【悲報】無限に転生してきた私、遂に人類をやめる【タスケテ】   作:ねむ鯛

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第19羽 雨のち

 

 巻き込み事故からなんとか逃げ出し、数日が経ちました。

 熊と蜻蛉を倒した事もあってレベルが上がり、猿ゴリラくらいの魔物なら戦撃で瞬殺できるようになりました。おかげで食糧問題の方も少し解決。

 順調に川を上っていたのですが途中から別の大きな問題が発生してしまいました。

 

 それは目の前の二つに分かれた川。これ見て貰えばわかると思います。

 どちらが流されてきた私が方なのか全くわかりません。実はここ三日くらいで二つの分岐を通ってきました。これが三つ目の分岐です。

 他の分岐での先が同じように分岐していたとしたら加速度的に正解を引く確率は下がってしまいます。

 これ以上増えた場合正解を引くことは無理です。

 

 ですが止まっているわけにも行きません。運を天に任せて進むだけです。最悪近くなれば巣にしていた巨大な木が見えるはずです。

 そうすればこちらの物。まっすぐに飛んでいけば良いだけですから。流石にあんなに巨大な木がポンポンあるわけでもないでしょうし。

 

 とりあえずここは……、右に進んでみましょう。

 

 

 ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ 

 

 

 三時間後、私は途方に暮れていました。

 

 ――どうしましょう。

 

 目の前に現れたのは三つに分岐した川。

 

 ――無理では??

 

 皆さん覚えておいてください。乱数は敵です。確率も敵です。許されません。

 

 もうふて寝しますね。今日はおしまいです。明日になればなにか良い考えが浮かぶかも知れませんし。

 空模様もなんだか悪くなってきたので雨宿りができる場所を探して――とか考えている間に降ってきました。

 

 羽毛に覆われている私は雨に濡れるのは悪手です。身軽さが死んでしまいますので。

 とりあえず木の下を通ってなるべく雨を避けながら、雨宿りができる場所を探していきます。

 

 捜索開始から数十分。手頃な洞窟を発見しました。

 良い感じの岩陰でもと考えていたので、予想以上に良い物件です。

 

 やることもないのでステータスの確認でもしましょうか。

 

 

 名前 メルシュナーダ 種族:キッズバーディオン

 

 Lv.26 状態:普通

 

 生命力:1096/1096

 総魔力:413/413

 攻撃力:356

 防御力:121

 魔法力:133

 魔抗力:106

 敏捷力:746

 

 種族スキル

 羽ばたく[+飛行・風の力・カマイタチ]・つつく・鷲づかみ

 

 特殊スキル

 魂源輪廻[+限定解放(鬼)]

 

 称号

 輪廻から外れた者・魂の封印・格上殺し(ジャイアントキリング)

 

 

 結局の所、熊も蜻蛉も猿ゴリラも格上なのでレベルはポンポン上がります。

 おかげで生まれたばかりの頃とは比べ物にならない強さです。

 まあ鬼の力を考えないと、ミミズみたいな奴を除く、会った魔物全部に負けているのですが。

 うーん、素の私弱すぎ?

 

 スキルは増えませんでした。各上相手に効かない攻撃を無意味にする余裕もないので仕方ないのかも知れないですが、戦撃しかまともに使ってないですからね。

 

 ステータスも一通り確認し終わりましたが、雨が止む気配はありません。むしろ強くなる一方ですね。

 今日はここで夜を明かすことになりそうです。

 

 ……皆元気かなぁ。今頃ミルにご飯でも作って貰っているんでしょうか。

 お母様はミルを酷使していないでしょうか。……なんだか心配になってきました。早く帰らないと。

 ……それにしてもお母様はなんでまだ助けに来てくれないのでしょうか。もしや、獅子が子を崖から落とすのと同じ感じでしょうか。

 考え始めると止まりません。

 ……捨てられたとか怪我で動けないような状態だとか、嫌な考えがよぎってしまいます。

 

 はぁ、やめやめ。嫌な考えを追い出すように頭を振る。

 じめじめしているせいか、考えも暗いものになってしまいます。そんなことより川の分岐をどうにかすることを考えるべきでしょう。全く良い考えが思い浮かぶ気はしませんが。

 

 ……おや?洞窟の奥の方がボンヤリと光っています。警戒しながら慎重に確認しに行くと、どうやらそれはキノコのよう。

 観察してみましたが特に危険性はなさそうです。これが洞窟の中を薄らと照らしていて、更に奥に続いていることがわかりました。

 

 ……進んでみましょうか。雨も止みそうにないのですし、今日はここで夜を明かすことになるのです。寝ている間に奥にいた魔物に襲われてしまった、なんて事のないように確認しておきましょう。

 そんな理論武装をして自分を納得させると進み始める。

 

 所々に光るキノコが生えていて天然の照明になっていて明るさに困ることはありません。暗さで見えなくなれば引き返そうと思っていたのですが問題なさそうですね。

 

 ズンズンと進んでいくと次第に景色に変化が。

 

 ――これは……レンガ?人工物が何故こんな所に?

 

 無骨な岩肌だった洞窟はやがてレンガで整備された通路のようなものに。

 所々崩れていますがまだしっかりと通路の役割を果たしています。

 

 ――先になにかあるのでしょうか。

 

 意図せずに見つけたものですが好奇心に負けて進むことを選択してしまいました。

 しかたないですよね。

 未開の地で見つけた人工物。これを探索せずにいられるだろうか。いやいられない。はんご。

 

 ――行き止まり?

 

 通路はクネクネと曲がり始めて、どれほど先があるのかわからない中、それでも進んでいると遂には終点終点に着いてしまった。

 そこにはレンガで覆われた壁があるだけ。

 それ以外特に何もなく落胆しかけました。

 

 ……いや、これは。

 

 行き止まりのレンガを足でつついてみる。

 ……やっぱり。明らかに他の壁に比べて薄い。先がある。

 蹴り飛ばすと拍子抜けするほど簡単に崩れた。最近作られてものでもなさそうですし劣化していたのでしょうか。

 

 レンガの壁を抜けるとそこには広大な空間が存在していた。

 

 ――凄い。

 

 天井にもキノコが生えているのでそこがドーム状の洞窟であることはわかりました。

 そして一際目を引くものが。厳めしい装飾が施された巨大な扉。その大きさは巨人が使っていたのかと思うほどです。

 

 ――これのためにあの通路は作られたのでしょうか。

 

 興味を引かれて更に一歩踏み出す。

 そして――

 

 ――頭上から強烈な死の予感が。少なくとも今世で体験したものでは比べ物にはならない。

 

 ――なッ!!?

 

 竦みそうになる体を必死に動かす。

 

 通ってきた通路は――間に合わない。全力で横に飛ぶ。

 訳もわからないまま、横殴りの衝撃に吹き飛ばされる。

 

 ゴロゴロと転がって距離を取る。

 

 さっきまで私がいた場所。

 絶望的なバケモノがそこにはいた。

 

 重厚な四足歩行の巨大な体躯。他を圧倒する強大な威圧感。全体を強固な鱗で覆われまるで戦車の様だ。そこにいるだけで死を連想させられる。

 

 ――雨のち地竜《ちりゅう》なんて最悪の天気ですね……。

 

 この前会った翼竜が赤子に感じられる。正真正銘生物としての頂点捕食者。

 

 好奇心は猫をも殺す。ならば鳥はどうだろうか?

 


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