長とここの消えたっぽい空間の体積。明らかにズレてるぞ!?」

 

「……ともかく依頼はあいつの討伐だ。これ以上変なことをされないうちに倒してしまおう」

 

「おお、そうだった。変なやつだろうと倒せば問題ないよな!」

 

「……これだからバカは」

 

「……脳筋ここに極まれり、だね」

 

 緑髪の少年が矢をつがえながら、呆れたようにつぶやく。

 

「うっせー! とっとと行くぞ!」

 

 そうして始まった3人とガブリザードの戦い。

 先制は青髪メガネくんの魔法から。

 向けられた杖の先に冷気が集い、氷の魔法が雨のように降り注ぐ。

 

 拳大の氷塊に幾度となく打ち据えられ、異音を発生させるのを辞めて振り向いたガブリザード。発達した大顎に、太く強靭な尻尾。力強い後ろ足と、鋭い爪の生えた細めの前足。

 その体長は5メートルを超えている。

 聞いていたガブリザードの特徴からは明らかに大きい。

 

 そして、その様子も明らかにおかしかった。

 

「……おい、こいつ氷が弱点なのか? すでに倒れそうだぞ」

 

 ガブリザードの目は赤く血走り、息は荒く、発達した大アゴからは粘つくよだれをダラダラと垂れ流していた。

 そして何かをこらえているかのように動きが鈍くなっている。

 

「きちんと勉強しておけ。爬虫類種はだいたい氷が弱点だ。だが……いくら僕の魔法でもここまでダメージを与えることは不可能だ。もとからなにか異常があったと見るべきだろう」

 

「……ええ~! 弱ってたらフェアじゃないじゃんか!」

 

「……きみはどうしようもないバカだね。これは勝負じゃなくて狩りだよ。そもそも3対1なんだからフェアもなにも、そう思っているのはきみのお気楽な頭だけだよ」

 

「お前ら本当にいい加減にしろよ!? 俺パーティーリーダーだからな!?」

 

「じゃんけんの結果な」「じゃんけんの結果ね」

 

 ……じゃんけんでリーダー決めたんですか? 給食のプリンを取り合ってるんじゃないんですよ?

 

 ――不安要素は……まあ……あちこちに多々あったものの、3人とも戦闘能力と連携は抜群。

 赤髪の少年が前衛で押し返し、青髪のメガネくんが氷の魔法で妨害とダメージを、緑髪の少年は宣言通りに目や急所を狙い勢いを抑えていた。

 なぜか魔物も弱っていたおかげもあって、戦闘は問題なく進行。……実際仲はいいんでしょうね。喧嘩するほどなんとやらといいますし。

 

 …………いいなぁ。私も同じくらいの歳のときに、彼らと同じくらい強くなれたら良かったんですけど……。

 と、羨むのは後にしましょう。私は……帰ることにしましょうか。

 

 この様子なら程なくして、彼らの勝利で終わるでしょう。

 そうと決まれば私がここにいる必要はありません。大人しく帰って、討伐の報告を待ちましょう。鉱石はそのあと採掘に来ます。

 

 そこで必要素材のリストと、残りの時間を思い出してげんなりした。

 

 ……まあ……なるべく急いでほしいですけど。

 

 来た道を戻るために振り返ろうとした視界の端で、ガブリザードに違和感を感じた。

 

 ……ん? あれは……、魔物の様子が……?

 

 戦っていたガブリザードが苦悶の表情を浮かべ、大量のどす黒い血を吐き出したかと思えば、突如体をガタガタと震わせ始めた。そして体内から溢れ出すように魔物の魔力が異常な高まりを見せる。

 

「おい! 様子がおかしいぞ!」

 

「危険だ! 一旦離れろ!!」

 

 痙攣する魔物を中心に、まるで苦痛を形にして放出したかのような、鋭利な岩のトゲが地面から波のように押し寄せた。

 

「危ねぇ!?」

 

 3人はとっさに魔物とは反対方向に駆け出してなんとか回避を図る。

 

 その最中、放射状に広がっていた岩のトゲがガブリザードの全身を包み込むように集まり、蕾のような繭を形成。

 岩の中でゴキゴキという、鈍い異音が響き渡った。まるで、すでに壊れてしまったものを無理やりハンマーで形を作り変えているようなそんな不気味な音だった。

 

 そして一瞬の静寂。

 

 次の瞬間、岩の蕾が内側から爆発するように砕け散る。

 破片が四方に飛び散る中、土埃を破って現れたのは、先程より2回りも大きくなった魔物だった。

 よだれが垂れ続ける顎はより強靭に、前足の爪はより鋭く長く、背中や肘からは鋭い突起が伸びている。

 体の特徴もより攻撃的に変化した、先程までガブリザードだった魔物。

 

「これ……ガジリザードだ! まさか進化したの!?」

 

「魔物が戦闘中に進化だと!? そんな事例、聞いたことないぞ!!」

 

 魔物が戦闘中に進化……? まさか……お母様の言っていた『踏破越到(リープオーバー)』……!?

 




計200話を突破しました!長らくお付き合いありがとうございます!
ここまで続けられたのは皆さんのおかげです!これからもよろしくお願いします!
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