【悲報】無限に転生してきた私、遂に人類をやめる【タスケテ】   作:ねむ鯛

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第5羽 やっておしまい!

 

「むぎゅ」

 

 白翼の魔物に巣と思わしき場所に降ろされ、不穏な空気を感じ取ったミルが恐怖を抱いて、咄嗟に逃げだそうという考えに至るのはそう難しい話ではなかった。

 とは言えその試みはあっけなく止められることになるが。

 逃げ出そうとするやいなや、子鳥の内の一羽に意図も容易く押さえつけられてしまった。

 

(全く反応できなかった……!!こっちの小さな方でもこんなに強いの!?)

 

 魔法をメインで使うが故に前線に出る方ではないものの、ミルはこれでも冒険者だ。軽めの護身術の類は練習させられている。

 それなのにだ。

 

 上手かった。自分よりなんて次元ではなく、今まで見た誰よりも上だった。

 

(これじゃあ逃げられない……)

 

 何の為に連れてこられたのかはわからなかったが、魔物が離れるタイミングが必ずあるはず。そう考えていた彼女は自らの見通しの甘さを痛感していた。

 

 見たところ子鳥は6羽いる。その全てがこの強さだと考えると生半可ではいかないだろう。

 これでは今もこちらを見下ろしている魔物が居なくなったところで大差はない。

 

 というか背中が痛い。そろそろ離せ。

 

 そんなこんなで現在の状況に軽く絶望していたミルだったが、どうやら親子|(おそらくだが)の間で話がまとまったようだ。

 とはいえ子鳥の方はなんだか必死に鳴いているだけで、何を言っているのかは分からなかったが。

 その様子が不覚にもかわいいと思ってしまったのは内緒だ。

 

『ふむ……、そこまで言うなら良いだろう。お前が面倒を見ると良い。おい、小娘』

 

「あ、はい」

 

『しばらくはこいつが面倒を見る。指示には従えよ』

 

「えっと、わかりました」

 

 ミルは頷く。というかそれ以外の選択肢なんてない。

 そこで乗っていた足がどけられたと同時に、目の前に真っ白い翼が差し出される。

 

「チチチ」

 

「あ、うん。よろしく?」

 

 まるでよろしくとでも言っている様なその姿にこちらも手を差し出しそう返すのだった。

 

 

 ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ 

 

「えっとね、これが魔法を使うための杖で、こっちがあたしが使うための道具が入ったバックだよ」

 

 どうも皆様。なんとかお母様の許可をもぎ取り、この少女を私物化した私です。……誰に言っているんでしょうかこれは。

 

 ともかくバッドエンド一直線は回避できました。流石に人間が目の前でスプラッターになるのは見たくはありませんでしたし、下手したら私も参加しなくてはいけませんでしたからこの結果は上々でしょう。

 まあ、お母様が本当にそうするつもりだったのかは不明ですが。私の予想ですからね。

 

 今はこの少女が逃げ出さない様に、座らせた少女の膝の上に座って持ち物を(あらた)めているところです。

 膝の上に座っているのに他意はありません。ありませんよ?(圧)

 

 それはともかく翼で指してバックの中を見せるように指示します。

 バックはそこそこの大きさだったのですが中身は寂しい物でした。なくしたか使ったかしたのでしょうか?

 

 出てきたのは使い込まれた本が一冊に、カードが一枚、それに携帯食料|(おそらく)と二種のナイフ、小瓶が数本。

 携帯食料があるのに水がないのが少々気になりますが、この場合は恐らく魔法で出せるのでしょう。いままでの人生で、魔法がある場合は大体水なし携帯食料ありはデフォでした。水は結構嵩張りますからね。

 

「こっちは薬草の本。絵がついててかなり貴重なやつ。あたしに薬草学を教えてくれた人がくれた大事な物」

 

 ふむふむ。

 

「これが冒険者カードであたしの身分証明書みたいなもの。それで携帯食料と採取用のナイフが2本」

 

 ほむほむ。

 

「それとこれが料理をするための調味料だよ」

 

 ……ほほう。

 

 今更な気もしますが、私に対して違和感を持たせないようにお母様に料理について質問します。

 

『料理とは人間が加工した食事のことだ』

 

 ならば実践して貰おうではないか、とばかりにお母様が持ってきた肉塊の一部を分けて貰い、少女に向けて差し出します。

 

「……えっと?」

 

 あなたにはお仕事として私達のご飯を作ってもらいます!!

 おいしいごはん食べたい(本音)!!

 そうして少女の魔法を使って作られた特製ステーキに全員が群がるのはそれからすぐのお話。

 

 

 


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