無限の転生~今世でついに人間卒業!? こんな人生こりごりだとは言ったけど、人間辞めたいとは言ってない~   作:ねむ鯛

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第59羽 カランコロン

 

暖かい。

なにやらそんな奇妙な感覚を覚えた。ゆっくりと意識が浮上していく。

覚醒して行くにつれて柔らかい感覚が。

 

……柔らかい?

 

違和感を覚え目を開けば、目の前に息をのむほど綺麗なサファイアが二つ転がっていた。

 

……違う、これは瞳だ。眠たげに細められた半開きのまぶたから、思わず見入ってしまうほどきらめく青が覗いている。

そこまで認識してようやく現状が理解できた。抱きしめられているのだ。この瞳の持ち主である女の子に。

 

洞窟に横になっているが故、彼女の綺麗な金の髪が床にゆったりと広がっている。特徴的なのは頭に生えた一対の巻角。

羊……でしょうか?ふわふわとした白い洋服を着ていることからも、自然とそう連想されます。

角の下から生えているふんわりとした毛に包まれた、先のとんがったケモ耳から彼女が獣人の少女であることは確定です。

そこまで考えたところで、少女がかわいらしい唇を開いた。

 

「起きた?」

 

返事をしようとして声を出せば、鳥としての鳴き声しかでない。うっかりしてました。人化しないと。

 

「あ……」

 

寝転がっている彼女の腕の中から抜け出せば、彼女はなんだかもの悲しい声を出してゆっくりと体を起こした。一歩下がって距離をとり、人化を発動する。

 

「……メ?」

 

突然姿が変わった私に少女がコテンと小首を傾げれば、首に下げられたベルが軽やかな音を鳴らした。

 

「初めまして。私はメルと呼ばれています」

 

「……メリィ」

 

この自己紹介が私とメリィさんとの初めての出会いでした。

 

 

既に火の消えた洞窟。彼女が消してくれたのでしょうか?助かりました。

それにしても良くここを見つけられましたね。《狂言》の効果で簡単には洞窟を発見できなくしていたはずなのですが。霊峰ラーゲンの高所であるこの場所に平然と居るだけで実力者であることは確定なのですが、いかんせん眠たげな雰囲気を常にまとっていて強そうに見えない。

 

一体何者なのでしょう。敵意は全く感じないの上に独特の雰囲気のせいで自然と警戒を解いてしまいましたが……。

 

「メリィさんはどうやってここを見つけたのですか?」

 

「知ってたから」

 

言葉が少ないですが、つまり元々この洞窟を目指していたと言うことでしょうか。あれ?ということは。

 

「もしかしてあの焚き火はメリィさんのですか?」

 

「そう」

 

「す、すみません。そうとは知らずに勝手に使ってしまいました……」

 

「もふもふだったから良いよ」

 

「あ、ありがとうございます?」

 

よくわからない理由ですが許していただけました。

言うとおり焚き火が彼女のだとすれば、ここに数日以上は滞在していることになります。この山で無事で過ごし続ける実力があることの査証です。

やっぱり人は見かけによりませんね。

 

脳内のデフォルメイマジナリーフレイさんが「あんたが言うな」って言ってきましたけどよくわかりませんね……。

そんなことを考えているとメリィさんがこちらをジッと見つめている事に気づきました。

 

「あ、あの。私の顔に何かついていますか?」

 

「…………」

 

返事がない。ただのかわいい女の子のようだ。……違うそうじゃない。

不安になって自分の顔をペタペタと確認してみるものの、特になにもない。そうこうしているとメリィさんが手を伸ばしてきた。やはりなにか付いているのでしょうか。

付いているものを取ってくれるのかと手を見送っているとなぜか持ち上げられた。

 

「へ?」

 

気がつけば膝の上。後ろから抱きしめられていた。なぜ?

 

「もふもふ……」

 

見ていたのは私の顔ではなくどうやら翼だった模様です。

 

「あ、あの、離して貰えませんか?」

 

「ふわふわ……」

 

聞いてないですねこれ。しかし、悪気はなさそうですし実害もない。振り払うのはためらわれますが……。

 

う~ん、初対面の人に背中に密着されると少々コワイのですが……。攻撃されてもすぐに戦闘に移れないので。

まあ、今は吸血鬼の再生能力もあるので、首を飛ばされても最悪心臓さえ無事ならなんとかできるから……、ヨシ!

 

「……んぅ」

 

それにしても翼を触られるのはくすぐったいですね……。思わず身じろぎしてしまいます。

 

しばらく経って満足したのか、話ができるようになったメリィさんに絵を見せて問いかける。折角先駆者がいるのですから聞かなければ損です。

 

「この絵に描かれているのはマンドラゴラと言うのですが、どこかで見ませんでしたか?」

 

「メ……」

 

背後のメリィさんを見上げればどうやら考えている様子。そして彼女はふと思い至ったように呟いた。

 

「見たかも?」

 

「ほ、ホントですか!?どこで!?」

 

「どうどう」

 

思わず振り返って問い詰めるように聞けば、上体を反らせてなだめられてしまった。抑えるように出された手の平に我に返る。

 

「すみません……、つい」

 

「よきよき」

 

軽いですね……。

 

「それでどこで見たんですか?」

 

「上」

 

そうですか。近くにあればと思ったのですが、やはりまだ登るしかないようですね。

 

「助かりました。ありがとうございます」

 

メリィさんにお礼を言い、折角なので気になっていたことを聞くことにした。

 

「それでメリィさんはこの山で何をしているんですか?」

 

「お使い」

 

「お使い……?」

 

「そう」

 

コンビニに行くような気軽さで言われても……。簡単にこれる場所ではないのですから。

 

それにしてもどんなお使いなのだろう。聞こうと思ったところで彼女が私を地面に下ろし、立ち上がった。

 

「そろそろ行かないと」

 

「あ、はい。お時間を取らせてしまってすみません」

 

「もふもふだから構わない」

 

「はあ……?」

 

「ばいばい」

 

「え、ええ。お気を付けて」

 

手を振って別れを告げた彼女はベルの音を鳴らしながら行ってしまった。

 

「なんだか台風の目のような人でしたね……」

 

騒がしいようで本人は静か。なんとも不思議な人です。

 

「私も行きましょうか」

 

しっかり休めたので気合い十分です!

 

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