無限の転生~今世でついに人間卒業!? こんな人生こりごりだとは言ったけど、人間辞めたいとは言ってない~   作:ねむ鯛

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第68羽 氣装纏武

 

 頭を振って雑念を振り払う。

 メリィさんに不覚を取りましたが、ともかく今はジャシンの影です。宝玉からいつまで経ってもあふれ出してくるのは龍帝のおかげで止まりました。

 

 メリィさんに関しては、空間魔法の力を持った道具でどこかに逃げられた以上追跡することはできません。少なくとも今の私の能力では無理です。となれば、あふれ出したジャシンの影を殲滅する方が良いでしょう。別に衝撃の出来事を努めて忘れようとしているわけではないです。はい。

 

『天帝の娘よ。済まないが我が手助けすることはできないと思ってくれ。結界を壊して洞窟に入れば同じ強度で直すことはできんし、これ以上下手に攻撃すれば洞窟が壊れる。頼んだぞ』

 

 う~ん、この丸投げ。比較的温厚な龍帝ですが龍としての傍若無人さは健在なようです。ここで放り投げるつもりはなかったので別に良いのですが……。

 

 赤陣の魔術で焼き払いながら影に捕まらないよう洞窟の中を飛び回る。このジャシンの影、液体のようにまとまっていたかと思えば、蛇のように這いずり回ったりと不思議な動きをしています。実体のない不定型な存在だからなのか、熱で焼くのが効果的ですね。汚物は消毒です!

 

 焼却作業は順調に進み、約半分ほどを灰に変えたところでそれは起こった。紫色の煙がジャシンの影から吹き出したのです。ジャシンの影の攻撃範囲を見切っていた私は、想定外のそれを少しだけ吸い込んでしまった。

 

「う……!?ゲホッ!ゲホッ!これは……毒……?」

 

 こみ上げて来るままに熱い物を吐き出せば地面が赤に染まった。血だ。吸った毒でダメージを負ったようです。

 この毒、魔力で作られた物ではなく物質的な毒です。恐らくジャシンが本来持っていた物なのでしょう。私の『呪術耐性』では効果がありません。

 鬼気を解放して『頑強』の効果を高め、耐性を高めれば症状が弱まった。

 

『頑強』の耐性を抜いてくるとはかなり強い毒です。

 私にあまり効果がでないとはいえ、長時間吸い込むべきではありません。魔素のことも考えるとさっさと出るべきでしょう。また少し無茶をしますが、長く時間をかけるよりはこちらの方が良いと判断しました。

 

 毒の範囲外に出て『空の息吹』を使う。僅かに増した倦怠感と共に闘気を生成。それを『氣装纏鎧(エンスタフト)』としてまとうのではなく、握った槍に送り込んでいく。やがて槍に収まりきらなかった闘気が、柄から穂先にかけてあふれ蜃気楼のように揺らめき始めた。

 

 これは『氣装纏武(エンハンスメント)』と呼ばれる技術です。『氣装纏鎧(エンスタフト)』は私が考えましたが、『氣装纏武(エンハンスメント)』は既存の技術です。

 

氣装纏武(エンハンスメント)』は見た通り武器に闘気を送り込む(わざ)です。武器が必須なので素手では使えません。この(わざ)は武器にかなりの負荷をかける代わりに、武器の威力を底上げしてくれます。それだけではありませんが。

 

 ジャシンの影に向けて走り出す。

 息を吸い込み、闘気を練り上げ戦撃を準備する。僅かに毒を吸い込みますが問題ありません。許容範囲内です。

 

 ここに来て、固まった影から蛇のように攻撃してきていたジャシンの影が多岐に分裂した。まるで触手のように。

 これまで一本だったのに急に分裂した。今までできなかったのか、それともしていなかったのかはわかりませんがこれも問題ありません。

 

 槍を握りしめ炎を宿す。

 

 天井すら覆い隠し、津波のように襲いかかる触手の群れに一撃。

 

「【赤陣:上弦月《じょうげんげつ》】」

 

 闘気をまとった前方180度のなぎ払い。それが――――視界全ての触手を焼き切った。

 

 それこそ攻撃が届くはずがない場所の触手までが焼かれ、焦げ付く。上げられない悲鳴の代わりのようにジャシンの影が蠢いた。

 再び触手を生やして襲い来る。もう一度。クルリと背を向け。

 

「【赤陣:下弦月《かげんげつ》】」

 

 背後を180度なぎ払う戦撃。その直前。

 

 槍にまとわり付いていた闘気の蜃気楼が、手元から穂先にかけて槍の形に膨張した。それに付随して炎の範囲も拡大し広範囲の触手を焼き払う。

 

 これが『氣装纏武(エンハンスメント)』の効果。攻撃範囲の増加。単純ですがこれを戦撃で行うと広範囲を高速で殲滅する攻撃に早変わりです。

 私は闘気の形を変えるのは苦手なのですが、武器に凝縮させた闘気は武器の形で膨張します。そのおかげで、拡大した槍として扱えるのです。おそらく押し込められた闘気が武器に形に固まったせいだとは思うのですが正確な所は良くわかっていません。

 

 そして炎の範囲拡大は闘気に存在している、とある特性を利用した物です。

 それが他者の魔力の排他性と自己の魔力との親和性。

 簡単にいうと、他人の魔力を弾いて自分の魔力を取り込む特性。

 

 これの影響で拡大した戦撃の範囲に炎が付随した訳です。

 

 毒すら取り込むのを気にせず大きく息を吸い込む。『氣装纏鎧(エンスタフト)』の輝きを身にまとい、構える。

 戦撃の輝きを槍に宿し力強く踏み込む。

 

「【赤陣:告死矛槍《こくしむそう》】!!」

 

 『つつく』の補助を受けた高速の三連突きが『氣装纏武(エンハンスメント)』の効果で拡大され、ジャシンの影に大砲でも打ち込まれたかのような大穴を穿ち、焼き焦がす。

 なぎ払いがジャシンの影を両断し、逆なぎ払い、更に一回転してのなぎ払いが三枚に下ろす。

 

 背後に叩きつける勢いのすくい上げで、縦に切り裂く。さらに背後の穂先を、横から叩きつけて前に戻す。

 『急降下』を発動した強力な両手突きを放てば、ジャシンの影がほぼ消え去った。

 

 体を捻って槍を後ろに引き絞ると同時、左手を前に突き出し握りしめる。

 

「《緑陣:旋風《せんぷう》》」

 

 つむじ風を発生させ、戦撃の威力で散り散りになっていたジャシンの影を一箇所に引き寄せる。一欠片も残しません。

 

「これで……終わりです!!」

 

 解放された最後の一撃がジャシンの影を残さず飲み込み穿った。

 

 ふう。

 

 思ったより大したことなかったですね。封印されて弱っていたのでしょうか?

 

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