無限の転生~今世でついに人間卒業!? こんな人生こりごりだとは言ったけど、人間辞めたいとは言ってない~   作:ねむ鯛

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誤字報告いただきました。ありがとう!
あっ、そうだ。剣道三倍段って知ってる?


第43羽 その手に掴んで

 

 時は僅かに巻き戻って、蹴り飛ばされ地面に落ちたところから。

 

 ……流石に傷を負いすぎました。地面に倒れ伏し、焦点の定まらない視界のなか思う。

 吸血鬼の再生能力も無尽蔵ではありません。再生すれば再生するだけ、体力を消費します。傷が塞がるスピードは落ちるのです。貫かれた胴の傷を修復する必要があったため翼の骨折を治すのは後回しになりました。結局更なる傷を負ってしまい、吸血の効果は消滅。ご覧の有様です。

 

 あれ?声が聞こえる。これは……フレイさん……?

 

 蹴り飛ばした私へと歩いて来ていたコアイマをフレイさんが止めてくれたようです。

 

 過去の恐怖から動けなくなっていたはずのフレイさんが、私のことを守ってくれている。私の為に戦ってくれている。

 

 ――私はお姉様がいなければ立ち上がれなかったのに、フレイさんは自力で立ち上がった。

 

 すごい。私は百年以上かかったのに。強い人だ。

 

 そんなすごくて強い人が私を守ってくれようとしている。何度だって続きがある、命の軽い私を。

 

 フレイさんや冒険者達が庇ってくれている。

 

 嬉しくて、ありがたくて。そしてなんて――――罪深い。

 

 彼女たちの命に私なんかの命が釣り合うはずもない……!!

 私が守るべきだ。私が助けるべきだ。そうでなくてはいけないから。

 

 皆が止まっても、私だけは止まらない。

 彼女たちの死は終わりでも、私の死は終わりではないから。

 

 ――動け、私の体!!

 

 ――あんなに怯えていたフレイさんが頑張っているのに。

 

 ――トラウマを植え付けられたフレイさんが立っているのに。

 

 ――私がおとなしく寝っ転がっているなんて――――嘘でしょう……!!!!

 

 ――私が力を手に入れたのは何のためだ……!

 

 ――私が強くなりたいと願ったのは何のためだ……!!

 

 ――この手(・・・)から何一つ、取りこぼさない様にするためだ……!!

 

 ――足が取れたって、内臓が飛び出たって、翼がもげたって良い!今、動けるなら……それで!!

 

 ――大切なものを、何一つなくしたくないから……!!

 

 ――応えなさい!私の体!!

 

 

「【一閃《いっせん》】!!」

 

 眼前に迫る巨大な魔力の塊。

 容易く魔力をかき消したその一撃は、普通では届き得ない距離を瞬く間に喰い潰し、後ろのコアイマさえ貫いた。

 

 これは私が初めて発動に成功したあの戦撃。

 私が一番得意な武器、槍。その戦撃、【一閃《いっせん》】。単純な突きの一撃です。

 

「メル……」

 

「はい、フレイさん。私はここに」

 

 そう答えると固まっていた冒険者の一団がザワザワし始めました。

 

「すげえ」「あの攻撃を一撃って……」「かわいい」「背中に翼……天使か?」

 

 流石に一度に話されるとなんて言ってるか判別できませんね。

 

「メル!」

 

「わっぷ」

 

 フレイさんが感極まったように抱きついてきたので、気がつけば借り受けたログさんの槍を、つい取り落としてしまいました。危ないですよ?

 

「あんた人の姿になれたのかい!?」

 

「いえ、今成れるようになりました」

 

「へえ、それにしても……」

 

 私の姿をジッと見ていたフレイさんが、唐突に私の脇に手を差し入れて頭上に持ち上げました。

 

「ちっちゃいね?」

 

 むむむ!確かに私は今幼女と言われても仕方のないサイズですが、これでも精神はれっきとした大人です。今世は生まれて一年経ってないと思うので体が幼いのはしょうがないのですよ。

 

「まあいっか、かわいいし。それになんで急に槍なんか使ったんだい?」

 

「えっとそれはですね……」

 

「随分楽しそうじゃない……!!」

 

 返答に困っているとボロボロになったコアイマが姿を現しました。思ったよりしぶといですね。

 

「人化できるようになったからなに?今まで魔物の姿だったのに急に人の体を使いこなせるはずもないわ。まぐれ当たり如きでいい気になってるんじゃないわよ!」

 

 そう叫んで今までとは比べ物にならない量の魔力球が飛来する。それを冷静に見据え、左手を握りしめる。

 

「《白陣《はくじん》:壁空《へきくう》》」

 

 左手の先に幾何学的な白の魔術陣が発生し、透明な障壁が生み出された。前方を半球のドームのように覆ったそれは全ての攻撃を受け止めなお無傷。コアイマはギリギリと奥歯を噛みしめている。

 

「嘘でしょう……!!」

 

「残念ですが生半可な攻撃ではこれは壊せませんよ?」

 

「あ~、メル?降ろした方が良かった?」

 

 フレイさんは気まずそうに私を抱き上げたまま。そして私はちょっと得意げな顔。

 ハタから見るとちょっと間抜けな姿です。

 フレイさん……!先に言って……!!仕方ないじゃないですか、久しぶりに魔術使ったから嬉しかったんです!

 

 咳払いを一つして、フレイさんの腕の中から飛び降りると全員を見上げて言った。

 

「皆さんはこのままここでジッとしていてください」

 

「ッ!!……わかった」

 

 フレイさんや一部の人は何か言いたそうにしていましたが、言葉を飲み込んで頷いてくれました。

 

「すみませんログさん。この槍このまま借りていきますね」

 

「お、おう」

 

 障壁を通り抜け、私を睨み付けるコアイマと向かい合う。視線で人が死ぬなら私は十回は死んでますね。

 

「こんなチンケな魔物風情に私の魔法が……!!」

 

 認めたくないと言った表情で剣を携え、一気に肉薄してくるコアイマに、氣装纏鎧《エンスタフト》を発動する。魔法でなく、剣でならと言ったところでしょうか。正確には魔法じゃなくて魔術ですが。

 

 そんなことを考えながら、コアイマの攻撃を待ち受ける。

 ドドドドと四つ音が鳴る。

 常人では見ることすらできないであろう速度の、コアイマによる剣の振り下ろし。

 私がそれを弾き、ほぼ同時に突きを三つ胴体に入れた音だ。

 

「は?」

 

 コアイマからすれば意味不明だった。剣を振り下ろし始めたら既に胴に三カ所痛みがあったのだから。

 コアイマの体勢が上に流れる。

 

「【赤陣《せきじん》:一閃《いっせん》】」

 

 その隙に槍を握りしめれば、現れた赤の魔術陣が槍に纏わり付き、炎の突きが吹き飛ばした。

 

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