無限の転生~今世でついに人間卒業!? こんな人生こりごりだとは言ったけど、人間辞めたいとは言ってない~   作:ねむ鯛

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第26羽 今日は帰らせないよ……

 

 その子鳥を見たとき、フレイにはかわいらしいなという感想以外は特になかった。

 

 スワロー種は比較的穏便な魔物であり、人間に害を与える蟲系の魔物を良く狩って食料にしていることから見かけても特に手を出さないのが暗黙の了解となっている。

 倒れていたこのスワロー種を助けたのも一種の気まぐれであり特に深い意味はなかった。あえて言うなら、情報収集のためだ。

 ここに来たのも、同業の冒険者が今まで見たこともない影を見かけたとのことで、その情報を集めるためのクエストによるものだから。

 

 傷跡などの痕跡からその未確認種の事がわかるかもしれないと思ってのことだ。ボロボロの見た目に反して特に傷跡と言える傷跡もなかったので空振りに終わってしまったけれども。少し首を捻ることになったが魔物だからそんなこともあるかと流すことにした。

 

 食事を泣きながら食べた時は少し引いたが、自身の知る魔物より理知的な雰囲気だったので思わず話しかけていた。

 そしてこちらの言葉に明確な反応を示した時も、驚きはしたが特に評価が変わることはなかった。

 

 人語を解する魔物は一定数存在する。かなり珍しいが、特段貴重でもないと言ったところだろう。

 

 まず筆頭に上がるのが帝種。会話のできないものもいるが大抵は人間とは比べ物にならない期間を生きており、それに比例して知性も高い。寝物語の中には人間と会話に興じる帝種が出てくる。基本的に人類にとって帝種と会話ができるのは共通認識だ。相手は腐っても魔物なので、できるからと言って会話になるかは別の話になるのだが。

 

 例としては龍帝だろうか。この大陸では霊峰ラーゲンに居を構える龍帝と僅かながら交流がある。かの龍帝は酔狂にも、霊峰を登り自身に会いに来た者に試練を与え、突破した者に褒美を与えるらしい。そもそも魔物が蔓延る霊峰を登るのは自殺行為であり、試練はそれ以上らしいのでそんな人物は滅多に存在しない。

 もちろん人類に寛容だからと言って、気に入らない者に対しては非常に好戦的なので、関わりにならない方が賢明だ。都市ごと消し滅ぼされること請け合いだと歴史が言っている。

 

 次点で帝種の子孫だろう。子を育てるなか帝種が喋るので勝手に学んでいくとどこかの誰かが本人から聞いたらしい。真偽の程は定かではないが、実際に帝種の子孫は話せるらしいので、とりあえずその節が濃厚だろう。

 

 次は帝種やその子孫に長らく関わった魔物、そしてそれに関わった魔物だ。

 

 ともかくこの子が帝種であることは論外だし、天帝の子孫でもないだろう。全くそれらしさがないから。かの巨鳥は非常に苛烈な性格をしていると聞く。警戒していたときはピリピリとした雰囲気を感じたが、それを解いてからこの子は魔物であるのかを疑うほどポケポケしていた。かわいい。これで自然の中で生きていけるのかこちらが不安になったほどだ。

 なので恐らくかなり遠い関係者だろうと思った。

 

 しかしこの評価はすぐに覆ることになる。

 

 基本的に人類に友好的な魔物でも、無条件に人を助けるようなものはいない。例外としては、親しい者や気に入った者ぐらいだろう。昨日今日あったばかりの人間など助けたりはしない。

 

 襲われたとき、全く気がつかなかったフレイを庇う形でログは飛び出そうとしていた。このまま行けばログかフレイが確実に怪我を負っていた。

 それをこの子鳥は助けた。

 それも格上であるはずのシャドウウルフを動揺もせずあっさりと下して。トドメこそログが刺したが既に勝負はついていた。なんだかちょっぴり暖かい気持ちになった。

 

 この時点で天秤は既に傾きかけていた。

 

 スワロー種は人間に益となるだけでなく、非常に臆病だ。そしてかわいい。いや違うそうじゃない。

 危険があればすぐに逃げ出し、身を守ろうとする。

 

 シャドウウルフは影に同化することができる魔物だ。とは言っても、影から影に移動するには外界に体を出さなくてはいけないし、入った影を攻撃してそこにいればダメージが入る程度の能力だ。奇襲としてはこの上なく恐ろしい能力だが、バレてしまえばそうでもない。本体のスペックも決して高くないことから、戦闘になれば慣れた冒険ならどうとでもなる。

 

 しかしシャドウウルフのランクは「Cー」、スワロー種は「D+」。この子は体格的にキッズの可能性もあるのでさらにそれよりも低いかもしれない。普通なら現れた時点で逃げ出している。

 

 それが戦場をコントロールしていた。

 追加で襲いかかってきたシャドウウルフ。対面能力があまりないとは言え、周りを囲まれてしまったので運が悪いと怪我をすることになる。それが完全な無傷。危ないと思うことすらなかった。

 

 背後から飛びかかろうとするシャドウウルフの眼前に羽を突き刺して牽制し、目の前の相手を倒す時間を稼ぐ。二匹同時に襲いかかってくる片方の足に羽を打ち込み、転ばせ、一対一で戦える状況を作り出す。ダメージを負って、万全の状態のシャドウウルフと交代しようとした個体に追撃し確実に仕留める。などなど。

 

 まるでお膳立てされているかのように楽な戦闘だった。確実に過去で一番楽だ。残りの二人もそう思っているだろう。

 

 普通ではあり得ない。この子鳥が非常に魅力的に見えた。

 人語を解し、人助けに積極的で、とても強い。しかもなんかチョロそう。これで、絆されない者がいるだろうか。いやいない。

 

 そうしてこのかわいい幸運の青い子鳥をものにしようと決意するのであった。

 

 

 ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ 

 

 

「さっきはありがとね。助かったよ」

 

 ――いえいえ、困ったときはお互い様です。それで、その……

 

「よし、じゃあ次の調査ポイントに行こうか」

 

 ――降ろしてもらえませんか??

 

 あの、私早く帰らなければいけないのですが。

 何故しっかりと抱きかかえられているのか誰か説明してもらえませんか?

 

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