無限の転生~今世でついに人間卒業!? こんな人生こりごりだとは言ったけど、人間辞めたいとは言ってない~   作:ねむ鯛

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第73羽 (密)入国

 

 鳥の姿で北の大陸、ノッセントルグから旅立って既に13時間ほど。

 パルクナットから沿岸部に出るのに8時間かかったのでこのまま飛び続けるのは無理と判断して4時間ほど休憩しました。すでに25時間経過して、現在は早朝の6時と言った所でしょうか。合計で21時間飛んでいることになります。鳥の姿なのは単純に人の姿よりも飛びやすく、速いからです。

 

 24時間飛び続けられるペースは維持しているのでまだ大丈夫ですが、かといってキツくないかと言われるとめちゃくちゃキツいです。

 鳥の種類によっては自力で方角がわかる種もいるようですが私はできませんでした。魔物だからなのかそれとも中身が人間だからなのかわかりませんがそう都合は良くなかったです。

 フレイさんから貰った方位磁石だけが頼りの渡りは不安でもあります。見渡す限りはひたすらの大海原。前後左右上下全てが青。

 もしこのまま陸地にたどり着くことができず力尽きてしまったら……。そう考えると背筋に冷たいものが走ります。転生しまくっているとは言え、死を恐れていないわけではないので。世界地図もない時代で海に船で飛び出した人ってすごいですね……。尊敬はしますが真似したくはありません。……今してるのか。

 

 っと、そんな事を考えているうちに見えました。中央の島国、セントラルクスが。白蛇聖教という宗教が牛耳っている場所なのであまり近づきたくありません。触らぬ神に祟りなしです。

 どこかで休憩させて貰って、南の大陸、サウザンクルスに向かいましょう。距離としてはここで約半分なので直行すると流石に力尽きます。

 人類は船で7日かかるらしいのでかなり速いと思っていいかと。

 

 中継地点が見えた安堵と共にまっすぐ向かっていると、陸地まであと1キロといった所でピリッとなにかを通り抜けたような感覚が。……嫌な予感。

 

 すぐさま飛来音が。気づけばそれはすでに目の前にあった。

 

 ――危ない!?

 

 横に回転(ロール)して咄嗟に避ける。横すれすれを高速で飛び去っていったのは鋼鉄の矢だった。

 

 ――今のは(バリスタ)ですか!?

 

 バリスタとは簡単に言えば巨大な弓だ。それこそ、これは槍なのではといったサイズの矢が飛んでくる巨大な弓。大砲のように装填し、発射する備え付けの兵器。

 

 先ほどのピリッとした感覚。あれのせいですね。通り抜けた存在がいた際に知らせる道具かなにかでしょう。それのせいで私の存在がバレてしまった。

 

 よく考えれば当たり前です。ここは海のど真ん中。島国とは逃げ場のない巨大な孤島のようなもの。近づく危険に備えているのが当然。

 

 魔物が近づけば攻撃されるなんて事、フレイさんから聞いていませんがそれは知らなかったからでしょう。渡航が制限されている以上、ここに関する知識がないのは仕方ないです。

 

 なんて考えているのはちょっとした現実逃避です。

 何せ目の前にバリスタの矢で作られた――――壁があるので。

 視界全部バリスタの矢。流石にやり過ぎでは?

 

 あまりに熱烈な歓迎で赤くなってしまいそうです。自分の血で。

 

 と、遊んでる時間はありません。今は昼間。吸血鬼の力は使えないので怪我しても『高速再生』で直すことは不可能。被弾は避けたいです。

 

 なので『人化』して腕を突き出し、握りしめれば白の魔術陣が。

 そこに向けてたくさん『射出』すれば魔術陣を通り抜けた羽が加速していく。《白陣:加速》だ。高速で飛翔したたくさんの羽は飛来した矢に激突し、鉄の壁に小さな穴を開ける。

 よし、上手く行きました。すぐさま『人化』を解除して羽ばたいて通り抜ける。達成感に浸る間もなく第三波が。しかも今度は連射で。

 

 ――――嘘でしょう!?まだ上があるんですか!?

 

 穴をくぐり抜けたところにすぐに反応した(バリスタ)の一つが連射をしかけてきた。ガトリングほどとはいかないものの、単発式のハンドガンくらいの連射速度はあります。

 

 初弾を横に回転(ロール)して避けつつ、急いで高さ(ピッチ)を上げていく。

 

 ――間に合え!!

 

 そして全速力で飛ぶ私の僅か下を、多量のバリスタの矢が空間を塗りつぶした。

 

 ―――危なかった……!!

 

 タダでさえ多かったバリスタ。その全てが連射した結果が今の光景です。先ほどのような面での攻撃ではなく、厚さが伴った攻撃。『射出』では対応しきれない可能性がかなり高かったです。

 全部が最初の反応が良かったバリスタ並みだったら食らってましたね。正直あの射撃手だけ腕が段違いです。

 

 そんなことを考えているうちにもバリスタの矢は私を打ち落とそうと付け狙ってくる。

 直ぐ側を『ズドドドド』とエグイ音が常に通り過ぎて行っています。

 もう悪夢ですよこれ。帝種でも想定してるんですか!?私は一般通過魔物なので勘弁してください。

 

 再度言いますが、休憩しなくては途中で力尽きます。なので引くことはできません。普通に海でおぼれて死ぬと思います。

 しかし一度島の中に入ってしまえばバリスタの連射は緩むはず。島内に打って人に当たっては大変ですからね。

 突破するためにも高さ(ピッチ)を重視してひたすら近づいていく。

 

 射撃というものはそもそも近ければ近いほど当たりやすいです。なので被弾したくないなら距離を置くほど良いです。しかし私はどうしても近づかなくてはならない。仕方ないので高さを増やすことで島に近づくと同時に、射撃位置から距離も取ってる訳ですね。

 

 ―――痛った!?

 

 空間を塗りつぶす鋼鉄の矢を避けつつジリジリと島に近づいて行っていると突然バリアのようなものに激突した。窓ガラスにぶつかる鳥の気持ちを教えてくれてありがとうございます!!

 バリアのようなものには衝突の影響で罅が入っていたがすぐさま修復された。次はこれを突破しないと―――

 

 ―――!!?()っ!?

 

 バリアに激突したと言うことは失速したということで。

 今までなかった明確な隙に狙いを澄ませた狩人の様な一矢が脇腹を抉り抜いた。傷口に熱が走り、鮮血が舞う。

 あの上手い射撃手だ……!!

 

 ―――この高さで当ててきますか……!!

 

 ギリギリで体をずらさなければ心臓に当たっていました。

 ここはすでに上空1000メートル。着弾に時差がある中、空気抵抗の大きいバリスタの矢で私の心臓を狙う。どんな腕ですか……!!

 

 私を狙う矢はこれだけではない。この射撃手の次射はもちろん他の弾幕もある。魔法を使い風を目の前で爆発させバリアから離れるように無理矢理離脱。吹き飛ばされるまま背を海面に向け、バリアから反対へ加速して矢の群れを回避した。

 

 バリアへの激突によって一度減速しています。今の速度で上空に昇ろうとすれば加速する前に矢に補足される可能性が高い。かくなるうえは――――急降下!!

 

 背を海面に向けた状態から頭を下へ。『急降下』を発動して加速しつつ重力の力も加え、矢の雨を振り切る。頭を上げて弧を描き、加速したままバリアへ向けて舞い戻った。そのまま―――

 

 ――【崩鬼星《ほうきぼし》】!!

 

 バリアをぶち破って侵入に成功。壊すと島の人にいらない迷惑がかかるかもと迷ったのですが、思い出してみればさっきは罅が治っていましたし、じきに塞がるだろうからヨシ!

 

 陸に入れば予想通りすぐに射撃が止みました。良かった。補足されにくくなるように高度を上げていき、同時に沿岸部から離れていく。バリスタで射撃していた人達がすぐに探してくるはず。きっと他にも。

今のうちにどこかで休める場所を探さないと……!!

 

 ――――あれだ!!

 

 長時間の飛行でただでさえ疲れていたのに、今の強行突破でさらに疲労が濃くなった体にむち打って眼下に目を凝らす。

 目についたのは荘厳な白の巨城、その中心から生えた天高く聳える塔。高い場所なら人目につきにくいはず。バルコニーに向けて羽ばたいた。

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