無限の転生~今世でついに人間卒業!? こんな人生こりごりだとは言ったけど、人間辞めたいとは言ってない~   作:ねむ鯛

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第33羽 パルクナット その3

 

 宿屋『萌えよドラゴン』の庭に朝日が柔らかく降り注ぐ中、呼吸を整え集中力を高めていく。

 完全に馴染んだ、鳥としての呼吸を深く、深く、強く意識して――――闘気を身に纏う。

 闘気を纏ったまま演武で体の調子を確かめていく。

 氣装纏鎧《エンスタフト》と名付けたこの技術は未だ未完成です。体を動かすと時たまかき消えそうになる鮮血のオーラを視界の端で捉えた。

 

 戦撃は一度発動すると、技が終わるまでは体がほぼ自動的に動きます。そのため、意識は敵と闘気の維持だけに裂かれます。何が言いたいのかというと、私は闘気を使っているときに自分で大きく動いたことがないと言うことです。

 タダ歩く、飛ぶなどの動作なら支障はあまりないのですが、そこに技を意識すると途端に維持の質が落ち込みます。

 いいえ、少し違いますね。私は相手の対応を予測しようとしたときに、その先の自分が使うべき技まで意識して戦っています。

 相手がこう動くだろうから、こう対応しよう。それをいくつも同時に考える。そこに意識が裂かれた瞬間、闘気の維持に大きく揺らぎができます。

 それもひとえに私が未熟が故。

 

 演武の相手は我が体術の師。最後まで徒手空拳で勝てることはありませんでした。

 イメージトレーニングで記憶の中の師と激しい戦いを繰り広げる。流石に足だけだと厳しいので翼も使えるものとして対抗するものの、どうあっても対応される。闘気の維持に意識を裂けば大きく押し込まれ、マズいと応戦すれば闘気が消えそうになる。結局どちらも上手くできなかった私は、師に足払いをかけられて地面に叩きつけられ、トドメの踏みつけをまともに食らってしまいました。

 ひどい、そこまですることないでしょう……。ニヤニヤ笑っちゃって、弟子に勝てたのがそんなに嬉しいんですか。

 

 ――ふう。

 

 演武は私の敗北に終わり、宿に戻ろうとするとフレイさんがこちらを見つめていました。翼を振ってみるものの上の空。返事がない、タダの屍のようだ。なんてそんなことは無いので今度は近づいて目の前で翼をフリフリします。おーい。気づいてくれました。

 

「あ、ああ、メル。朝ご飯にしよう」

 

 ―――やった!宿の名前はともかく、ご飯は美味しいので毎朝楽しみなんですよね。

 

 ご飯が楽しみだったその時の私は、背後からじっと見つめるフレイさんの視線には全く気づいていませんでした。

 

 

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 パルクナットに着いてから既に四日。

 この大陸の地名をフレイさん達に只管聞いていたのですが、めぼしい収穫はありませんでした。観光地に詳しくなったくらいでしょうか。

 他大陸について聞こうにも、基本的に行ったことの無い人ばかりで何を聞こうやらと言った具合です。そもそもここが他大陸なのかも定かではないまま。

 ……最悪は霊峰ラーゲンにいる龍帝を尋ねることで解決できそうではありますが、危険だそうなのでなるべくやりたくありません。最後の手段です。ひょっこり翼竜が戻ってくるのが一番良いのですが今のところその気配はありません。

 

『なんだ貴―――』ビクッ!『様ら。何を見ている、見世物ではな―――』ビクンビクンッ!!『いぞ』

 

「どうしたんだよ、アンブロシアヘイルストローム!お前そんなやつじゃなかっただろ!」

 

 それこの子の名前ですか?手に包帯を巻き、眼帯をした男性が私が乗った魔狼に悲痛な叫びを投げかけています。

 

 調べるだけで四日。そろそろ仕事をしないと、と言っていたフレイさんの冒険者としての依頼を手伝うことにしました。養って貰うだけでは申し訳無いので。

 今回フレイさん達のクエストで飼い主さんと一緒になったので、折角だからと撫でていたのですが……。

 アンブロシアヘイルストロームなんて名前呼びにくいので縮めましょう。そうですね……、「アンブロシア」と「ヘイルストローム」の頭文字を取って「アヘ」くんにしましょう!我ながら言い名前です!

 アヘくんはそれで良いですか?

 

「クウ~ン、クウ~ン」

 

 ―――あ、はい。撫でるのやめちゃダメなんですね。なでなで。

 

『お゛お゛ッ!?』

 

「ダメだこいつ。早くなんとかしないと」

 

 

 ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ 

 

 

 紆余曲折あった末、私はアヘくんから引き離され、フレイさんの頭上の定位置に降ろされました。もふもふがぁ。

 

 ……なんでフレイさんとアヘくんはそんなににらみ合っているんですか?それで飼い主さんは何でそんなに私を睨んでいるんですか?アヘくんを取ったりはしませんよ?

 

「それにしてもあんたが戻ってきているとはね、ジョン」

 

「ふっ、俺は俺を必要とする場に必ず現れる。そう、雷《いかづち》の如く……!!」

 

「必要なのはこっちのアンブロシアヘイルストロームの方なんだな」

 

「何でそういうこと言うかなあ!」

 

 飼い主のジョンさんはアレなしゃべり方をする人なんですね。すぐに普通になりましたけど。

 皆さん対応には慣れたものなので知り合いなのでしょう。

 

「ゴホン!パルクナットに不穏な影が差していると風が教えてくれたのさ。そこで俺と相棒のアンブロシアヘイルストロームは駆けつけたのだ。そう、雷《いかづち》の如く……!!」

 

 う~ん、天丼。

 ともかく、アヘくんの鼻ならなにかわかるかもって事ですね。私達はその護衛と。

 さあ、張り切っていきましょう!

 

 

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